俺たちは村で使えそうなものを見つくろい、オラリオへ向かおうとしたのだが………。
「俺ら道わかんないよな」
「日記には書いてないの?」
「書いてないんだ。『頑張れ!』とかしか………ってなんで書いてあるんだよ。しかも親父の字っぽくないし」
「ふーん…………ま、コマチ的には願ったり叶ったりの状況だからいっか」ボソ
「ん?なんか言ったかコマチ?」
「なんでもなーい。さ、早くオラリオ探しの旅に出よう!」
「そうだな」
ここでちょっとしたステイタス(持ち物)紹介です。
ハチマン・ヒキガヤ 12歳 男
持ち物 黒龍の一部、果物ナイフ、五郎の日記
コマチ・ヒキガヤ 9歳 女
持ち物 果物ナイフ、本(魔道書)
***
二人が旅に出て少しした時だった。
「お、お兄ちゃん!ゴブリンだよ!」
モンスターが現れた。
モンスターとは古来より、たびたび世界の人々の生活を陥れてきた存在である。
『迷宮都市オラリオ』に存在するダンジョンと呼ばれる地下迷宮ががモンスターの発生源で、今では外に出られない仕様になっているが、遥昔よりあふれ出続けたモンスターが全滅するはずもなく、世界の至る所でその姿を目撃することが出来る。
そしてモンスターと遭遇した一般人はほとんどの場合、死ぬことになる。
………常人ならばの話だが。
「ちょっと待ってろコマチ」
そう言って、ハチマンは戦闘を開始した。
***
「ふっ!」
「グギャ?!」
戦闘はすぐに終了した。
ハチマンの圧勝である。
実は冒険者であった両親(親父)からたびたび鍛えられていたからか、一撃でゴブリンを沈めた。12歳の神の恩恵を受けていない少年が。
これははっきり言って異常なことだ。
「ん?お兄ちゃん、なんか落ちたよ」
「魔石だな」
魔石とはモンスターを倒した時にモンスターが落とす鉱石のことだ。
だが、ダンジョン以外の場所では魔石が落ちにくい(繁殖を卵で行うから)ため、結構手に入りにくい。
「ラッキーだったな」
「うん」
二人は旅を再開した。
***
その日の内に二人は20キロの距離を歩き、野宿をするために手頃な洞窟の中に身を置いていた。
途中でたびたびモンスターが襲いかかってきたが、すべてハチマンが倒した。
「今日は疲れたぁー!初日でこれとか………ほんと参った」
「まあ、結構歩いたからねー」
「あ、そうだコマチ。お前本二冊ほど持ってなかったか?一冊貸してくれ。読みたい」
「いいよー」
コマチから本を受け取ったハチマンは早速その本を読み始めた。
タイトルは【モンスターでもわかる魔法読解書】だった。
…………なんか胡散臭い気もするが、まあ読んでみないとわからんよな。
…………タイトルがあれなのに中身は結構しっかりしていてムカついた。
さらに頁を捲っていると、その内不思議な感覚に包まれた…………。
『じゃあ始めよう』
え?俺の声、だよな。
『俺にとっての魔法とはなんだ?』
―――――――力だ。全てを消し去ってしまうような巨大な力。
『どんな力だ?』
―――――――力、か。俺にとっての力は……闇だな。
『闇?』
―――――――ああ。真っ暗な闇。なにがあっても揺るがない闇だ。
『おもしろい。その力、無駄にするなよ?』
***
「ちょっと、ちょっとお兄ちゃん!」
「ん、どうしたコマチ」
「いや、お兄ちゃんがいきなり気を失ったのが悪いんでしょ?!」
あ、俺気失ってたのか。
さっきの不思議な感覚もなくなっていた。
だが、何故か力が湧いてくる。
と、そこへ………
「グギャ」
ゴブリン登場。またお前かよ。
早く倒してしまおうと近づいて行ったら……
「グギャ」「グギャ」「ギャ」「グギャギャ」「グギャ」「グギャ」
なんと総勢7体ものゴブリンがこっちにくるではありませんか。
「お、お兄ちゃん。早く逃げよ!戦ったらいくらお兄ちゃんでも死んじゃうよ!!」
確かに数は武器だ。だが、すでに接近を許してしまっている。
ここから逃げ出すと片方は死ぬだろう。
『その力、無駄にするなよ?』
こんなときにさっきの言葉が俺の脳内を駆け巡る。
意味はわからない。だが、どうすればいいかはわかる。
「コマチ、ちょっと離れてろ」
「お、お兄ちゃん?!まさか戦う気!?や、やめて!コマチはお兄ちゃんに死なれたら………死なれたらぁ!!」
「はぁ、ったく」ナデナデ
「お、お兄ちゃん?」
「見てろ」
自分でもわかるほど笑みを浮かべた俺はついに力を開放する―――――――――――
「【
それを口にした瞬間、全身から力が湧きあがるのを感じた。
これが、俺が求めた…………闇の力なのか。
「グギャギャ!」
ゴブリンの一匹が俺に向かってくる。
俺はぶん殴ろうと腕を振り上げた。
すると、俺の腕に巻きつくように
その瞬間、ゴブリンはあとかたもなく消えてしまった。
俺は殴ったからか感じ取ることが出来た。
俺がゴブリンの体に触れた瞬間、ゴブリンが塵と化したのがわかった。
その後、俺は残りのゴブリン達も同じように殴り、ゴブリン達は皆塵と化していった。
「お兄ちゃん?!その右手にまとわりついてるもやは何!?」
「お、落ち着けコマチ。こんな時こそ親父の日記の出番だ」
「た、確かにお父さんの日記になにか書かれてるかも」
***
てなわけで発見しました。
「なになに…………『異能が発現したらだいたい魔法だ。スキルとかもあるが、スキルは神様に恩恵を与えられないと使えない。ま、魔法が覚えられたら俺たちヒューマンにとってはラッキーだって覚えとけよ』か」
やっぱり俺は魔法が使えるように………。
ヤ、ヤベエ。今になってだがめっちゃ興奮してきた。だって魔法だぜ?そんな本でしか呼んだことなかったものが今、自分に!って考えると興奮してくる。
「コマチ。お兄ちゃん、魔法が使えるようになった」
「す、凄いよお兄ちゃん!!コマチ、魔法を生で見たの初めてだよ!」
今夜は眠れないだろうな。俺ら、テンションあがりすぎてるし。
明日からが楽しみだ。
悪夢(ナイトメア)
自身に闇の力を纏わせたりすることが出来る。補助魔法に該当する、のかな?
闇の力を攻撃、防御、スピードなど様々な力に変換したり、纏わせることが可能。
アイズの【エアリアル】の下位互換(今はまだ)