鳥居優治は王の器である   作:マクロなコスモス

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ここ最近、暑いですね……。エアコンのありがたみがわかってきたマクロなコスモスです。皆さん、熱中症には十分気をつけてくださいね。では、第6話、合宿回です!どうぞ!


第6話 合宿開始!

俺は合宿の前夜、無料通信アプリを使って銀と合宿について会話していた。

 

優治「明日、日常用品と教科書を持っていくのは当然として、何か持っていくものってある?」

 

銀『あたしは、お菓子を持っていくよー』

 

優治「そうか、じゃあ、俺もお菓子持っていくよ。それと、漫画」

 

銀『その漫画、あたしにも読ませてよ。だけど、あたし達こんなことしてたら、須美に色々と怒られそうだな』

 

優治「怒られる時は一緒さ。練習ばかりだと精神的にキツイはずだから、ある程度の息抜きは必要だよ。あと、俺は甘いものを持っていかないと頭がおかしくなりそう」

 

銀『それはもう病気じゃないのか……』

 

優治「親によく言われてるよww」

 

銀『そっかwあたし、そろそろ寝るわ。おやすみー』

 

優治「おやすみー」

 

俺はボストンバッグにお菓子と漫画を入れた後、電気を消して寝た。

 

 

 

「またか……」

 

俺の目に映っていたのは、記憶にない思い出。この夢を見る時は必ずと言っていいほど、頭に激痛が走る。こんな夢は何回も見ているが、この激痛に慣れることができない。

 

「ぐうっ!ううっ……!!」

 

俺はその痛みに耐え続けるが、さらに、痛みはさらに増し、俺を苦しめる。俺を痛みをこらえながら、前を見てみると、俺の姿をした何かがいた。

 

「お前は一体……。うぐっ!?があっぁぁぁぁぁあ!!?」

 

「……はあ、はあ」

 

俺が起きたときには、激痛はピタリと止んだ。また、何回もあの夢を見せられると思うと、思わず鳥肌がたった。

 

「……とにかく神樹館へ行かないと」

 

俺は寝癖を直して、朝ごはんを食べた後、家を出て合宿へ向かうバスが停まっている神樹館へ向かった。悪夢を見てしまった影響か、いつも通ってる道が遠く感じた。

 

 

「おはよう、須美」

 

「おはよう、優治くん」

 

俺がバスの中に入ると、すでに須美と園子が入っていた。しかし、銀がいなかった。

 

「ふあぁ〜……あ、おはよう〜、ユウさん」

 

「おはよう、マイエンジェ……こほん、園子」

 

いかん、いかん、園子の寝ぼけた顔が可愛かったからつい、本心が漏れかけた。危ない危ない。

 

「あれ〜、ミノさんは?」

 

「銀はまだ来てないよ。俺、銀に連絡入れてみるよ」

 

俺は携帯を取り出し、銀の携帯に電話をかける。

 

プルルルル

 

プルルルル

 

「もしもし、銀?」

 

『ごめん、優治。集合時間に間に合わなそう』

 

安定のトラブルに巻き込まれたのだろう。

 

「わかった。バスの運転手にも伝えておくから」

 

『ありがとう、助かる!』

 

俺は電話を切った。その後、バスの運転手にも伝えた。

 

「優治くん、三ノ輪さんは遅刻なの?」

 

「まあね……」

 

自分で言うのはアレだけど、銀が遅刻しなくなった理由は俺が手伝っているからである。俺はそれを理解しているのに銀を迎えに行かなかった。この遅刻は俺の責任だ。

 

そして、10分後、バスが開く音がした。

 

「悪い悪い、遅れたのは事実だから、ごめんよ須美」

 

「三ノ輪さんは少し気が抜けてると思うわ。勇者として自覚を持ちなさい」

 

「肝に銘じときます」

 

(銀、すまん……)

 

(大丈夫、気にしないで)

 

俺たち四人が集まったことで、バスは出発し、合宿所である旅館へ向かった。

 

 

 

 

旅館に着いた俺たちは訓練場である砂浜に集合した。

 

「お役目が本格化したことにより、大赦は乃木さん達三人の勇者と鳥居くんを全面的にバックアップします。家族のこと、学校のことは心配せず、頑張って!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

訓練の内容はこうだ。まず、砂浜に所々にボール発射装置が置いてある。そして、須美と園子は近接戦闘が基本の俺と銀にボールが当たらないようにサポートし、山道にあるバスまで届けることが目的だ。

ちなみに、俺と銀は交代制でやる。最初は銀からだ。

 

「いくよ〜!」

 

「園子、うまく守ってくれよ!」

 

「先生、ここから動いちゃダメなんですか?」

 

「ダメよ!それじゃあ、スタート!」

 

先生の合図とともにボールが次々と発射されるが、園子は的確にボールを弾きながら進む。こちらから見ても今のところ、良いペースだと思う。

 

パァン

 

パァン

 

須美の方もボールを射抜いている。俺はこのまま行くのではないかと思った。しかし……。

 

須美の矢が一つのボールに当たらず、銀に当たってしまった。

 

「ごめんなさい、三ノ輪さん!」

 

「どんまい、わっしー」

 

「それと、苗字で呼ぶのは堅苦しいから『銀』で良いよ」

 

「私のことは『そのっち』で!はい、呼んでみて!」

 

二人はそう言うが、須美は恥ずかしそうに二人から視線を外す。

 

「はい、次、三ノ輪さん、鳥居くんと交代よ!」

 

今度は俺が園子の後ろに付く。

 

「よーし、二人とも頼むぜ!」

 

「「うん!」」

 

俺は園子の後ろに続くように走る。須美の方も、援護射撃ができている。しかし、そう甘くはなかった。

一球のボールが園子の盾の端の部分に当たり、ボールがイレギュラーを起こして俺の顔に直撃した。

 

「へぶっ!?」

 

「優治くん!?」

「ユウさん!?」

 

俺はボールがもろ鼻に当たってしまったため、鼻を押さえる。

 

「ユウさん、大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫さ。どうってことないさ」

 

「優治、両方の鼻の穴から鼻血が出てるぞ」

 

「えっ、マジで!?」

 

その後、俺は銀と交代して、その間に両方の鼻の穴にティッシュを詰めて血を止めた。

 

「アウト!次、いくよ!」

 

「ふふっ!優治くん、ヒゲが生えてるみたい」

 

俺は須美に笑われる。

まあ、ティッシュを丸めて鼻血を止めるくらいの時間しかなかったら、仕方ない。

 

「準備は良いわね?よーい、始め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、何回鼻血を出したんだろう……」

 

ゴミ箱にある自分の血で染められたティッシュが入ったビニール袋を見る。これだけ出したのに貧血にならないとか、俺の体は一体どうなっているのか調べてみたい。

 

今日の練習を終えた俺たちは浴場で汗を流したあと、晩飯を食べるために客室へ向かった。

 

「お、来た来た!早く食べようぜ!」

 

「さあ、一緒に食べましょ」

 

「私、もうお腹ぺこぺこだよ〜」

 

俺が客室に入ると、すでに三人とも座っていた。どうやら、俺が最後だったようだ。

そして、俺は客室のテーブルに置いてある晩御飯も見て、一瞬、固まった。そこには、大きな蟹に一人一人にアワビが用意されている。それだけではない。色々な海鮮の刺身があったのだ。

 

「こ…これは夢なのか!?夢なのか!?」

 

「いや、これは夢じゃないぜ。鳥居さんちの優治さん!これは現実だぁ!!」

 

俺の興奮に銀も乗っていく。

 

「よっしゃあ!合宿、バンザーイ!」

 

「こら、二人とも騒がない!それじゃあ、頂きましょう」

 

須美は至って冷静さを保ってる。しっかりしているのか、はたまたこの光景に慣れているのか、俺には分からなかった。

 

「それじゃあ、せ〜の」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

まずは、アワビの一切れを俺は醤油につけて、口に運ぶ。

 

「(なんだこれは!?噛んだ食感がコリコリしてて癖になる!噛むたびにこの食感を楽しみたいと本能がそう叫び、思わず噛み続けてしまう!)」

 

俺はゴクリとアワビを呑み込んだ後、次に目をつけたのは蟹だ。蟹の足の一本を専用のハサミで切り取った。

そして、足の身を取り出す。そこから出た足の身は見てるだけでもプリプリとした食感が伝わるほどの美しさを放っていた。

それもまた醤油につけてから頂く。

 

「(この蟹の足のプリプリした食感!予想以上だ……!アワビとは対照的に噛むたびにどんどんと口の中に溶けていく……)」

 

そして、俺は次々と他のおかずやご飯、お吸い物を口の中へ運んでいき、気がつくとすでに俺の分は無くなっていた。

 

「ふぅ……。ごちそうさまでした!」

 

「優治、すっごい食べっぷりだったな」

 

「そういう銀も結構な食べっぷりだったぞ」

 

「ユウさんとミノさん、すごく幸せそうに食べてたよね〜」

 

「住む家が違うと、こんなにも違うなんて思わなかったわ」

 

須美と園子は俺と銀の食べっぷりに感心していた。

 

「そういえば、わっしーの荷物これだけ?」

 

園子が言ったことを聞いて、俺は須美の荷物を見る。そこには、タオルや衣類など、最低限のものしかなかった。

 

「ミノさん、お土産買うの早すぎ」

 

銀の方はこの旅館で売られてた饅頭や煎餅などが銀のボストンバックの周りに置かれてた。

 

「そういう、園子の方も……」

 

「どこからツッコメば良いのか……」

 

プラネタリウムは分かるが、なぜ臼を持ってきたのか分からない……。園子の考えは神のみぞ知るだな。

 

「臼でうどん作るんよ〜」

 

うどんを作るためとか、合宿中にそんな時間が空いてるのか?

 

「そういえば、優治のバッグの中を見てないな〜」

 

俺のバッグも一応、この部屋に置いてある。さすがに寝る時は男女一緒なのはマズイので、別の部屋に移動することになっている。

 

「えっ……」

 

「そうよね。私たちの持ち物だけ見て、自分の持ち物だけを見せないなんて不公平だわ」

 

「ユウさん、覚悟〜」

 

「ええっ!?」

 

三人とも一斉に俺のバッグの中身を見ようとする。その中には、見られてマズイものはない……はず。

 

「わあ!お菓子がいっぱいだ〜」

 

園子は俺のバッグから俺が楽しみにしていたお菓子を取り出した。

 

「優治が持ってきた漫画、あたしがハマっている漫画の最新巻だ!」

 

今度は銀が俺のお気に入りの漫画の最新巻を取り出した。

 

「お、おい、俺のプライバシーは?」

 

これ以上見られるのは嫌なので、お菓子と漫画を取り戻してバッグに仕舞おうとした。すると、須美は一つの雑誌を取り出した。

俺は雑誌なんか入れた覚えはない。あるとしても歴史に関する雑誌しかないはずだ。なのに……なのに……。

 

「優治くん、これは一体何?」

 

須美が俺に見せたのはグラビア雑誌。俺はそんなもの買った覚えなんかないし、拾ったこともない。というより、拾う勇気すらない!

 

「えっ、須美、何を持ってる……おい、優治」

 

「ぎ、銀さん?」

 

俺は思わず銀から湧き出す真っ黒いオーラを感じて思わず「さん」付けをしてしまった。

 

「ユウさん、さすがにそれはないよ〜」

 

「園子!?」

 

「覚悟はできてるよな?」

 

「知らない!無実だ!俺はそんなもの拾ったことも貰った記憶もない!」

 

「じゃあ、何でそんなものがあるのか説明してもらいましょうか?」

 

怖い!二人とも怖い!目がハイライトになってる。

 

「(うん?これは……)」

 

雑誌に一つのメモが貼られていた。そこには……。

 

『いい夢見ろよ!by父』

 

と書かれてあった。

あの、くそ親父ィィ!色んな特許が貰えてるほどすごい技術者だと思っていたら……!あとで、母さんに連絡してやる!

 

「ほ、ほら!あのメモ書き!ちゃんと、自分で持って来てない証拠になるじゃん!」

 

須美は雑誌の裏表紙にあるメモを見る。すると、目に光が戻ったように見えた。

 

「……はぁ。無実なのはわかったけど、次からはちゃんと持ち物を確認すること!良いわね!」

 

「は、はい……」

 

「疑ってゴメンよ、優治」

 

「いや、事が進む前に疑いが晴れて良かったよ。さて、この雑誌は捨てるか」

 

こうして、合宿1日目が終わった。1日目からここまで疲れるとは、明日ぶっ倒れてしまうのではないかと俺は心の中で思った。

 




第6話読んでくださり、ありがとうございます!次の回で合宿回は多分終わりになると思います!では、第7話でお会いしましょう!ではでは!

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