守護輝士様に試験会場と伝えられ、ついていった場所はアークス活動の出発点であるロビー。窓からは宇宙空間を望める、まさに最前線だ。
ただ、疑問も生じる。こんなところで試験なんてできるのかだろうか。まさか、いきなり実地試験だというのか?この方がいるにしても、それは酷だ。
「守護輝士様、俺たちはどこに行くのですか?」
「もう少し先だよ。それと、その呼び方は止めてくれないかな。堅苦しいのは嫌いなんだ。」
「し、失礼しました!」
喋りながらも歩みを進め、テレポーターへ。これの行き先はどこだろう?
「さ、つかまって。」
そう言われたあと、俺たちは光に包まれ、俺は眩しくて目を閉じた。
再び目を開いたとき、視界の半分をを黒が占めていた。天井には半透明の魚のようなものがぐるぐると円を描くように泳いでいる。そして前方には一人の女性。どうやら怒っているようで、姿を見るなりこちらに向かってくる。
「もう、どこいってたんですか!?まだ仕事終わってないんですよ!」
「ゴメンゴメン。その代わり、連れてきたよ、候補者。」
「候補者って…あっ!失礼しました!」
どうやら目に入っていなかったらしい。その女性は姿を確認し終えると、真ん中の椅子に戻りなにやらディスプレイを操作し始める。
「なんか悪いことしちゃったかな…あとでナウラのケーキ奢ってあげよう。」
「アネストロさん、仕事ってなんです?」
「いわゆる事務作業さ。各惑星で起きた諸々の報告とか後始末が主だね。今回の場合、アークス以外の人にも危害が及んだから、ちょっと面倒なことになっちゃったんだ。」
今回、一般住民にまで伝わった、異世界の人間にアークスシップへの侵入を許し、あわや乗っ取られかけたという事件。それこそ、アネストロさんがいなければ自分達も宇宙の塵となっていたかもしれない。
「フォトナーが遺棄した人造全知存在が原因とはいえ、あそこまで簡単に向こうの一般人に入って来られた。彼らとはもう敵対してないから良いけど、今後似たような事が起こらないとは言えない。」
「その為に、アネストロさんには働いてもらわないといけないんですよ~っと。」
作業を終えたとばかりに女性が声をあげる。
「改めまして、はじめまして!アークスシップ管理者兼アネストロさん専属オペレーター、シエラタイプハイ・キャストのシエラです!」
「シップ管理者って事は、一番偉いってこと…?」
ずっとだんまりだった彼女が口を開く。
「はい!そうです!へへーん。」
「異議ありッ!ボクがいなかったらシオンに出会えずにオラクルをルーサーに占領されてたんだぞ!誰も時間溯行出来ないし!シエラがここにいるのもボクのおかげなんだからね!」
「ぐ、間違ってはいないから反論できない…って喧嘩してる暇じゃない!今はお二人の検査が先です!」
「……コホン。ではまず、お二人のフォトン適性を検査しますので、私と握手をお願いします。」
これだけで検査できるのかと疑問に思いつつも、言われた通りにする。
「フムフム…悪くはないですね。お二人でクラス傾向がハッキリと別れてます。グラフに表すので少しだけお待ちください…パパっとやって~終わり!」
「次はどのような物語g…」
鈍い音をたててアネストロさんの頭へダメージを与えるシエラさんの略帽。あれって見た目の割に重いんだ…
「…ルークさんはブレイバー。テルさんはフォースに向いてますね。」
「いつの間に名前を?」
「不肖シエラ、実は解析も得意でして。触っただけで大体わかります。…プライバシーに関わることは、シャオに制限されてるのでご安心ください。」
なんか残念そう…そういえばブレイバーって、確かアネストロさんが一番好きって言ってたクラスだよな。もしかしたら教えてもらえるかも。
「ブレイバーか。いいね。教えてあげよう。」
「ダメです。いくら守護輝士とはいえ、推薦人が教導したら許可下ろせませんからね。あと、メディカルセンターから苦情が入ってるので行ってください。前科がある以上、無視は長く続きませんからね?」
「はいはい。分かりましたよ。二人とも、頑張ってね。」
そう言ってアネストロさんはその場所を後にした。
「私が……マトイ様と同じフォース……うれしい。アークスになれれば、ルーク君を助けてあげられるね。」
「そうだ。いつになればアークスとして活動できるんですか?」
「技術の修得が速ければ直ぐになれます!教導役はこちらで都合の合うアークスにお任せことになりますがよろしいですか?」
俺たちは頷いた。
「では、手配しておきます。期日や教導役は数時間後に連絡しますので、それまでショップエリアやカフェに行かれてみてはどうでしょうか?」
俺たちは言葉に甘えることにした。
これから繁忙期に入るのでちょっと投稿遅くなります。