艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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長いです、すみませんm(__)m


第30話「海の彼方から・6」

ーーーーー沖ノ島海域・18:27(ヒトハチフタナナ)ーーーーー

 

 

 

足柄たちと敵艦隊が戦闘している地点から約13キロ程離れた空。

血の色に染まった戦場ではどれが敵で、どれが味方か分からないほどの乱戦となっていた。

 

「こちらホーク4ー4!被弾した!被弾した!!」

 

被弾し、エンジンから黒煙を吹き出しているF4U(コルセア)から悲鳴があがる。

敵機に真後ろを取られており、今なお機関砲の雨に襲われているのだ。

その後方から別のF4Uが援護に駆けつける。

 

「こちら4ー3、援護するぞ!」

 

瞬く間に敵機の背後を取ると、両翼の機銃6丁を掃射し始めた。

 

「助かる!・・・って4ー4、後ろ上方に敵機!」

 

「何!?このくそったrぇがぅぁ!?」

 

機銃を撃つことに夢中になっていた4ー3、その上方から新たな敵機が奇襲をかけたのだ。

4ー4が気づいて叫ぶが時既に遅く、コクピットを蜂の巣にされたF4Uがコントロールを失う。

 

「4ー3!?なんてこった!ぐぁ!?」

 

撃墜された味方機に気を取られた隙に、正面下方から現れた3機目の敵機の機関砲を浴びせられる。

銃弾が機首を撃ち抜いてプロペラが破壊され、エンジンが爆発して内側からコクピットの風防(キャノピー)が吹き飛ぶ。

2機のF4Uは黒い帯を引きながら下へ下へと落ちていき、やがて海面に激突した。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「くそ!あいつら寄って集ってヒヨッ子を!」

 

F4Uが撃墜されるのを見て、6機目となる敵機を撃墜したF6F(ヘルキャット)妖精が毒づく。

そもそもの数が違いすぎることで、必然的に一対多の状況を強いられているのだ。

周囲への警戒を怠ればたちまち包囲され、なぶり殺しにされる。

その為、熟練妖精の駆るF6Fですら、満足に攻撃をできないでいた。

 

『1ー3!そっちへ1機行ったぞ!』

 

「んなろぉ!そんな弾があたるか!」

 

正面からの射撃をエルロンとラダーを駆使した横転機動でかわす。

そして背面飛行となり照準が合った一瞬、機銃と機関砲を斉射して敵機の上をすれ違った。

 

「このイーグル隊のエースを相手にするには、腕が足りないぜ!」

 

奇襲を退けた1ー3の機体には、死神をモチーフにしたエンブレムと共に撃墜マークが輝いている。

一瞬の反撃を受けた敵機はすれ違った半秒後には爆発し、火に包まれながら海へと落ちていった。

 

「・・・・・・汚ねぇ花火だぜ・・・。」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

『誰かたすkぎゃぁ!?』

 

『コ、コントロールが!?うああぁぁあぁあ!!』

 

1機、また1機と墜ちていく。

今まさに味方を撃墜した敵機目掛けて、1機のF4Uが迫る。

 

「後輩たちの仇だ!墜ちろ!」

 

後ろ上方からの奇襲であったが、読まれていたのか銃撃は右旋回でかわされてしまう。

だが、みすみす逃がすまいと追従しながら攻撃を続ける。

 

「後方敵機なし!逃がすものか!」

 

照準にたしかに捉えているはずなのに、弾は一向に敵機に命中しない。

F4U妖精に焦りが見え始める。

 

「これがいつものF4F(ワイルドキャット)ならなぁ!とっくに墜とせてるんだよぉっ!!」

 

今操っているのは予備機として用意されていた機体であり、普段乗っているF4Fは修理中なのだ。

操縦感覚も違えば機銃の位置も違う。

微妙な感覚のズレから、射撃の精度が落ちていることに気づきつつも、おいそれとは修正できない歯がゆさ。

その苛立ちと焦りが、反応を鈍らせた。

 

「コブラだと!?ふざけろ!!」

 

追われていた敵機が突如機体を90度引き起こし、空気抵抗を受けて減速したのだ。

そのままの姿勢でF4Uの真上を通過して、背後へ抜けたところで姿勢を元に戻した。

所謂『コブラ』という空戦機動、カウンターマニューバだ。

ふいをつかれた結果として追う立場から一転、追われる立場となってしまった。

 

「深海棲艦機は何でもアリか!こっちにはできないことをやってのける!」

 

必殺の距離で背後を取られた状況の意味するところは、ヒヨッ子妖精にも分かるだろう。

機体の下部に装備された機関砲が小刻みに動いて狙いをつけている。

照準を合わせられるのも時間の問題だ。

 

(ピッタリくっついて離れない・・・撃ってきた瞬間に左に横滑りさせて、避けるしかないか・・・!)

 

機関砲の動きが止まり、射撃が開始されたと同時に、敵機が爆散する。

寸前で放たれた1発の弾丸が、F4Uの右主翼を掠めていった。

 

「うおおっ!?た、助かった・・・?」

 

突然の出来事に驚きながらも、敵機を葬った銃弾が飛んできた方を見る。

そこには沈みつつある夕日を背にしたF4Uの姿があった。

 

『いい囮だったぜ1ー1、貸し一つにしとくんだっぜw』

 

「2ー2か。ありがとう、助かった。けど、後ろから撃つなら声をかけてほしいな。」

 

『はっはーw結果オーライってことだっぜw』

 

いつもの調子に乗った軽口を言いながら、2ー2が追い付く。

そのまま右後方についた所を見るに、分隊最後の生き残りのようだ。

 

「うちも自分しか残っていないか・・・。2ー2、できるだけやろう。」

 

「りょーかいだっぜ!」

 

違う分隊同士の即席コンビは、いまだ続く戦闘へと飛び込んでいくのだった。

 

 

 

ーーーーー沖ノ島海域・18:36(ヒトハチサンロク)ーーーーー

 

 

 

日本海軍の救援部隊による援護を受けた船団は、戦闘海域から離脱しつつあった。

後方で繰り広げられる砲戦を尻目にアイオワがほっと息をつく。

 

「あのタイミングで来てくれるなんて、Luckyだったわね。」

 

「えぇ・・・アイオワ、さっきの戦闘で受けた傷は大丈夫?」

 

頭から流れ出る血を腕で拭っている様子を見て、サラトガが心配そうにしている。

 

「ちょっと掠っただけ。血が大袈裟に出てるだけよ。」

 

「そう・・・ならいいけど・・・。」

 

救援も来てもうすぐ逃げ切れるというのに、サラトガは浮かない顔だ。

 

「サラ?」

 

「救援部隊に空母らしき艦娘はいなかった。あの子たちからの連絡もないし・・・。」

 

「ここまで空襲がないことを考えると案外、敵機を全滅させる調子でやりあってるのかもね。」

 

「だといいけど、あの戦力差では・・・ッ!?」

 

言いかけた言葉を止めて、はっとした様子でサラトガが空を見上げる。

一瞬遅れて空を見たアイオワも表情を強ばらせた。

 

「イーグル1ー1より入電!敵攻撃隊の一部が艦隊へ向かう!!対空警戒を厳とされたし!!」

 

「く・・・そうそう上手くはいかないのね。対空戦闘用意!」

 

見上げた先にあったのは、数えるのも嫌になるほどの黒点。

数十機の敵機が迎撃をすり抜けて至近にまで迫っていたのだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

サラトガたちが敵の接近に気づいた頃、深海棲艦機の攻撃隊もまた船団を捉えていた。

綺麗に隊列を組み、爆撃の最終行程に入ろうとしている。

そのやや後ろ上方、薄い雲の中から一つの影が飛び出すと深海棲艦機の編隊へと降下していく。

 

「すり抜けたつもりだろうが、こそこそと小賢しいんだよ!」

 

怒声と同時に最後尾の隊列、その2番機に次々と穴が空いて炎に包まれる。

影はそのまま編隊の下方へとすり抜け、降下の速度を活かして上昇する。

 

「どうだこの野郎!そう簡単に艦隊はやらせないぜ!」

 

強襲をしかけたのは、死神のエンブレムが描かれたF6Fだった。

上昇して高度を取り戻し、再度攻撃を仕掛けていく。

 

「チッ・・・空いた場所をもう列機が埋めてやがる。練度は高いってか。」

 

F6F妖精が舌打ちして苦い表情になる。

先程の攻撃で隊列に穴を空けた筈なのだが、上昇する間に別の機がカバーに入って隊列の崩壊を防いでいた。

 

「もう艦隊は目の前だ、なんとかして隊列をくずさねえと・・・!」

 

2度、3度と攻撃を繰り返す。

しかし何度銃弾のシャワーを浴びせても、隊列が完全に崩れる気配はなかった。

何とか爆撃に入れないよう邪魔するので精一杯なのが歯痒い。

そうこうしている内に、隊列の1つが急降下を始める。

 

「ま、マズイ!」

 

慌ててF6F妖精も追従し、後ろから狙いを定めて撃ちまくった。

降下によって加速し続ける機体がガタガタと震え出して限界が近いことを知らせる。

それでも構わず射撃を続けて1機、2機と敵を捉えていく。

だが、最後の1機がなかなか撃墜できない。

 

「くそ、くそ!バリアーでも張ってるのかよコイツは!!」

 

もうすでに数十発も被弾しているというのに、抱えた爆弾を投棄すらしないようだ。

 

「機体を撃ってダメなら・・・ここだ!」

 

深海棲艦機が2つ抱える黒い塊、爆弾に照準を合わせる。

ここにきて機体の震えが一層激しくなり、強烈なGで視界がブラックアウトし始める。

そんな状態で放たれた銃弾は何発か狙いから逸れながらも、左に搭載された爆弾を射抜いた。

F6F妖精は機体を引き起こしながら、片手でガッツポーズをする。

 

「いよし!・・・・・・って、あ、あああ!?」

 

爆弾の誘爆に巻き込まれた敵機が爆散する瞬間、残された右側の爆弾が『投下』されたのが見えた。

進路、高度共に爆弾を投下するのに最適な所まで来ていたのだ。

ただ爆弾が外れただけと思いたいが、最期まで爆撃を諦めなかった敵機のことだ。

狙いをつけての投下だろうことは容易に想像できた。

 

「頼む、外れてくれ・・・避けてくれぇ!」

 

もはやF6F妖精には爆弾の行く末を見守ることしかできない。

次々と降下していく敵機を迎撃することも忘れて、敵機の執念の塊を見つめていた。

そして、爆弾は艦隊へと吸い込まれていき、やがて橙の華を咲かせた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

耳をつんざく爆発音。

直後に聞こえてくる幾人もの叫び声。

 

「船尾に被弾!機関部に火災発生!!」

 

「消化いそげー!!」

 

「レイモンドが負傷した!メディックを寄越してくれ!」

 

被弾箇所から上がった火の手は瞬く間に広がり、真っ黒な煙をごうごうと立ち上らせる。

 

「Shit!敵機の数が多すぎるわ!」

 

憎々しげに見上げた先には、夕焼けの空を埋め尽くす敵機の群れ。

せめてもの抵抗と、僅かに残った機銃で弾幕にもならない対空砲火を撃ち続ける。

 

「く・・・狙いが・・・。」

 

頭から流れ出る血が右目に入って視界が赤く染まっていく。

それによる視界の悪化で機銃の狙いがつけられなくなる。

 

「何も見えない!敵機はどこ!」

 

手で擦ってみても、一度血が入り込んだ視界は目を洗い流さなければ治らない。

 

「敵機直上!!逃げてアイオワ!!」

 

「ッ!?」

 

半ば悲鳴になった叫びを聞き、反射的に顔を上げる。

その目に映ったのは、必殺の距離で爆弾を投下しようとする敵機の姿だった。

 

「私の強運も、これまで・・・ね・・・。」

 

瞳を閉じて呟いた声をかき消すように、爆発音が鳴り響いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「・・・・・・。」

 

痛くない。

敵機の爆弾が命中したはずなのに、痛くない。

人の体を得ても、沈む時は無機質なものなのかしらね?

 

「・・・・・・・・・・・・?」

 

いや、おかしい。

これまで被弾した時には痛みがあった。

一瞬で蒸発でもしたのなら別・・・かしら。

それなら今こうして感じている風は何なの?

 

「ん・・・?風・・・?」

 

そういえば目を閉じていたわ。

目を開けないと何も見えないのは、当たり前ね。

 

「・・・・・・ん。」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

アイオワが目を開いた先に広がっていたのは、敵機が墜落していく様だった。

 

「え・・・何、これは・・・どうなってるの?」

 

周りを見るとサラトガや輸送船の乗組員たちも空を見て呆然としていた。

誰もが何が起こっているのかわからない、といった様子だ。

爆撃をしようと接近してきた敵機がまた1機、弾幕によって撃ち落とされる。

 

「この弾幕って・・・サラでも私でもない、ということは・・・。」

 

今この艦隊には弾幕を張れる艦娘は存在しない。

1つの可能性に至った全員が、自らの後ろ、進行方向、対空射撃が飛んできた方を見た。

そこには、全速で接近する3つの人影と1つの艦影があった。

 

「こちら日本海軍所属、軽空母 鳳翔!これより貴艦隊の護衛につきます!!」

 

「ボクは駆逐艦 皐月!対空戦闘はボクたちにまっかせてよ!秋月、行くよ!!」

 

「はい!皐月さん!防空駆逐艦 秋月、推参です!!」

 

『そこの艦載機、よく頑張った!後は我々、鳳翔制空隊が引き継ぐ!』

 

皐月と秋月が船団の最後尾にいたアイオワの左右に展開して、再び対空射撃を開始する。

まるでハリネズミのような弾幕を前に、敵機は中々近づくことができなくなっているようだ。

 

「助かった・・・のね。」

 

「艦載機の上空掩護まで・・・。」

 

サラトガの見上げた先では、白い艦載機が弾幕で追い返された敵機に襲いかかっていた。

そこへ鳳翔が近づいてきて敬礼する。

 

「もう大丈夫です。うちの子たちが空を守ってくれますから、安心してください。」

 

「米海軍所属、空母 サラトガです。救援に感謝します・・・・・・本当に、ありがとう。」

 

鳳翔たちの後方から近づいてきていた指揮艦も、輸送船に横付けして消化作業を手伝っている。

 

「消化が終わり次第、曳航の準備に移ります。手の空いている者は負傷者の手当てを、私もすぐにいきます。」

 

「いや少佐はここで指揮とらなきゃダメでしょ!」

 

「力仕事は俺たちに任せて、少佐は自分のやることやっててくだせえ!」

 

「ひょろっちいのは邪魔だ!」

 

「アッ、ハイ・・・。」

 

自らも手伝おうとした安住だが、指揮艦の屈強な乗組員たちに却下されてしまった。

その様子をぼんやりと見つめていたサラトガと、気まずそうに頭を掻く安住の目が合う。

 

「もう大丈夫ですよ。我々が必ず貴女を守り抜きますから。」

 

そう言って優しく笑った安住は、指揮を執るべく艦橋へと戻っていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「これで9機目。かなり数が多いが、敵機は爆撃できていないな。秋月の弾幕のお陰か。」

 

敵機を撃墜した後の索敵を兼ねた横転機動をして、鳳翔制空隊の隊長が呟く。

眼下では新顔となる秋月の作り出す対空砲火が、敵機を艦隊へ寄せ付けない様が見てとれる。

 

『秋月より上空の制空隊へ。弾幕による味方撃ちの危険があるため、なるべく対空砲火圏内から離れて戦闘をしてください。』

 

噂をすれば影、ということか。

制空隊への注意を促す通信が聞こえてきた。

 

「鳳翔制空隊、隊長機より秋月へ。慣れない機体とはいえ、ここにいる誰も味方の弾にあたるようなヒヨッ子はいない。好きに撃ちたまえ。」

 

「そうだそうだ!俺たちがそんなヘマするわけないぞ、秋月の嬢ちゃん。慢心じゃないからな!」

 

「私もヘマはしないですが、ここは譲れませんね。」

 

『えっ?えっ?』

 

想像していた返答と180度違う内容に、秋月が困惑している。

今現在上空を守っているのは鳳翔制空隊第1小隊の他に、赤城と加賀それぞれの第1小隊だ。

化け物とも称される腕前の彼らからすれば、秋月の弾幕も止まって見えるらしい。

 

『これ!調子に乗るのもいい加減にしなさい。秋月さんが困っているでしょう。』

 

穏やかだがしっかりとした調子で、ぴしゃりと制空隊を叱ったのは鳳翔だった。

 

「鳳翔お艦か・・・我々の腕なら問題n『言うことを聞かない悪い子には、今夜のご飯はありませんからね。』

 

鳳翔制空隊の隊長が何か言おうとするも、途中で『ご飯抜き』と言われて黙る。

普段から鳳翔の手作りご飯を食べている鳳翔の妖精はもちろん、赤城と加賀の妖精も黙る。

この数日、鳳翔の手料理を味わっていたために、この言葉の破壊力は凄まじかった。

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

『制空隊は弾幕の外で敵機の迎撃をすること!・・・分かりましたね?』

 

「「「了解であります!」」」

 

くせ者揃いの制空隊たちの手綱をいとも簡単に握ってしまった鳳翔。

さすがは、お艦といったところか。

 

『それから、サラトガさんの戦闘機隊が付近で敵機の迎撃をしています。赤城さんと加賀さんの小隊は、そちらの援護に向かってくださいね。』

 

「新型機の試験飛行と受領にかこつけて、無理言ってついてきたんだ。しっかり働いてこい。」

 

「言われんでもやりますわい!鳳翔お艦、帰ったら赤城にも夕飯をたのむ!」

 

「我らが加賀もご相伴に預からせて下さい。きっと気分が高揚するでしょう。」

 

艦載機妖精は母艦に似ると言うが・・・・・・言うのだろうか。

ちゃっかりご褒美をねだって、艦隊上空から8機の白い艦載機が離れる。

 

『戦闘空域までは俺が先導する。日本のサムライたち、宜しく頼むぜ!』

 

赤城と加賀の制空隊はF6Fに先導され、黄昏の空へ飛び去っていった。

 

 

 

ーーーーー沖ノ島海域・18:55(ヒトハチゴーゴー)ーーーーー

 

 

 

太陽が水平線に沈んでいく。

もう3分の1程しか顔を覗かせておらず、あと数分後には夜の闇が訪れるだろう。

戦闘はつい数分前に終わり、鳳翔は艦載機を収容していた。

 

「艦載機の皆さん、お疲れさま。赤城さんと加賀さんの子たちも、ありがとう。」

 

飛行甲板に着艦し、矢の姿へと変わった艦載機たちを労い、背負った矢筒へと戻す。

一瞬、少し離れた所で収容作業をしていたサラトガに目をやるが、安住から呼ばれて意識をそちらへ移した。

 

「こちらは曳航準備完了しました。足柄さんたちも直ぐに合流できると。鳳翔さん、そちらはどうですか。」

 

「私たちも収容は先程終わりました。いつでも出発できます。」

 

「了解です。霧島さんたちの方へ向かった龍鳳さんたちと合流した後、鎮守府へ帰投します。」

 

「はい、了解致しました。」

 

鳳翔とサラトガの準備が完了していることを確認した安住が、サラトガの方へ視線を向ける。

 

「それで、彼女は・・・。」

 

「・・・・・・少し、そっとしておいてあげましょう・・・。」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

収容作業を終えたサラトガは俯いていた。

その肩には1人の妖精が乗っている。

 

「結局、無事に帰艦できたのは3機だけ・・・。」

 

「すまねえ、サラ・・・俺たちが戻った時ホーク隊は5機、生き残っていたんだが・・・。イーグル隊は、俺だけになっちまった・・・。」

 

肩を震わせるサラトガをF6F妖精が慰める。

だが、自分も隊の仲間を失ったせいか、上手く慰められてはいなかった。

そんな暗い雰囲気を壊すように、反対側のサラトガの肩に手が置かれる。

 

「サ~ラ、もうすぐ出発するわよ。」

 

サラトガが顔を向けた先に居たのは、アイオワだった。

全身ボロボロで酷い状態だったが、いつものように笑顔を見せている。

 

「サラ・・・気持ちは分かるわ。でも、また任務は終わっていない、そうでしょ?」

 

「分かってる・・・分かって、る・・・けど・・・。」

 

今にも泣き出しそうな顔を見られないように、サラトガが顔を背ける。

その震える肩を、アイオワが後ろから抱き締めた。

 

「泣きたい時には泣きなさい。今なら私の超弩級バストを使い放題よ。」

 

「・・・・・・汗くさいです。」

 

「なら、シャワーを浴びた後に、ね。」

 

「遠慮します。・・・・・・でも、ありがとう。」

 

暫くして鳳翔から呼ばれるまで、アイオワはサラトガを抱き締めていたのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第30話です。

いかがでしたでしょうか。

なんだかまた長くなっちゃいました(^_^;)
ともあれ、これで船団救出編は終わりとなります。
一応、今回の戦況推移を書き出してるので、宜しければ見てください。


【挿絵表示】


皆様、秋イベの調子はいかがですか?
私はE4丙の1本目のラスダンで沼っています。
妖怪26足りないがまた悪さを・・・。
あと一週間、秋イベ頑張りましょう!

それでは今回はこのあたりで。
また次回をお楽しみに。

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