星の距離さえ動かせたなら   作:歌うたい

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Track2________リプレイ
――Track2 Play start――


 

_

章の間の空白に情動の吐息を零すのと、スピーカーから響く曲目が変わるのは、奇妙なほどに同時だった。

 

 

「……んーっ」

 

 

窓から射し込んだ光に目を焼かれるようにぐっと伸びをして、ずっと同じ姿勢で本を読んでいたせいで、すっかり身体は凝り固まってしまったらしい。

長い長い、御伽噺の第一章。

黒と青の、夜空のような色彩に黄色いペンでビーズを書いたような、叙情的な一冊を紐解いてみれば、のめり込み過ぎて。

太陽の位置も、読み始めた時から随分と進んでしまった。

お気に入りのアルバムも、リピート再生で既に一周を迎えてしまったところだ。

 

 

「げっ、もうお昼か……」

 

 

少し古ぼけて傷んだ本の題名は、一時はブームになって、そして忘れさられてを繰り返して、けれどまるで誰かが書き直しているかの様にいつまでも綴られリメイクされている所謂『曰く付き』なのだと、少女の友人は興奮気味に語っていた。

 

 

独りぼっちになってしまった男の子が、いつしか周囲に輪を作って、独りじゃなくなっていく御伽噺。

けれど、生々しく綴られていく男の子の歩くような日々には、どことなく寂しそうな影があった。

 

男の子の心にずっと寄り添う女の子。

あまりに綺麗で純粋な女の子の想いに、憧れとロマンチズムを抱かずにはいられなかった。

 

 

物語は焦らすように、少しずつ男の子の過去を道標のように落としていきながら、ゆっくりと進んでいく。

それに合わせて進む周りと、想いの強さと心の弱さ。

まだ、少女には理解出来ない心の動きもあって、時には混乱してしまうこともあった。

けれど、次の章のタイトルをみて、いよいよか、と胸を弾ませる。

 

 

「……さって、コーヒーでも飲もっかな」

 

 

でも、まずは一息挟みたいなと、調子の良さそうに声を弾ませて、席を立つ。

 

栞を挟んだページを開いたままにして。

停止ボタンも押されるまま、曲を流し続けていたCDコンポの薄い表示画面に、デジタルの文字が浮かび上がる。

 

 

 

曲が始まると同時に、窓から入り込んだ悪戯な柔風が、そっとページを引っかけて。

 

 

捲られるのは、男の子の、思い出。

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

Track1__影絵__end.

to be next fairy tale________

 

 

 

 

 

 

 

――貴方は背負った、彼女達の命を。

けれど、それを言い訳にするのは卑怯よ。

そうでしょう?

 

 

 

 

 

 

ゆっくりで良い、散々迷って悩んで答えを出す

      それが生きるってことじゃん――

 

 

 

 

 

 

 

――ふん、何さ。

ボクはもう大人ですってか……?

牙抜かれちゃって、もやし野郎の癖にさ。

 

 

 

 

 

 

 

 ったく、旦那は人遣いが荒いぜ、ホント――

 

 

 

 

 

 

 

――超ムカつきますね、子供扱いすんな!

 

 

 

 

 

 

 

       あくせられーたは、恐いの?

          人を好きになることが――

 

 

 

 

 

 

――ジャッジメントですの!

 

 

 

 

 

        一方通行、お前に話がある――  

 

 

 

 

 

 

――楽にはなれないでしょ、お互いにね。

 

 

 

 

 

 

    五行機関ですか……さてはて。 

     一体どんな闇が待ってるんですかね――

 

 

 

 

 

 

 

――お前、少し変わったな。

でも三下呼びは変わらないんでございますね……

 

 

 

 

 

 

 

   ありがとうなんだよ、あくせられーた!――

 

 

 

 

 

 

 

――御礼は、言わないわよ。

アンタと私にそんなもんは余計でしょ。でも……

 

 

 

 

 

 

 あの時、貴方が私を助けてくれた結果。それだって、無かった事になるじゃないですか――

 

 

 

 

 

 

 

――彼を目覚めさせるのかね、アレイスター?

 

 

 

 

 

 

 

  おはよう『一方通行』気分はどうだね――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――星を見に行こうよ!

ってミサカはミサカは提案してみる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホント、しょうがない男なんだから

    一緒に行くわよ。ね、一方通行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Play to next next tales____

 

   Track2____ リプレイ_____

 

 

 

 

 


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