やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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ハチマン15歳、Lv.3の時の『偉業』です。


Lv.4到達!

その日は雨が降り注いでいた……。

オラリオに来て早3年。俺はLv.3……第二級冒険者として日々ダンジョンに潜る生活をしていた。

【ロキ・ファミリア】の中でも第二軍に仲間入りした俺は、遠征でも最前列に駆り出されることも多くなり、少しずつ強さというものが身に付いてきた頃だ。

少しずつ闇派閥(イヴィルス)の動きも活性かしてきていて、闇討ちなんてざらにあった。大体はLv.1、2が数人だったから楽勝だったが。

しかし、今日は違ったらしい。

朝からダンジョンに潜り、中層から下層へと向かっていたときだ。

物陰から数人の男達が出てきたのだ。

 

「おい、お前【ロキ・ファミリア】の【闇王子(ダークプリンス)】だろ?」

「ついに見つけたぜ」

「ちょっと俺達について来てくれるかな?」

 

人数にして10人。

そして問題は……立ち振る舞い、隙のなさ、身に付けている防具からしてLv.3……いや、4であること。

(おいおい……これは戦力裂き過ぎだろ……)

ハチマンは心の中でぼやく。

そして少ししたあと、ハチマンは彼等に返答した。

 

「……すいません人違いです」

 

そう言って彼等から距離を取り始める。

一瞬ポカンと呆けた表情をした闇派閥の連中は、すぐに再起動してハチマンに近づく。

 

「え……いや、いやいやいや!お前だよ!?どう考えても!」

「人違いです」

「その黒い戦闘衣!腰に佩いてる白銀の剣!明らかに【闇王子(ダークプリンス)】だろうが!?」

「いえ、人違いです。これくらい被ってもおかしくないです」

「まあ、確かに……被ったりすることや似たりすることはあるが……」

「では、そういうことで」

 

ハチマンは小さく【悪夢(ナイトメア)】、と唱えて一目散に走り出した。

 

「「「……やっぱ本物じゃねえか!!?」」」

 

そしてその後を闇派閥10名が追い始める。

この場合、普通ならばハチマンは逃げ切れる。

理由は強化魔法【悪夢(ナイトメア)】を唱えていることもあるが、レアスキル『強者願望』によってすでにLv.3どころではないステイタスがあるため、並のLv.4からなら逃げることは簡単だ。

しかし、場所が悪かった。

ダンジョン内という閉鎖的な環境、その中でも中層という道が狭い空間、さらに中層から下層に行くという道が少なくなる場所。

結果的に追いつかれはしないものの、ハチマンは対策を考える。

(ちっ、場所が狭い。このまま逃げ切ろうと思っていたが、間違いなくこの先には少し広いルームか行き止まり、もしくは正規ルート……だが正規ルートは向こう側も知っている筈。もしも他に敵がいた場合、狭い道で挟み打ちというかなり厳しい状況に追い込まれる……)

そして決断する。

少しスピードを上げて今いる位置から一番近いルームへと移動することに決めたのだ。

 

「おい、アイツ少し速度あげたぞ!」

 

それに気付いた闇派閥の連中は、ハチマンを見失わないように同じほどスピードを上げたのだった。

 

 

***

 

 

ルームに着き、中心部分まできてからハチマンはその場に止まり、振り返る。

 

「はぁ、結局こうなるのか……」

「当たり前だろうが!俺達はオラリオを滅ぼす者!」

「若い芽は早めに摘んどくんだよ」

 

ハチマンは今の現状にためいきをつき、闇派閥はハチマンを消しにかかる。

事実、闇派閥の作戦は良いものだった。

最強格の第一級冒険者を狙うよりも、第二級、三級のこれから強くなる、将来有望な者を殺していった方が後あと楽に違いない。

今、オラリオでもっとも飛躍、成長が期待できる存在はハチマンである。

【ロキ・ファミリア】であることもさながら、三年でLv.3に到達、しかもLv.2に上がったのは過去最高の六ヶ月という驚異的なスピードだ。

Lv.2の時にソロで『ゴライアス』を倒したのは有名な話だ。

それらを総合的に見てみれば、闇派閥が一番に消さなければならない存在はハチマンと言ってもおかしくはない。

 

「……【悪夢(ナイトメア)】」

 

今一度魔法を唱え、鞘から白銀を抜き、戦闘態勢を整える。

10人いる闇派閥もそれぞれが得物を構え、隙を窺う。

そうして数分が経過した頃。

先に仕掛けたのは闇派閥だった。

 

「おらッ!」

「ッ!」

「もらった!」

 

槍を持った男が走りながら突きを放ってくる。

ハチマンは回避に成功するが、すぐに次の攻撃が来る。

Lv.4、10人による波状攻撃。

魔法をかけた状態のハチマンも防戦一方、攻めることが出来ていない。

(くそっ、カウンターを狙いに行っても必ず途中で別の攻撃が来る。今のところは全て防げているが、そのうち魔法とか使われてきたら面倒になる……その前に少しでも多くの人数を倒さないと……)

悪夢(ナイトメア)】による強化と自身のステイタス、そして技と駆け引きによって全ての攻撃を掻い潜り、少しずつではあるが反撃をしていくハチマン。

そんな膠着状態が続く中……闇派閥が仕掛ける。

 

「……【火よ、炎よ、燃えさかる景色よ】」

「くっ、させるか!」

「おっと、詠唱は邪魔させねえぞ」

「邪魔だ!」

 

ついに魔法を行使し始める。

ハチマンとしては詠唱が完成する前に潰したいところだが、人数をかけてそれをさせない闇派閥の男達。

そして、詠唱が完成する。

 

「【炎の槍】!」

 

魔法発動に合わせ、すぐさまハチマンまでの道を開ける闇派閥。

(……かわせる、が、かわした時の隙をつかれたら必ず攻撃を食らう。……やっぱ受け止めるしかねえな)

周りの位置、自身の場所、魔法の威力などを瞬時に考察し、最適解を導くハチマン。

 

「うおお!」

 

白銀に【悪夢(ナイトメア)】の効力を纏わせ、相手の魔法の正面から受け止めに行く。

思ったよりも威力が強い魔法に、少しだけ拮抗する時間が出来てしまう。

 

「今だ!」

「ッ!」

 

その一瞬を狙い、ショートナイフを使う男が特攻を仕掛けてくる。

なんとかかわすハチマン、だが。

(……!まずい!)

続けて時間差で襲ってきた小型剣の攻撃を避けることはできず、右胸の部分から真っ直ぐお腹辺りまで切り裂かれる。

 

「ぐぅ!」

 

魔法を消し飛ばし、出来る限りの攻撃を避けてきたハチマンだったが、ついにここでダメージを食らう。

さらに。

(なんだ?体がいきなり重たくなって……!)

斬られた跡から体の動きが鈍くなっている。

 

「……まさか!」

「ふははっ、そうだ、気付いたな?そうさ、呪詛(カース)だ!先程の小型剣は呪詛武器(カースウェポン)だったのさ」

「……ちっ!」

 

闇派閥の者が使う武器、呪詛武器(カースウェポン)

闇派閥はどこから手に入れているかは不明だが、この呪いをかける効力をもった武器を使っているのは恐ろしい事実だ。

(長期決戦は無理だ……時間が立てば立つほどにこちらが不利になって行く)

それは駄目だ、とハチマンは己に言い聞かす。

 

「……諦めろ、お前は死ぬべきなんだ」

「そうだ、素直死ね!!」

 

闇派閥は好機とばかりに果敢に攻めかかってくる。

だが、ハチマンは動じなかった。

(頼むから持ってくれよ、俺の体!!)

そして、唱え始めた。

勝利のための歌を、必殺の呪文を。

 

「【我は闇と同化する者なり、我は闇を従える者なり】」

「詠唱し始めた!唱え終わる前に潰せ!」

 

闇派閥も魔法にかける精神力の大きさ、魔力の大きさから危険だと判断し、速攻でハチマンを殺しにかかる。

だが、ハチマンはうろたえなかった。

白銀をもって敵に斬りかかりながら牽制し、詠唱を次々に進めて行く。

 

「【我は闇を得た者なり、我は闇を知る者なり】」

 

『並行詠唱』。

魔法剣士ならば必須のスキルであり、攻撃、防御、回避、詠唱の四つの動作を同時にをこなしているのは、Lv.3のなかではハチマンしかいないだろう。

それくらい、神技に近いスキルなのである。

 

「お、おい、これ、まずくないか?」

 

闇派閥は懸命にハチマンを殺しに行くものの、全てかわされ、防御され、終いには反撃までされる。

10人という人数をかけながら、未だに殺すという任務が達成できていない。

しかし、ハチマンにとってはそんなことどうでもいい。

とりあえず仕掛けてきたから返した……のような感じだ。

 

「【我は闇を操る者なり、今、我は力を振るう】」

 

詠唱が完了し、地面に黒色の線が描き出される。

それは10人全員の足もとに展開され……。

 

「【闇影(ダークシャドウ)】……!くたばりやがれ!!」

「「「ぐわあああああああああああッッ!!?」」」

 

全員を闇の炎に巻き込み、全員を倒すことに成功したのだった。

 

 

***

 

 

その日の内にハチマンはギルドに闇派閥10名を拘束した状態で受け渡した。

呪詛の影響と斬られたこと、そして精神力の消費により二日間は寝たきりになってしまった。

そして、復帰してロキにステイタス更新を頼んでみれば……。

 

「ハチマンLv.4キタァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

こうしてハチマンはLv.4へと至ったのだ。

 




うーん、、駄目だな。
最近一切書いていなかったからかあんまりおもしろくない。
次こそ!

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