オリジナル作品です。
━5━
「...」
重く分厚い沈黙が伸し掛る。青禄の俯く姿につられて視線が下に落ちてしまう。
落ちた視線の先に、青年が映る。本当に細く、しかしその腕や足、身体にしなやかな筋肉が付いているのだろう。覗いた肌に薄く筋が見えている。モデル体型とは青禄の様な人のことを言うのだろう。
視線は無意識に下へ下へと更に落ち、最後には青禄の足元へとたどり着いた。
そしてそこで、再びあの違和感が襲う。
彼の立ち姿は端正な顔立ちに並び、とても綺麗だ。しかしそこには無類の違和感が立ち会っている。
第一に、彼の綺麗すぎる顔や姿は凡そ人とは思えないほどの美しさ。もはや芸術だと言ってもいい程だ。そして、彼女のことを知っているのが当たり前のような口調で話しかけてきて、彼女の学校に来て彼女に会っている。ストーカーの様なものなら待ち伏せをして後を付いてくることも出来る。実際に、学校に入ってからはイヤホンをしていたため物音などは遮断されていた。学校からつけていたなら、尾行の可能性は充分に考えられる。しかし、いつもと投稿する時間が違うのに、待ち伏せなど上手くいくのだろうか。
どちらにしろ、無理矢理に理論付ければ可能だ。しかし、どうしても証明出来ないことが二つある。
一つはあの勢いよく閉まった扉だ。そして音もなく閉まっていた鍵。非科学的で、人知の域を超える。
そしてもう一つは━━
彼女が視線を上げると、そこには先程と変わらずに青禄が立っていた。違うところは、水浅葱の瞳から光の消え、不敵な笑みを浮かべ、こちらを見つめている事だった。
「っ!?」
一刻前までの穏やかな表情はどこかへ、代わりに殺気立った気味の悪い雰囲気が漂っている。
「...どうされました」
「いや...」
ここで弱気になれば喰われると、彼女はあくまで落ち着いた振りをして見せた。
「質問は以上ですか?」
青禄の持っている臙脂の本に皺が走った。
彼女はその事に動揺しながらも彼を見据える。質問をしなければ、そんな気がした。しかし、これを聞いても良いのだろうか。これを聞いてしまえば、何か、何か不吉な気がする。本能が警告を鳴らしているような気がする。
それでも、と拳を握りしめる。
「...最後に、聞きたいことがある。正直に答えて」
「...私は今までも正直に話していたつもりですがねぇ...」
冷や汗が額から目尻へ、目尻から頬へ伝って落ちる。絞り出すような声で、自身でも驚く小さな声で、それを聞いた。
「あなたは...あなたは、本当に人間なの...?」
━━証明出来ないもう一つの違和感。
それは、外套の裾から顔を出した靴らしきものが、地から数センチ浮いている事だ。
臙脂の本が、音を立てて落とされた。
閲覧ありがとうございます!いよいよ文体がぶれてきました。やばいですね(笑)
頑張って1日1話ずつ投稿していきたいのですが、なんか無理そうなので、できる限りでやっていこうと思います!
サクサク更新目指して頑張る!
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