MONSTER HUNTER 〜紅嵐絵巻〜   作:ASILS

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第03話 (著:獅子乃 心)

()ったた……ヤマト、そこの薬草取ってくれ」

「ご主人、大丈夫かニャ? それ、とっても痛そうニャ……」

 

 朽ち掛けた巨木に背を預けながら青熊獣(アオアシラ)の鋭い爪にかかった肩の治療を行う。幸い傷は大騒ぎするほど深いモノではなく薄皮一枚を広範囲にわたって切り裂かれただけだった。

 

「大丈夫だ、大して深いわけじゃない。まぁ広く浅くって感じか、()ちちっ……にしてもこの防具どうするか……」

「ハンター用に丈夫になってるとは言っても布製だからニャ、村に帰ったら直してもらうか、新しい装備を造ってもらうのが最善の策ですかニャ……」

 

 今回の報酬と今回の狩りでの道具費用諸々が釣り合うか計算をしながらぼんやりと遠くを見つめる。

 視界にはすっかりと赤に染まった空と揺れるススキの様な植物が、人によってどうこうされることなく好き放題に伸びている景色が占めている。耳をすませば上流から流れてくる川の水が植物たちの生い茂っている辺りに沿って流れる音と、時折ガーグァの群れの鳴き声が聞こえてくる。

 その様はこの空間が狩場であることを有々と示していると同時に、ゆっくりとした時間がのどかさを孕んでこの空間を支配している、様な気がした。

 

「出費が嵩むな……っとありがとう。さてっと、これをこうして……」

 

 ボーッとそんな事を考えている所にヤマトが川で軽く洗ってきた薬草を持ってこちらに渡してきて、ハッと我に返る。

 礼を言って、目の前にある手当用の道具――これらは支給品ボックスに応急セットとして常に配備されている。流石はハンターズギルド――とにらみ合う。ここからは少々の集中力を要するからだ。

 手始めに薬草を適量、乳鉢に入れ軽くすり潰す。そしてその中にアオキノコを入れようとして手元に肝心のアオキノコが無いことに気づく。

 

「悪い、ヤマト。その辺にアオキノコがあるはずだ、2、3個毟ってきてくれ」

「了解ニャ、すぐに取ってくるニャ!」

 

 ヤマトがタタッと軽やかに駆け出すのを見送って、もう一方の治療を始める。

 残しておいた薬草を清潔な布にくるんで軽く揉む。そうしてから、(あらかじ)め防具を外しておいた肩に当てて包帯をする。これで肩の治療は十分だろう。

 薬草の効果は他の回復薬に比べ効果は劣る上に内服するのも厳しい。なのでハンターの多くはこういった湿布の様にして薬草を使う。中には気合で口に含んで利用する者もいるようだが非常に苦いらしい。

 ちなみに外傷、例えば打ち身や切傷はこうすれば治りも早いので民間療法としても普及しているのだ。

 巻き終えた頃を見計らって、アオキノコを採りに行かせたヤマトの手にはしっかりとモノが握られていた。

 

「選りすぐりのを採ってきたニャ」

「おぉ、ありがとよヤマト。助かったぜ」

「ついでに、さっきの奴が隣のエリアにまで近づいてたみたいだから偵察してきたニャけど、まだかなり怒ってたニャ。近くのジャギィに当り散らしてたニャ。少し可哀想だったニャ……」

「そういやニオイもそろそろ消えかけてきたな、急がねェとこっちまで来ちまうな。よし!」

 

 ヤマトの報告を聞いて、途中で止めていた『調合』を再開する。

 『調合』は狩場において自分をより優位に立たせるために必要不可欠な狩人(ハンター)としての重要な技術(スキル)である。

 主には回復薬やガンナー用の弾丸だが、時に角笛や罠などの道具(アイテム)を作り出したりもする。

 そもそも狩場には様々な掟があり、その一つに狩場に持ち込む道具の数、規定数が決まっているのだ。かといって強敵に遭遇し持ち合わせの道具を使い切ってしまった時に、無理をしてむざむざ命を落とすのは馬鹿がやること。

 元より自給自足、自分の食べ物は自分で取る。狩人(ハンター)たちはこうして強敵との戦いを生き延びてきたのだ。

 

「……とか何とか教官が熱く語ってたっけな。よし、もういいだろう。さっきのハチミツ持ってきてくれ」

「任せるニャ、奴との戦いでもしっかり死守したニャ!」

 

 作業も終盤に差し掛かり、腰当てに付いているひょうたんから水を適量乳鉢に流し込む。一応はこれを空き瓶に入れる事で世間一般で言う『回復薬』の完成だ。だが、今回はそれにひと手間加える。

 ガサゴソとオトモアイルーの標準装備であるタル型の持ち物入れから栄養価たっぷりのハチミツを取り出して、乳鉢に加えて出来上がりだ。

 

「ヤマト、この前練習したやつ。やっと完成だ。回復薬グレートだ!」

「ご主人、天晴れですニャ! ソレを飲んだらヤツをバッチリ退治するニャ!」

「応よ! そいじゃ早速……んぐ、んぐ、んぐ、ぷはぁーーッ!」

「ど、どうですかニャ?」

 

 出来立ての回復薬グレートを乳鉢に入ったまま、ぐいっと煽る。その間も温泉で見せた『漢の在り方』に習って腰に手を当てて一気に飲み干す。

 怪我か、はたまた調合の出来栄えを問うヤマトに漢らしく言い放つ。

 

「不味い! だが身体に、五臓六腑に染み込んでいくのが分かる……っしゃあ! 第2ラウンドと行こうぜ!」

「ニャーッ! ご主人について行くニャッ!」

 

 これほどまでにエネルギーに溢れているのだ、回復薬グレートの効果は抜群に効いたのが見て取れる。

 翔は広げていた道具をヤマトに手伝ってもらいながらまとめると、治療した肩を気遣いながら防具を装着する。出血はおろか、痛みもほとんど感じないまでに回復したのを、見ると肩をぐるぐる回しながらストレッチし違和感を確かめる。少しでもおかしければ狩りに支障をきたす。支障があれば大人しく引く、命あっての物種だからだ。

 

「う~ん……8割、8割だな。おし、行けるぞヤマト」

「出陣ニャ~!」

 

 絶好調とは言えない、だが頼れる相棒もいる。怪我も狩猟に支障をきたすレベルでもない。

 翔たちには、目の前の獲物を狩る事しか頭にはなかった。

 こうして、青熊獣(アオアシラ)の狩猟、第2ラウンドのゴングは鳴った。

 

 

 

      ◆      ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

 

――――ズン、ズン、ズン、ズン……――――

 

 アオアシラは、青熊獣の名に恥じない、青い毛並みの巨躯を揺らしながら、渓流一の名所とも言われる川原を闊歩している。

 よく見れば、決定打だと言える様な一撃――左後ろ足の刺し傷を除いて――とは言えないものの何度か打ちあった中で与えたほとんどの傷はすでに血が止まっている。

 モンスターたちは、その種が強力であればあるほど、凄まじいほどの生命力をもっている。ハンターたちの様に回復薬などを使うことはないが、体力が減ってくると獲物を見つけて捕食したり、巣に戻って眠ったりするものもいるのだ。

 

「見えるか、ヤマト?」

「はい、見えますニャ!」

 

 草むらに身を潜め、こちらには気づいていないアオアシラをじっくりと観察する。

 対象はというと、辺りをくんくんと鼻で索敵中と言ったところだろう。目当ての敵はもう目の前にいるというのに。

 

「こんなことなら生肉と罠でも持ってくるんだったな。トラップツールも無いし……」

「教官が言ってたニャ。“漢なら拳で語り合え、例えそれがモンスターでも”ってニャ」

「……死ぬな」

 

 教官の受け売りはさておき。敵に見つかっていない、というのは狩場において大きなアドバンテージになる。

 多くの場合、罠の上に好物を置いて誘き寄せたり、ガンナーならばより多く弾を打ち込むチャンスだ。が、生憎と翔たちは持ち合わせておらず、精々後ろから切りかかるのが関の山だろう。

 

「(だが、このチャンスで一気に決める……ッ!)」

「(はいですニャ!)」

 

 もう目前にまで差し掛かったとき、草むらで息を呑む一人と一匹は視線で会話をする。

 

――――――――ずん、ずん……。

 

 息を吐く音でバレてしまわないか。自然と浅く、浅く、自分をここに居ないものとする。

 

――――――ずん、ずん……。

 

 草むらの目の前。脇へとゆっくりと過ぎ去っていく。身体中から自然と緊張の汗が吹き出す。

 

――――ずん。

 

 アオアシラはなんの変哲もない草むらを過ぎ去り、いよいよこの辺りに仇敵が存在しないと悟り違うエリアへと移動しようと思ったその時だった。

 スゥーっと死角から刃物を突きつけられるような、鋭い殺気を後方から感じたのだ。

 違和感、異和感。ゆっくりと振り返ると、回避不可能な距離にまで迫っていたのは、自身の足に手痛い傷を負わせた憎い一人と一匹だった。

 

 

 

『やぁああああああああッ!!!!』

『ニャああああああああッ!!!!』

 

 咄嗟にどうこうしようにも、反射速度を大きく超えた太刀による一閃は、アオアシラの右半身、背中から脇腹を通過するように大上段から振り下ろされ蒼色の毛皮を赤黒く染める。

 

『ガァアアアアアア……!』

 

 低く苦痛に満ちた呻き声が漏れる。視界が、目の前に構える翔とヤマトを残して真っ赤に塗りたくられる。

 

「へへ、先制パンチ痛かったろ?」

「不意打ち御免ニャ」

 

『グゥルルルルルルゥゥゥッ……!』

 

 ボタボタと質量のある音を立てて川の水を徐々に赤くしながら、ゆっくりと方向転換し器用に後ろ足で立ち上がる。頭をスッと一瞬引いて息を吸い込んだと思えば、次の瞬間に渓流中を震撼させる。

 

『ガァアアアアァァァァッ!!!』

 

「ボーッとしてたら不味いニャ!」

「お、おう! 怒り状態か……思ったより、うおっと!?」

 

 アオアシラは仁王立ちの状態からゴツゴツと刺が隆起した腕を振り下ろす。

 翔は思った以上に速度が増している一撃に目を見張る。

 

――――パラパラ……。

 

「アレを食らったら穴が空く訳な。要回避ってことか、よっ!」

「ニャア! ニャア! ニャー! ご主人もいい加減相手にして欲しいにゃ!」

「スマン! おら、こっちだ!」

 

 地面に埋没した腕を引き抜きながらの一撃を、軽々と避けながら感想を漏らす。

 そうしている間も、自分の何倍もある生物を相手に果敢にも武器を振り回す相棒からの苦言にヤマトとは反対の方向に走り出す。

 

「おらおらこっちだ! かかって来いよ!」

 

 アオアシラが目で自分追っている事を確認すると、顔が正面に向くのに合わせて再びペイントボールを投げつける。辺りには独特の香りが拡散する。

 アオアシラの方はと言えば、顔面に強烈な香りのする液体をぶっかけられたのだ。無論――――怒り狂う。

 

『グガッ!? グゥーッ! グゥーッ! ガァアアアアァァァァッ!!!』

 

 ちまちまとした攻撃を続けているヤマトに一瞥することもなく、翔めがけて巨体が迫る。

 人間と比べて遥かに大きなアオアシラが全身を使って体当たりをする、これが当たるだけで人間には致命傷になりかねない破壊力持っている。それを知っていながら翔は、アオアシラの正面に立ったまま、太刀を下段に構えて一歩も動こうとしない。

 

「ご主人! 何してるニャ! 回避ニャ!」

「……6、5、4、3」

 

『グガァァァァッ!!!』

 

 異常に気づいたヤマトが声をかけるも、依然動く気配のない翔に、スピード全開で一歩、また一歩とアオアシラの巨躯が迫る。

 

「ご主人!」

「……2、1、ここだ!」

 

『グガァァッ!?』

 

 翔がその巨躯に撥ね飛ばされる寸前。翔は大きく横にグラインドし、アオアシラの右腕に一太刀浴びせる。俗に言う切り払いである。

 大きくスピードの乗ったアオアシラの体は、通常時何でもない一撃でやすやすと川原に転がされることになる。

 

「おおおおォォォォォォッ!!!」

 

 好機を逃すまいと、バランスを崩しているアオアシラの背中に幾つもの斬撃を浴びせる。

 

「ボクも負けてられないニャ!」

「(ああ、これだ。不思議と神経が研ぎ澄まされていく……)」

 

 一つ、また一つと斬撃を浴びせ切り傷を作る度に、翔は神経が研ぎ澄まされていく感覚に陥る。

 翔は、太刀そのものを自身の手足と同じく器用に振り回し、一撃を振るう毎にアオアシラの傷をより大きく、より深いものへとシフトさせていく、が。

 

「うおっとと、脈絡もなしに大暴れかよ!?」

「流石に黙ってやられたりはしないニャ。次の攻撃に備えるニャ!」

 

『ゴガッ、グォォォォッ! ……フゥーッ! フゥーッ!』

 

 黙ってやられるアオアシラではない。勢いをつけて、周囲を薙ぐように体制を立て直す。

 その目は赤く充血し、翔たちを睨みつける双眸にはありありと憎しみの色を浮かべている。

 ジリジリとアオアシラとの距離を図る翔とヤマトのコンビは、挟み込む作戦に出る。

 

「(ゆっくりだぞ、隙をみせるな)」

「(分かってるニャ、ボクに任せとくニャ)」

 

『グゥルルゥゥ……』

 

 アイコンタクトで会話しながら、アオアシラの周囲をジリジリと詰めながら隙を伺う。

 ニンゲンが来るか、アイルーが来るか。背後を取られないように、死角に入られない様に両方を視界に入るようにしながら距離を取ろうとするアオアシラ。

 硬直状態。翔たちからすればアオアシラの一撃は脅威で下手には動けない。一方のアオアシラとしては、一撃が決まればもう片方を始末するのも苦ではないが、隙を突かれてまた転ばされでもすればより反撃が難しくなる。

 

「(ボクから行くニャ。ご主人頼みましたニャ)」

「(おう、もう一辺転がせばより優位に立てる。この機は逃せねぇ……!)」

 

 ヤマトの目配せにコクコクと頷いて応答する。感づかれまいと息を潜めて飛び込むチャンスを伺うヤマトに注意が行かないように、わざと砂利を踏みしめて音を立てる。

 狙い通りにアオアシラは警戒して、翔に注意を集中させる。唸り声を上げながら終始威嚇をしている奴はボーンピックを振り上げたヤマトには気づかない。

 

「隙ありニャー!」

 

『ゴォアアアア!』

 

 左足の傷目掛けて降りおろされた切っ先はアオアシラの狙いすました方向転換となぎ払いによって防がれてしまった。

 どうやらアオアシラの方も死にもの狂いといったところだろうか。初めから作戦は読まれていたのだろう。

 

「くそッ! ヤマト今行くぞ!」

「うぅ……ご主人、油断しちゃダメニャ……ッ!」

 

『ゴォアアアア!』

 

 ヤマトの身を案じて駆け寄ろうとする翔に、ヤマトは静止の声をかけるが、アオアシラはこの好機を逃がしはしなかった。

 ヤマトを振り払った勢いをそのままに、駆け寄った翔の左半身をもう片方の手が捉えたのだった。

 

「ッ!? ックソぉ……ッ!!!」

「ご主人……ッ!」

 

 咄嗟に手にもっていた太刀をアオアシラの豪腕と体の間に入れるが、その構造上防御や、受け流す事は専門外。これがもし片手剣や大剣であれば受け止めることができたろう。

 緩衝材の役割を果たすことなく大きく吹き飛ばされ川原をごろごろと転がされ、体中に擦り傷を作る。

 全身の痛みが引くまでそっとして欲しかった翔だったが、アオアシラが待ってくれるはずもない。止めの一撃をくれてやるとばかりに駆けてくる巨躯。翔は身体に鞭打って奮い起こし寸でのところで体を投げ出して回避する。

 

「(思ったより苦戦してる……一回村に戻るか?)」

 

『グゥルルルルルルゥゥゥゥ……』

 

 轢き損ねた事を知って悔しそうに唸り声を上げるアオアシラの気配を背後に感じながら、翔はいよいよ撤退を考えるほどに弱気になってくる。

 もちろんハンター家業には命の危険がつきものだ。欲に溺れる者、引き際を計れない新米(ルーキー)は早死するものだ。

 ここで引いても装備を整えてまたくればいい。

 そうだ、そうしよう。ヤマトを拾って村に一度帰ろう。

 翔がそんな風に思考し始めた頃だった。

 

――――♪~~♫~~~♫~~~♪~~♪~~♫~~~――――

 

「……回復、笛……ヤマトか?」

「ご主人、諦めちゃ駄目ニャ! 教官言ってたじゃニャいか!」

 

『漢たる者最後まで諦めるべからず! 自分の持てる全てを賭し、全ての策をぶつけ、なお倒せぬ相手がいようとも気合と根性ある限り……ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ、オホェッ! ……オホン』

 

「ああ、何か言ってたな教官らしいこと」

「そうニャ! ガッツニャ! もう傷は痛まないはずニャから今度はこっちの番ニャ!」

 

 渓流のせせらぎとアオアシラの唸り声、そして風に揺れてざわざわと音を立てる木々や草の音だけがする狩場に、癒しの音色が木霊した。

 回復笛。モンスターの牙や爪を加工した角笛を改造した道具である。一度吹き鳴らせば、その癒しの音色が体中に染み込み、不思議と体が軽くなり、身体の痛みが引くという代物である。

 先程は、アオアシラの注意が完全に翔へ向いている隙に、道具入れからそれを取り出したヤマトが吹き鳴らしたのだ。ただそれだけではない。ヤマトの鼓舞は、折れかけた翔の闘志に再び火を点けたのだ。

 

「スゥーーッ……フゥーー……ヤマト、サンキュな」

「とんでもないニャ、ここからはボクたちのターンニャ!」

 

 深呼吸、リフレッシュ。深く息を吐いてからボソリと相棒に感謝する。以外にも聞こえていたようで、照れ臭そうにしながらも肩をぐるぐると回してやる気を見せるヤマト。

 一方のアオアシラは、弱りかけていた相手にまだまだ力が残っていたこと、それどころかみるみるとその身を纏う気風が変わっていくのに警戒体制をとり威嚇の唸り声をあげる。

 

「俺は正面から、ヤマトは奴の気を散らしてくれ」

「了解ニャ!」

 

 軽やかに駆けていくヤマトを横目に、翔はアオアシラの正面に対峙する。

 切っ先をアオアシラに向けて半眼、深呼吸を繰り返し集中力を高める。

 ただならぬ気配を感じたアオアシラは立ち上がると、両手を広げて翔を抱き込むように襲いかかった。

 

「遅いッ!」

 

『ッ!? ガウゥッ!?』

 

 初動を紙一重で避ける。この場合は見切るが正しいだろう。脇へ避けながら切り払いで一撃。隙だらけの背中へ素早く突き、切り上げとすかさず二撃。

 当のアオアシラは初撃を避けられた時点で既に混乱。脇への一撃はともかく、背中への斬撃はなぜ切られているかも気づけていないだろう。

 振り返り自分の血で濡れた太刀を払っている翔を睨みつけたアオアシラは、小さな駆け足の音と共に走る鋭い痛みに翔への反撃をくじかれた。

 

「ボクを忘れてもらっちゃ困るニャ!」

「そして俺もなァ!」

 

 翔に背を向ける。当人の声がして振り返ると上段から振り下ろされた太刀は、アオアシラの胸部を切り裂き、その痛みに耐えかねて後退る。

 

「畳み掛けるッ!」

 

 好機、アオアシラとの距離を詰めながらの振り下ろし、素早い突き、そして流れを殺さずに切り上げ。太刀使いの基本動作と言われる型だ。

 型に忠実に、太刀を自在に振り回す翔の目はまったくの別人と言ってもいいほどに鋭い眼光を称えている。そして心無しか、翔の振るう太刀の軌跡がゆらゆらと光の帯びを引く様に煌めく。これは恐らく太刀使いのもう一つの特徴『練気(れんき)』だろう。

 『練気』。即ち、太刀使いは相手へ斬撃を浴びせる毎に、集中力といった感覚の鋭敏化。それから斬撃がより鋭い一撃へと昇華されていく。達人や一流と称される使い手になってくるとハンターの様な訓練を受けていない一般人にすら、体から放出される練気を視認できる程の純度まで練る事が出来るらしい。余談だが、双剣使いはこれによく似た「鬼人化」と言う秘伝を使い自らを興奮状態へと昇華し超人的な連撃を可能とさせるらしい。

 そして、翔の鬼のような猛攻にやられっぱなしになるつもりはない。息もつかずに太刀を振り回す翔へ先程地面を陥没させた右手を振りかざす。

 

退()けヤマト!」

「そんな攻撃当たらないニャ!」

 

 先程まで翔が立っていた位置に極小規模のクレーターが出来たのではないかと錯覚するような音を立ててアオアシラの豪腕が突き刺さる。しかし既に危険区域から退避した二人には実害はない。

 ボコッ、っという音を立てて腕を引き抜くと、これまでとは態度を一変して背を向け、先程翔たちが手当をしていた区画の方角へ駆け出す。

 

「アイツそろそろ弱ってきたニャ。息つく暇なんか与えないニャ!」

「待てヤマト。そこに座れ」

 

 ふっと気を抜いた翔は太刀を背中に背負った鞘へ戻して道具を入れているポーチから応急薬を取り出す。これはもちろんギルドの方で支給された道具だ。

 一応はモンスターの分類に入るアイルーとはいえ、先の交戦で受けた傷をケアしようと言うのだ。

 

「ほら、擦りむいたとこ出してみ」

「わ、分かったニャ……」

 

 軟膏状のそれを適量手に出して、ヤマトの差し出す足へ擦り込むように塗りたくった。

 自分も転がされた御陰であちこち擦り傷だらけなので自分の分の手当もする。

 

「よし、次で決めるぞ」

「さっさと終わらせて温泉でゆっくり休むニャ」

「そうだな、ヤマトは大活躍だったしミラクルミルクを御馳走してやるよ」

 

 よいしょっと腰を上げながら言う翔の言葉に、ヤマトは小さい体を目一杯使ってガッツポーズする。

 このコンビにかかれば討伐ももう目の前。遠くに見える地平線に顔を隠しかけた夕日が、独り彼らを見守っていた。

 

 

 

      ◆      ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

 

 

 駆け足で区画へと入っていった翔たちを、既に仁王立ちの状態で待ち受けていたアオアシラがこちらを睨みを利かせ、時折唸り声も上げている。

 コクり、とひとつ頷いた翔はゆっくりと背中から太刀を抜き放ち対峙する。その間ヤマトはススキの様な植物の中に身を潜めながら奇襲できないかタイミングを図る。

 

『グゥウウウウオオオオォォォォッ!!!』

 

「ああ、白黒つけよう。面と向かってやりあうってんだから俺もこそこそ一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)なんてナシだ」

「(あんなこと言ってるけど本当に大丈夫かニャ……?)」

 

 沈み始めた夕日。早ければもう何処かに顔を出した一番星がこちらを見ているかもしれない。

 木々や植物を揺らす風、ざわざわと音を立てるのにも関わらず、しんと静まった空間を作り出す。

 命を賭して戦う男と獣を包むムードは十分。緊迫間に額の汗を拭うことをすらせずヤマトが固唾を飲んで見守っている。

 

――――――ざわざわざわざわざわ……。

 

 木々たちが立てる音が、一人と一匹を煽る。

 

――――――ざわざわざわ……。

 

 翔は太刀を腰に据えた居合の様な構えで目を半眼に開き、感覚を研ぎ澄ませる。

 

――――――ざわざわ……。

 

 先制攻撃はアオアシラの方からだった。

 飛びかかるような突進、豪腕に続く当たったら致命傷になりえるレベルの攻撃だ。まぁ、当たれば(・・・・)、だが。

 

「芸がないな、そらこっちだ!」

 

 居合の型から横に一閃。肩に浅く入ったそれの勢いを回転に変え、そのまま横へ避けるように回避行動を取る。

 すかさず突き、払い切りと素早く切り込み、一撃でも多く攻撃を与えるつもりなのだろう。

 だがアオアシラも学習したのだ。

 最初(ハナ)から攻撃をうけるつもりで間合いを詰めるのが目的だったらしい。

 それもそのはず。突進後にすぐさまUターンを決めると飛びかかるようにして体を掴まれる。

 

『グゴォォォォォォォォ! ガウッ! ガウッ! ガウッ!』

 

「うぐっ!? 離、離っせ……ッ! のわッ!? をあッ!? かはッ!?」

 

 飲み物をシャカシャカと振って混ぜるかのように、翔の体を上下に振り回す。

 叩きつけるでもなく、投げ飛ばされるでもなく。振り回されている翔は、ギュウギュウと締め上げられた体が軋むのと一緒に、段々と吐き気を催す。

 だがここで伏兵の出番だ。

 

「忘れるなと言ったニャーッ!」

 

 バットを振るかのようにフルスイングしたボーンピックを、左足の傷目掛けて振り抜いた。

 

『グゥウウウウウウゥゥゥゥッ!?』

 

 思わず苦悶の声を上げながら翔から手を離してしまう。

 

「……っと、ヤマトでかした……ううッ、気持ち、悪い……」

「無理しない方がいいニャ。ボクが相手しているうちにそこらで吐くといいニャ」

「よせよせ……。ううっぷ、も、もう大丈夫だ。アイツも体制を立て直したみたいだし、ボーッと立ってるとさっきの二の舞だ……くそッ」

 

 ヤマトのファインプレーで、アオアシラの拘束を逃れることは出来たが平行感覚を狂わされた翔は太刀を杖の代わりにして体を支える。

 ヤマトの勧めもある、ちょっと茂みで楽になってこようかとも思ったが回復はアオアシラの方が早くそのまま戦いに出る他なかった。

 

 アオアシラはより深く抉られた傷口から大量の出血があるものの、ヤマトの一撃を貰う前と大して変わりのない速度で翔たちに接近すると――――足を(もつ)れさせて目の前に転がり出る。

 

『チャンスだ!』

『チャンスニャ!』

 

 同時に叫ぶと、それぞれの得物を存分に振り回す。

 ここでもう決めてしまおう、これが最後のチャンスだ、とばかりに一撃でも多くダメージを蓄積させる。

 脚のケガが思ったより深刻であったのに気づかずに全速力を出したアオアシラはと言えば、翔たちの猛攻に曝されながら必死にもがいて立ち上がろうとする。

 そして、バタバタともがいた足がタイミングよく飛び込んだヤマトを吹き飛ばし、連携に隙の出来た瞬間に転がる様に距離を取ったアオアシラが吠える。

 

『グォオオォォワァァァァッ……!』

 

 最初の頃に比べ覇気がなくなってしまった鳴き声には、アオアシラの限界が近いことを翔たちに悟らせた。

 外見もそうだ、翔の倍近くある蒼毛の巨躯には太刀によって作られた大小様々な切り傷でボロボロ。美しい蒼も、そのほとんどが赤黒い血によって紫色に濡れそぼって見える。

 フラフラとしながらも最後の意地で立ち上がったアオアシラは、突風でも起きれば倒れてしまうのではないか、というほどに弱り翔たちの勝利がもう手の届く場所にまで近づいていた。

 

『……グルルゥゥゥゥッ! ガルルゥゥ! ガウッ!』

 

 人語を喋るなら、俺はまだ戦える、どうしたかかってこい、とでも言っているのだろうか。目は未だに闘争に飢え、自らの勝利を信じて疑っていない。

 翔たちはその姿に、ある意味で畏敬の念を感じた。

 

「俺はお前を超える! 悪いがここで止まっている暇はないんだ!」

「ご主人……」

「さぁ、これで終わりにする。村のみんなが待ってるからなァァァァ!!!!」

 

 翔は叫びながらアオアシラが離した距離を一気に詰める。

 アオアシラは、それを腕を横に薙ぐようにして牽制するも体制を低くされ、防具の頭部についている羽飾りを掠める程度に止められ避けられてしまう。

 

「一つッ!」

 

『ガァウッ!』

 

 アオアシラの腕をくぐり抜けた翔は、超近距離の袈裟斬りで右から左へと切り裂く。

 完全にカウンターとして決まった一撃にアオアシラは後ろへ後ずさりながら仰け反る。

 

「二つッ!」

「その調子ニャ! そのまま気刃切りニャ!」

 

 大きな隙に、今度は反対側から袈裟斬りを放ち、切り払いと同時に後ろへ退()く。

 二撃目をモロに食らいながらも再び腕で翔を薙ぐが、そこにはすでに翔の影はない。

 既にボロボロの身体も、大振りの攻撃を二度も受けてなお立ち続けるアオアシラ。それは素手に体力の限界に近いはずなのに、気力からか、それとも意地(プライド)からなのか。ふらふらとよろめく巨躯は今にも倒れそうで、胸に出来た大きな傷からはダラダラと真っ赤な血が垂れている。息は既にぜえぜえと喘鳴が漏れ聞こえまさに虫の息といった様子だ。

 そして翔はチンッと鳴らして刃をアオアシラへ向けると再びその懐へ飛び込んでいく。

 疲れか、痛みか、それとも両方かもしれない。大きな動作でなかったにせよ、翔の踏み込みに素早く反応が出来ない。

 

「オラオラオラオラァァァァッ!!!!」

「行けるニャ! 押し切るニャ!」

 

 素早い横薙ぎを連続で押し込む。胸部には凄惨な傷が増え、美しかった毛並みにはもう影すらない。

 苦痛に満ちた鳴き声を上げながら怯むものの倒れないように踏みとどまる。アオアシラは既に朦朧としながら気力のみで立っているに違いかなかった。

 そして翔は、横薙ぎからの勢いを殺さないまま、止めとばかりに手に持つ太刀を振り上げる。

 

「トドメだぁぁぁぁッ!!!!」

「あ、ご主人危ないニャッ!」

 

 翔が振り下ろす太刀。アオアシラは無意識のままか、一矢報いる為か。最後の力を込めたアッパーカットばりの振り上げが豪腕によって放たれる。

 翔の太刀が先にアオアシラの首筋へ触れる。振り下ろすまでにはアオアシラの豪腕が翔を捉えるだろう。死に損ないだろうがモンスターの一撃は、甲殻や鱗の無い人間にとって致命傷だ。

 だが、翔は避けることはなかった。声を張り上げ自分の全てを太刀に込めて振り下ろした。

 

 

――――――ぱさっ……。

 

 

 一瞬の静寂の後、最初に音を立てたのは比較的軽いもの――――翔の被っていた笠が落ちた音だった。

 次いで、ずんと大質量の重たい音が地響きを立てて渓流に響きわたった。

 

「……あ、ご、ご主人。つ、つつ、遂にやったニャーッ!」

「……くっ、はぁ、はぁ……や、やってやったぜ」

 

 最後の一撃。アオアシラの放った豪腕は、翔の頬を軽く掠め被っていた笠を撥ね飛ばすに止めた。翔の一振りはアオアシラを後方へと押し出し、振り抜き、そのままアオアシラは仰向けに倒れ伏すことになる。恐らくこの一撃で後ろへと押し出された事が、翔への攻撃を最小限に止めた要因の一つだったのかもしれない。

 

 こうして、アオアシラの狩猟は翔たちに軍配が上がったのだった。

 

 

 

      ◆      ◆      ◆      ◆      ◆

 

 

 

「さて、んじゃ早速剥ぎ取りといくか」

「はいニャ! お前の死は無駄にしないニャ!」

 

 ポーチから残った応急薬を出して、頬の傷や節々に出来たアザや擦り傷に塗りたくる。後になって目立つ様な大きな傷はつかなかったものの、今回の狩りでは全身傷だらけになってしまった。村に帰ったら温泉にしっかり浸かって、ケアしてからゆっくり休もう。

 そんな風に考えながら、よいしょと腰を上げてアオアシラの骸に近寄る。

 壮絶な闘いを繰り広げた相手はこうして今自分の目の前に横たわっている。

 今しがた拾ってきた壊れた笠を取って胸に置き黙祷を捧げる。

 如何なる命とてそれは尊いもの。人であってもモンスターであっても自然のサイクルに組み込まれる以上は平等である。

 取り分けこの周辺地域は自然との繋がりが密接であり、村にはその恩恵たる温泉が湧いている。

 村の年長者たちは、若い衆、はては子供たちにもそのありがたみを教えて後代へと伝えている。

 こうして翔が黙祷を捧げるのも村長や教官、父の教えが影響しているのだ。

 

「……お前の死は無駄にしない。その血肉は他の動物の糧となり、その爪や牙は俺の村を守るために使わせてもらうぞ」

「安らかに眠るニャ」

 

 一通りの祈りを捧ると、腰に挿しておいた剥ぎ取りナイフを引き抜きアオアシラへ突き立てる。

 その骸は既に冷たくなり始めているので、素早く切り分けなければ硬直が始まってしまうだろう。

 ヤマトと協力しながら丁寧にナイフを動かし、解体を進めていった。

 

 一通りの解体が終わり、アオアシラの皮や爪などでポーチを一杯にしたので残りは自然へと還す。

 摂りすぎず、残りは自然の摂理に任せて、他の生き物がその血肉へと変えるのに任せるのだ。

 

「さて、これで依頼は完遂だ。さっさと村に戻って一風呂浴びようぜ」

「そうですニャ。村長に報告して、約束通りミラクルミルクをぐいっと行くニャ!」

 

 片付けを終えてベースキャンプへと歩き出す。

 今日一日の疲れでそのまま寝てしまいたいが、辺りは既に月明かりによって照らされているのだ。

 辺りには明滅を繰り返す光蟲や雷光虫が、渓流の違う顔を彩っている。

 軽口を叩きながらも辺りを警戒しつつ歩きベースキャンプへと着実に進んでいく。

 

 その、ハズだった。

 

 

「ご主人!」

「分かってる、茂みに走れッ!」

 

 気づくのと同時に翔たちは近くの茂みへと飛び込んだ。

 急にどうしたのかと聞かれるだろう。きっと彼らもまた同じだ。

 動物の勘。そう言い表すしかない様なことだ。

 先程までアオアシラと交戦していた時に感じていた緊迫感。それが彼亡き今どうして感じるのか。

 突然この一体を包み込んだ緊迫感、緊張感を彼らは察知したのだ。

 

「な、何ごとニャ? アオアシラが生き返ったニャ?」

「バカ言え、さっき切り分けただろう。大物アイツだけじゃ無いのか?」

 

 幾分トーン落とした声で辺りをくまなく眺める。

 村長からの依頼はアオアシラの討伐。昼間みたドスファンゴは既に死んでいたし、大型のモンスターが出没するとも聞いていない。

 不可解ながらも、動物としての勘が危険を告げているのだ。

 そして、その正体が視界の隅に映り込むとゆっくりアオアシラの方へ向かっていくのが見えた。

 

――――――――ずん……。

 

――――――ずん……。

 

――――ずん……。

 

 

――ずん。

 

 

 それは碧がかった体毛の巨大な龍だった。

 だが、それは飛龍と呼ばれる種にあると言われる翼を有していない。

 陸を移動する為のそれは、四足にして大きな爪を持っていた。

 頭部から尻尾まで、ゴツゴツと尖った鋭利な角状の棘が生えており、白い(たてがみ)は威風に満ちていた。

 アオアシラに近づき匂いを嗅ぐ。死んだのを確認したのだろうか、一通り嗅いだ後、星の煌めく空へ目掛けて大きな遠吠えを上げた。

 

「……ご、ご主人。アイツまさか」

「ああ、間違いない。ヤツだ」

 

 翔たちはそれを知っていた。翔の父が身に纏っていた防具の象徴。『雷狼竜(ジンオウガ)』だった。

 

 

 

『ねぇお父さん。そのジンオウガって強かった?』

『ん~、そうだな。強かったな、父さん何度も死にそうになったからな』

『ホント!? 死にそうになったの?』

『ああそうだよ。アイツの電撃に触れたら一発だぞ。死ぬほど痛いし、死んじゃうかもしれない』

『やだ! 死んじゃやだ! お父さん、死なないで。僕、お父さん死んだら寂しいよ』

『あ、おい泣くなよ……。父さんは死なないぞ! 翔もこの村のみんなも守らなくちゃいけないからな』

『ホントに? じゃあ約束。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます♪ 指切った♪』

 

 

 

「親父……あんなの闘ったのか?」

「ご主人、ぼやっとしたら駄目ニャ。ボクたちにはまだ勝てる相手じゃないニャ」

「あ、ああ。ベースキャンプに戻ろう。このことを村長に報告しなくちゃな」

 

 子供ながらに父に聞いた話を思い出す。あの強かった父でさえ認めた相手だ。勝てるはずがない。

 あの日指切りをした小指を見つめていた翔をヤマトが我に返す。

 ずっと隠れててもいずれ見つかってしまうかもしれない。

 翔たちは身を屈めたままベースキャンプの方へと向かうことにした。のだが……。

 

『ッ!? ガウッ!?』

 

 思いの(ほか)、事はそう上手くいかないのだった。

 

「ニャニャッ!? き、気づかれたニャ! 逃げるニャ!」

「言われなくても!」

 

 大地を疾駆するために発達した四肢は、翔たちに向かって大地を蹴り出している。

 翔たちは後方に迫る足音に振り返ることもせず茂みの中を疾走する。

 

 月明かりに照らされた渓流は、一人と一匹、そして雷狼竜(ジンオウガ)の駆け抜ける音によって、静寂を取り戻す機会をまた逃す事となった。




はじめましての方、初めまして獅子乃です。
おひさしぶりですの方、お久しぶりです獅子乃です。

そして、皆さんの疑問にお答えいたします。
実は今回のお話の担当は自分ではありません(前話のあとがき参照)
諸事情により順番を変更、ということでポっと自分が出てきたわけです。
自己紹介は……小っ恥ずかしいので獅子乃のユーザーページをご覧ください。

さて。色々雑談を交えたかったのですが何分自分だけの作品ではないので。
次回担当は『サザンクロス』さんです。ザクロさんって自分は呼ばせてもらってます(^^♪
ISとかの二次創作を書いている方ですのでそちらを読んだことがある方もいるのでは?

それではそろそろお別れです。
次話が出るまでの間の感想の返事は自分がやらせていただきます。

では、次回の更新にてまたお会いしましょうヽ(*´∀`)ノ

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