オリジナルです。
竜の降り立った場所は、大きな宮殿のような場所の入り口だった。
門番らしき男二人は、こちらに気が付いたのか、近寄ってくる。その眉間にはしわが寄っており、明らかにこちらを訝しんでいたが、竜を見たとたんにその表情を変えた。
「卯の子様、竜の氏様!」
そして、二人の男は膝をつき、こうべを垂れた。
「うん、今帰った。門を開け、宮女を呼んでくれ」
「はい!」
短い返事の後、男たちは走り去り、しばらくして厳かな門が開いた。
門の内側には、叩頭する人々が道の両脇に並び、花道をつくっていた。
「さあ、行きましょう主」
「え、ここを?」
奏は花道を嫌そうに見た。
「気圧されてはいけません。ここは国主として堂々としていてください」
「わ、わかった」
門をくぐり、花道を進むと、一人の女がかけてきた。
「卯の子様、竜の氏様!おかえりなさいませ!」
女は奏たちの目の前で叩頭し、すぐに立ち上がった。
「我ら国民はあなた方のお帰りを心待ちにしておりました」
「歓迎ご苦労。着替えを用意してくれ。私と竜の氏、このお方の分も」
「かしこまりまして」
女はすぐ建物の中へ走りだし、見えなくなってしまった。
「では、こちらです」
白兎は落ち着いた様子で建物内を歩いていく。
「白兎?」
「なんですか?」
後ろを振り返った白兎は足を止めた。
「ここどこ?それに、白兎のたちのこと、皆敬ってるみたいだけど」
きょとん、とした後に、白兎は笑いだす。
「あたりまえじゃないですか、どの国でも同じですよ」
「そうなの?」
白兎は再び歩き出した。
中華風の建物は、あまり装飾が派手でなく、そのかわりとても大きい。今通っている廊下も長く、通路は広い。白兎が通るたびにひれ伏す人々が端に避けやすいためにだろうか。
奏がきょろきょろとしながら歩いていたら、いつの間にか目的の場所に着いていたらしい。白兎が足を止めた。
「では、この宮女について行ってください」
「え?」
白兎の後ろには、二人の女が立っていた。そのうちの一人はさきほど出迎えていた女だった。
「わたくしはメイヤンでございます」
「フウレンでございます。先ほどお迎えに上がらせていただきました」
「あ、はい、覚えています」
二人の礼につられて、奏でも会釈をする。その様子に、白兎はクスリと笑った。
「では、メイヤン、フウレン、頼んだ」
「はい」
「白兎はいっしょじゃないの?」
奏の焦るような声に白兎が振り向く。
「私はあくまでも臣下です。御前と一緒とはいきません」
「えぇ…」
奏の溜息まじりの声に、白兎の眉が下がる。
「心配なさらずとも、命の危険がせまったときは、私がすぐ駆けつけます。では、私はこれで」
白兎がにこりと笑い、去っていく。奏は仕様がない、と肩を落とした。
「こちらですよ」
フウレンとメイヤンに連れられてきたのは、ひとつの部屋だった。がらんとしたなかに、ついたてが置いており、向こうで湯気が立っている。
「こちらでお召し物を御脱ぎになってください」
ついたての向こうには、寝台のようなものと、盥いっぱいに張られたお湯があった。湯気の正体はこれだろう。
「お体を清めましょう」
「え、ちょっとまって、清めるって!?」
「言葉の通りです。さあ」
「はあ!?」
抵抗する奏の服は、半ば強引にはぎとられ、結局思うが儘にされた。
「さあ、終わりましたよ」
「どうも…」
疲れ果てた奏を隅々まで拭いたメイヤンは、やりきったというような、満足げな表情をしていた。
「あんなに抵抗されるとは思いませんでしたよ」
「ははは…」
乾いた笑いが漏れる。
「では、こちらにお召替えを」
フウレンが奏を手招く。奏は半分あきらめ、フウレンが好きなようにしてくれ、と呟いた。
ついに第三幕突入!!
こんばんわ、アオコです。実はハーメルン以外にも小説は書いているのですが、こんなに長いものを書くのは初めてで、正直言うと結構スタミナがいるし大変・・・
短編のネタ小説や脚本とはまるで違いますね。
では、今回も閲覧ありがとうございました!次回も読んでくれよな!!
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