敵機動部隊を粉砕すべく、彼らの猛攻が、今始まるーーー。
ーーーーー南西諸島沖・12:15 敵機動部隊付近ーーーーー
「敵艦隊見ゆ!」
高空から敵艦隊を探していた艦爆隊の1機から攻撃隊全機へ報告が上がった。
「あれか、索敵機からの報告通りだ。輪形陣でヌ級のカス共を守っていやがる。」
「中央列の先頭が重巡リ級、続いて軽空母ヌ級が2隻、両側面に駆逐ハ級が1隻づつか。艦攻隊長、どう攻める?」
敵艦隊の個艦ごとの位置を確認し、艦爆隊長が艦攻隊長に相談をもちかけた。
「そうだな・・・5隻とはいえ相手は輪形陣で対空戦闘に備えてやがるからな。ここはオイラたち艦攻隊が先に突っ込んで対空砲火を引き付ける。その隙をついて、艦爆隊が突入するのはどうだ?」
「ふむ、艦爆隊に華を持たせてくれるのか・・・悪くない。だがそれだと艦攻隊が敵の弾幕にまともに突っ込むことになるが、大丈夫なのか?」
深海棲艦の対空砲火は凄まじく、まさに弾幕と形容するに相応しい。
それに身を晒そうという艦攻隊を、艦爆隊長は心配しているようだ。
「そりゃあキツくないって言ったら嘘になるけどな。それでも九九艦爆よりも九七艦攻の方が足が早いし、海面スレスレを飛べば敵の対空砲火も当たりづらくなるだろ。それに、魚雷を投下したらさっさとズラかればいい話だ。」
艦爆隊長の心配をよそに、艦攻隊長はヘラヘラと笑う。
「そういうことですぜ、艦爆のダンナ!オイラたち艦攻乗りは低空での飛行になれていやす。だから心配はご無用でさあ!」
「むしろ、敵直上からの急降下なんてする艦爆隊の方が心配になりやすな。」
艦攻隊の面々も、自信ありといった様子で、むしろ艦爆隊の心配をしている者もいるようだ。
「ふっ・・・ならば先鋒は諸君らに任せよう。頃合いを見て我々も続く。」
艦爆隊長は、血気盛んな艦攻隊の様子に観念した様子で作戦を受け入れた。
実際、九九艦爆は固定脚で足が遅い。対空砲火を引き付けてもらえるというのなら、願ったりだ。
(しかし、艦攻隊には少なくない犠牲がでるだろうな・・・。仕方のないこととはいえ・・・。)
「いよぅし、野郎共!深海棲艦に魚雷のプレゼントを届けるぞ!!ついでに、艦爆隊の露払いと洒落こもうぜ!」
「「「「やっちゃるぜ!」」」」
作戦が決まり、ついに敵艦隊への攻撃が開始されるーーー。
ーーーーーーーーーー
「艦攻隊全機!突撃体形作れ!!敵艦隊の右翼から接近するぞ!!」
隊長の指示に従い、艦攻隊各機が突撃体形を作る。
「全機よぅく聞け!我々赤城艦攻隊が、敵艦隊攻撃の一番槍の名誉を戴く!ここまでの戦闘では温存するためとはいえ、加賀航空隊にケツを拭いて貰ってきた!今こそ屈辱と鬱憤を晴らす時!我らの狙いは重巡リ級と駆逐ハ級!野郎共、魚雷の槍を敵さんにブッ刺すぞおおおおお!!」
「「「「我らの魚雷は最強の槍ィィィィィィ!!」」」」
隊長の鼓舞に燃え上がる艦攻隊が、低空から敵艦隊へ接近していく。
深海棲艦もそれに気づいたようで、すぐさま対空射撃が開始され、視界が弾幕で覆われる。
「ふはははは!そんなへなちょこ弾があたるかいな!」
しかし、艦攻隊は大笑いしながら低空飛行を続け、弾幕の下を潜っていく。
肝が座っているのか、怖いもの知らずなのか・・・まあそれは今はどうでもいいことだ。
「これで弾幕ってか?なめられたもんdうわちぃ!?」
「4番機!?くそ!4番機がやられた!」
それでも弾幕は弾幕。絶え間なく射撃される機関銃が艦攻隊の行く手を阻む。
そして不運にもつかまった艦攻が空中で爆散する。
弾幕はパワーとは、よくいったものだ。
「ビビってるんじゃねぇぞ野郎共!タマぁついてんなら度胸を見せやがれ!」
「下品ですぜ隊長っととと!?右翼に被弾した!だがこのくらいで退くと思ったか!進路ヨーソロー!」
数十機からなる艦攻隊だが敵艦隊に近づくごとに、被弾し、墜落や爆散する機が増えていく。
「ぐはぁっ!・・・・・・赤城・・・オイラの・・・牛缶・・・・・・食うな・・・よ・・・。」
「被弾した!?このオイラが!?・・・だがまだいけrぐわあっ!?」
だが機体に穴が空き、発動機が黒煙を噴こうとも、彼らは一歩も退かない。
そしてついに、隊長機が魚雷を投下する。
「この弾幕を抜ければ・・・!よぅし、投下地点だ!魚雷投下ァ!!たっぷり味わいなぁ!!」
「隊長に続きやすぜ!赤城デリバリーから魚雷のお届けでーーす!!投下ァ!」
「返品、交換は受け付けておりませーーーん!魚雷投下ァ!!」
「クーリングオフ?なにそれ、おいしいの?魚雷投下ァ!!」
弾幕を掻い潜った後続機も続いて魚雷を投下していく。
魚雷は水面下を凄まじい速度で敵目掛けて走り続け、そしてーーー。
「G")oe!?4G"'33!?」
「bbW2・・・dR"]k・・・?」
重巡リ級と右翼の駆逐ハ級に魚雷が命中し、悲鳴があがる。
駆逐ハ級にはその後も次々と魚雷が襲いかかり、あっという間に撃沈された。
「これで終わりと思うなよ?カス共め!」
そう、まだ航空攻撃は終わってはいないーーー。
ーーーーーーーーーー
敵艦隊のはるか上空、眼下に見える艦攻隊が突撃体形を作るのを確認し、艦爆隊長が口を開く。
「・・・・・・始まったようだな。では、こちらも始めよう。全機、突撃体形を作れ。」
隊長の静かな指示に従い、艦爆隊が2隊に別れ、縦列の突撃体形を形成する。
「我々の目標は2隻の軽空母ヌ級だ。これを爆撃し、敵の発艦能力を奪って第2次航空攻撃を阻止する。」
艦爆隊の各機は静かに隊長の言葉を聞いている。
血の気の多い艦攻隊とは対象的に、こちらは落ち着いた雰囲気だ。
「敵の対空砲火は艦攻隊が引き付けてくれている。我々にとってこれ以上のお膳立てはない。」
隊長は隊列各機へ通信を送りながら、再び眼下の艦攻隊の様子を見る。
作戦通り、敵は艦攻隊に気を取られてこちらには気づいていない。
(やはり、全砲火が集中した弾幕を抜けるのは至難の技か・・・。何機か墜とされているな。)
「我らが艦爆隊には、急降下に怖じ気づいて操縦悍を引く臆病者はいない。そうだろう?」
隊長の静かな鼓舞に、隊列機が応える。
「いつでも準備はできています!」
「艦攻隊の犠牲、無駄にはしませんよ!」
艦爆隊も、艦攻隊に負けず劣らず、士気は高いようだ。
燃え盛る業火が艦攻隊ならば、こちらは静かに燃える炎といったところか。
そして艦爆隊が敵艦隊の直上へと到達する。
「敵がようやくこちらに気づいたようだな。だがもう遅い。全機突入!こちらからもプレゼントをお届けしよう!」
「「「「了解!」」」」
いよいよ始まった対空砲火をものともせず、隊長の合図と共に機体を反転させ、急降下に入る艦爆隊。
敵艦隊を見ると、艦攻隊の魚雷攻撃が成功し、損害を与えているようだった。
「駆逐ハ級を1隻葬ったようだな。対空砲火も弱くなっている。」
「この程度の対空砲火など恐れるに足らず。ですね。」
急降下しつつも状況を分析する艦爆隊。
余裕の落ち着きということだろうか。
「高度よし、角度よし、爆弾を投下する。」
そんな1コマも束の間、隊長機が爆弾を投下した。
隊列機もそれに続く。
「ここだ!爆弾投下!」
「爆弾投下ー!離脱しmうわあ!」
「くそ!7番機が対空砲火に捕まったぞ!投下!」
「誰だ、ビッグ7ならぬラッキー7とか言ったやつは!爆弾投下!」
弱くなったとはいえ、さすがの対空砲火だ。
爆弾を投下し、離脱の為に機体を起こした所を狙われて、数機が弾幕につかまる。
「やはりこちらにも被害はでるか・・・しかし!」
投下された爆弾は目標目掛けてまっすぐに落ちていき、そして・・・。
「命中を確認。軽空母ヌ級の撃沈を確認。」
「こちらもヌ級の中破を確認しました。これで敵の第2次攻撃はありません。」
艦爆隊の爆弾も次々に命中し、敵空母の無力化に成功した。
戦果を確認した攻撃隊は、用は済んだとばかりに空域から離脱していく。
「よろしい。では艦攻隊と合流して赤城に帰投しつつ、戦果を報告するとしよう。艦隊はもうそこまできているはずだ。」
「「了解!」」
ーーーーーーーーーーつづく
第8話です。
いかがでしたでしょうか・・・。
今回は艦攻隊と艦爆隊の連携攻撃でした・・・が。
・・・・・・書いててめっちゃ疲れました・・・(@q@)
今後は省略していくと思われます・・・たぶん。
まあ、艦これでは一瞬の出来事ですが、その中にはこんなドラマがあるんだろうなーって思って楽しんで貰えてたら幸いです。
次回はいよいよ砲雷撃戦に突入していきます。
ちゃんと書けるのか心配になってきました・・・。
では、次もお楽しみくださいませ。また~