艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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深海棲艦の脅威にさらされ、滅亡するかと思われた人類。
日本近海に現れ、その窮地を救ったのは・・・。


第2話「邂逅」

「航空部隊、発艦!」

 

弓の弦を限界まで引き絞り、矢を放つ。

放たれた矢は空を裂くように飛び、やがて光に包まれその姿を変える。

 

光の中から現れたのは、九九式艦上爆撃機。その数8機。

第2次世界大戦で大日本帝国海軍により開発・運用された、旧型の爆撃機である。

 

「これは、演習ではなくて、実戦よ!」

 

飛び立った艦載機へ向けて、号令を叫ぶ。

 

「目標、敵駆逐艦!直掩(ちょくえん)は無いけれど、お願い!」

 

号令を受けた九九艦爆が縦一列に並び突撃形態を整え、深海棲艦 駆逐イ級へと迫る。

 

「uyQ"3;f?」

 

敵機の接近に気づいた駆逐イ級が、その黒い不気味な身体を震わせる。

そしてその牙の並んだ口を、顎が外れたかのように大きく開き、喉の奥から這い出してきた主砲で敵機へ砲撃を開始する。

 

しかし、録な対空火器を持たないその砲撃は九九艦爆にかすりもしない。

対艦用の主砲では仰角を満足にとれず、対空射撃をあてられるはずもない。

 

「3qoue!?」

 

九九艦爆は1機も撃墜されることなく、駆逐イ級の直上へとたどり着く。

そして1番機が主翼下の制動板を開き機体をロールさせ、反転急降下の体勢に入る。急降下爆撃だ。

後続機も次々と反転急降下していき、ついに1番機が機体の腹に搭載した爆弾を投下する。

 

「やるときは、やるのです!」

 

鳴り響く爆発音。

最初の1発を皮切りに次々と爆弾が投下され、駆逐イ級にシャワーのように降り注ぐ。

 

「G"'3!eqe!?eqe9・・・3・・・」

 

次々と命中する爆弾に断末魔の声をあげながら、駆逐イ級が撃沈する。

爆音が奏でたそれは、まるで沈みゆく深海棲艦への葬送歌のようだった。

 

 

 

ーーーーー数分後ーーーーー

 

 

 

「ふぅ・・・艦載機のみなさん、ありがとう。お疲れさまです。」

 

左上腕に備え付けられた飛行甲板へ、仕事を終えて帰還した九九艦爆を着艦させる。

全機の着艦が完了すると、九九艦爆は再び矢へと姿を変えた。

 

「ゆっくり休んでくださいね。」

 

矢を背負った矢筒へ戻し、艦載機を労う。

やっと一息つけるというものだ。

 

(さて、と・・・それにしてもここは一体どこなのでしょう?)

 

最初に浮かんだ疑問。可愛らしく小首を傾げ、再びそれに思考を巡らせようとして、自身の後方に軍艦がいたことを思い出す。

 

(あの軍艦は、味方・・・・・・かどうかはわからないけれど、守るべきものだというのはわかります。)

 

振り返り、軍艦のいた方角を見る。

すると、小型挺が近づいてきているのが見えた。

 

(大発動挺・・・とは違うようですね・・・。人が乗っていますね、お話を聞くことはできるでしょうか?)

 

小型挺の方に向き直り、弓を左手に持つ。両手はお腹の前へ移動させ、背筋を伸ばして到着を待つ。

何故だか、そうしなければいけないような気がした。

 

 

 

ーーーーーボート上ーーーーー

 

 

 

「もうすぐ着きます、艦長!」

 

ボートの速度を落としながら、若い男が言った。

 

「おう。さて、話の通じる相手だといいが・・・」

 

艦長と呼ばれた男は、先程までの緊張感の無さが嘘のように、声色に不安感を滲ませていた。

不快感を感じて、腕で額を拭うと、冷や汗がべっとりと腕を濡らしていた。

 

それから数分後、ボートは海上に立つ人の元へたどり着き、止まった。

 

「・・・・・・・・・」

 

遠目からは分からなかったが、その人は女性だった。

大和撫子を思わせる長い黒髪。それを頭の後ろで括り、ポニーテールにしている。

小豆色の着物を着て、膝上程の丈のスカート型の袴をはいている、古風な雰囲気を持つ女性だ。

さらには両手をお腹の前に置いて微笑み、背筋を伸ばして立つ様はまるで・・・夫の帰りを出迎える新妻のようだった。

 

しかし、普通の人とは違う部分があった。

海上に立っているというのもそうだが、弓を左手に持ち、背中には矢の入った矢筒を背負っている。

そしてなにより、左腕に装着されたものが一際目を引いた。

空母の飛行甲板のようにも見えるが・・・。

 

「あの・・・少し、大袈裟でしょうか・・・?」

 

二人がそれを凝視していると、女性が恐る恐る、といった様子で話しかけてきた。

 

「「あっ!?いえ、美しい女性だと思ってつい見とれておりました!!」」

 

艦長と若い男は突然のことに驚き、日頃上官にしているように背筋をピンと伸ばし、敬礼をして謝罪した。

行動と言動がピッタリと一致したのは、偶然か、必然か。それは誰にも知る由もない。

 

「ふふ・・・お上手ですね。でも、誉めても何も出ませんよ?」

 

女性は少し照れた様子で頬を薄い朱に染め、敬礼を返した。

 

(綺麗な女性(ひと)だなぁ・・・)

 

その仕草に見とれる若い男を尻目に、敬礼したままの体勢で艦長が女性へと名乗る。

 

「申し遅れました。私は日本海上自衛隊、空母[ほうしょう]の艦長で比良(ひら)という者であります!先程は我々を助けて頂き、感謝致します!こちらは副官の安住(あずみ)です!」

 

(こんな女性(ひと)が嫁さんだったらなぁ・・・)

 

ほんの少しの沈黙、続いて名乗る気配のない副官をちらりと見て、その横腹を小突く。

早く名乗れ!と催促するように。

 

「いでっ!?あ、同じく空母[ほうしょう]の副長を務めております、安住(あずみ)であります!」

 

女性は一瞬驚いた様子で目を見開いたが、直ぐに元の微笑みに戻ると、敬礼し直してこう名乗った。

 

「航空母艦、鳳翔です。ふつつか者ですが、よろしくお願い致します。」

 

今度は比良と安住が驚きのあまり、目を見開く番だった。

 

 

 

これが、人類と艦娘との初の邂逅となった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第1話を投稿して早々、第2話です。はい。(^q^)ホイ
書き溜め?なにそれ、美味しいの?

第2話、いかがでしたでしょうか?
人類と艦娘との初のコンタクト、伝わるように書けてるかなぁ・・・

更新ペースが早すぎるかな、とは思ったんですが。
一晩寝たら、なんだか妄想が暴走し始めたので書いてしまいました。(^q^)イイレス

第1話でお気づきの方が殆どだったと思います。
日本近海で深海棲艦を撃退したのは我らがお艦、鳳翔さんです。
鳳翔さんに膝枕されながら、優しく耳掻きとかしてもらいたいなぁ・・・

未来の話、ということで、鳳翔さんとコンタクトした二人は、海自の空母[ほうしょう]の乗組員ということにしました。
ああ・・・やってしまった・・・変な所から怒られないよね・・・?(;_;)

深海棲艦の台詞も、解読出来る方は出来ると思いますので、そちらも楽しんで頂けると幸いです。

それでは、また・・・ニゲロー(^q^)テッターイ

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