不見倶楽部   作:遠人五円

35 / 43
不見倶楽部の特別講師

  オカルト総会も無事に終わり一日の休養を経て再び学校へと向かう願子たち。オカルト総会が終わったためにこれから始まる修行のため部室へと向かっていた。

 

  相変わらず容赦の無い夏の日差しのなか汗を垂らしながら諏訪の湖畔を歩く願子と友里は校門前で待ち合わせをしていた杏と塔子を見つけて手を振った。その元気の良さだけは夏の暑さに負けていない。

 

「お待たせー」

「おはようございます、願子さん、友里さん」

「おはよう」

「おはよう杏、塔子」

 

  朝八時にいつも通り集合して入る学校にはやはり人の姿は無い。お盆中だということもあるが、一葉高校の運動場や体育館で他の学校のように生徒が部活動に勤しんでいる姿は見られず今年も彼らは予選落ちのようだった。人気(ひとけ)の無い学校の外周を歩く、いつもならすぐに部室に向かうのであるが、学生用の駐車場へと四人は向かう。その理由は今杏が押している相棒のためだ。

 

「それにしても知らなかったよ、杏ちゃんがそんな大きなバイク持ってるなんて」

「伯奇が来た時願子を追ってバイクで走っていった時はあたしもびっくりした。人は見かけによらないって言うけどさ」

「でも伯奇さんに壊されたというのに直って良かったわね」

「はい! そこは紫さんに感謝ですね! いつもは先生たちにバレないように乗ってきて近くに隠してたんですけど副部長先輩が許可を取ってくれて良かったです!」

 

  一葉高校は基本的に自転車通学はOKなのであるが、バイクや原付での登校は認められていない。だがどうやったのか本日から杏のバイク通学が認められたのだ。学校側にどう認可させたのか願子たちには分からないが、生徒会長をおそらく頼っただろうことは分かる。ピカピカの杏のバイクは異様な存在感を放ち、夏休みで学校に置いていった生徒たちの自転車と並んでいるのを見ると自転車が少し可哀想だった。

 

「今日から修行が始まるって副部長は言ってたけどさ、なんかあんまり実感湧かないよね」

「あたしは前から副部長と特訓してたけどあたしも最初はそんな感じだったから、そんなもんじゃないの?」

「そうですか? 私はちょっと緊張してますね。ドゥカちゃんを持って来いって副部長先輩に言われてましたから私は始まるんだって感じが強くします」

「私もおまじないのアクセサリーを出来るだけ厳選して持って来いって言われたわ」

 

  いつも以上に朝日を受けてギラギラ光るアクセサリーに願子と友里はそういうことかと納得した。いつもよりジャラジャラうるさい派手なアクセサリーをどうやって外させようかと悩んでいた二人は今回はそれは無理だと結論付け部室への道を急ぐ。

 

  静か過ぎる校舎の中に響くのは四人の足音とアクセサリーの騒音だけ、昼間だというのに人のいない学校は、広いこともあり絶好の修行場なのかもしれないが、不気味でもある。実感の無いと言っていた願子と友里もだんだんと錆びれ汚くなっていく廊下を幾分か歩き目的地に近づく事に少しずつ緊張感が顔を出し始めた。目に入る過剰に豪華な両開き戸を前に一度大きく息を吸って願子は扉を開けようとしたが、取っ手に手を触れるよりも先に扉が開き、ぶつからないように後ろに急いで下がる。

 

「よく来たなぁ! 待っていたぞ!」

 

  腰に手を置き大きな胸を張って満面の笑みを浮かべた生徒会長が出迎えてくれた。咄嗟のことでぽかんとする願子たちの肩を痛いくらい叩き部室へ引き入れると、中には副会長、伯奇、橙、副部長もいつもの場所におり疲れた顔で座っていた。

 

  どういうことかと四人は副部長の方を見るが無言でソファーの方を目で指し、座れと言っている。どうしようとそれでも立っている四人を生徒会長が強引に座らせ副部長にコーヒーを頼む。嫌そうな顔を副部長は返したが、それでも淹れるらしく席を立った。

 

「ふふふ英雄のお帰りだ! 諸君! よくやってくれた! 念願の賞状、我が一葉高校念願の初賞状だぞ! 君たちこそ百年以上に及ぶ我が学校の歴史を変えたのだ!」

「あれだけ潤沢(じゅんたく)に部費があるのにそれぐらいやって頂けなければ困りますけどね」

「細かいことはいいじゃないか副会長、これは快挙だ! 伝説だ! もう連絡を受けた時は嬉しすぎて涙が出てきたぞ!」

 

  生徒会長は労うためにわざわざ朝早くの部室にいるらしい。副部長の顔を見る限り願子たちが来るよりずっと前から生徒会長の相手をしていたようであり、願子たちはお疲れ様と心の中で労いの言葉をかける。副会長の吐く毒もものともせずに賞賛してくる生徒会長は、嬉しくはあるのだが少し面倒臭い。しかし、心の底から喜んでいることが分かる生徒会長を見ていると願子たちの頬も自然と緩んでしまう。

 

「いや本当によくやってくれた!」

「会長、先程から同じことしか言ってませんよ」

「む? そうか、だがそれだけ私は嬉しいということだ。副部長もよくやったぞ、最優秀賞なんて流石は我が友だ!」

「もう飽きるほど聞いたよ一時間くらいな、まあお前が喜んでくれてるようで良かったから他の話は無しでどうだ?」

 

  呆れた顔の副部長の言葉を受けてようやっと生徒会長は普段の会長に戻った。肩に入っていた力を抜き、会長然とした顔に戻ると「そうはいかん」と口にする。急激に態度の変わる生徒会長のピリピリした雰囲気になんだかんだ言って生徒会長は凄いなあと願子たち四人は感心しながら傍観者のように副部長を見る生徒会長を見ている。

 

「お前たち不見倶楽部はいい。だがそうでない者に部費を使うのは流石に無しだ。そこにいる二人は我が一葉高校の生徒ですら無いだろう?」

「まあそうだが、なに会長、ちゃんと理由はある」

「ふむ、聞こうか」

 

  真面目な顔になった生徒会長に対して副部長が浮かべるのは怪しい笑み。いつもの生徒会長をあしらう時に浮かべる顔だ。副部長がこの顔を浮かべて生徒会長をあしらえなかったことは無い。そのため願子たちは未だ傍観者。何の心配もなく目の前で起こるだろう茶番にコーヒーを啜りながらただ眺める。

 

「その二人は言うならば運動部で言うコーチだ、うちの部の部員では無いが関係者。なら部費を使ったっていいだろう?」

「なに⁉︎ いやいくら何でも騙されないぞ! こんな若いコーチがいてたまるか! そっちの……なんだ? コスプレ? してる少女もそうだと言うのか⁉︎ というかなんだあの格好は副部長お前まさかそういう趣味があったのか⁉︎ おい頼むから違うって言ってくれぇぇぇぇ! さなちゃんに顔向けができないじゃないかぁ!」

「くそ、話がズレたと思ったらなに言ってやがる! 俺にそんな趣味があるわけないだろうが! ありゃ化け猫でもともと生えてんの!」

「ちょ、ちょっと副部長‼︎」

 

  それ言っていいの? と傍観者を止めて声を上げる願子の心配をよそに、「なんだ化け猫か」と生徒会長は慌てた素振りも見せずに額を腕で拭う。生徒会長だって東風谷早苗と副部長に昔から付き合いがあるから今更化け猫くらいで驚くわけがない。

 

「だがダメじゃないか副部長、我が学校はペット禁止だぞ」

「はあ⁉︎」

 

  これに声を上げたのは橙だ。部室に来てすぐに副部長を褒めちぎり始めた生徒会長は伯奇と橙には見向きもせずにずっとしゃべり続けたと思えば気が付いた瞬間にこれである。文句の一つでも出るだろう。ただ生徒会長の少しぬけた行動のせいで橙も気が付いていないが、橙は別に姿を最初から現していたわけではない。菫子同様に気がつかれないようにしていたのだが、普通に気が付いた生徒会長の異常性に生徒会長の性格のせいで誰も気がつけないでいた。願子たちが強くなる道は遠いなと副部長はため息を吐き、伯奇も僅かながら驚愕する。

 

「誰がペットよ人間‼︎ っていうかお前生徒会長って呼ばれてるってことは、あんたが春夏秋冬 芍薬(ひととせ しゃくやく)ね!」

「うわぁぁぁぁ‼︎ なんでお前私の名前知ってるんだ! 止めろぉ‼︎」

「え、会長ってそんな名前なんですか?」

「なんだ悪いか瀬戸際願子! どうせラノベのキャラっぽいとか奇抜過ぎる言うんだろ! 私だって好きでこんな変な名前になってるわけじゃあないぞ! 副会長ぉぉぉぉ!」

 

  副会長の胸に飛び込み泣く会長からはすっかり学校の頂点にいる者の姿では無くなっている。会長の頭からはすっかり伯奇たちのことなど抜け落ちてしまった。そんな生徒会長の代わりに適当に会長をあやしながら話を引き継ぐ。

 

「驚きました。まさか会長の名前をご存知だとはどうして知っているのですか?」

「そういうお前は確か山田 華子(やまだ はなこ)だったっけ? 別に聞いただけよ」

「私の名前まで知っているとは……聞いたとは誰にですか? まさか副部長は無いでしょうし」

「さっきそこの芍薬が自分で言ってたじゃない。東風谷早苗に聞いたのよ、耳が痛くなるほどね」

「わぁぁぁぁ! 私の名前を呼ぶな!……ってちょっと待て、今早苗って」

「言ったわよ、東風谷早苗。お前と副会長と副部長の話はそれはもう嫌という程聞いたわ」

「本当にさなちゃんから? おい副部長この子はいったい何者だ⁉︎」

 

  東風谷早苗の名前を出されたことによって一気に復活した生徒会長が副部長に詰め寄った。もともとの問題がそっちのけになったのは喜ばしいことだが、さらに疲れそうな問題に副部長は肩を落とす。目の前にいる期待に目をキラキラさせる生徒会長を見て諦めて副部長は話し出す。

 

「名前は橙、幻想郷からやってきた客人だよ」

「幻想郷から! さなちゃんは元気か? 病気とかしてないか? 友達はできたか? あとは」

「ちょっとそんな質問攻めにされたって答えられないわよ芍薬!」

「いいじゃないかちょっとくらい教えてくれても!」

 

  早苗の名前を出されて黙っている生徒会長ではない。これ見よがしに橙に名前を呼ばれてももうそんなことは気にせずに早苗のことを教えてくれと生徒会長は食い下がる。生徒会長だって東風谷早苗の親友なのだ。遠く離れた親友がどうなったのか気にならないわけがない。勿体ぶって喋らない橙だが東風谷早苗の名前を出したのは失敗だったと言える。生徒会長はそこまで好戦的な性格はしていないし、副部長だってそうだ。だがこういうときのために生徒会長の側には常に鋭く研ぎ澄まされた刃が佇んでいる。そして残念なことにその少女もまた東風谷早苗の親友なのだ。

 

  自分が優位に立っていると勘違いして偉そうにしていた橙の足元に三本のクナイが姿を現す。あまりの速度に刺さった時の衝突音が遅れて聞こえて来るほどだ。橙はそれに気づいたかと言われればそうでなかったと言える。静かだが身体から目に見える程の黄色いオーラを出す副会長の姿を見て橙は完全に萎縮してしまった。

 

「話して頂けますか?」

「いや、あの」

「話して頂けますね?」

「……はい」

 

  口調は丁寧だが完璧に脅迫だった。戸隠で少しお茶目さんだった副会長を見て副会長に対する抵抗が無くなっていた願子たちだが、絶対に怒らせてはいけないと心を新たにする。

 

「でも別にこれと言って話すことは無いわよ、私別に東風谷早苗とそこまで親しいわけじゃないしね。私の知ってることは幻想郷で異変が起きたら信者獲得のために毎回駆け回ってるってことと宴会があると早々に酔っ払ってお前たちや副部長の話を話すだけ話して真っ先に酔い潰れてるってことくらいよ」

「さなちゃんは何をやってるんですか……」

「おい、俺を見るな。知らんぞ」

 

  東風谷早苗のがっかりな日常を聞いて副会長の表情筋が無いんじゃないかと思われる顔が誰が見ても分かるくらい呆れたものに変わっていく。そんな副会長の視線に晒された副部長は身の潔白を証明するが、全く信じてもらえていないということが傍目で見ていた願子たちにも理解できる。それに加え副部長から凄いと聞いていた部長のがっかりさに四人も副会長同様に呆れた顔になってしまう。

 

「まあ副会長落ち着け、さなちゃんが元気そうでよかったじゃないか」

「なによ芍薬、それだけでいいの? もっといろいろ聞いてくると思ったんだけど」

「うむ、それだけ分かれば私は満足だ。宴会によく出ているんだろう? 宴会とは一人では出来ないからな。それにそこで真っ先に潰れても安心だからこそ潰れるんだ。なあ副部長?」

「そうだな」

「さなちゃんのことが聞けて良かった。橙と言ったな、ありがとう‼︎」

 

  確かになんとも残念な東風谷早苗の話であるが、逆に考えればそんなことをしても問題ないくらい早苗は幻想郷を謳歌しているということだ。遠くへ旅立った親友の無事に生徒会長と副会長は顔を綻ばせ橙にお礼を言った。なんの意図もないただ純粋なお礼に橙はどうしたらいいのか分からず頬を掻いて誤魔化す。

 

「全く副部長といい芍薬といい本当に変な人間。お前たちならきっと幻想郷でも上手くやれるわね」

「お褒めに預かり光栄だがさなちゃんと違って私は幻想郷に行く気はないよ。ただ私を名前で呼ぶな! 私は生徒会長だ!」

「分かったわよ会長」

 

  あまり人間のことを好んでいない橙でも生徒会長は別らしく、直ぐに会長という呼び名に戻る。裏表のない生徒会長の姿は、例え相手が人間では無くても不思議な魅力ですぐ仲良くなれるようで、生徒会長のことをよく知っている副部長と副会長は少し驚く。だがすぐに会長だからなあと自己完結するのだった。

 

「さて、いい話も聞けたことだし副部長!」

「なんだよ帰るのか?」

「そんなわけないだろう、橙の話と部費の話は別だ。化け猫は確かにオカルト研究部とすればいてもいいかもしれないがそこの彼女は違うだろう。見たところ制服を着て未成年、流石にコーチでは通らんぞ」

 

  復活した生徒会長は話まで復活させ副部長の顔から笑みが消える。言い訳はいろいろと思いつくが、それを間に受けるほど取り乱していない生徒会長は甘くない。それが分かっている副部長は内心汗をかくが、部室にある時計が八時半を指していることを確認すると先程とは打って変わってまた悪い顔になる。

 

「いや生徒会長、コーチで合ってるよ」

「む、なら証拠を」

 

  生徒会長の言葉は最後まで続かなかった。ゆっくりと開く部室の扉から発せられた軋む音が生徒会長の話を掻き消したからだ。不見倶楽部の関係者が全員部室にいる中でいったい誰がやってきたのか。誰もが開いた扉の先を見つめ、副部長の顔が嫌そうではあるが、口は弧の字に歪んでいく。

 

  扉の先にはOLと言われればそう見えるスーツ姿の女性がいた。目立つ金髪を存分に揺らして部室に入ってくる女性に願子たちは一度会っている。異様に似合っているスーツ姿の女性の名は八雲紫。眼鏡をかけて来客用のスリッパを履いていても人形のような怖いくらいの美しさや幻想郷の賢者としての格の高さを隠し切れていない。一葉高校の生徒の頂点である生徒会長とは違ったベクトルのカリスマ性を放つ姿に願子たちは声も出ないが、こういうことに慣れているのか生徒会長と副会長は驚くほど普段通りで、部室の扉を閉めて目の前にやってきた女性を前に生徒会長が前に出る。不見倶楽部を訪ねてくるという怪しさもあり生徒会長の口調には少し威圧的な色が含まれた。

 

「これはどうも、来客の方ですね。我が高校になんの御用でしょうか?」

「貴女がここの生徒会長さんね。噂は聞いていたけれど……なるほど、面白いわね貴女」

「御用向きを聞いているのですが?」

「あらそうだったわね」

 

  願子たちも初めて見る警戒の色が強い生徒会長の姿は、普段うっかりでおちゃらけている少女には見えない。これこそ学校の頂点にいる生徒会長の真の姿だ。生徒会長の力強い言葉に背筋に微弱な電流を流されているかのように無意識に背筋がピンとなってしまう願子たちとは違いまるで堪えていない紫は懐から名刺を取り出すと丁寧な動きでそれを生徒会長へと手渡す。

 

「私はボーダー商事の八雲紫と申しますわ、この不見倶楽部に臨時講師として呼ばれましたの。先にうちの博麗伯奇を手伝いに寄越していたのだけれど、連絡が遅くなって悪かったわね」

「なに?」

 

  名刺をしげしげ見つめる生徒会長だが、名刺に別におかしなところはない。ボーダー商事代表取締役『八雲 紫』と書かれた名刺を副会長に手渡してそこから離れると再び副部長の前に出る。

 

「副部長」

「悪かったな会長、それと重ねて悪いな」

「全く……お前風に言うなら見れば分かるというやつか。ただし釘は刺すぞ、なにをするかは知らないが校舎は壊すなよ。後、今度ゆっくり話をしよう」

「分かった、ありがとうな会長」

「よせ水臭い。副会長帰るぞ」

「はい会長。副部長、会長との話の際は私も今回はご一緒させて頂きます」

「あいよ」

 

  願子たちにはまるで分からないが、何かを察した生徒会長はそれだけ言って副会長と共に出て行ってしまった。ゴールデンウイークの時のように小難しい話になるんじゃないかと考えていた四人の予想は裏切られ、部室に残った一番の違和感である八雲紫に全員の視線が集中する。

 

「ここは面白いところね副部長。貴方といい彼女たちといい東風谷早苗といい神代には及ばないけれどいつから諏訪は特異点のようになったのかしら」

「会長たちには手を出さないでくださいよ、いくら紫さんでもあの二人に何かしたら許しません。その時は俺が敵になると思ってもらって結構」

「あらいやだ、私が気に入った人間全員にちょっかいを出してるみたいじゃない」

「その通りでしょう」

 

  幻想郷の賢者に副部長は全く遠慮がない。刺々しい副部長は普段あまり周りを気にしないが、願子たち後輩や生徒会長については違う。自分が大事だと認めたものに限ってはこの男はどこまでも本気になる。普段よりもこっちの方が気に入っている紫は口角を上げて視線を切ると自分の従者の従者へと目を向ける。

 

「元気そうね橙。頑張っているようで何よりよ」

「はい紫様! ですが申し訳ありませんこんなところにわざわざ来て頂いて」

「あらいいのよ、これも約束ですもの。さて、貴女達と会うのは二度目ですわね。いちいち説明などはされたくないでしょうし私が来た理由はお分かりね?」

 

  橙から視線を外すとその目は今度こそ願子達へと向けられる。眼鏡越しに覗く黄金の瞳が発する威圧感は半端ではない。それがこれから始まることの過酷さを現し、ふわふわとした現実感のなかった今を一気に引き締める。

 

  ついに始まるのだ。引き返せるタイミングは伯奇を倒した次の日にもう終わっている。突如訪れた大きな人生の分岐点で願子たちは不見倶楽部に残ることを選んだのだ。覚悟は既にできている。後はそれを口に出すだけだ。

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」




次回は修行と行きたいところなのですが、書きたい話が多くて困りますね。生徒会長と副部長の話。東風谷早苗の幻想郷での話、八雲一家の話、どれも閑話となるでしょうがちまちま書いていきます。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。