艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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卯月によってもたらされた手紙。
それは緊急事態を知らせる物だった。


第25話「海の彼方から・1」

ーーーーー沖ノ島海域・16:43(ヒトロクヨンサン)ーーーーー

 

 

 

指令書が届いてから2日。

船団の捜索は難航していた。

 

「第12次捜索隊、発艦始め!」

 

「着艦した機から整備と補給!妖精さんも交代で休んで!!」

 

蒼龍と飛龍が交代で捜索隊を発着艦させている。

二人とその妖精には疲労の色が見え、かなりの無理をしているようだ。

捜索に派遣された艦隊の旗艦を勤める霧島が、別れて捜索している足柄に通信を送る。

 

「足柄、そっちはどう?」

 

『ダメね・・・曙と潮に散開して貰って探してるけど、痕跡すら発見できてないわ。霧島の方はどう?』

 

「こちらも成果なしよ。船団が消息を断ってからもう3日・・・。最後に救難信号が確認されたのがこの海域だけれど・・・。」

 

腕を組んで霧島が考え込む。

救難信号が発信されていたということは、敵の襲撃に遭っていたはずだ。

ならば、戦闘の痕跡すら発見できないというのもおかしい。

 

(何かを見落としている・・・?一体何を?)

 

『あまり長居も出来ないわよ・・・敵に発見されるリスクもあるし、もうじき日が暮れるわ。』

 

足柄がそろそろ撤収も考えなければならないと話しかけるが、霧島からの返事はない。

考え事でもしているのだろうかと思いつつ、構わず話し続ける。

 

『ま、発見されたらされたで、近海の小島群におびき寄せて返り討ちにしてやるだけだけど。』

 

そう続けた足柄の言葉に反応して、はっとしたように霧島が顔をあげた。

 

「足柄!今なんて言った!?」

 

『な、なによいきなり。』

 

「いいから!今なんて言ったの!?」

 

霧島の語気にたじろぎつつも、足柄は自分の言ったことを思い返す。

 

『ええと・・・もうじき日が暮れる・・・?』

 

「その後!」

 

『小島群におびき寄せて返り討ち?』

 

「それよ!!」

 

何かに思い至ったらしい霧島。

足柄は状況が飲み込めず、不審そうに問いかける。

 

『一体どういうこと?今ので何か分かったの?』

 

その問いに不適な笑みをした霧島が、眼鏡をくいっと上げた。

 

「ええ。船団は周辺の小島群に逃げ込んだのかも知れないわ。」

 

『なるほどね・・・ならこの近辺で戦闘の痕跡が発見できないのも頷けるわね。』

 

ようやく霧島の考えが分かってきた足柄も同意するが、疑問が残る。

 

『船団が小島群に逃げ込んでいるとして、どこに向かったのかが問題ね。』

 

「このあたりの海流とここ数日の風の状況からすると、恐らく・・・。」

 

海流から推測される船団の行方を霧島が弾き出そうとした時だった。

 

「霧島さん!捜索隊から入電です!」

 

慌てた様子で蒼龍が霧島の元へ近づいてくる。

 

「どうしたの、蒼龍さん?まさか、船団を見つけたの!?」

 

「船団はまだ発見出来てませんけど・・・ってそれどころじゃないんです!」

 

『蒼龍ちゃん・・・もしかして、悪い知らせ?』

 

嫌な予感を感じたのだろう、足柄の声のトーンが低くなる。

 

「は、はい!うちの子たちが、こちらに向かう深海棲艦の部隊を発見したんです!」

 

『タイミングが悪いわね・・・まあ、派手に艦載機を飛ばしまくってたから当然かしら。』

 

通信機から足柄がため息をつくのが聞こえる。

蒼龍と飛龍は軽くパニックになっているのか、慌ただしく艦載機の発艦準備を始めている。

 

「捜索隊は離脱しようとしたけど捕捉されて、艦載機の追撃を受けてるみたい!」

 

「蒼龍、私の直掩機を先行して敵艦載機の迎撃に向かわせるね!霧島さん!!」

 

仲間の様子を眺めていた霧島が、軽く深呼吸をした。

そして電探眼鏡をくいっと上げると表情を引き締めて号令する。

 

「飛龍さんと蒼龍さんは制空隊を直ちに発艦、攻撃隊の準備をしつつ転進。時間を稼ぐわよ!」

 

「「了解!」」

 

「足柄、分かってるわね?」

 

『もちろんよ、二人と合流してすぐに向かうわ!』

 

指示を出し終え、自らも戦闘準備を整えながら敵艦隊が迫ってくるであろう方角を見つめた。

 

(空母を擁する敵艦隊の存在・・・これで、この付近に船団がいることが確定したわね。)

 

艤装の主砲、第一砲塔と第四砲塔に三式弾を装填する。

 

(こちらに向かってきているということは、深海棲艦も船団を探していたということ・・・。)

 

副砲や対空機銃の確認も怠らない。

 

(指令書に記載されていた、船団の護衛についている艦娘の人数に合わせるために、艦隊を分けたのは正解だったわね。)

 

「先行した直掩隊、敵艦載機との交戦を開始しました!」

 

(敵艦隊を誘引できたなら、隠れている船団も戦闘に気づいて離脱を図るはず。)

 

「蒼龍制空隊、発艦始め!」

 

(足柄たちと合流でき次第、敵艦隊を殲滅。あとは船団を見つけて護衛しつつ帰還する。)

 

様々な思考を巡らせていた霧島が、もう一度深呼吸する。

今度は深く深く、ゆっくりと大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出す。

 

(大丈夫、きっとうまくいく。)

 

「全艦、機関増速!合流を急ぐわよ!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第25話です。

いかがでしたでしょうか。

同盟国船団を発見する前に、敵に発見されてしまいましたね。
足柄たちとの合流は間に合うのか、敵の襲撃を乗りきって無事に船団を発見・救助できるのか。
初の見せ場、頑張れ霧島さん!

ちなみに、うーちゃんはお留守番です。
うーちゃんの秋刀魚バージョンのグラ、可愛いですが、うちにはまだいないのです・・・。
秋刀魚漁、皆様はもう終わりましたでしょうか?
こちらはあと10尾です。がんばります。
しかし、報酬をどれにしようか悩む・・・ぐぬぬ。



前回からの更新が遅くなってすみません。
今回は短めとなりました。
というのも、先日ちょっと病気した後の検査の結果が悪く、病院通ったりしていたもので・・・。
あと、色々と忙しかったのもあって、中々書ける時間がとれなかったです・・・。
あまり期間を空けるといけないので(手遅れな気もしますが)、とりあえずここまでで投稿になりました。m(__)m
次回はもうちょっと量書けるように頑張りたいです。

それでは、また次回をお楽しみに。

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