艦これif ~隻眼の鬼神~   作:にゃるし~

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航空隊の活躍により敵艦隊に大打撃を与えることに成功した。
満身創痍の深海棲艦に引導を渡すべく、砲雷撃戦が開始されようとしていたーーー。


第9話「南西諸島防衛線・4」

ーーーーー南西諸島沖・12:30 第1艦隊ーーーーー

 

 

 

零戦隊の会敵からおよそ30分、第1艦隊は敵艦隊まであと少しの距離まできていた。

 

「攻撃隊より入電!『我、先制攻撃ニ成功セリ!敵ハ被害甚大ナリ!』とのことです!」

 

「了解です。敵の損害状況はわかりますか?」

 

「はい、重巡リ級が大破、駆逐ハ級を1隻撃沈、軽空母ヌ級は1隻撃沈、1隻中破とのこと。制空権も掌握したし、上々ね♪」

 

攻撃隊の戦果に、赤城は上機嫌のようだ。

慢心、ダメ、ゼッタイ。はどこにいったのだろうか・・・。

 

「では、赤城さんは航空全隊を収容、同時に次の攻撃隊の準備を急がせてください。」

 

「了解しました。・・・え?」

 

安住の指示に従い、次の攻撃へ向けて艦載機の準備を始めた赤城。

しかし、その表情が急に真剣なものへと変わる。

 

「赤城さん?なにかありましたか?」

 

安住が問いかける。すると、赤城が血相を変えて報告する。

 

「被弾帰投中の零戦から入電!こちらに向かう敵攻撃隊を確認!恐らくは零戦隊の迎撃をすり抜けたものと思われます!!」

 

「対空電探に感あり!10時方向、敵編隊を視認!機数は12機、編隊が3つに別れた・・・突っ込んでくるぞ!」

 

赤城の報告とほぼ同時に木曾から敵機発見の報があがる。

瞬間、艦隊に緊張が走る。

 

「全艦、対空戦闘用意!射程に入り次第、撃ち方始め!!敵は空母を狙ってくるはずです!」

 

「くっ・・・まさか零戦隊が取り逃がすだなんて。慢心していたというの・・・?」

 

安住からの号令を待たずに、艦娘たちは対空戦闘の体制を整え、対空射撃を開始していた。

 

「対空機銃撃ち方始め!三式弾装填!主砲、6基12門、一斉射!!」

 

「さて、やりますか。」

 

「よーく狙って・・・ってー!」

 

(さすがですね。こちらが指示をだすまでもなく、やるべきことがわかっている。これは下手に口を挟むよりも、情報整理や周辺警戒をしていたほうがいいかもしれない・・・。)

 

伊勢の主砲が吠え、敵編隊に向けて三式弾が発射される。

三式弾とは、簡単にいうと対航空機迎撃用の散弾といったところだ。

砲弾が炸裂すると、内部に入っていた無数の子弾が炸裂地点周辺にはじけとび、弾幕を形成する。

基本的には対空用であるが、その特性から対地攻撃にも効果を発揮する。

 

「砲弾炸裂まで・・・・・・3、2、1・・・三式弾、予定通り炸裂。・・・先頭の敵編隊、全滅!次の編隊を狙撃するよ、次弾装填急いで!」

 

三式弾は3つに別れた敵編隊の先頭の4機の目前で炸裂し、纏めて敵機を葬った。

その間にも他の艦娘からの対空砲火が着々と効果を発揮していく。

 

「赤城はやらせないわよ!この10cm連装高角砲と提督が引っ張ってきた試作の91式高射装置、その対空射撃を抜けられるものなら、抜けてみなさい!!」

 

「ハラショー。たまには派手に撃ちまくるのも悪くない。」

 

叢雲と響の息のあった圧倒的な弾幕形成により、逃げ場を失った敵機が次々と撃墜される。

そしてあっという間に最後の敵編隊にもその牙を剥く。

 

「この編隊で最後!よく狙って!」

 

「弱すぎるっ!・・・・・・っ!?敵機が魚雷を投下したぞ!あの方向は・・・狙いは指揮艦か!?」

 

「やらせない・・・!!」

 

「響!?・・・・・・あの子まさか・・・!」

 

対空砲火で最後の敵機を撃墜するが、置き土産とばかりに敵機が魚雷を投下した。

その進行方向には指揮艦があり、このままいけば魚雷は指揮艦に命中、撃沈は避けられないだろう。

 

「魚雷接近!かわせかわせ!」

 

「かわすったってこの距離じゃどうしようもないぞ!」

 

「くそっ機銃で爆発させてやる!」

 

指揮艦の乗組員が機銃をとりだし、魚雷に向けて撃ちまくる。

だが、砲弾でもないかぎり水中の物に損傷を与えることは不可能だ。

 

「ちくしょぉぉぉ!ここで終わってたまるかよぉぉぉぉ!!」

 

それでも乗組員は機銃を打ち続けるが、抵抗むなしく魚雷は直撃コースで接近し続ける。

 

(万事休すか・・・!)

 

安住と乗組員たちは直撃を覚悟し、周囲の物につかまり衝撃に備えた。

その時、安住たちの目に思わぬ光景が飛び込んできた。

 

「・・・・・・!あれは・・・!?」

 

Ура(ウラー)ーーー!!」

 

響が魚雷に向けて砲撃しながら猛スピードで指揮艦の方へ向かってきていたのだ。

しかし、砲撃はなかなか魚雷に命中しない。

響に徐々に焦りが見え始める。

 

(くそ・・・あたれ・・・あたれっ!このままじゃ・・・また私は・・・!)

 

砲撃が魚雷の至近で炸裂するが、信管をギチギチに絞めてあるのか魚雷は爆発しない。

そうしている間にも魚雷はどんどん指揮艦との距離をつめていく。

 

「響さん!もうこれ以上は無理です!離れてください!!」

 

「響ちゃん!離れて!巻き込まれちゃう!」

 

「何をしてるのっ!早く離れなさい!」

 

(これ以上は砲撃が指揮艦にあたる・・・・・・それならっ・・・!!)

 

全員が響に離れるよう叫ぶ。

それとほぼ同時に響が()()した。

響はそのまま魚雷を追い抜き指揮艦と魚雷の間に割り込むと、その場で急停止して艤装に装備された盾を構える。

 

「響さん!なにを・・・・・・まさか!?」

 

(もう二度と・・・私の前で仲間をやらせない!)

 

そう、響は自分の身を持って指揮艦の盾になるつもりだった。

 

「響の嬢ちゃん!そこはあぶねえ!!逃げろぉ!!」

 

「何考えてるの!そこから離れて!響!!」

 

指揮艦の乗組員や他の艦娘たちが叫ぶ声が遠く聞こえる。

ついに魚雷が目前に迫る。

 

「不死鳥の名は、伊達じゃない。」

 

響は腰を低くし、衝撃に備える。

魚雷が命中する寸前、響はぎゅっと強く眼を瞑った。

 

(暁、雷、電ーーー!)

 

そしてーーーーー。

 

ーーーーー爆発音が、響き渡った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーつづく




第9話です。

砲雷撃戦をすると言ったな?あれは嘘だ(^_^;)

いかがでしたでしょうか。
零戦隊長の懸念が的中してしまいました。
乱戦になると迎撃をすり抜けていく敵もいるってことですね。
艦これの航空戦で敵機が生き残って攻撃してくるのも、こういうことかと思います。

慢心、ダメ、ゼッタイ。
連・相・報も徹底しないとですね。

魚雷から指揮艦を庇った響の運命はいかに・・・。



では、また次回をお楽しみに。

ちなみに第1艦隊の輪形陣は、下記のようになっています。

   進行方向
     ↑
     伊勢

     木曾
  響      叢雲
     赤城 

     由良



    指揮艦



ちなみに今日が作者の誕生日なんですよね。
あ、関係ないですね、はい(+_+)

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