不見倶楽部   作:遠人五円

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凡人の意地

  諏訪の夜に再び花火が上がる。一般人ではどうにもならない光の脅威が空を走り、街灯の柱をへし折り大地を抉る。突っ立っているだけの四人の間を縦横無尽に走り抜け、光の奔流が不見倶楽部の四人の目を焼いた。どこにくるかも分からない弾幕の雨を伯奇以外にただ一人見ている者がいる。

 

  願子のかける似合わない虹色のレンズ越しに(うごめ)く真紅の輝きは弾け、走り、渦巻き続ける伯奇の感情を怖いながらもその感情を押し殺し、目を閉じずに飛来する弾幕から目を離さず覗き続ける。

 

  四人がこの場を離れずまだ弾幕の中に立っていることが出来るのは(ひとえ)に願子のおかげだ。魔力も気力も伯奇と違って使い方の分からない願子が唯一勝っているものは好奇心の強弱でしかない。だが、願子の底知れぬ好奇心が、今回は四人を良い方向へ進めていた。

 

「友里しゃがんで! 杏ちゃんは左に! 塔子はジャンプ!」

 

  どこまで行ける? どこまでやれる? 副部長と違って凄いことなど何もない自分たちがどこまで行けるのか見てみたい。不見倶楽部として過ごした数ヶ月は無駄ではないと信じたい。別に誰かと闘いたい訳ではないが、それでも副部長に自分たちは近付いていると信じるために。先走る伯奇の感情を追い走る弾幕を見逃さないように願子は見ることに集中する。その願子の指示に一片の疑いも持たず友里、杏、塔子の三人が動き、迫る弾幕をかわし続けていた。

 

  かれこれ五分、不見倶楽部の四人が放たれた弾幕を避け始めてから五分が経過した。避け続けている四人は凄いがそこまででしかない。五分経って四人は息が上がり始め、このままではいずれ被弾するのは確実だ。何より四人は副部長と違い一発でもまともに当たればそれでリタイアしてしまうだろう。だがそれで終わりにしてしまうわけにはいかない。あれだけ啖呵(たんか)を切ったというのに、何もせぬまま倒れたのでは格好がつかない。

 

  だがどうする? 願子の顔に浮かぶのは焦燥の色、この場で願子の働きは目を見張るものがあるが、見るだけでは相手を倒すことができない。

 

「ほーら、あんよが上手あんよが上手。なかなか頑張るじゃねえか、意味もねえのにさあ」

 

  うすら寒い笑みを浮かべて伯奇から齎される弾幕の密度が少し上がる。願子の視界が赤い光に染まっていく。

 

「みんな伏せて‼︎」

 

  願子の叫びに脳が理解するより早く反射で全員が地面に伏せる。友里は別としても、経ったの四ヶ月とはいえ不見倶楽部という特別な空間で共に過ごした信頼がなせる技。

 

  頭上を通り過ぎる深紅の波は願子たちの後ろに聳える電柱やベンチを粉々にすり潰して元の形さえ分からない。

 

  やばい無理だ打てる手が無い。願子の頭の中では諦めの二文字が大きく脳内を侵食していく。今まだ四人が無事なのは伯奇が舐めに舐めて遊んでいるからだ。地面に足を付けて立っているのもそう、その段階だから願子の指示で避けられているが、もし伯奇が少しでも本気になれば、副部長に放ったような弾幕を放たれれば無事では済まない。まず間違いなく最低でも死んでしまうだろう。

 

  その考えは願子だけでなく、杏も塔子も同じ考えが頭を過る。しかし、そんな中で願子の視界に映る一つの違和感。友里が見ている。願子の方から目を離さず何かを訴えるかのように強い目の輝きが願子の目を射抜く。

 

「友里?」

 

  友里の目が言っている。ここは自分に任せろと言っている。長い付き合いだからこそ分かる。友里が何も言わずに強く此方を見つめる時は自分に全て任せろという時。レンズの中に友里の激しい感情が渦巻き、その輝きが強く願子に訴える。

 

  いいのか? 本当に? 何をするのかは知らないが、もしここで友里に頼って友里が怪我をすることがあったら、死んでしまうことがあったら自分で自分を許せない。

 

  だがやるしかない。親友がやれると言っているのに、それを無下にできるほど願子は優しくは無かった。

 

「友里! 左に避けたら次に右に三歩! そしたら開ける! お願い‼︎」

「オッケー! 任せて!」

 

  来た、この時がついに来た! 『こちやさなえ』から四ヶ月、願子のため、親友のために力を貸せるこの瞬間をずっと友里は待っていた。そして願子からようやっと信頼が渡される。例えこんなことがなくても願子は自分を信じてくれている。だがそれだけではない、しっかりと言葉で欲しいものを受け取れた。

 

  足が軽い、疲れた身体が今動き始めたかのように自然に動く。迫り来る弾幕をまず左に避ける。きっちり右に三歩足を出せば、顔の横を霊力の塊が通過する。視界が開けた。

 

「舐めんじゃないの‼︎」

 

  そうこの時、この時のためだ。およそ二ヶ月ほぼ毎日副部長と血反吐を吐くような特訓をした。次は自分が殴るためだ。親友たちの障害を他でもない自分が殴るため。

 

  握る友里の右拳がほのかに輝き信じられないほどの熱量を持つ。副部長は友里との特訓の際手を抜くことは無かった。友里が怪我をしないように最低限の注意を払っていたが、飛び散る龍脈の輝きに触れることになった友里が得たのは、それを弾くために身に付けた僅かばかりの気の操作。自分の中に巡る熱い思いが薄っすらと拳と足から(にじ)み出し、地面に踏み込んだ足が大地を抉り友里は風になる。

 

  決して消える程の速さではない。しかし、油断していた伯奇に肉薄するには十分過ぎるスピードだ。伯奇の顔が僅かに歪んだ。

 

「てめえ!」

「くらえ‼︎」

 

  突き出された腕は確かに伯奇に伸ばされた。響くのは固い激突音。歪んでいたはずの伯奇の顔が笑みに変わる。友里の拳は伯奇の周りにある不可視の領域に(はば)まれていた。

 

『結界』

 

  博麗の技の真骨頂の一つ。その堅牢さは世界最高峰、残念ながら今の友里にその領域を越えることはできはしない。

 

「なんちゃって、いい夢見れたか? 消えろ」

 

  伯奇のお祓い棒が無造作に振るわれ、数多の弾幕が友里に迫る。

 

「まだです‼︎」

 

  友里の作った隙を突いて近づいていた杏が友里を無理やり引っ掴み、その場から転がるように離れた。間一髪、友里がいたはずの地面に弾幕が沈みぽっかりと小さな穴を残して弾幕は消え去る。

 

「ちっ‼︎ うざってえなあ」

「友里! 杏ちゃん後ろに下がって!」

 

  願子の指示を受けて即座に二人は後ろに下がる。二人のいた位置に上から大きな弾幕が沈んだ。その弾幕がバリケードのように伯奇と四人を分け、一時の静寂が辺りを包んだ。

 

「ごめん願子あたし無理だった……」

「どうしましょう願子さん」

「あら……ちょっと不味いわよ、ちょっとね」

 

  友里の動きは凄かったが、それで分かったのはそれでも通用しないということ。詰み? これで終わり? 僅かな希望ももう見えず伯奇の弾幕に沈むしかないのか? そんな思いが三人の内に渦巻くが、願子だけは違った。なぜなら見えていたから、友里の行いは決して無駄ではなかったから。

 

「大丈夫、友里もう一度行ける?」

「でも……」

「お願い、見えるから分かるの。友里にしか頼めない」

「……分かった。任せて!」

「うん、杏ちゃんと塔子もお願いあいつの気をそらして」

「「了解(です)‼︎」」

「ん? なんだよ作戦会議か? 無駄だな」

 

  伯奇はまだ油断している。ここが最後のチャンスで間違いない。願子が見たのは僅かな伯奇の結界の綻び。何度も副部長に叩かれすり抜けられた結界、その結界の綻びが友里の手から結界に沿って僅かに流れた気の流れがその綻びを願子にはっきりと見せてくれた。ならば後はそこを撃ち抜くだけだ。

 

  四人が覚悟を決める。これ以上何も言わなくとも全員分かっているからだ。これが自分たちのラストアタック。成功しようが失敗しようが自分たちの最後の行動となる。その四人の表情に気が付いたのか、伯奇も僅かに眉を(ひそ)めた。

 

  間髪入れず友里が突っ込んだ。

 

「友里左に四歩!」

 

  願子たち四人の中で唯一闘えるのが友里だと分かったからか、伯奇の弾幕が友里一人へと集中する。ここからは願子と伯奇の勝負だ。本気でないとはいえ永遠と放たれ続ける霊力の雨の軌道を見極めて友里に伝えるのは願子の役目。友里からそれる弾幕に気をつけ、それでも願子は目だけは伯奇から離さない。

 

  紙一重で友里は迫る弾幕をかわし、空いた空間へと足を向ける。願子の視界の中を駆ける友里に向かって伸びる感情の線が絡みつき、友里の左手前に赤色が弾けた。

 

「友里! 次は右に跳んで!」

 

  間髪入れず飛ぶ願子の指示に一切の疑問を持たず友里は右に飛ぶ。友里の元いた場所へ高速で飛来した弾幕が、その場所をことごとく吹き飛ばした。普通に歩けば友里と伯奇の距離は二十歩くらいだが、その距離は限りなく遠い。

 

  右に、左に、飛んで、しゃがんで、休憩する時間は与えられず、途切れることのない弾幕の雨の中をそれでも少しずつ友里は前に進んでいく。副部長との特訓で身に付いた体力と身のこなし、微々たるものではあるが、手足から滲み出る気のおかげでなんとか友里は()っている。

 

  残りおよそ十五歩の位置、ここまで友里が近付くのにおよそ五分、最初と比べ僅かに力の入った伯奇の弾幕を避けて進むだけでこれだけの時間が掛かってしまう。もう少しでも本気を出されれば動けなくなりすぐにゲームオーバーだろうが、可笑しそうに片手間にお祓い棒を振るう伯奇からはまだその予兆は見られない。

 

「頑張るねえ、そうやって身を粉にしていったいなんになるんだ? お前らだって分かってるだろ、絶対にあたしに勝てないってことぐらい。精々あたしの敵になりそうなのはお前らの副部長くらいで、悲しいかなお前らじゃああいつの十分の一程の脅威もねえ」

「うるさい!」

「お前避け続けてる割にはまだ元気だなおい。うるさいねえ、じゃああたしの声が聞こえないようにしてやるよ金髪野郎、お前がいなくなったらそれで終わりだ」

 

  僅かに笑みを深めた伯奇から速度を増した弾幕が友里の元へと殺到する。人の身で反応出来ない速度の弾幕は、見ていたはずの願子も反応できず、次の瞬間には友里が被弾してしまうだろう距離まで近づいた。

 

  終わる?

 

  いやまだだ。目前まで迫る霊力の塊を気を滲ませた友里の拳がはたき落とした。纏うというところまでいっておらず、その霊力の力に焼かれる痛みが友里の手を襲うがそんなことに構っている暇はない。二つ目、三つ目と迫る弾幕を反らし、叩き、身体にだけは当たらないように手を出し続ける。弾幕が止み、たった数秒の出来事だったにも関わらず、友里の両手からは血が噴き出し、目も当てられないほどボロボロだ。

 

「なかなか粘るな、だがその手じゃあもうあたしを殴る事も叶わねえ。お疲れさんまあ頑張ったんじゃねえか? 雑魚の割にはさあ」

 

  再び高速の弾幕が友里に向かって落ちていく。友里も、塔子も、伯奇もこれで本当に終わりなのだと確信していたが、それとは全く異なる想いを持っている者が二人。

 

  一瞬の隙を突き、両手を広げて友里の前に立つのは杏。友里のように気を僅かでも扱えるわけではない。伯奇のように結界もない。防げる技を持っておらず、伯奇の霊力を受けるのはその身体ただ一つ。友里に当たるはずだった弾幕はそのことごとくが杏に直撃する。

 

「「杏(さん)⁉︎」」

 

  友里と塔子の絶叫が響く。無事なわけがない。平気なわけがない。噴き上がる血潮がポツポツと友里の顔を汚し、閃光が次々と杏の身体から上がり、友里に降りかか真っ赤な量を増やしていく。

 

  願子は奥歯が砕けるのではないかというほど歯を食いしばり、杏の方をちらりとも見ず伯奇の動きにのみ集中する。

 

  杏が飛び込む直前、当然願子には見えていた。だがそれを止める事はたとえ神でも叶わなかっただろう。声を掛ける暇がなかったとか、手を出す暇もなかったとか、そんな事じゃあない。願子の瞳に映るのは強固な杏の意思そのもの。

 

  友里を助けたい。伯奇に負けたくない。そんな想いの中心にあるのは勝ちたいという意思。勝つ。人の持つものの中でこれほどシンプルで強い想いは存在しない。

 

  杏がいったいどんな考えの元にそういう想いを抱いたのかは分からない。だが、それでもその杏の輝きが伯奇の光よりもずっと強く、それに一瞬でも見惚れてしまった願子に止める権利などないだろう。

 

  だから願子は伯奇を見る。今願子に出来る事は杏の行いを嘆く事でもなく、悲しむ事でもない。勝つこと。杏の望んだ勝ちを目指してただ進むことそれだけだ。

 

  肉の焼き焦げる嫌な臭いが充満し始め、真っ赤に染まり顔も見えない杏だが、膝を折ることもなくまだ二本の足で立っていた。意識があるのかも分からないほどフラフラだが、それでも崩れ落ちはしない。

 

「杏!」

「…………友里さん……行ってください…………私たち四人……なら……きっと……」

 

  杏から聞こえる声はか細く、諏訪湖のさざ波と同じくらい小さなものだが、それでもはっきりと友里の耳には届いた。杏はまだ立っている。どれだけ弾幕が来ようとも決してその場から離れる気は無いらしい。そんな杏に友里が出来ることは、願子と同じく先に進むことだけ。

 

  杏の想いが友里の心に火を灯す。踏み締める足に再び力が込められる。杏がもう自分を守らなくてもいいように白奇へ向けて飛び出した。

 

  しかし、それを黙って見ている白奇ではない。笑みを消しくだらないと顔を歪めるが、その白奇の顔を覆うように幾つかの影が降り注いだ。白奇の結界に阻まれそれが白奇に当たることはないが、自らに飛んできた異常な物体に目が奪われ少なからず白奇の動きが止まってしまう。

 

「なんだこれ?」

 

  結界に張り付いているのは髑髏のゴテゴテとしたブレスレット、紐にくくりつけられたお札、数多のなんの意味もないガラクタが白奇の視界を覆っている。

 

  願子も、友里も、杏も自分を示した。なら私は? ただ突っ立ているだけでこのとんでもない光景を見ているだけなのか? そんなわけにはいかない!

 

  『こちやさなえ』の時でさえ外さなかった装飾たちを強引に引き千切る。それで服が破れるのも気に留めず白奇に向かって放り投げた。

 

  そしてそれらは塔子の願い通り伯奇の元に辿り着いた。なんの効力もないおまじないたちにも伯奇の目を奪う能力はあったらしい。

 

「友里さん今よ!」

 

  どんな理由があろうとも、この一瞬が必要だった。残り十五歩の間合いを詰め、伯奇の前に友里が立つ。拳が握れないのなら、放つべきは蹴りしかない。結界という不可侵領域を踏破できないと分かっていても友里は大きく足を振りかぶった。伯奇の顔はニンマリと深い弧を描き、無駄だと嘲笑う顔が友里に向けられる。

 

  それを打開する術は『色眼鏡』が握っている。この瞬間のためにただ願子は伯奇を見続けた。伯奇を中心に球を描く透明な膜に走る小さなヒビ。副部長が拳で叩き、友里の気によって浮かび上がったその場所を、ようやっと願子が口にする。

 

「友里! そいつの左の顳顬(こめかみ)を蹴り抜いて‼︎」

「クソが‼︎ てめえら‼︎」

「了! 解‼︎」

 

  四人の想いが遂に届く。小さな小さな隙間を通り伯奇の領域に確かな一歩を踏み込んだ。軽い音に続いて重い衝撃が伯奇を襲い、赤い糸を引いて諏訪湖の手前まで吹き飛ばす。血が滴る顳顬を抑え、伯奇の顔が憤怒の表情へと変化した。

 

「なんだよお前ら凡人の癖にあたしの顔をクソ‼︎ なに蹴ってんだ! あたしをたった一発蹴れたからっていったいなんになるってんだよぁあ⁉︎ そんな頑張っていったいなんになる? 無駄なんだよ、無駄無駄無駄‼︎」

「無駄じゃない! 私たち四人は確かに弱い、それでもあなたを殴れるんだから! どれだけ掛かっても、どれだけ少しずつでもそれでもあなたを殴れるの!」

 

  叫ぶ伯奇に叫び返す願子の元に、杏に肩を貸して塔子の二人、戦う姿勢を崩さずに友里が並ぶ。脆いはずだ。弱いはずだ。吹けば飛ぶような四人なのにしつこく剥がれない四人に向ける伯奇の表情は優れない。死に向かいあっているはずなのに異様に晴れやかな四人の顔、その四人の顔が昔の自分を見ているようで。

 

「ざけんな、ざけんなクソ‼︎ 意味ねえんだよ、何をやろうともどんな想いだろうと圧倒的なものの前では意味なんてねえんだ! お前らだって知ってるはずだろうが! そうじゃねえのかヘンテコ眼鏡!」

「うん、知ってるよ。よく知ってる。でも知ってるからこそ近づきたい。どれだけ時間が掛かろうとそれらを前にしても引かない人も知ってるから、少しでもその人に近づいて同じ景色が見てみたいの、私たちには今はこれが本当に精一杯。でも、それでもそれが無駄じゃないってあの人が見ててくれるから」

 

  四人の視界が伯奇を前にしていながら溢れる想いを止められずピントがズレてボヤけていく。諦めや恐怖からではない。伯奇の姿はもう四人の目には映らない。

 

  湖が割れる。

 

  モーゼの奇跡のように。

 

  季節にしては早過ぎる御神渡りは、伯奇の前まで続いている。

 

  暗い波打つ水の壁に挟まれて、月明かりの下に二つの複眼が輝いた。

 

「お、まえ」

 

  ボロボロだ。願子たち四人と比べても、擦り切れ破れた学ランに、身体のあちこちに見られる流血の後、それでも四人に向けられる副部長の顔からは優しい笑顔が向けられており、目の前にいる伯奇を完全に無視してひとっ飛びに四人の前へと副部長は降り立った。

 

「「「副部長!」」」

「願子、友里、杏、塔子、四人とも頑張ったな。側には居てやれなかったけどずっと見てたよ。後は俺に任せて三人とも杏を連れて後ろに下がって見ててくれ、次は俺の番だ」

 

  副部長が再び伯奇の前に立つ。満身創痍だ。今にも倒れそうな気さえする。それでも願子たち四人の副部長を見る目に不安はない。

 

「なんなんだよお前ら意味わかんねえ!」

「なんだ知らないのか? 俺たちは不見倶楽部、お前を倒す奴らさ」

 

  副部長が拳を握る。深緑の両眼を爛々と輝かせてその眼は伯奇だけを見る。

 

 




この瞬間に限って言えば、願子、友里、杏、塔子の四人は誰より強い。

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