艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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鎮守府の本格稼働が始まり、新海軍としての初陣が始まる・・・。


第5話「抜錨」

ーーーーー鎮守府・11:00ーーーーー

 

 

 

一通りの幹部艦娘と士官の挨拶が終わり、比良が再び指揮壇へ登壇する。

 

「それではこれより、部隊の編成を発表する。尚、霧島は秘書艦として私の補佐に回ってもらう。」

 

その言葉に、その場の雰囲気が変わる。

正式部隊としての初陣が始まるという事実に、全員の緊張が高まっているのだ。

 

「まずは第1艦隊から。編成はーーー。」

 

   第1艦隊

   ★空母  赤城

    戦艦  伊勢

    軽巡  由良

    軽巡  木曾

    駆逐艦 叢雲

    駆逐艦 響

 

   第2艦隊

   ★空母  加賀

    戦艦  日向

    軽巡  神通

    軽巡  阿武隈

    駆逐艦 時雨

    駆逐艦 夕立

 

   第3艦隊

   ★重巡  利根

    重巡  筑摩

    軽巡  川内

    駆逐艦 吹雪

    駆逐艦 初雪

    軽空母 鳳翔

 

   第4艦隊

   ★重巡  足柄

    重巡  羽黒

    軽巡  那珂

    駆逐艦 綾波

    駆逐艦 敷波

    軽空母 龍鳳

 

   第5艦隊

   ★軽巡  天龍

    軽巡  龍田

    駆逐艦 暁

    駆逐艦 雷

    駆逐艦 電

    駆逐艦 島風

 

   第6艦隊

   ★軽巡  阿賀野

    軽巡  能代

    駆逐艦 睦月

    駆逐艦 如月

    駆逐艦 卯月

    駆逐艦 皐月

 

「敵部隊攻略の主力は第1艦隊と第2艦隊。基本、第2艦隊には第1艦隊の後方支援及び、後詰めの役割をしてもらう。敵の規模によっては、2艦隊を合わせて連合艦隊としても動いてもらうことになるが、その判断は安住少佐に一任する。」

 

「私たちが旗艦・・・一航戦の誇り、見せてやりましょう。(上々ね♪)」

 

「流石に気分が高揚します。(ここは譲れません。)」

 

主力艦隊の旗艦となった赤城と加賀。

二人とも気合い十分のようだ。・・・・・・一人、心の中の台詞と反対になっているようだが・・・。

 

「第3艦隊と第4艦隊は鎮守府周辺海域の警備任務についてもらう。敵を発見した場合は、旗艦の判断で戦闘を許可する。いつ深海棲艦が攻め込んでくるやもしれんからな、重要な任務だ。よろしく頼む。」

 

「我輩が旗艦とな!・・・・・・カタパルトの整備はしっかりせんとな・・・。」

 

「姉さん、私もお手伝いします。」

 

警備という重要な任務に、気を引き締める姉妹がいる一方。

 

「戦場が!私を呼んでいるわ!」

 

「足柄姉さん、あの、落ち着いて・・・。」

 

意気込むあまり、前のめりになる姉と宥めようとする妹もいる。

 

「第5艦隊、第6艦隊には資源確保の為の遠征任務についてもらう。こちらも非常に重要な任務だ。派手な戦闘はないが、気を引き締めてのぞんでもらいたい。」

 

「戦闘に出させろっての・・・ったく。」

 

「うふふ~遠征でも遭遇戦の機会はあるわよ~。」

 

「いよいよ阿賀野の出番ね。うふふ♪」

 

「テキパキと片付けちゃいましょう。」

 

地味な任務に不満を感じる者もいれば、やる気に燃える者もいる。

 

「残りの者は予備隊として、訓練、演習に励んでもらう。が、状況により各艦隊の補充要員として動いてもらうことになるだろう。・・・・・・不満はあるだろうが、これも任務と思ってほしい。」

 

「あたしたちを予備隊に回すなんて・・・やっぱりクソ提督ね。」

 

「あ、曙ちゃん、そんなこと言っちゃだめだよ。」

 

「・・・・・・・・・ふんっ。」

 

「私たちも予備隊か~。赤城さんたちとまた戦えると思ったんだけどな~。」

 

「まあまあ、蒼龍。提督や少佐も、なにか考えがあるんだよ。」

 

予備隊への配属に、不満を感じる者、割りきる者。

様々な反応を示す艦娘達によって、場が少し騒がしくなる。

 

(艦娘をただの兵器と考える大本営だが、艦娘の身体は人間のそれとなにも変わらない。この、人と変わらない反応をみても、彼女たちを兵器と考えられるのか。・・・・・・腐っているな・・・。)

 

「皆さん、各々思うところはあると思いますが、今は私語は慎んでください。質問や意見等は後程受け付けるように手配しますから。」

 

比良が思考の渦に片足を突っ込んでいると、安住が騒がしくなり始めた艦娘たちに静かにするよう促す。

 

「安住少佐、ありがとう。では早速だが、大本営より海域攻略の指令が来ている。そのため、後程、作戦会議を行う。第1、第2艦隊は14:00に第1会議室へ集合すること。以上、解散。」

 

 

 

ーーーーー第1会議室・14:00ーーーーー

 

 

 

「さて、全員揃っているな?作戦会議を始めよう。安住少佐、頼む。」

 

「はい、提督。」

 

返事と共に、安住がホワイトボードに海図を張り付け、作戦概要を説明する。

 

「今回は、南西諸島方面へ進撃。同防衛線を突破し、南西諸島海域方面への進攻ルートを確保することが目標となります。」

 

続けて海図に丸印をつけ、指示棒を使って詳細を説明していく。

艦娘たちは静かに、時には相槌を打ちながら聞いていた。

 

「ーーー作戦の説明は以上ですが、何か質問や疑問、意見等あればお聞かせください。」

 

一通りの説明を終え、作戦に参加する艦娘たちに発言を求める。

すると、1人の艦娘が手を挙げた。

 

「第1艦隊所属の叢雲よ。1つ聞かせて頂戴。艦隊の編成についてなのだけれど、どうして本隊となる第1艦隊に戦力を集中しないのかしら?第2艦隊は基本的に支援ということになっているわよね。連合艦隊としての艦隊運用も前提にしているのなら、本隊に空母と戦艦を集中させた方がいいんじゃないかしら?」

 

叢雲の発言に、他の艦娘も追従する。

 

「たしかにそれは疑問ね。航空戦力の重要さはわかっていると思う、戦艦の火力もそう。わざわざ2つの艦隊の戦力を等分にしているのはなぜか、教えて貰いたいのだけれど?」

 

「艦隊の編成が下手くそっぽい?」

 

「ちょっと夕立、そんなこと言っちゃだめだよ。きっと何か考えがあるんだよ。」

 

その疑問も、もっともだというように比良と安住は頷く。

 

「たしかに、叢雲と加賀の疑問はもっともだ。通常であれば、本隊に戦力を集中するものだろう。なあ、少佐?」

 

「そうですね。しかし、これには狙いがあります。これまでの間、深海棲艦との戦闘は散発的で、こちらが追撃しようとすれば即座に反転、撤退するといった具合でした。これは単純に戦力差を感じての撤退と上層部は見ているようですが、驚異的な早さで陸地の目前まで侵攻した深海棲艦にしては、この状況は不気味です。私と提督は、この状況は敵の布石ではないかと危惧しているのです。」

 

「布石・・・ですか?・・・提督さん?」

 

由良の反応に比良は頷き、安住に続けるよう促す。

 

「最近の戦闘報告を見ていると、あることに気がつきます。それは・・・。」

 

「敵の深追い、だろう?」

 

安住の言葉を遮ったのは木曾だった。

木曾はすぐに目を伏せ、「すまない、続けてくれ。」と謝罪した。

 

「・・・ええ、その通りです。最近はどの国の戦闘報告を見ても、敵を深追いし過ぎる傾向にあります。もしもこれが、深海棲艦がわざとそうしているとしたらどうなるか。このまま敵を深追いすることが続いた結果、敵の取る戦法は予想できます。こちらをおびき寄せた後の、伏兵による強襲、挟撃。」

 

「・・・・・・まあ、そうなるな。」

 

目を閉じ、腕を組んで話を聞いていた日向が、当然だなというように相槌をうつ。

他の艦娘たちも、ようやくこの編成の意味に気づいてきたらしく、各々頷いている。

 

「伏兵による挟撃をされた場合に備え、それを押さえる保険として戦力を等分している、ということなのね。・・・やだ、結構いいじゃない、これって!」

 

「なるほど、両方に空母がいれば伏兵に空母がいた場合でも十分対処できます。・・・上々ね。」

 

「敵艦隊の編成によっては、水雷戦隊では厳しいことになるかもしれませんからね。」

 

「これなら、こんなあたしでもやればできるかも・・・!」

 

「・・・・・・ハラショー。」

 

ざわつき始めた場を鎮めようと、比良が大きく咳払いをする。

それに気づいた艦娘たちは途端に静かになり、姿勢を正した。

 

「まあ、諸君が気づいた通り、伏兵への保険の意味もある。それに加えて、戦闘で傷を負った者を後方へ下げ、控えている者と交代させるという狙いもある。」

 

それを聞いた艦娘たちは目を丸くした。

なんのためにそんなことを?という疑問が浮かんでいるのがよくわかる。

 

「戦争に犠牲は付き物だということは、よく分かっているがな。諸君は今日聞いた命令をもう忘れたのか?」

 

その言葉を聞いて、艦娘は「あっ・・・!」と声をあげて固まった。

比良の言葉に添えるように、優しい表情で安住も続く。

 

「出来れば誰にも死んでほしくはないと考えているんですよ・・・。提督も、私もね。」

 

静まり返った艦娘たちを少し眺めた後、作戦開始時刻が告げられる。

 

「出撃は明朝08:00。各員、それまでゆっくり休んで鋭気を養ってください。以上、解散。」

 

 

 

ーーーーー翌日、出撃ドッグ・07:50ーーーーー

 

 

 

「では、行って参ります。」

 

指揮艦に乗り込んだ安住が、敬礼する。

 

「おう、行ってこい。無事に戻れよ。」

 

そう言って敬礼を返したのは比良だ。

 

「だーいじょうぶですよ、提督!奴等が近づいてきたら俺たちが機銃や槍で追い返してやりますからね!」

 

「そうだそうだ!最初(ハナ)から艦娘ちゃんたちにケツ拭いて貰おうだなんて思っちゃいませんぜ!」

 

「豆鉄砲だろうが、やりようはあるってことでさあ!」

 

指揮艦内から顔を出した乗組員たちが、口々に言う。

朝から騒がしいが、士気は十分のようだ。

 

「はっはっは!余計な心配だったようだな!っと・・・安住、見送りが来たぞ。」

 

「見送り・・・?」

 

豪快に笑う比良が、目線を出撃ドッグの入り口に向けながら安住に告げた。

安住はなんのことだと思いながら同じ方向に視線を移し、理解した。

 

「ほ、鳳翔さん!?」

 

来訪者に気づいた安住は慌てて指揮艦から降りて鳳翔の元へ向かう。

 

「え、なんで、鳳翔さん?わざわざ、見送り?なんで、え、見送り・・・え?」

 

この状況に動転しているのか、カタコトのようになりながらも安住は浮かんだ疑問を口にした。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・・・・ふぅ。これを、渡したくて・・・。」

 

走ってきたのだろう、鳳翔は両手を膝につき、呼吸を整えている。

鳳翔は息を整えると手に持っていた包みを差し出した。

 

「これは・・・?」

 

「お弁当です。・・・お腹が空いたら、召し上がって下さいね。」

 

そう言って上目使いに安住を見つめる鳳翔。実に色っぽい。

 

(色っぽい・・・。上目使いも可愛い・・・。」

 

「え?///」

 

「あ!?いえ、何でもありません!///」

 

予想もしていなかった事態に加え、上目使いというダブルパンチを喰らった安住。

心の中の声が漏れてしまったようだ。

鳳翔は両手を頬に当てて赤面し、もじもじと恥ずかしさに悶えている。

一方の安住も赤面し、軍帽のつばで目元を隠して目を泳がせている。

そしてあたふたしながらも、鳳翔からお弁当の入った包みを受けとる。

 

「お、お弁当、ありがとうございます。味わっていただきますね・・・///」

 

「はい・・・・・・ふふっ///」

 

お互いに頬を朱に染めて照れあう様は、まるで新婚さん、いや、付き合い始めの恋人といったところか。

その様子を比良は苦笑しながら、乗組員は羨ましそうな表情で、少し離れた所から見ていた。

 

「おーい。二人の世界に入っている所悪いが、そろそろ時間だぞ~。」

 

比良の声に我に帰った二人は、顔を真っ赤にして慌てふためくのだった。

 

 

 

少しして落ち着くと、二人は向き合って敬礼し。

 

「では、鳳翔さん。行って参ります。」

 

「・・・はい、いってらっしゃいませ、安住少佐。お早いお帰りをお待ちしていますね。」

 

別れを惜しむように見つめあっていた二人だが、やがて安住が敬礼を解くと回れ右をして指揮艦へと向かっていった。

その後ろ姿を、今にも泣き出しそうな表情で見つめている鳳翔に気づいたのは、比良だけだった。

 

 

 

「では、今度こそ行って参ります。」

 

「おう、貴艦隊の武運と戦果を期待する!」

 

比良は再度、安住と敬礼を交わし、出撃する艦隊を見送る。

その瞳が少し寂しそうな色を宿していたことに、気づくものは誰もいない・・・。

 

 

 

「全艦、抜錨!これより作戦を開始します!」

 

深海棲艦への反攻作戦が、今、始まるーーー。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第5話であります。

いよいよ艦隊出撃です。ここまで長かった・・・ようで短いんですよね・・・(@_@)
やっと艦娘を沢山出せるところまできました!がんばった!うん!
え?名前しか出てない娘も沢山いるじゃないかって?
それは・・・こ、これから!これからですから!

がんばり・・・ます(@_@)


さて、提督の皆さんならお気づきでしょう。
進撃するのは1-4です。
最初の関門ですね~。
戦闘シーンちゃんとかけるだろうか・・・。


鳳翔さんと安住がいちゃついてます。はい。
時間のとんだ数ヵ月の間に色々あった、ということで・・・。
そこの辺りはおいおい書こうかとは思ってます。
でも今は、先に進ませてくださいいい。


では・・・また・・・(^q^)ニゲロー

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