路地裏で相対する自分と大人。そのきっかけを作った存在は向こうにいる。否 捕らえられているといった方が適切だろう。
他種族と比べ、外見の成長がはやいニューマンの彼女は、中身の幼さゆえに何かしらの標的になりやすい。今、まさにそれが起こっているのだ。
いかにも悪人面のヒューマンたちは彼女を取り巻き、今にも度を越そうとする。数少ない幼馴染みであり、護衛役を仰せつかっている自分が見過ごすわけにはいかない。
「そいつを返してくれないか。」
決まりきった文章を吐きながら距離を詰める。
「トレジャーハンターがわざわざ見つけた宝を放置するか?それぐらい愚問なんだよ。」
「以外とウィットにとんだ答が言えるじゃないか。なら力ずくで取り返すだけだ。」
駆け出して壁を蹴り上がり、ある程度の高さまで到達したところでひねりを加えた宙返り。運動エネルギーが置換された位置エネルギーを最大限利用した踵落としを最奥の輩の脳天に決める。逆の足と両手で着地し、低い姿勢から多数の足を払ったあとに残党の顔面を蹴りあげる。怯んだ先ほどの男の首根っこを掴み上げ、捨て台詞を吐く。
「アレは博物館の寄贈品みたいなもんだ。そして当然そういうのには警備員も付く。それが俺だ。」
弱者を放り投げ、彼女を救出。素人のヒューマンが相手の喧嘩は簡単だ。負けるようでは戦闘種族デューマンの名が廃る。
さて、彼女の方だが、どうやら怪我はなさそうだ。未然に防止できて良かった。此方にとっても、彼方にとっても。
安堵からか、自分は油断してしまっていた。悲鳴に似た叫びを聴くまでは、ヒューマンどものことを完全に失意してしまっていたのだ。
「ガキの癖に、ふざけるなああああ!」
いつの間にか刃物を手にしていた男は、既にそれを振りかざしており、避けようのない間合いにまで入られてしまっていた。
鈍く光る刃が俺の身に到達しようとしたときだった。
光線が刀身を穿ち、たちまちそれを溶かしていく。相手に生じた隙を見逃さず、体を翻しながらの回し蹴り。今度こそ終わりのようで、輩どもは動かなくなった者を連れて消えていった。
「危ないところだったね、君たち。怪我はないかい?」
その声の主は、片方だけ出していた双機銃を仕舞い、此方に歩み寄ってくる。その顔を見たとたん、俺たちははっとなり、態度を改める。
「助けていただき、ありがたく申し上げます。守護輝士様!失礼とは存じ上げますが、なぜ此方に?」
オラクル船団、宇宙、果てには別次元の星まで救った英雄が一般人である自分の目の前にいるのか。素朴な疑問をぶつける。
「そんなに畏まらくてもいいよ。ただのパトロールさ。さっきみたいなのを懲らしめるためのね。」
存外、地味なことをやっているのだな。その存在だけでも啓発活動になるのに。
「ボクからもひとついいかな?」
「何なりと!」
「君たちをアークスにスカウトしたい。さっきの体術なら、十分に戦えると思う。勿論、試験は受けてもらわなくちゃならないけど、そこはボクがどうにかする、試験に落ちたとしてもね。その子と一緒に、どうかな?」
彼女を守るためにより力を得られるのだ。乗らないわけにもいかない。
「喜んでお受けします!」
「私も…役に立てるなら…」
「それじゃあ決まりだ。」
ほんの短い時間に、人生が大きく変わった気がした。
初代PSOの小説で読んだニューマンの設定引っ張ってきたのですが、2でも同じなんですかね?