追記:優治の魔法の技名を変更しました。
須美視点
「小さい頃、俺と会ったことある?」
「えっ……」
「零戦と戦艦の展示展で会ったことがあると思うのだけど……」
優治くんは私にそう言う。確かに小さい頃に零戦と戦艦の展示展に私は連れてってもらったことがあった。
6年前
これは私が6歳の時、まだ「
模型ではあるけど、その迫力に魅せられた私は夢中に史料を見てしまい、気づけば両親とはぐれてしまっていた。
あの時、私は休憩用の椅子に座って両親を待っていたが、一人ぼっちの私は寂しさのあまりに泣いてしまった。
「ひっぐ、ひっぐ……。お父さま、お母さま……」
そう呼んでも親が来ることはなかった。
「ねぇ、君、どうしたの?」
一人の女の子が私に話しかけてきた。
「ひっぐ……。えっ?」
女の子はストンと私の隣にある椅子に座った。
「ひっぐ……。お父さまとお母さまを待っている……」
そう言うと、彼女はうんうんと頷いた。
「なるほど、迷子になったと」
「なっ!?ち、違います!」
図星を突かれた私は、反射的に否定してしまった。
「泣いて親を呼んでいたのに?」
「うぐっ……。あ、あなたも同じのではないのですか?」
「いや、別にオレはトイレに行ってる爺ちゃんを待ってるだけだよ。座れる場所を探していたら、泣いてる君がいたわけ」
自分のことを「オレ」という女の子なんて初めて見た。それが私の一番強い印象だった。
「ねぇ、君は何ていう名前なの?」
「私は東郷美森よ」
「オレは○○○○。よろしくな、東郷!」
その時の名前をはっきりと覚えているわけではないけど、男の子にありそうな名前だったことは覚えている。
当時の私は、もしかしてこの女の子はもしかして男の子かもしれないそう思った。
「ねぇ、○○くんは男の子なの?」
「もしかして、オレのこと女の子だと思ってたの!?」
○○くんはそう答える。
「だって、○○くんの顔が女の子みたいで男の子のわりには可愛いかったから」
「可愛いってなんだよー!」
○○くんは頰を膨らまして私を睨みつけた。その顔が男の子なのに何だか可愛い。そう思ってしまう。
「それにしても、『東郷』か……。カッコイイ苗字だな〜!」
私は初めて自分の苗字がカッコいいと言われた。だけど、私はその意味がわからなかった。
「カッコイイ?」
「うん!だって、旧世紀の明治時代の時、世界最強と言われたバルチック艦隊を巧みな戦略で勝利に導いた『東郷平八郎』と同じ苗字だよ!カッコイイに決まってるじゃないか!」
彼は私に憧れているような目で見た。この時は、彼ほど歴史には詳しくなかったため、「東郷平八郎」についてわからなかった。もしも、あの時、彼と同じほど歴史に詳しかったら、どれだけ話が盛り上がっていただろう、と思う。
「おーい、○○。行くぞー!」
「爺ちゃん来ちまったか……」
「もう大丈夫よ」
「本当か?」
「ええ、今、お父さまとお母さまが見えたから」
「そっか……。短い間だったけど、楽しかったよ!じゃあな!」
○○くんは彼の祖父と一緒にこの場を後にした。その後、私は両親のところに戻った。当然、こっ酷く怒られたけど、私にとって我が国の歴史をもっと知りたいきっかけにもなった。
◆
優治視点
「もしかして、あの時、泣いてた私に話しかけた男の子は優治くんだったの?」
須美にそう言われる。ここで、俺の記憶と須美の記憶が一致した。ということは、俺と須美はあの展示展で会ったことがあるのだ。
「ということは、迷子になって泣いていた女の子が須美だったのか……」
そう言うと、須美はクスクスと笑う。
「ふふっ。まさか、こんな偶然があるんだなんてね」
須美は偶然と言うが、俺はそうは思わなかった。
「いや、俺は偶然ではないと思う」
「?」
「戦艦や零戦の展示展が開かれるのだとしたら、それらが大好きな俺と須美は絶対に行くはずだ。だから、会うことができた。そう思う…って。須美、なんでニヤニヤしてるんだ?」
ニヤニヤする須美なんて珍しい。
「えっ!?ニヤニヤなんてしてないわよ!」
須美は自分の両頬をパチンと叩く。
「そろそろご飯ができるから、二人を起こさないと!」
「そ、そうか」
須美は寝ている銀と園子を起こしに行く。
俺も肉じゃがを作り終わっているので、起こしに行く。すると、良い感じに寝ている銀と園子がいた。特に銀はお腹を出して寝ている。
「まったく、銀ったら……」
須美は銀のはしたない姿を見てそう呟く。まず、銀から起こそうとするが、俺はそれを止めた。
「優治くん。どうしたの?」
「いやー、こうやってお腹を出して寝ていると、何だかいたずらしたくなっちゃって」
俺は水性のマジックペンを取り出して、銀のお腹に絵を描く。おへそを丸出しにしてる、と言うわけでぽんぽこたぬきを描いてみた。
「後で銀に怒られても知らないわよ」
「ま、その時はその時だな」
「ん……。あたし、寝てた?」
銀は目をこすりながら起きた。
「まあな、ほら座って。晩御飯だよ」
「わかった……」
銀は大きな欠伸をした後、置いてある座布団に座った。次に園子を起こし、晩御飯を食べた。さすが、須美。今まで食べてたご飯の中で一番美味しかった。
◆
晩御飯を食べ終わって、食器を片付けた後、風呂を沸かす。レディーファーストということで先に三人に入ってもらうことにした。俺の風呂は意外と広く、三人なら余裕で入れる。
「風呂沸いたから、三人とも入れるよ」
「「「はーい」」」
三人は風呂へ向かう。
「優治、覗くなよ」
銀の少し色っぽい声で俺に言う。
「覗かねえよ」
そう返すと、銀はつまんなそうな顔になった後、すぐに風呂の方へ向かった。
「……」
「はぁ……。本当は覗ければ覗きたかったなぁ……ちくしょぉ!」
などと嘆いていたら、ドタドタと足音が聞こえてきた。
「ゆ〜う〜じ〜!!」
「どしたの、銀」
銀がバスタオルを巻いた姿で現れた。髪はぐっしょりと濡れていて、腕や足に水滴が付いていた。おかげで床が濡れている。
「あたしのお腹に落書きしたな〜!」
「あ、ぽんぽこたぬき可愛かっただろ?まあ、ちょっとしたいたずら心で、やってしまった。すまん」
俺は頭を下げて銀に謝った。
「あ、うん……」
あれ?もしかして、このまま何も起こらずに終わるんじゃないの?ラッキー!
「と、思っているでしょ」
ギクッ
「やっぱりな……」
銀、お前は一体何者なの?俺、何だか怖くなってきたよ……。
「すいません……」
俺はもう一度頭を下げて謝る。
「はぁ……。じゃあ、今夜私たちと一緒に寝ること!これで許す!」
「マジか……」
ここで、ご褒美だと思われる一言だが、よく考えてみてほしい。初恋もしたことのない俺だ。女の子と一緒に寝るだなんてメンタルじわじわ削られて寝不足エンドになりかねない。
「条件変更は……」
「無い」
「わかったよ……」
銀が風呂へ戻った後、俺は濡れた床を拭いた。
銀視点
あたしは優治にあたし達と一緒に寝ることを約束させた後、風呂へ戻る。
「二人とも、優治に約束させたよ」
「やったわね、銀」
「これでユウさんと寝れるね〜」
須美と園子があたしにそう言う。実は、あたしは優治にお腹を落書きされたことについては、あまり怒っていない。ただ、あたしがそのことを利用したのだ。まあ、この作戦を思いついたのは園子だけど。
あたしは湯船に肩まで浸かり、疲れを癒した。
優治視点
「まいったな……」
俺は布団を敷き終わった後、思わず本音を漏らす。彼女達が寝る予定の部屋に俺の布団を敷くスペースがないのだ。
このままだと、誰かと同じ布団で一緒に寝なくてはならない。
「三人が風呂から上がったら言うか」
俺は三人が風呂から上がるまで、適当に時間を潰した。
◆
「ってなわけで、このままだと誰か一人、同じ布団で寝なきゃいけなくなるんだ」
俺は三人に寝室に四人分の布団が入らないことについて話した。
「「「……」」」
「まあ、嫌なら別々の部屋にしても良いんだけど」
「「「大丈夫!むしろ、問題ないから(〜)!」」」
「なんでやねん」
俺のツッコミは無視され、三人はこそこそと話してる。
「「「最初はグー!じゃんけんポイッ!」」」
今度はじゃんけんをし始めたよ。何が何だかわからない。説明してほしいのだけど……。
「(しばらくあいこが続きそうだし、もう風呂に入ろう)」
俺は置き手紙を彼女達の近くに置き、俺は風呂に入ることにした。
30分後
お風呂から上がった俺は寝室に戻った。
「優治くん。右か左か、それとも中央の布団、どっちの布団で寝る?」
須美が俺に突然そう聞いて来た。
「俺が風呂入る前にじゃんけんしてただろ。決着つけなかったのかよ」
「というより、つかなかった方が正しいわね」
30分も経ってるのに、何でじゃんけんの決着がつかないんだよ。
「それで、俺に選択肢を与えることにしたと」
「そういうこと。それで優治くんはどの布団で寝るの?」
「(さて、どうしたものか……)」
▶︎右
中央
左
って、何でゲームの選択肢画面のような感じになってるんだよ!?
まあ、良いや。適当に中央にしよう。その方が、三人と一緒に寝れるから、それが良いな。
「中央にするよ。三人と一緒に寝たいわけで、一人に限定するなんということは俺にはできない。それと、平等性があって良いからね」
そう言うと、なぜか須美は少し残念そうな顔になった。
「そっか……。そっちの方が確かに良いわね。銀、そのっち、それで良いかな?」
「私も構わないよ〜」
「あたしもね」
後ろから銀と園子が現れて、そう答える。
「それじゃあ、時間も時間だし、そろそろ寝るか」
俺は中央の布団に入り、眠りについた。
◆
「……寝れない」
俺はそう本音を漏らす。何でかって?一つの布団に俺を含めて四人いることだよ!人口密度高いだろ!しかも、みんな俺に密着してるし!
ふにゅう
「!?」
俺の腕に須美のこの上なく柔らかい物がくっつく。
「
俺はもがいて自分の腕を自由にしようとするが、その度に俺に抱きつく力が強くなって、逆に状況が悪化してしまった。その間にも、俺のメンタルはジリジリと削られていく。
「どうすれば良いんだ。これ……」
俺は良い策が思いつかず、朝が来ることを待つしかなかったのは言うまでもない。
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「お泊まり会楽しかったね〜」
「ええ。また、やりたいわね」
「そうだな!なあ、優治!」
「あ、ああ……。(これからはできるだけお泊まり会に行かないようにしよう)」
俺はそう心の中に誓った。
お泊まり会の話はどうだったでしょうか?一応、優治は恋愛については鈍感な感じですが、これは初恋がしたことがないので、「恋」という感情をまだ理解できていないが主な理由です。
さて、次は夏祭りの話です!