戦闘支   作:アオコ

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―うん、今帰った。門を開け、宮女を呼んでくれ―

オリジナルです。


<第三幕> 一節

 竜の降り立った場所は、大きな宮殿のような場所の入り口だった。

 門番らしき男二人は、こちらに気が付いたのか、近寄ってくる。その眉間にはしわが寄っており、明らかにこちらを訝しんでいたが、竜を見たとたんにその表情を変えた。

「卯の子様、竜の氏様!」

 そして、二人の男は膝をつき、こうべを垂れた。

「うん、今帰った。門を開け、宮女を呼んでくれ」

「はい!」

 短い返事の後、男たちは走り去り、しばらくして厳かな門が開いた。

 門の内側には、叩頭する人々が道の両脇に並び、花道をつくっていた。

「さあ、行きましょう主」

「え、ここを?」

 奏は花道を嫌そうに見た。

「気圧されてはいけません。ここは国主として堂々としていてください」

「わ、わかった」

 門をくぐり、花道を進むと、一人の女がかけてきた。

「卯の子様、竜の氏様!おかえりなさいませ!」

 女は奏たちの目の前で叩頭し、すぐに立ち上がった。

「我ら国民はあなた方のお帰りを心待ちにしておりました」

「歓迎ご苦労。着替えを用意してくれ。私と竜の氏、このお方の分も」

「かしこまりまして」

 女はすぐ建物の中へ走りだし、見えなくなってしまった。

「では、こちらです」

 白兎は落ち着いた様子で建物内を歩いていく。

「白兎?」

「なんですか?」

 後ろを振り返った白兎は足を止めた。

「ここどこ?それに、白兎のたちのこと、皆敬ってるみたいだけど」

 きょとん、とした後に、白兎は笑いだす。

「あたりまえじゃないですか、どの国でも同じですよ」

「そうなの?」

 白兎は再び歩き出した。

 中華風の建物は、あまり装飾が派手でなく、そのかわりとても大きい。今通っている廊下も長く、通路は広い。白兎が通るたびにひれ伏す人々が端に避けやすいためにだろうか。

 奏がきょろきょろとしながら歩いていたら、いつの間にか目的の場所に着いていたらしい。白兎が足を止めた。

「では、この宮女について行ってください」

「え?」

 白兎の後ろには、二人の女が立っていた。そのうちの一人はさきほど出迎えていた女だった。

「わたくしはメイヤンでございます」

「フウレンでございます。先ほどお迎えに上がらせていただきました」

「あ、はい、覚えています」

 二人の礼につられて、奏でも会釈をする。その様子に、白兎はクスリと笑った。

「では、メイヤン、フウレン、頼んだ」

「はい」

「白兎はいっしょじゃないの?」

 奏の焦るような声に白兎が振り向く。

「私はあくまでも臣下です。御前と一緒とはいきません」

「えぇ…」

 奏の溜息まじりの声に、白兎の眉が下がる。

「心配なさらずとも、命の危険がせまったときは、私がすぐ駆けつけます。では、私はこれで」

 白兎がにこりと笑い、去っていく。奏は仕様がない、と肩を落とした。

「こちらですよ」

 フウレンとメイヤンに連れられてきたのは、ひとつの部屋だった。がらんとしたなかに、ついたてが置いており、向こうで湯気が立っている。

「こちらでお召し物を御脱ぎになってください」

 ついたての向こうには、寝台のようなものと、盥いっぱいに張られたお湯があった。湯気の正体はこれだろう。

「お体を清めましょう」

「え、ちょっとまって、清めるって!?」

「言葉の通りです。さあ」

「はあ!?」

 抵抗する奏の服は、半ば強引にはぎとられ、結局思うが儘にされた。

「さあ、終わりましたよ」

「どうも…」

 疲れ果てた奏を隅々まで拭いたメイヤンは、やりきったというような、満足げな表情をしていた。

「あんなに抵抗されるとは思いませんでしたよ」

「ははは…」

 乾いた笑いが漏れる。

「では、こちらにお召替えを」

 フウレンが奏を手招く。奏は半分あきらめ、フウレンが好きなようにしてくれ、と呟いた。

 




ついに第三幕突入!!
こんばんわ、アオコです。実はハーメルン以外にも小説は書いているのですが、こんなに長いものを書くのは初めてで、正直言うと結構スタミナがいるし大変・・・
短編のネタ小説や脚本とはまるで違いますね。
では、今回も閲覧ありがとうございました!次回も読んでくれよな!!
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