鳥居優治は王の器である   作:マクロなコスモス

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寒暖差が激しくて風邪をひきそうになったマクロなコスモスです。今回は夏祭り回です!鷲尾須美は勇者である編もあともう少し終わりそうです!そこから、本編のゆゆゆ編とゆゆゆいの方も書けたらなと思っています!

追記:銀の弟の名前を修正しました!ちゃんと、銀の弟の名前がありましたね……。本当にすみませんでした!


第17話 夏の空に輝く花

夏休みに入り、俺たちは訓練の毎日を送っていた。周りの同い年の人たちとは程遠い日常だ。しかし、その日常がさらに俺たちを確実に強くしていき、絆を深めていった。

 

 

「そういえば、今、先生から聞いたけど、あたし達の勇者システムがアップグレードされるんだって」

 

銀が話を切り出す。

 

「それじゃあ、そのシステムについていけるように頑張らないとね」

 

「うん!ユウさんに任せっきりというわけにはいかないからね〜」

 

「俺に任せっきりって……。俺だって、園子や須美、銀のうち一人でもいなかったら、今はどうなっていたか……」

 

本当にこれはハッキリと言える。天秤、あのイカのようなバーテックスや、三体のバーテックスが同時に来た時も、彼女たちに支えられた。だからこそ、今の自分がいる。

 

「改めてありがとうな。みんな」

 

「それはこっちのセリフだよ、優治」

 

「それじゃあ、お互いさまってことになるわね」

 

俺は須美の言葉に納得した。ここまで、お互いが支え合っているのだと。そう感じた。

 

「さて、今日は待ちに待った夏祭りの日だね〜」

 

「そうだな!先生から許可は出たし。待ち合わせ時間は何時にしようか?」

 

「そうね……。まだ、人が集まってない時間帯が良いわね」

 

「じゃあ、5時くらいがベストじゃないか?」

 

「よし!じゃあ、5時に神社の入り口付近に集合!」

 

こうして、俺たちは待ち合わせる約束をして、それぞれの家に帰った。

 

 

 

 

 

 

「うーん、こんな感じかな?」

 

俺は今日のお祭りのために買った着流しを着て、乱れがないかを確認をしていた。

 

「(着流しなんて初めて着たな。大和撫子の須美におかしいとは、言われないだろうか……。いや、ネットの画像を真似てるから大丈夫か)」

 

「さて、時間も時間だし、銀の家に行くか」

 

俺は持ち物を確認した後、いつものように、銀を迎えに行った。

 

 

 

 

「銀、迎えに来たぞ〜」

 

俺はインターホンを鳴らした後、銀を呼んだ。

 

『ゆ、優治!?も、もうちょっとだけ待ってて!』

 

銀は焦ったような声で、俺に言う。別に銀の小さい方の弟が泣いてるわけではないから、何で焦っているのだろうか……。

 

「何で焦ってるかわからないけど、とりあえず、焦らなくて良いんだぞ。俺も少し早めに来ちまったからな……」

 

『わかった!』

 

銀はそう言ってインターホンの通話を切った。しばらく、待ってると、玄関から銀の弟が出てきた。名前は確か……鉄男だったかな。

 

「あ、優治のにいちゃん!」

 

「よお、来たぜ」

 

「姉ちゃんなら、浴衣を着てる途中だよ」

 

「銀のやつ、浴衣着るのか……。楽しみだな」

 

やはり、銀だと赤色の浴衣が似合いそうだよな……。勇者になった時の格好も赤だよな……。

 

「俺もお母さんと一緒に行くんだ〜」

 

「へぇ、迷子になるなよ」

 

「大丈夫、大丈夫!金太郎に兄ちゃんらしいところを見せるから!」

 

「そっか!金太郎にとってはとても頼もしい兄だな」

 

そう言うと、「ヘヘッ!」と言って少し照れた。俺にもこんな兄弟か、姉妹がいたらと思ってしまう。

 

「なあ、優治のにいちゃん」

 

「なんだ?」

 

「姉ちゃんを頼むよ!」

 

「ああ、任せとけ!」

 

そう言うと、ちょうどガラッと扉が開く音がした。そこから、銀が出てきた。

 

「ごめん、優治!待たせた?」

 

「いや、大丈夫だ。じゃあ、行こうぜ」

 

俺は銀と一緒に待ち合わせ場所である神社へ向かった。

 

「な、なあ、優治」

 

「どうしたの銀」

 

「どうかな?あたしの浴衣姿」

 

銀は俺に自分の浴衣姿を見せる。銀の浴衣は明るい赤をベースに色々な花の模様がついてた。まさに「可憐」という言葉が似合ってる。

 

思わず目を背けてしまう。これ以上見てしまったら、心臓の鼓動が早まっちまう。

 

「と、とても、似合っている。めっちゃ可愛い」

 

「(ってあれ?俺、なんでめっちゃ緊張してんだ?なんで、銀から目を逸らそうとしているんだ?くそっ、なんだか調子が狂うな……)」

 

「ふんっ!」

 

俺は拳を作り、自分の顔を殴った。

 

「優治!?」

 

「だ、大丈夫。少し、眠かっただけだから」

 

「そ、そうか……。それより、優治」

 

「?」

 

銀は俺に手を出してきた。

 

「その……、手を繋がないか?」

 

「別に良いぞ。離れずに済むからな」

 

俺と銀は手を繋いでそのまま歩いた。

 

 

銀視点

 

あたしは今、優治と手を繋いで歩いている。夏なのに、とても暖かく、心地がいい気分だ。

 

「そういえば、銀はどんな店に寄りたいんだ?」

 

「そうだな……。あたしはりんご飴とかチョコバナナとか売ってる店に寄りたいかな。優治は?」

 

「俺は射的かな」

 

「意外とベタだな」

 

「りんご飴やチョコバナナを食べたいと言ってる銀に言われたくないな。あんまり、周ったことがないんだよ、祭りの屋台」

 

りんご飴とチョコバナナは祭りではベタなのかもしれない。しかし、美味しいものは美味しい。確かに、優治は祭りの屋台を周ってなさそうだ。

 

「そっか。じゃあ、この三ノ輪銀がこの祭りを案内してやろう!」

 

「ああ。頼むよ」

 

しばらく、歩いていると、神社の鳥居が見えた。その下には、須美と園子が待っていた。

 

「やっと、来たわね」

 

「あ、ユウさん!ミノさん!こっちこっち〜!」

 

「急ぐよ、銀」

 

「ちょっと、待って!あっ……」

 

早歩きで二人の方へ向かう。そして、自然とあたしと優治の手は離れていった。しかし、右手に繋いだ感触はまだ残っていた。あたしは、右手を優しくギュッと掴みながら、優治のあとを追った。

 

 

 

優治視点

 

 

「お待たせ。須美と園子も浴衣姿なんだな。似合ってるよ、二人とも」

 

「ありがとう〜!」

 

「ありがとう、優治くん!」

 

二人とも嬉しそうな顔になる。俺は思わずドキッとなる。というより、改めて思うと、俺の周りの女の子は全員可愛いのはなぜだろうか……。

 

また、俺の心臓の鼓動が早まるばかりだ。

 

「そういえば、今になって気づいたけど、優治もいつもの服装と違うな」

 

銀さん、今さらですか?まあ、気づいてもらえないよりはマシだけど。

 

「やっぱり、優治くんは『和』がとても似合うと思うわ」

 

須美もおかしいどころか、似合ってると言ってくれた。どうやら、着流しの着方は間違っていなかったようだ。

 

「ありがとな。そろそろ、人が来そうな時間帯だし、行こうか」

 

 

 

 

 

 

まずは、銀の要望により、りんご飴とチョコバナナを売ってる屋台に行った。園子もりんご飴とチョコバナナを食べたかったから、一石二鳥だった。

 

「銀も園子もノリノリだな」

 

「当たり前よ!だって、1年に一回しかないお祭りだからな!」

 

「こうやって4人で行くんだもん、楽しくて仕方ないよ〜!あ、いけてる匂い!」

 

園子は横にあった串焼き屋に走って向かった。

 

「大将、4本くださいな!」

 

「ちょっと、そのっち!私はそこまで食べれないわよ!」

 

「そう?じゃあ、もう一本は私が食べれるね!」

 

「すごい食欲ね」

 

須美は苦笑いをする。

 

「お、誰かと思えば、鳥居の坊主じゃねえか!」

 

俺はその声に反応して、串焼き屋の大将の顔を見た。

 

「あれ、よく見たら、商店街の鶏肉屋の店長さん!屋台を出していたんですね」

 

「まあな!それに嬢ちゃんを3人も連れてくるとは、見せてくれるじゃねぇか!ほら、もう一本。オマケでつけといてやる」

 

店長さんは俺に二本の串焼きをくれた。

 

「ありがとうございます!」

 

「それじゃあ、楽しんでこいよ!」

 

そして、俺たちは串焼き屋をあとにした。

 

 

 

 

 

何となく歩いていると、一つの屋台が目に入った。

 

「お、優治!ここ、射的じゃないか?」

 

「本当だ!よし、やってみるか!」

 

「私もやるよ〜」

 

俺と園子はお金を払い、それぞれ自分が狙っている景品に的を絞った。ちなみに、俺は戦艦長門のプラモを狙っている。

 

「いざ……参る!」

 

俺はすぐに銃口をプラモに向けた後、引き金を引いた。

すると、見事命中してコルク弾が弾く時に出る特有の音が店内に響く。プラモはユラユラと動き、そして、棚の後ろへ落ちた。

 

「こりゃあ、たまげたな。たった一発で撃ち落とすとは……」

 

店の大将が驚いた顔になる。俺も驚きだ。遊び半分のつもりでカッコつけたのに、成功させてしまった。

 

「じゃあ、私も負けないよ〜」

 

園子も狙いを定める。園子が狙っているのはニワトリのぬいぐるみだ。これは、撃ち落とすのは難しい。これは俺でもわかった。

 

園子は引き金を引き、コルク弾を撃つ。コルク弾は見事、ニワトリのぬいぐるみに命中するが、いとも簡単にコルク弾を弾き、ビクともしなかった。

 

「(これって、元々、コルク弾で落ちる物ではないのでは?)」

 

「今度こそ……!」

 

また、園子は狙いを定めて撃つが、やはり、ビクともしなかった。

 

「もぅ〜、ちょこざいな〜!」

 

園子は財布からありったけの千円の札束を取り出す。

 

 

30分後

 

 

「なんで、落ちないの〜!」

 

園子は泣きながら悲鳴をあげる。弾はもう1発しかない。

それを見かねた須美は園子に近づく。

 

「わっしー?」

 

「落ち着いて。呼吸を正して」

 

「ライフルの癖は見たわ。調整は任せて」

 

「吸気」

 

「すー…」

 

「呼気」

 

「はー…」

 

「照準集中」

 

「集中……」

 

「力を入れずに指を絞るように」

 

「今!」

 

パンッ

 

コルク弾はニワトリのぬいぐるみのど真ん中に命中し、ぬいぐるみは今まで以上に傾いた。

 

「あとは気合い!」

 

「気合い〜!」

 

須美と園子は手を前に出して回した。俺と銀も二人と同じように手を前に出して回した。そして……。

 

バサッ

 

ニワトリのぬいぐるみは見事、棚の後ろへ落ちた。

 

「やった〜!やった、やった〜!!鳥さんゲット〜!」

 

「なんてこった!こんなのコルク弾じゃ倒せないのに……」

 

店の大……おっさんの本音が漏れる。

 

「それはどういう意味?」

 

その本音を聞いた須美はおっさんに詰め寄る。

 

「あ、いや!なんでもない!ほら、持ってけ嬢ちゃん」

 

「やったな!園子」

 

「スゲェな!俺、こんなの倒せないかと思ってたよ」

 

「ありがとう、わっしー!」

 

「得意分野だもの。だけど、引き金を引いたのはあなたよ。それはあなたの物!」

 

「うっひょお!やったぜ!」

 

俺と園子の射的は見事成功に終わった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、園子。お金、全部射的に使ったけど、大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ。ありがとう、ユウさん!」

 

「なら、良いけど……。それじゃあ、本命のところへ行きますか!」

 

「そうね。じゃあ、私について来て」

 

須美は俺たちの前を歩き、俺たちを誘導する。須美について歩くと、小さな道の土手の上に着いた。人はあまり集まっておらず、

 

「ここからなら、花火をゆっくり見られるわ。穴場よ」

 

「すごいな須美!」

 

「過去のブログで特定したの」

 

「そういうの得意やね〜」

 

「おっ、始まったみたいだぞ」

 

俺は空へ打ち上げられる一つの花火を指さした。

 

ヒュルルルル〜

 

どおっん!

 

「きれい……」

 

「私、こうやって友達と一緒に楽しみながら花火を見るのは初めてかも〜」

 

「ああ。俺もだ」

 

「これからは、毎年楽しめるな!」

 

「「「うん!」」」

 

銀が言ったことに、俺たちは頷いた。しばらく、俺たちは何も言わずに最後まで花火を見続けた。

 

ヒュルルルル〜

 

どおおっん!

 

今までよりも大きい花火が打ち上げられた。そして、その花火は消えていった。花火も花も咲く時間は一瞬(・・・・・・・)なのだ。

 

「終わっちゃったな」

 

「ああ」

 

「終わっちゃったね〜」

 

「一瞬だったわね……」

 

「はい、みんな」

 

俺は三人に小さな猫のストラップを渡した。これは、射的の景品で、園子がニワトリのぬいぐるみに集中している間に当てたものだ。ちなみに、一つ一つのストラップのマフラーの色が三人のそれぞれの勇者服と同じ色だったのが、このぬいぐるみを取ろうとしたきっかけだ。

 

「ああ、可愛い〜!」

 

「良いの?優治くん」

 

「ああ、一緒に祭りに行ってくれたお礼だよ」

 

「ありがとう、優治!一生大切にするよ!」

 

「一生って、大げさだな……」

 

「それでもだよ。だよな、二人とも」

 

「「うん」」

 

「ふっ、そっか……。じゃあ、大切に持っておいてくれよ」

 

俺たちはこの後、神社で解散した。この祭りは俺が今まで行った祭りの中で一番楽しかった祭りになったのは、三人には内緒である。

 

 

 




どうでもいい余談その1

放送時期が同じであるのと、お祭りと言えば金魚掬いという単純な理由で、この話に鬼灯の冷徹に出てくる金魚草を出そうかなと考えていましたが、ボツにしました。他にも、ゆゆゆい編で歌野に金魚草の畑を見せたらどんなカオスな場面になるのかな、と考えていましたw

以上、どうでもいい余談コーナーでした!
それでは、次の話でお会いしましょう!それでは!

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