やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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ガレスと鍛錬

コマチとデートをしたその翌日。ハチマンは黄昏の館の中庭にてガレスと模擬戦をしていた。

要するは前にハチマンが頼んだ鍛錬を行っているのだ。

無論、ハチマンは太刀を持ち、ガレスは武器なしだが。

 

「ぐっ!」

「甘い」

 

ブッ飛ばされるのはハチマンである。

それもそのはず。この世界中でトップクラス、オラリオでも屈指の強さを誇る第一級冒険者。その一人と模擬戦を行えば、我らがハチマンでもブッ飛ばされるのは道理だ。

 

「くそ!」

 

ガレスに対し太刀で斬りつけようとも、白刃取りされてしまう始末。普通の拳ならばなんとかかわしきれるものの、連続で放たれる拳に次第に追い詰められふき飛ばされる。

 

「手加減しているとは言え、儂の拳をかわしとる時点でLv.1どころじゃないじゃがな」

「なんか言いました?」

「いや、なんでもない。ただの独り言だ」

 

ガレスの言うことは間違いではない。第一級冒険者の拳を手加減されているとはいえ、避けることが出来ているハチマンが異常なのだ。もちろん【悪夢(ナイトメア)】を使ってのことだが。

 

「次、行きます!」

「おう、どんと来い」

 

ハチマンはまた、ガレスに向かって走り出した……。

 

 

***

 

 

「………気絶したようだな」

 

ガレスは呟く。その足元にはハチマンが倒れていた。

あの後何十回もガレスがブッ飛ばしてはハチマンが起き上がり、また向かってくるというループが行われたが……さすがにハチマンの方に限界が来たらしい。

 

「だがやはりこやつは……鍛えればこの世界最強となるやもしれん」

 

ほぼ確信した口調でガレスは呟く。

少し前に手合わせした時よりも格段に強くなっているハチマン。

 

「技術の習得速度が尋常じゃない」

 

ガレスが色々な体術を使い、ハチマンを倒していく中、ハチマンもそれを見て学習したのかそれを真似て仕掛けてくる。

もちろんすぐ出来るわけではないが……5回繰り返せば自らのものにしてしまう。

 

「しかもそれを組み合わせて仕掛けてくる。12歳という歳でこの頭のキレ……いずれフィンに並ぶだろうな」

 

長年付き添っているフィンに並ぶと思わせる頭の回転の速さ。

こいつはいずれ大成するという確信がガレスにはあった。

 

「そのせいかついついブッ飛ばしてしまうわ」

 

秘めたる才能に触れたからか、どうも力の加減を忘れてしまう時があるガレス・ランドロックであった。

 

「さて、ベットにでも運んでおくかの。まだ昼前だから続きは昼過ぎからでもやるとしよう」

 

屈強なドワーフはハチマンを抱き上げ、ベットへと運ぶのだった。

 

 

***

 

 

「………ん」

「目が覚めたか」

「……俺は気絶してたんだな」

「儂がつい力を込めてブッ飛ばしてしまったからな。悪かった」

「いや、力を上げてもらいたいぞガレス。その方が俺としても助かる」

「……そこまで強さを追い求めとるのか」

「ああ。俺は強くならなければならないんだ。もう失うのは嫌だ………でももう無茶はしないよ」

「!」

「コマチとも、アイツとも約束したし、さすがに無茶はしないように心がけてる」

「……?ハチマン、アイツとは誰だ?」

「……ガレスは【ヘファイストスファミリア】の客間に飾ってある剣ってわかるか?」

「ああ。神ヘファイストスが下界に降り立って初めて創り出したと言われる……なるほどのぉ」

「あ、わかったか?その剣の人格が俺を気にいったらしくて」

「……それで椿が興奮しておったのか。合点がいったわい」

「椿って誰だ?」

「【ヘファイストスファミリア】の団長だ。儂の専属鍛冶師でもあるが」

「凄いすっね」

「無理やりさせられただけだ」

 

ガレスは思い返す。椿の武器を使った自分がそれを壊し、それを見た椿が「お前に壊せぬ武器を作る」とかなんとか言って無理やり契約を結ばさせられたことを。

 

「さて、そろそろ昼飯の時間だな。歩けるか?」

「おう」

 

ハチマンはベットから出て立った。ブッ飛ばされ続けたため身体が悲鳴を上げるが……それでも立つ。

それを見たガレスは笑いながら、

 

「その様子だともう今日の鍛錬は無理なようだな。また今度の機会にやろう」

 

と言い、

 

「うっす」

 

とハチマンも返した。

 

 

 

***

 

 

「どうだいガレス。ハチマンの調子は?」

 

昼食が始まり、食べ始めたガレスに声をかけたのはフィンだ。

フィンもハチマンの鍛錬には付き合ってやるつもりなため、どのくらいなものか事前に知っておきたかった。

 

「あれはそうとうなものだぞ」

「やっぱり?」

「ああ。儂の技をすぐに盗み……さらには強化してしまうぞ」

「それは……本当に逸材だね」

「そうじゃな」

「……ハチマンは、いずれ英雄の道を辿る運命にあるのかもね」

 

フィンとガレスはテーブルでコマチと仲良く食べるハチマンを見ながら、彼の行く末を楽しみにするのだった。

 




短かったね。

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