今回はかなり短めの番外編のバッドエンド二種類です。
ふわっとしてるけどグロいのかもしれない。
十話でもしライダー陣営が入ってきた時に結界が壊れたら
パキン、と何かが砕け散る音が聞こえた気がした。
その音は錯覚なのだと理解していたけれど、硝子が地面に落ちて砕け散ったように呆気なく脆く、結界が破れたのだと私の全身を駆け巡っていた魔力が訴える。
ギルガメッシュとバーサーカーの戦闘が結界を砕いたことで、その場で力を行使していた私にその反動が押し寄せる。
もしも戦闘が終わっていたのなら自らの意思で結界への魔力供給を切って事なきを得たのになぁ、と思考しながら自分の意思に関係なく体が地面に倒れたのを感じる。
「おい! マスター!」
心配そうな顔をして私の顔を覗き込んできたアンデルセンに、私は返事を返そうとした。
けれど意思に反して私の喉はひゅうひゅうと風を切るような音しか出なくて眉をしかめる。
……いいや、しかめようとした。
「お前……キャスターのマスター? って、どうした!? お前、血がっ!」
どうしてだろうか。全身が焼けるように熱くて、痛くて、苦しい。
それに少しも力が入らない。眼球を動かすことさえままならず、私の視点はアンデルセンを捉えたままだ。
彼の物言いたげな、不機嫌で、心配そうな表情を見ているだけだけれど、不思議とそれが落ち着きました。
だから、あぁ、私はこれから死ぬのだなと理解してどうにか乱れて千々になっていた精神を一纏めにして、切れかけた
『宝具、使ってもらえば良かったなぁ』
『……今さらだな……』
『うん。私の判断が遅かった。これには反省。……、それは私の自己責任だから……ねぇアンデルセン。親愛なる私のキャスター。お願いだから、そんな顔しないで』
ライダーのマスターが必死になって私の傷を手当てしてくれている声と音を聞きながら、私は夕暮れの中の美しい蒼を見ながら笑いました。……いいえ、笑ったつもりだ。
『僅かな間だったけれど、あなたとの生活は、とっても、面白かったよ。あなたは文句ばかりだし口が悪いしツンデレだけど』
『……うるさい』
『私は、アンデルセンがいてくれて、良かったよ。うん、いつかまた巡り会うことがあったら、面白いね』
蒼の向こうに、きらびやかな金の光が見える。
そして、遠いはずなのにその赤い瞳と目があって、そうして彼の王様の言いたいことを汲み取ります。
『楽にしてやろう』
彼は横暴で、優しい王様です。傍若無人でアンデルセンと私で遊ぶのが好きで、人を振り回してばかりですが……私なんかに慈悲をくれるんですから。
『……お前は、馬鹿で愚かで……』
『うん?』
『……どうしようもないほど、死と痛みに好かれる奴だな』
『そうかも。世界にそうあれかし、と願われてるのかもね』
『冗談を言え。……だが、あぁ。お前は』
金の波が、彼の背後で揺らめいた。
だから私は最後の力を右手に振り絞って、横に振ります。
ライダーのマスターの焦った声を聞きながら、アンデルセンとの最後の会話に耳を傾ける。
『俺のマスターだ』
最後の一瞬、ギルガメッシュのゲートオブバビロンから射出された槍がアンデルセンの頭を貫き、私の額を貫くまでのほんの刹那。
コンマの瞬間だったけれど、それでも私は感謝しました。
そうやって、言葉にしてくれたただ一人の人に。
痛みを思い、解放してくれた王様に。
私を助けようとしてくれた聖杯戦争で本来敵であるはずの存在に。
離れた場所で戦う夢の中で知り合った友人に。
異物である私を愛し慈しんでくれた家族に。
感謝を。
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ギルガメッシュの魔力供給源のあれ(五次直前くらい)
視界は朧に、けれど意識はその眩い人を捉えて僅かに残る器官を駆動させます。
殆ど無意識的ではありますが、精神も魔力不足のために半分以上休止させられているために致し方ないこと、でしょう。
今日はこうして思考できているだけまだマシ……なのでしょうか。
「くくっ、喜ぶがよい。聖杯戦争が再び起こるぞ」
上機嫌に何か、たぶんお酒だろうものを飲みながらギルガメッシュは嗤います。楽しそうに。愉しそうに。
恐らく頭に相当するだろう部分に負荷がかかった気がしました。自分の体なのにどこがどこなのか、さっぱり感覚がわからないのですが、そうだと思えばきっとそうなのでしょう。
「だから響。我は今までの貴様の献上を無駄にはすまい。これだけの魔力が満ちているならばエアも満足することであろう」
私の表面を撫でられているような感覚を覚えながら、ゆっくりと意識が拡散していくのを感じました。
結局王様が何を言っていたのか理解できないまま、機能停止している私は、また夢と現、いいやその狭間でもない何かに漂いながら息を続けます。
他の四次のバッドエンドの案
・舞弥か切嗣の射殺
・普通に災害で死亡
・ウェイバー君とのエアメールのやり取りかなんかでぽろっと存在が漏れてホルマリン漬け