鳥居優治は王の器である   作:マクロなコスモス

9 / 24
お気に入り数が20をいきました!
みなさん、ありがとうございます!それでは、合宿回後半です!今回はいつもより長いです!


第7話 それぞれの想い

合宿の二日目が始まった。俺は合宿でも自分の鍛錬を忘れない。朝の砂浜での剣の練習は新鮮だった。海風が心地よく俺にあたり、海の匂いが俺の鼻をくすぐった。

素振りをやってるうちに手に痛みを感じた。

 

「あ、マメが潰れた」

 

マメが潰れたことなんてもう何回もあるから慣れてしまっている。ただ、雑菌が入らないように包帯は巻いているが。

 

それと同時に「ヴー…ヴー」と、俺のスマホがブザー音を出して起床時間がきたことを伝えていた。起床時間となると、須美たちも起きるため、合宿中は早めに切り上げることにした。昨夜の夕食の時もそうだった が、朝食も一緒に食べることになっている。朝食を食べる場所は客室とは違い、一階のフロントの近くにある和風レストランだ。

 

「あ、優治くん。おはよう」

 

「おはよう、須美。早いんだな」

 

「ええ。いつも、5時に起きて水浴びをしてるから」

 

「俺も、だいたい5時前には起きて、剣の練習をしてるからな」

 

だけど、須美が水浴びか……。やばい!思わず濡れた服を着た須美の姿を想像してしまった!え、エロい……。

想像しちゃうじゃん!仕方ないもん、だって、男の子だから!

 

「あ、そうだ。銀と園子は?」

 

「そろそろだとは思うけど……」

 

「ふあぁ〜〜…。いつも起きてる時間より早いから眠い……」

 

「zzz……」

 

銀は安定の眠そうな顔をしているが、園子はまさかの寝ながら歩いていた。一体、どうやったら寝ながら歩けるんだ?

ぶつかってないとはいえ、危険なのは変わらないので、園子を起こすことにした。

 

「おーい、園子。起きろー」

 

「……」

 

「うーん……あ、そうだ!園子!あそこに小説のネタになりそうな人が!」

 

「優治、そんなので園子が起きるなんて「小説のネタ!?どこ?ねえ、ユウさん!どこにあるの?」……起きちゃうんだ」

 

「いや、正直、俺自身も起きるかどうか半信半疑だったよ。おはよう、園子。何寝ぼけてるだ?一緒に朝食を食べよう」

 

「あ、あれ〜?夢だったのかな……」

 

「そうよ、乃木さん。さあ、行きましょう」

 

俺たちは一緒に朝食を食べて、午前の練習の準備をした。

 

 

 

 

「それじゃあ、始めるわよ!」

 

先生がパンッと手を叩き、スタートの合図を伝えた。今日も銀から始まる。

 

今回は昨日とは違い、昨日で失敗してしまったところよりも前に進んでいるのだ。

銀も、これなら行ける!と思ったのだろう。しかし、その確信が油断となったのだろう。飛び出そうと思った瞬間、横からのボールに当たってしまった。

 

「銀、大丈夫か?」

 

「へへ、こんなの平気だよ!ただ、少し油断したかも……」

 

「そっか……。よいっしょっと」

 

俺は銀の手を握り、引き上げる。

 

「次は俺の番だな。よーし!」

 

俺は両頰をパチンと叩き、気合を入れる。

 

「ユウさん、いくよ〜」

 

園子が走り出すと同時にボールが発射される。俺は園子の背後に着いて行く。さっきの銀の失敗を見てわかった。ここは銀が飛び出した時間より、ワンテンポ遅らせて……!

 

俺は飛び出すとボールとすれ違った。そして、俺は高く跳び上がり、まっすぐバスへと向かう。

 

「ふんっ!」

 

高く跳び上がった俺を落とすために、今まで動かなかった発射台が動き出し、俺に向けてボールを発射した。

俺はそれを的確に切り裂く。

 

「(よし、これでゴール!)」

 

パシュン!

 

俺の耳にボールが発射される音が聞こえた。

 

「えっ」

 

ボールは俺の横に向けて発射されており、俺は反応できずに落とされた。

 

「アウト!」

 

「大丈夫か優治?」

 

銀が砂浜で仰向けに倒れた俺に近づく。

 

「銀だけではなかった……甘かったのは!ガクッ……」

 

「何で三百年前の人気アニメのネタなんだよ……」

 

「その後、俺は『メタル優治』となって復活を果たすのだった」

 

「だから、そのネタはもういいよ!」

 

午前の練習はここで切り上げられて、客室で授業を受けることになった。まあ、本職は学生だから当然といえば当然だろう。

 

 

 

 

「(あ、ここ予習してるところじゃん)」

 

社会の時間に受ける内容がすでに予習してあるところで、ノートにすでにまとめてあった。というより、予習復習、これ勉強の基本。精神年齢14歳の俺は小学生レベルの授業を予習なんて容易かった。そのため……。

 

「なるほろ、なるほろ。バーテックスが襲来した後の日本の経済はこんなに変化したのか……」

 

別のところを勉強してた。真面目な須美にも先生にも気づかれていないのだ。

それと……。

 

「すぴー……すぴー……」

 

園子が居眠りをしていた。

寝顔もやっぱり可愛いな……。もう、持ち帰りたいレベル。

 

「乃木さんは答えられる?」

 

先生は寝ている園子に質問する。

やめて!もう少し、寝顔が見たいんじゃあ〜〜!

そして、俺の心の叫びは虚しく、園子は起きてしまう。

 

「はい〜。バーテックスが生まれて私たちの住む四国に攻めてきたんです〜」

 

「正解ね」

 

もう、この人起きてるのか寝ているのかわからないな……。というより、行動が読めない。園子は一体、何者なんだ?

その後、国語、理科と授業を受けた後、昼休みを挟み、連携の訓練があると思えば、つぎは瞑想する時間だった。

俺と須美、園子は瞑想できてるが……。

 

「ぐぬぬっ!」

 

銀の方はジッとしてることが苦手なようで、右へ左へ傾いてることが目を瞑ってても十分わかった。

まあ、1時間も瞑想なんて、鬼だよな……。

 

バタッ

 

あ、倒れた。

 

 

 

 

 

 

連携の訓練が再開された。今の俺と銀には、絶対成功できるっていう自信が出ていた。それに、須美と園子のアシストは完璧だ。今度は俺たちが答える番だ!

 

「準備は良いわね?始め!」

 

俺は三人の様子をみる。園子はできるだけボールを盾の中心に当てるように意識しながら銀を守り、須美は弓の腕が上達したのか、攻撃頻度が高くなっていた。

 

「サンキューな!」

 

銀は跳び上がり、自分を落とそうとするボールを全て割って、豪快にバスを真っ二つにした。

 

「ゴール!!!」

 

よく見ると、銀は派手に竜巻を起こしてバスをバラバラしていた。あいつ、絶対怪我してるな。あとで、治してやろう。

 

「やったわね、『そのっち』!」

 

「……」

 

園子は驚いた表情をしていた。きっと、須美が初めて自分のことをあだ名で呼んでくれたことに驚いてるのだろう。

 

「ねえ、わっしー、もう一回呼んでみて!」

 

「え……。うん、『そのっち』!」

 

「うん!やったよ〜、わっしーに初めてあだ名で呼んでくれたよ〜!」

 

園子はお祭り騒ぎのように嬉しそうにはしゃいでいた。須美は少し恥ずかしそうな顔になったが、それは一時的なもので、はしゃいでいる園子を見て、くすくすと笑っていた。

 

「あとで、三ノ……『銀』って呼ばないとね」

 

「銀も喜ぶよ」

 

「それと、優治くんの番が終わってないよ!」

 

「ああ!三河武士の本領見せてやるぜ!」

 

俺も園子と須美のサポートを受けて、バスがあった場所へと向かう。銀と同様、ボールを全て切り裂いてく。そして……。

 

スタッ

 

バスはないため、道路に着地したが、砂浜とは違う感覚が俺の喜びを掻き立てていた。

 

「よっしゃあーー!!!」

 

俺は思わずガッツポーズを見せる。そして、俺の目の前には、自分で竜巻を起こして傷だらけになった銀がいた。

 

「やったな、優治!」

 

「お前もな銀!」

 

パンッ!

 

お互いのハイタッチをする。ハイタッチした音は山の上へと響いていった。

 

 

その後、俺は銀の傷を治し、山を降りて旅館へ戻った。旅館の入り口に須美と園子、先生が笑顔で迎えてくれた。

 

「やったわね、『銀』!」

 

「……!うん、ありがとう、須美!」

 

須美と銀はハイタッチをする。この瞬間、俺たちの絆が結ばれたのがわかった。

 

「さあ、お風呂に入りなさい!ちゃんと、訓練の疲れを癒すのよ!」

 

 

 

三人称視点

 

「ふう〜……。骨身にしみるわ〜」

 

優治は肩まで浸かり、訓練の疲れを癒していた。旅館は貸切のため、この浴場には優治一人しかいない。

 

「風呂上がった後でも夕食まで時間が残っているからな、何して遊ぼうか……。そういえば、銀がトランプを持ってきてるって言ってたから、それして遊びたいな」

 

この旅館には卓球台があるが、体を相当動かしていたため、動きたくないのが本音だった。

 

 

 

一方、勇者三人も温泉で疲れを癒していた。

 

「バランスのとれた食事。激しい鍛錬。そしてしっかりと睡眠。勇者というか体育会系の合宿と全く同じだわコレ……なんかこう、超必殺技をバーンと授けるようなイベントはないのかね?須美」

 

「今回は連携の特訓だから仕方ないわね……」

 

「なんだか私、さらに筋肉がついてきたかも〜」

 

園子は自分の腕の筋肉を掴んでいた。

 

「やれやれ強くなるのはいいけど、これから成長する女の子がこなすには、いろんな意味で厳しいメニューだよな〜」

 

「ミノさん、竜巻を起こしてできた傷は?」

 

「あ〜、それなら優治に治してもらったよ。治してもらう前に、少し怒られてチョップをくらっちゃったけど……。園子の方は?」

 

「私はこっちが一番沁みるかな……」

 

園子は自分の手のひらを見せてマメができたことを見せた。

 

「あれ持ってると、そうなるよなぁ……」

 

「そういえば、優治くんの手のひらを見たら、結構分厚いマメができていたのよ」

 

「あたし達も努力する量としては、優治と比べるとまだまだ足りないってことか……。それと、鷲尾さんちの須美さんも体を見せなさい」

 

「えっ、なんで!?」

 

「クラスで一番大きい胸を拝もうと……。まるで果物屋だ!親父、その桃をくれー!」

 

銀は須美の胸に向けて手を伸ばす。当然、須美は抵抗しようと、銀の両手を掴んだ。

ちなみに、銀が須美の胸の大きさの一部を分けれるなら分けて欲しいと思ったのは秘密である。

 

「ちょっと、ダメー!」

 

須美は銀を押し返す。

 

「事実を言ったまでだね!それと、大きいくせして照れるなんて贅沢言うな!」

 

今度は銀が須美を押し返す。須美と銀は体格差はあれど、銀の方が筋力が上なので、須美を押し返すのは容易かった。

 

 

 

 

「あー、うるせー……。少しはゆっくり入らせてくれよ……」

 

優治はげんなりした表情で、温泉を後にした。彼自身、温泉に浸かっている時だけは静かでゆっくり休みたいのだ。もしも、温泉のどこかに女湯を覗ける穴があったら話は別になるが。

 

「まあ、時間が空いた時にまた入るか」

 

優治は寝間着を着ている間、浴場からカコーン…カコーンと桶が次々と落ちている音が聞こえたが、気にせず客室へ向かった。

 

 

 

 

「あれ?返事がないぞ」

 

「もしかして、ユウさんもう上がっちゃったのかな?」

 

「また、優治くんのこと疑ってしまったわね……」

 

しょんぼりと項垂れる須美。

須美と銀がはしゃいでいる間、先生が登場して一時休戦となったが、先生が優治がさっきの様子が丸聞こえになっているかもしれないと言われた時、恥ずかしくなった須美は桶を男湯に向けて投げたのだ(先生が特別に許可)。

しかし、そこには優治はいなく、ただ桶が落ちる音しか聞こえなかった。

 

「あたし達も出ようか」

 

「……そうね」

 

 

 

 

優治視点

 

合宿最後の夕食を食べた後、俺は先生に呼ばれた。先生から大事な話があるらしい。

 

コンコン

 

俺は礼儀として、ノックをする。すると、先生が入ってきていいわよ、と返事がきた。俺はガラッとドアを開けて先生のいる客室に入った。

 

「先生、どうしました?」

 

「来たわね鳥居くん。まあ、適当なところに座って」

 

俺は先生に言われるがままに座った。

先生は冷蔵庫からジュースを持ってきて俺に渡してきた。その一方、先生はお酒を出した。

 

「口止め料よ」

 

「あ、なるほど」

 

俺は素直にジュースを受け取った。

 

「早速本題に入るけど、鳥居くんは鷲尾さんと三ノ輪さん、乃木さんの中で気になる人はいるの?」

 

「ブフッ!?」

 

俺は飲んでいたジュースを吹いてしまう。あまりにも、唐突な質問に俺は焦ってしまった。

 

「まあ、そんな反応になるわよね。それで、気になる人はいるの?」

 

「……正直、よくわからないです。俺自身、須美達とは本当の友達だと思っています」

 

「本当の友達?」

 

「はい。神樹館に転校する前は俺はいつも上辺だけの付き合い、つまり、連んで遊ぶことが多かったんです。しかし、所詮は上辺だけの付き合いで、好みが合わなかったらすぐにその関係は終わってしまうものでした」

 

俺は息を吸って話し続けた。

 

「だけど、この神樹館に通うことになってから……いや、三人と一緒に行動するようになってから、心の中からいつも一緒にいたいと思えるようになりました。お互い、好きなところが違うこともあるのに、こんなに楽しくなれるなんて経験したことがありませんでしたからね。だから、須美達は俺にとって本物の友達なんです」

 

そう言うと、先生はお酒を一口飲んだ。そして、先生の口が開いた。

 

「わかったわ。だけどね、そんな関係はいつまでも続くとは限らないわ。今はそういう関係だけど、いずれはまた違う本物の関係になってくるわ」

 

「また、違う本物の関係……ですか?」

 

「そう。だけど、これ以上は言えないわ。これはあなたに対する宿題よ。よく考えて答えを出しなさい」

 

「……わかりました」

 

俺はまだ中身が残っているペットボトルのジュースを持って先生の客室を後にした。

 

「(別の本物?うーん、わからないな……。結構、難しい)」

 

俺は頭を抱えなきゃいけない問題がまた増えてしまったようだ。確かに、先生の言う通り、よく考えて答えを出さなきゃな。

 

 

 

銀視点

 

 

夕食を食べた後、あとは寝るだけとなった。須美や園子は寝ようとしていたが……。

 

「お前ら、簡単に寝られると思うなよ?」

 

「何言ってるの銀、あとは寝るだけでしょ?」

 

「わかってないな須美は……。合宿の最後の夜だからこそ盛り上がらないと!」

 

「それでミノさん、どうやって盛り上げるの〜?」

 

「そうだな〜、好きな人を言い合いっこしよう!」

 

「銀、好きな人って……」

 

「も・ち・ろ・ん。お父さんとか身内で濁した奴は、勇者の称号剥奪な!」

 

「そ、そういう銀はどうなの?」

 

言い出しっぺなんだから、先に言いなさいと言ってそうな顔をする須美。確かに、言い出しっぺのあたしから言わなきゃいけないよな……。

 

あたしは深呼吸する……。

あたしの好きな人……。見た目は女の子っぽいけど、その見た目に反して男らしく、そして優しい。自分のことよりもあたし達を優先してくれる。そんな人の笑顔があたしの頭の中に浮かんだ。

 

「あたしは……優治が好きだ!」

 

い、言っちゃった……。思いっきり言ったけど、やっぱり恥ずかしくなる!あたしは自分が抱きしめている枕をもっと強く抱きしめていた。

 

 

須美視点

 

 

「えっ……、ええっ!?銀も、優治くんのことが好きだなんて……」

 

私は驚いてた。銀の好きな人が優治くんだということに。

 

「『も』って須美も……」

 

銀は私が言ったことに反応した。私も心に決め、二人の前で言うことにした。

 

「私も優治くんのことが好きよ」

 

その気持ちは銀にも負けないつもり、銀が優治くんをどのように想っているのかわからないけど、私だって優治くんを支えたいと心の底から想っている。

だから、私は優治くんのことが好きだという気持ちは誰にも負けない。

 

 

 

園子視点

 

 

ミノさんもわっしーもユウさんのことが好きなのか〜。ユウさん、モテモテだなぁ〜。

 

「最後にそのっちはどうなの?」

 

わっしーは私が好きな人は誰なのか聞かれる。

 

「私も、ユウさんのことが大好きだよ〜」

 

ユウさんはいつも、私に優しくしてくれる。時々、寝ている私を撫でてくれたり、授業中に寝てしまった時は、授業が終わった後にノートを見せてくれた。

 

一つ一つの優しさは優しい人がしそうなことだな〜って思えるかもしれないけど、私はユウさんの一つ一つの優しさが心に響いていた。気がつくと、その優しさを私だけにしてほしいっていう気持ちになったりしていて、ミノさんとわっしーのことを羨ましく思う時があった。

その時、私はユウさんのことが好きだということに気がついた。

 

「ユウさんは渡さないよ〜!」

 

「あたしだって、譲る気はないもんね!」

 

「じゃあ、どちらが優治くんを手に入れるか競争ね!」

 

お互いの宣戦布告をした後、私たちは明かりを消して寝た。明日、ユウさんとまた話したいな〜。




第7話、合宿回はこれで終わりです!次の第八話でお会いしましょう!感想、アドバイス、できればよろしくお願いします!それでは!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。