戦闘支   作:アオコ

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―お前は誰で、ここは一体どこなんだ?―

オリジナルです。


<第三幕> 二節

「主!!」

部屋を出ると、そこに待っていたのは、従者を連れ、人の姿に戻った竜の氏と、白兎だった。

「白兎、竜の氏」

 奏は、二人にまた会えたことに安心した。

「あれ、そういえば竜の氏はいつの間にもどっていたの?」

 その質問に竜の氏は顔を逸らした。

「…あの時、服を山へおいて行ってしまったので…」

 白兎が吹きだした。

「では、参りましょうか」

 白兎の連れていた白髪の老人に連れられ、建物の階段を上る。

 螺旋状になっている階段は、最上階に続いており、ところどころにある窓から木のてっぺんを眺めることができた。

「どこにむかっているの?」

 白兎に聞いたはずだったが、奏の問いに答えたのは先頭を行く老人だった。

「議会室ですよ。上で待っているのは長官のみですが…着きました」

 老人が戸を四回叩くと、扉は開かれ、そこには玄関門と同じくひれ伏す人々がいた。

「わたしはここまででございます」

 老人が脇によけ、礼をする。

「…あなたは入らないの?」

 奏の純粋な問いに、老人は目を細めた。

「…大変、初お方でいらっしゃる。よい主を選びましたね、卯の子様」

「…ありがとう」

 照れているのか、白兎は微妙な顔をした。

「さ、早くお入りなさってください。長官たちがお待ちです」

 奏は長官たちが道をつくるその先を見た。階段状になっているその上には王座なのだろうか、大きく、そして細かな装飾が施された椅子が一つおいてあった。

「主、まだ階段を上ってはいけないので、その手前で止まってください」

「うん…」

 奏が歩くたびに、部屋に足音が反響する。それに緊張感が煽られ、鼓動の音が聞こえていないか心配になった。

階段の前に着き、長官たちの前に立ちその姿を見る。せいぜい十人ほどの、男と女が混ざったその面々を見渡す。

「表をあげよ!」

 白兎の透る声で、布切れの音とともにそれぞれ顔を上げ、奏に視線が集まる。

「第二支国、旧名、令国。我が国に新しい国主が帰国なさった!まだ天生はなされていないが、天命を受けたことは確かである。故に、これからはこのお方が主上である!」

 長官たちが再び頭を下げた。

その場の主役であるはずの奏は一言も、何も言えず、ただ白兎の隣で緊張していた。

議会室を出たころには、奏の疲労は限界まできていた。

「白兎、ねぇ」

「どうされました?」

 元気のない声に、心配そうに顔を覗き込む。

「少し、疲れたみたいで…休まない?」

「お疲れなら、少し横になるとよいでしょう」

 竜の氏の言葉に白兎も頷いた。それに気づいた老人がそれなら、と道案内をする。

「主」

 老人について行こうとする奏の足を止めたのは竜の氏だった。

「…何?」

 見れば、竜の氏がおぶされとでも言いたいのか、屈みこんでいる。少し恥ずかしい気もしたが、疲れた今ではありがたい。

「…ありがとう」

 その背中にのしかかると、竜の氏は軽々と立ち上がる。

「重くない?」

「私が主をこちらまで運んできたのですよ」

 少し口調が尖っていた。

「…そんな主は、とても軽いですが」

「ふふ、ありがとう」

 竜の氏の背中は意外と大きい。体もしっかりとしていて見た目以上の力があるのだと納得できる。背中からはひと肌と、心地よい振動が伝わってきて、奏の疲労困憊の体に止めをさした。

「これからたくさんやることがありますよ。そのまえに、主はもう一人の支に会っていただかなくてはいけませんね。そうしないと…主?」

 白兎の弾んだ声は奏に届くことなく流れるだけになった。

「…お休みになられている」

「この話はまた明日になりそうだな」

 竜の氏の背中では、奏が一定のリズムで寝息を立てていた。

「…このお顔を見ている限りでは、普通の少女にしか見えないのになぁ」

 竜の氏の呟きに、白兎の顔がゆがんだ。

「本当にそうならいいのだがな…」

 

「…ここは?」

 奏の立つ場所には、明かりが一切なかった。

「暗い…のに」

 自分の姿は見える。

 どこを行くでもなく歩きはじめる。すると、遠くから、太い声が聞こえてきた。

「…主―っ!!どこにおられる!!」

「誰かいるのか!?」

 その声のした方向に向かって叫ぶが、返事がない。再び同じ声が聞こえる。

「主―!主―!!」

 その声が近づき、足を止める。

 だんだんと大きく、はっきりとなる声に、物言えぬ恐怖を感じた。

 そしてその声は、耳元まで来ていたのだ。

「主!!」

振り向いた瞬間に視界に色が戻る。同時に肩に痛みが走り、そこを抑えた。ぬるりとした手のひらを見ると、そこに広がっていたのは自身の血。

「主!!」

「!」

 声のした方向を見ると、傷だらけの男が奏を見つけ、走ってきていた。

「…ここは」

 周りを見渡せば、家々の焼けた跡や、転がる死体。どこかの軍旗らしきものがあった。そして奏自身は、剣を握りしめ、革でできた厚い鎧を身に着けていた。

「主!!」

 はっ、と顔を上げれば、男は目の前まで来ており、何かを言っている。

 しかし、だんだんと視界はぼやけ、体を動かそうにも動かない。男の声が遠くなっていく。

 「…お前は」

 お前は誰で、ここは一体どこなんだ?

 そう言い終わる前に、奏の意識は飛んだ。




こんばんは、アオコです。
昨日は体調がすぐれなくて投稿を断念した代わりにずっとソシャゲしてましたすいません。許してください、何でもするんで(何でもするとは言ってない)
そして、今日から数日間、少し予定がたて込みパソコンを触れないので続きを投稿できません。無念!!
勉強もしなければいけないというのに、ナンテコッタイ
と言う訳で、今回も閲覧ありがとうございます。次回も見てくれよな!

誤字脱字報告は遠慮なく!!

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