鳥居優治は王の器である   作:マクロなコスモス

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やっと、エピローグが書き終わって投稿しようとしたら、お気に入り数が90を超えていて驚いてしまったマクロなコスモスです。本当にありがとうございます!
今回はとても短いです。


エピローグ

あの一番大きかったバーテックス……。優治くんは獅子座のバーテックスを倒した後に樹海化が解けた。勇者である私たちは大橋の近くの祠に戻ったけど、そこには優治くんの姿はいなかった。

 

本来は獅子座が倒された後、バーテックスの総攻撃が来るはずだったけど、壁の外で優治くんがそれをくい止めてくれたことを先生は話してくれた。

 

10体以上のバーテックスとバーテックスの素になる「星屑」というものを優治くんはたった一人で相手にしていたことも……。

 

それから1年間。色々なことがあった。鷲尾家の養子になっていた私は東郷家に戻され、名前も「東郷美森」に戻った。

勇者システムは大赦によって回収され、私たちのお役目は終わった。お役目を終えた私たちをクラスメイトや先生は祝ってくれていたけど、みんな、優治くんが帰ってこなかったことを悲しんでいた。

 

そして、私たちは神樹館を卒業して、四月に讃州中学に入学した。これは、大赦による指示で、そのっちも銀も同様だった。

 

また、大橋の方に実家があるそのっちと銀は大赦が経営しているマンションに住むことになり、私は元いた家に住むことになった。

始めはそのっちと銀が同じ部屋で住むことになっていたけど、そのっちが

 

「ユウさんやミノさん、わっしーから、お料理を習ったから大丈夫〜!」

 

と言って、別々の部屋になったらしい。

 

一方、私の方はお役目を果たしたおかげか、私の家は改装され、とても大きくなっていた。生活の形式も変わり、慣れないことが多々あったけど、十月になったら、すっかり慣れてしまっていた。

 

それから、半年。四月八日に私の誕生日を祝いにそのっちと銀が来てくれた。そして……。

 

 

 

 

ピンポーン……。

 

 

呼び鈴が鳴ったので、私は扉を開ける。実は、銀とそのっちの他に私の誕生日に来てくれる人たちがいるのだ。

 

「東郷、来たわよ!」

 

長い髪を左右に分けて両側に結い垂らした髪が特徴の彼女は、風先輩。私や銀、そのっちが所属している部活、「勇者部」の部長である。

 

「東郷さん、お邪魔します!」

 

銀に負けないくらいの元気な女の子は友奈ちゃん。私のお隣さんで、同じ勇者部の部員で、クラスメイトでもある。私とは、中学生になって初めてできた友達でもある。

 

「今日は来てくれてありがとうございます。風先輩、友奈ちゃん」

 

「良いって良いって。勇者部部員の誕生日なんだから、祝いに行くに決まってるじゃん!」

 

「そうだよ、東郷さん!今日は楽しい誕生日会にしよう!」

 

「風先輩、友奈ちゃん……」

 

私は風先輩と友奈ちゃんを私の部屋に入れる。そこには、銀とそのっちが待っていた。

 

「あ、きたきた!」

 

「フーミン先輩、ゆーゆ。いらっしゃい〜」

 

「銀ちゃん、園ちゃん。もう来ていたんだ!」

 

「まあな!親友として当然さ!」

 

銀は胸を張ってそう言った。

 

「それに、去年とは違ってフーミン先輩やゆーゆもいるから、今日の誕生日パーティーは賑やかになるね〜!」

 

「ええ、そうね」

 

私は自然と笑みがこぼれる。しかし、時々、こう思ってしまう。ここに優治くんもいたら……と。

 

ピンポーン……

 

「私、行ってくるね」

 

私はまた玄関へ向かい、扉を開ける。そこには、配達員がいて、お届け物を渡してくれた。そのお届け物の配達先に私の名前が書かれてあって、誕生日プレゼントと書かれてあった。

 

「一体誰が……あら?」

 

しかし、一体誰が送ってくれたのかを確認しようとしたら、送り主の名前が書かれてなかった。このまま、みんなを待たせるわけにはいかなかったので、とりあえず、私は部屋に戻った。

 

「あれ?須美、その箱は?」

 

「おぉ〜!わっしーの誕生日プレゼント?」

 

「そうなんだけど……」

 

「だけど?」

 

「送り主が書かれてなかったの」

 

「送り主がわからない?それは不自然ね」

 

風先輩は腕を組んで考える。

 

「結局、開けてみないとわからないなら、開けた方が良いんじゃない?」

 

銀は私にそう言った。確かに銀の言うことに一理ある。

 

「……そうね。開けてみるわ」

 

私はゆっくりと箱を開けて中身を見る。銀たちもその箱の中身を見ていた。

 

「えーっと、戦艦のプラモデル?」

 

友奈ちゃんが箱の中身の正体を言う。

 

「しかも、このプラモデル。小学生の時、須美が書いてた戦艦とそっくりのやつだな。えーと、確か名前が……」

 

銀は瑞鶴のことを思い出そうとしていたが、中々思い出しくれなかったので、仕方なく教えることにした。

 

「瑞鶴よ」

 

「そう!それそれ!」

 

私は箱から瑞鶴の模型を取り出す。すると、箱の一番下に封筒があった。

 

「今度は手紙だね〜」

 

私は封筒を開けて手紙を取り出した。

 

「銀、そのっち。これ……」

 

私は手紙を開いた後、すぐさま銀とそのっちに見せる。手紙をすぐ読んだ、というわけではない。ただ、この手紙の文字の形に見覚えがあったのだ。

 

「須美、どうしたん……これって!?」

 

「うん、間違いないよ〜!」

 

「優治くん……」

 

優治くんの手紙の内容は、私の誕生日のお祝いと自分が生きていること、連絡を取れなかった理由だった。最後に「説教は勘弁してください!」とあったけど、容赦無く私は優治くんに説教するつもりだ。

一年半も待たせたことがどれだけの罪なのかをしっかり教えなくてはならない。

 

それよりも、優治くんに会える。その気持ちが私の胸の中をいっぱいにしていた。

 

「待ってるからね。優治くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今ごろ須美の方に届いているころかな」

 

俺は病室に差し込んでくる月の光を浴びながら、外の景色を見る。

俺は獅子座のバーテックスを倒した後、バーテックスの総攻撃を壁の外で食い止めた。おかげで、体の負担をかけすぎたせいで一年も眠っていた。

 

体全体の筋力は衰え、小学生の頃までの筋力を取り戻すのにちょうど半年もかかった。確かに、満開の代償を両足、左腕を動かせない状態だったのだが、親父が経営している鳥居製作所が脳波を感知し、動かせないところに微弱な電気信号を直接神経に送ることでその部分動かせるようになる、というものを開発した。

 

おかげで一人で歩けることができる。この開発は実はあと資金的に半年かかる予定だったのだが、大赦の家柄である乃木家と鷲尾家、三ノ輪家が支援してくれたことが大きかった。

 

それと、大赦によれば、今は満開の代償で機能を失っているが、時間はかかるが治るだろうと言われた。まあ、この先がわからない以上、大赦の言葉を信じるしかない。

 

「さて、片付けないとな」

 

俺は荷物の整理をする。明日、俺は退院して学校に行く。俺も須美たちと同様、讃州中学に通うのだ。このことは、手紙には書いていない。ちょっとしたサプライズだ。それと、園子、銀と同じマンションに住む。荷物は学校から帰っている頃には届いてるそうだ。

 

一人暮らしは初めてだが、掃除、洗濯、炊事はできるから、何とかなるだろう。それと余談だが、両親はなぜか独り立ちに感動して泣いていた。

 

「よし、こんなところかな」

 

俺は病室にある私物を段ボールに詰め終わる。この1年半もお世話になった病室から離れると思うと、少し寂しい気持ちになる。

だけど、俺を待ってくれている大切な人たちがいる。俺はその人たちを一年半も待たせてしまった。もう、これ以上待たせてはいけないのだ。

 

「さて、寝るとしますか」

 

俺は学校に遅刻しないため、早めに寝る……というのは嘘だ。本当は早く三人に会いたくて仕方なかったので、早めに寝るのだ。

 

そして、俺はこれからまた一緒に歩んでいく。明日へ……未来へ。

 




これにて、わすゆ編は本当の終了です!次からゆゆゆ編に突入します!それと同時進行でゆゆゆい編も投稿するので、お楽しみに!
それでは、次のゆゆゆ編でお会いしましょう!

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