そして少女は夢を見る   作:しんり

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第二話

 水谷響です。先日めでたく三歳となりました。

 お祝いもしてもらい、ケーキも美味しくいただいてもうそれだけでも満足です。美味しいものは世界を救うのです。半分冗談だけど。

 

 さて、そんな三歳児な私なのですけれど、前回よりレベルがあがっています。現在では魂レベルというのが15となり、バージョンもγ。接続レベルも55%となっています。

 結局その意味は何だったかと言うと、言葉にすると難しく、しかし自分としてはそんなもの、という感覚での理解となっているのですが。

 

 ともかくとして、バージョンと割り振っているものは、魂の今まで巡ってきた世界? 前世という記憶を掘り起こして無理矢理繋ぎ合わせて今の私へとインストールしているということだ。ただし、例外的に平行世界の向こう側の生きているそれに繋ぐこともできるらしい。まだやってないけど。

 バージョンアップしても、それまでのαやβはそのまま保管され、100%の接続度として存在している。

 かといって多重人格となるわけではなく、αのデータが私という根幹として下地、つまりはCドライブとかそんな感じの存在となる。

 そしてその中に必要な部分を裁定して上書きもしくは新しくフォルダを付け足すような形で保存される。

 裁定の基準は無意識下での選択なのでわからないですけど。自我は切り離してあるが、データとしてはある程度固めて置かれているようだ。

 

 魂拡張段階レベルがその容量の拡張で、魂レベルというのは出力するための電力の供給? を示すそうだ。レベルがあがれば、電力を流すためのコンセントが増える、みたいな感じ。

 で、バージョンの接続レベルというのが記憶などのダウンロード状況らしい。

 簡単に説明するとこうなるが、やはり自分でも理解はできていない。

 

 しかし、他にもいろいろ分かったことがある。

 まず接続先の設定について。周辺は前に説明した通りで、最近では少し範囲が広がったようではある。

 魂への接続については、自分とその他ランダムで他人の精神に繋ぐことができるらしい。ただ、抵抗力やら同調率やらよくわからないもので弾かれる方が多い。

 しかし、自分だけに繋げると、なんと体感時間の思考時間と、現実時間のズレが大きいことがわかった。つまりは高速思考と呼ぶべきものができる。

 予想では慣れれば並列思考もできないことはないはず。

 使えるかはわからないですけども。

 

 まぁだいたいこのような感じでした。そして新たにわかったのは、『接続』する先は魂だけじゃないというところだ。

 とはいえ、これはβの月の聖杯戦争に繋いでて気づいたことなのだけど。

 どうやら、この『接続』というのは、月でいえば私のそれはハッキングに近しいもの。でもそこには私を観測した結果のNPCがいたので、SE・RA・PHの目を誤魔化せたというわけです。そして記録はリセットされたりして途切れていたりするが、月の在り方やら電脳体を此方で応用するための方法もわかる。感覚的な理解でしかないので、説明は控えるが。

 

 ということで本題。

 要は外の前世の私というものを辿って、そこにある『電子的情報』を手に入れられるということだ。

 つまりどういうことかって、わからないことは何でもググれるってことですよ。まぁ私の見たことがある範囲に限って、という但し書きはつくのですけどね。

 現実世界じゃ三歳児なので情報を得るどころの話じゃないし。というか、にわか知識しかないので、原作の情報を少しでも得られるアドバンテージは大きいと思います。

 生存戦略という点でしかないけれど。赤ちゃんからのやり直しのような状態とはいえど、次の生で再びこの自意識が芽生えるとは思えないので、命は大事にです。

 

 他二つの接続に関しては……、はい。見てはならないものを見た気分になりました。

文字化けしていた方については夢殿に接続と今は表記され、それは魂のインストールが進んだことで得ることができました。言葉の通り人々の夢を渡ることができるというわけです。

 ……まぁ、波長が完全にといっていいほど合わなければ夢は見ないのですが、合う範囲の方が広すぎて、しかも結構遠い地域まで視えるため色々と嫌な気分になることはありますが。たまには綺麗な夢を見たいものです。

 だって本当、人の見てはならないものまでよく視えるものなので。それでも、見ないということはできないので、少しばかり不便に思います。

 

 最後の項目であった、世界に接続はまさか魔術師が望むものを垣間見ることになるとは思っていなかったです。いや、予感は当たったのだとは言えますが。

 これについては詳しく掘り下げる気にはなれないですね。

 だってたぶん、これってバレたら結構ヤバイのでは?と直感しました。

 抑止力が働いたのか繋いでいたのは数秒。もしかしたらほんの刹那だったのかも知れないけど、充分すぎたのです。

 

 ……お陰さまで何か妙に嫌な予感がする。それも近いうちにはこないくせに気づいたら嵌まってる意外と大きめの落とし穴的なやつ。

 あくまでも予感でしかないけども。気をつけようとは思う。けど、たぶんうっかり忘れてるんだろうなとは思ったりもしている。

 いつくるかわからないものを警戒できるか! できるのは四次と五次の聖杯戦争だけだよ! 五次なら特に日にちの確認だけはできるから!

 四次は始まりさえすれば予定は判りますからね。

 

 ……はぁ。とはいえ、四次も厳密には数年前くらいから用意されてるんだっけ。本格的に始まっても、この子供の足で災害から逃げられるはずはない。

 かといって死にたいというわけではないのだけど。

 

 所詮生き物というのは、死んでしまう時は呆気ないもの。生きるときは生きるし、死ぬときは死ぬ。運命なんて陳腐な言葉に収めるつもりはないけれど、でも何れ起こるべき事象なのだからその時は大人しく受け入れるべきだと、私は思う。

 私はあるがままを受け止めるつもりではあるけど、きっとそれを人は諦念と捉えるのでしょうね。

 

 諦めるつもりは、ないのだけど。

 

 母の呼び掛ける声が遠くから響いてきたので、殆ど一瞬でスイッチを切り替える。

 夢の中の私と、現実の私を切り替えて瞬く。

 

「おはよう、響。よく眠れた?」

 

 笑う母に頷きを返し、目を擦る。

 子供の情報をインストールして模倣する私に、彼女は疑念を覚えることなく機嫌よく笑っています。

 「お母さん」と母を呼ぶ部屋の入り口に立つ姉を見れば、着替えをすませてランドセルを背負っていた。

 七つも離れていれば、当然のことである。姉は10歳の可愛らしい子供だ。

 私は記憶のせい……いやおかげで、精神だけはオバサンのような気持ちになってはいるけど。

 何にせよ、姉がグレる気配がないのはいいことだ。ついでにいえば、小学校の服が、プリヤのような感じではないので限りなく原作に近そうなことに気づいてしまって落胆してしまったものだ。

 

 プリヤならなぁ……魔法少女たちというかカードの件に関わらなかったら平和そのものだったのだが。

 イリヤのことは好きだったので、勿論一度はその姿を見てみたいと思ったりしました。こちらでは割りと死亡フラグしかないので無理ですけど。

 ちなみに四次五次合わせてマスター陣営で好きなのは凛ちゃんです。精神的に強い女の子って憧れるよね。サーヴァントだと悩むけど、やっぱ赤弓さんかな。凛ちゃんとセットの赤色主従はほんと好き。ふぁてごで初めて手に入れた星4だったのも印象的なんだよな、うん。アニメのUBWも良かったです。あ、勿論EXの方の無銘さんもいいと思いますよ。

 でも五次の他のサーヴァントも好きですとも勿論。私がFateに入ったのって五次からだし。

 

 ごほん。また脱線している。これは私の悪い癖のようだ。

 

 母に着替えさせられてご飯を食べる。その間に姉はもう行く時間だと家を飛び出るように走っていった。

 私がもそもそとご飯を食べていると、二度寝してか慌てた様子の父がリビングに飛び込んできて母に軽く怒られている。

 勢いよく朝食を掻きこんで急いで出ようとする父だが、母が呼び止めた。そして慌てすぎてよろよろのネクタイを結び直してとびきりの笑顔で「いってらっしゃい」と言っている。

 そんな母に嬉しそうに父は「いってきます」と笑ってでもやっぱり急ぐように飛び出していった。姉とまったくそっくりな様子に父の慌ただしさが遺伝でもしているのかなとか下らないことを考えてしまった。

 

 そしてご飯も食べ終わった私は保育園に預けられ、母は復帰した仕事に行く。その帰りはだいたい6時ぐらいのようで、半くらいにはいつも迎えにきてくれる。

 なので私は大人しく保育園で積み木を積んだり周囲の子の遊びに引っ張られたりしつつ過ごす。

 どちらかといえば本を読む方が好きなのだけど、仕方ないよね。こればっかりは。

 

 昼寝の時間とかは夢というか、あちらに時間まで引きこもって前世で読んでいた漫画とか本とかを読んだり、たまに自分の状態を確認したりしているのは誰にも言えるわけのない話である。

 最近ではゲームも引き込めるようになったので更に趣味の範囲が広がってしまったでござる。古いのしかまだできないみたいだけど。その内増えていくようなので楽しみです。

 

 まだまだ自分の『チカラ』は完全に制御も理解もしきれてはいないが、中々楽しくなってきている。今の現状は、悪くはないものだ。

 たぶん後は友達を作ればいいんだろうけど、子供は……苦手だ。周囲から情報をインストールして事なきを得てはいるが。

 だから当たり障りなく仲良くしているのだけど、気疲れしてしまうので今のところ友達は遠慮したいと思います。まず精神年齢が合わな過ぎて辛いので……。

 


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