「カっズくーーん!」
「おう、おかえり、希」
「ただいまーカズくん!」
私はリビングに急いで駆け付けると、そこにはソファに座ってアニメの台本を眺めていた
カズくんが、私に優しい笑顔を覗かせておかえりと言ってくれる。
あぁ……幸せだ……
だから、私はついつい甘えたくなって、そのままカズくんのところにダイブする。
「うおっ!……希? いつもケガするかもしれないからダイブはやめようなって言ってるだろ?」
「えへへ、カズくんに早く抱きしめてほしかったんだもん!」
「ったく、言ってくれればすぐ抱きしめてやるのに……」
そう言って、カズくんはダイブした私をそっと抱き寄せると、そのままぎゅ~っと私を優しく
包み込んでくれるように抱きしめてくれる。
あぁ……疲れた体に染みるぜぇ~……
「そう言えば、今日はファンイベントどうだったんだ?」
「ん~、特に変わったことはなかったかな……あ、でも! ファンの人は前より増えてた!」
そう。
今日私は、アイアルの月に数回あるファンのイベントに参加してきたんだけど、やっぱり
全国ツアーの影響というものは侮れないもので、以前より軽く三倍くらいファンの方が来てくれてた。
いや~全国ツアー恐るべし……まあ、実際は関東ツアーなんだけどね!
まあでも、全国ツアーが終わってから今日までカズくんも私も色々あったなぁ……
全国ツアー中に私が倒れて、それでカズくんがわざわざお仕事をサボって来てから、
私は何とか全国ツアーの最終日に参加することができた。本当は一週間は入院してなきゃ
いけなかったんだけど、黒澤さんに何とかお願いして二日で退院できちゃった。
でも、やっぱりアイアルのメンバーのみんなや、事務所の社長さん、それに最も黒澤さんに
迷惑をかけたのは確かで……社長さんには病室を勝手に抜け出したことも含め結構怒られちゃった。
でも、ツアーが終わってからは体調を崩すことなく今もこうやって元気に活動している。
それもこれも、全部カズくんのおかげなんだけど……
そのカズくんは、私以上に相当社長やマネージャーから怒られたっぽい。
無断で仕事をサボってきちゃったことはもちろん、何の連絡も入れなかったことだったり、
他にも他の声優さんにも迷惑を掛けちゃったことで、カズくんが物凄い悲壮感漂う顔で帰って
きた時は今でも覚えてる。本当だったら、カズくんはこんなことにはならなかったのに……
私がそんなことを思っていると、カズくんは突然私の頭をチョップしてきた。痛い!
「ぅ! も、もう……何するのカズくん!」
「ん? 希がちょっとだけブサイクになってたから可愛い顔に戻してあげた」
「あ~! 彼女にブサイクって言った~いけないんだ~」
「ははっ、だって本当に希ブサイクだったから」
「もうぅ! ブサイクブサイク言わないでよ! 私もアイドルなんだよ!」
「じゃあアイドルはあんな顔しちゃいけません」
そう優しく諭すカズくんは、私を少し私を強く抱きしめる。
「ま~たあの時のこと考えてたでしょ? 別に気にしないでいいって言ってるのに」
そうやって、私の考えてたことを意図も容易く見抜いてくるカズくんは本当にズルい。
何がズルいかと言ったら、それはもうズルズルでズルズルにズルいのだ。
「気にしてはないよ? ただその、思い出しちゃっただけ」
「ん……まあ、もうそのことに関しては誰も怒ってないから大丈夫、なはず」
「本当にごめんね?」
「それはもう聞き飽きたから僕にこれ以上ごめんは通じませ~ん」
もう……カズくん好き。大好き。
どうしようかな……カズくんの好きが、最近ドンドン大きくなってく。
私はカズくんの背中に手を回すと、カズくんの顔の方に体をよじ登らせていく。
やがて私の顔とカズくんの顔が至近距離になると、私はカズくんの唇めがけてその距離を
ゼロ距離にする。
「っ……んん……ぁ……っ……」
お互いの悩ましい音が静かな部屋に響き渡る。
最近、ちょっとキスする頻度が増えてきたような……変わらないような……
そんなことを思ってると、カズくんは私の両肩を持って優しく押し返す。
「希……最近キスよくするようになったけど、どうしたの?」
「っ、べ、別にそんなことない! キスされるの……イヤ?」
「い、いやそう言うことじゃなくて! その……恥ずかしいな~、なんて……」
珍しく……もないけど、顔を赤くしてそう言うカズくんは普段のかっこいいカズくんとは違って
どこか子犬を連想させるような可愛いところがある。
かっこいいとかわいいを持ち合わせたカズくんはまさに最強だ!
「でも、希はアイドルなんだからほどほどにしとけよ?」
「え~アイドルとプライベートは全然違うじゃ~ん!」
「プライベートでなんかやらかしたらアイドルに響くだろう……」
「んーでもでも、カズくんとの時間は絶対なくしたくない!」
これは私の本心だ。
例え仕事でいくら疲れてても、時間が遅くても、失敗しても、絶対カズくんとの時間は作る。
私にとってカズくんとの時間は、幸せと感じられる貴重で希少なひと時だ。
仕事でうまくいったときは一緒に喜んでくれる、失敗したら精一杯慰めてくれる。
そんな人がいれるだけで私は頑張ろうと思える。
だから、カズくんとの時間は絶対になくしたくない。
「……俺も一緒だよ、希」
「カズくん……好き!」
そう言って私はもう一回カズくんとキスする。
あぁ……何かこれ、ハマっちゃうかも……
そう感じさせるくらい、カズくんとのキスは甘い。
「希、その……」
「ん、なに?」
カズくんはキスを一旦中断させると、少しはにかみながらも優しい表情で、
「大好きだよ、希」
今日一番カズくんにドキッとした、そんな瞬間でした。
久しぶりの甘々、難しかったけど面白かったです。
是非是非読んでみてください!←これはあとがきですよ?
今回もお読みいただきありがとうございました。