オリジナルです
もうどれくらい時間が経ったか分からない。薄らと開いた瞼から暗闇が飛び込んでくる。今が何時なのかは分からないが、取り敢えず夜だということが分かった。重たい身体を起こし、やにやらで開かない目を擦り、無理やり目を覚まそうとする。どうやら熟睡していたようで、身体中が軋み、関節が鳴る。こんなに眠れたのはいつぶりだろうかと、ぼんやりと考える。
奏は、携帯を探そうと、暗闇を手探りで把握しようとする。その手になにか毛のようなものが指に絡まり、思わず手を引っ込めた。
「っ!!」
何かわからないそれをもう一度、手を伸ばし、今度は撫でてみる。先程はよく分からなかったが、それはふわりとした髪の毛で、少し暖かい。
━━ああ、そうか
奏は、今日起こったことをじわじわと思い出し、溜息をついた。その溜息は、決していつものような悩みからくるものではなく、敢えて言うなら安心感や、心地の良い疲れからついて出たものだろう。
ならば、ここにいるのは彼女しかいない、と優しく名前を呼んだ。
「白兎...?」
少しぼんやりとした声で呼ぶと、ふわりとした髪の毛が動いた。目が闇に慣れてきたせいか、シルエットはなんとなく分かる。そのシルエットはこちらに近づき顔や手などを触ってきた。どうしたのだろうと、もう一度頭を撫でるとシルエットは頭を下げ、もっと、というようにきゅうと喉を鳴らした。
「...主、夢では、ありませんよね?」
甘えてくる様子とは裏腹に不安に満ちた小さな声が闇に響いた。奏はその言葉が、自分が生きていることに対しての不安だろうと受け取り、自らの腹部を軽く押す。鈍い痛みが走り、あの痛みが嘘ではないということを確かめる。
「...大丈夫、私は生きているから」
そう言って頭を撫でると、シルエットは安心したのか、また喉を鳴らす。よかった、と、返事をするように。
撫でる手を止め、今度はスマホを探す。寝るときはいつも枕元に置いてあるはずだ。しばらく探すが、ない。帰ってきた記憶が無いということは、スマホだって触っていない。ならばカバンはあるはずだと、白兎が持って帰ってきていることを信じ、ゆっくりと足を下ろす。
まずは電気だろうと、ドアの方により、電気のスイッチを探す。
よたよたと歩いていると、何かを蹴った。なんだろうと思いはしたが、構わずパチリとスイッチを入れた。
明かりがつくと、いつもの変わらない部屋が現れる。パソコンにクローゼット、姿鏡、目覚まし時計...。いつもと違うのは白兎がいることや、恐らく白兎が着替えさせてくれたのだろう血濡れの制服が落ちているところだろう。制服のスカートの部分は焦げていて、上のブレザーとカッターシャツは半分から下にかけて、破れている。これは買い替える時言い訳なんて出来ない。
そしてもう一つ違う点があった。
先程蹴ったもの、それを見ると、そこには知らない男が雑魚寝ていた。
閲覧いただきありがとうございます!
やっと第二幕まで進むことができました。第一幕は本編の前置きみたいなものでしたが、第二幕はがっつり進みますので、期待しておいてください!嘘ですやっぱりしないで!!
一日遅れましたが、今日(?)はもう1本上げるのでゆるして!
誤字脱字報告ありがとうございます。これからも遠慮無しにご連絡ください。