翔はクエストを受注した次の日、オトモのヤマトを伴って、日の出前から狩り場に向けて出発した。
移動はガーグァという走る能力に優れた丸っこい鳥に、車を付けた鳥車と呼称される乗り物である。ユクモ村周辺の地域で広く普及しており、近辺では最もポピュラーな乗り物だ。
そんな鳥車の荷台には、ユクモ装備に身を包んだ翔の姿があった。背中には、昨晩入念に手入れした愛刀――骨刀【犬牙】の姿も見受けられる。
「ヤマト、寝れる内に寝とけよ。アオアシラといつ戦う事になるか、わかんねえからな」
「了解ですニャ」
鳥車の荷台に揺られながら、翔はヤマトに声をかける。
ひとたび現場に足を踏み入れれば、そこはすでに人の世の理が通用しない世界だ。
たった一つだけ存在する絶対のルール――“弱肉強食”に全てを支配された、文字通り死と隣り合わせの空間。一瞬の油断も、命取りになりかねない。
安心して眠れる内に、ありったけ寝ておかなければ。
翔とヤマトを乗せた鳥車は暗闇に彩られた森をかき分け、一路目的地を目指した。
◆
翔とヤマトが目を覚ましたのは、今回の狩猟場である渓流に着いてからだ。鳥車の操縦をしていたアイルーが、起こしてくれたのである。
「ふぅぅ、ここに来るのも久しぶりだぜ」
そう言って翔が目を向けるのは、広大な自然と清流に囲まれた【渓流】と呼ばれるフィールドだ。
青々と茂ったユクモの木々もさることながら、一番の特徴は透明度の高い清らかな水であろう。
この水は近隣の山に降った雨水が時間をかけてろ過されたもので、【渓流】のあちこちで湧き出ては、近くを流れる川へと注いでいる。
飲み水としても重宝されており、渓流にこれだけ大量の緑が育まれているのも、ひとえにこの水のおかげと言っても過言ではないだろう。
「久しぶりって、先週も来たばかりですニャ」
「あれ、そうだったか?」
「繁殖期【春】の渓流名物、特産タケノコ狩りですニャ。本当に忘れたのですかニャ?」
「あぁ、さっぱり」
まず翔とヤマトは、ベースキャンプに設置されている青いボックスへと歩み寄った。
このボックスには、現場でハンターの役に立つアイテムが保管されている。管理を行っているのは、ハンターズギルドと呼ばれる組織だ。
ハンターズギルドとは、クエストの発注、モンスターの生態調査、乱獲の防止、危険なモンスター(主に古龍種)の監視などを主に行っている、巨大なハンター支援組織の事である。
全てのハンターはハンターズギルドに登録されており、腕の良いハンターには、ギルドマスターから直々にクエストを依頼される事もあるらしい。
このベースキャンプに貴重な補給物資を届けているのも、彼等ハンターズギルドなのだ。
翔はボックスの中から応急薬や砥石を取り出すと、意気揚々と渓流の奥深くへ消えていった。
村長から受注したクエストは、アオアシラの討伐・捕獲・撃退のいずれか。もう一つが【渓流】の調査だ。
あのドSな村長の話によると、今年の【渓流】はどうやらいつもと様子が異なるらしい。
今回の狩猟対象であるアオアシラは別名“青熊獣”と言い、読んで字の如く熊のような出で立ちをしたモンスターである。
最初の繁殖期には冬眠から目が覚め、餌を求めて渓流に多く出没するのであるが、今年はなぜか例年より目撃情報が多く寄せられているのだ。
山中に
それで今回、ユクモ村の村長である
「ヤマト、そっちの様子はどうだ?」
「特に変わった様子はないですニャ」
翔とヤマトは周囲を警戒しつつ、しかし臆する事なく湿った大地を踏みしめる。
一人と一匹が探しているのは、アオアシラの大好物であるハチミツだ。運搬されているハチミツ狙って、街道の荷車を襲う事もあるらしい。
近くで見張っていれば、高確率で発見できるはずである。
と、その矢先、翔はあるものを見つけた。
「おい、ヤマト。ちょっとこっちに来てみろよ」
「なんですかニャ? ご主人」
ひょいひょいひょいっとヤマトが駆け寄って来た所で、翔は自分が見つけたものを指指した。
「間違いねえ。アオアシラだ」
「でっかい足跡ですニャ」
巨大――と言うほどでもないが、比較的大きな部類に入るだろう。
翔とヤマトはその足跡をたどって、更に奥へ――日の光をほとんど遮るような深い森の中へと入って行った。
奥へ奥へと進むにつれて、足元を覆う雑草が増え始め、ついには足跡も消えてしまう。どこかにアオアシラの痕跡がないか、翔とヤマトは必死に探した。せっかく見つけたのだから、無駄にはしたくない。が、残念ながら周囲にそれらしい痕跡は発見できなかった。
だがその代わりに、
「ご主人、ハチミツの匂いですニャ」
「ヤマト、それマジかっ!?」
「マジですニャ」
きらりーんと、翔にウィンク。
そして指差した先には、倒れた樹の幹に巨大なハチの巣があった。それも、両手で抱えきれないほどの大きさである。
「ナイスだぜヤマト!」
「ふっふっふっ。このヤマトを見くびってもらっちゃ困るのですニャ。この程度、朝飯前ですニャよ」
「まあ、どっちかと言うと、もうすぐ昼飯前だけどな」
きゅるる~、と翔のお腹が空腹を訴えた。そういえば、【渓流】に着いてからかなりの時間歩き回っている。
到着した時にはすでに真上近くまで日が昇っていたので、そろそろお昼ご飯の時間には違いない。
翔は大きなハチの巣を視界に納めながら、遠く離れた高台へと移動した。
「さてっと、そんじゃまあいっただっきま~す」
本日の昼食は、コノハとササユお手製の焼き魚弁当だ。ユクモ名物の大浴場に併設された集会所で、受付嬢をやっているあの二人である。
農場で取れたてのサシミウオが丸々一本入っていて、一秒たりとも待ちきれない。
翔は迷う事なく、焼きサシミウオへとかぶりついた。
「んぐんぐ、うめぇえええっ!」
さすが、取り立てだけあって美味しい。
「ヤマト、お前も食べろって」
「おぉ、ご主人!!」
と、半分以上身の無くなった焼きサシミウオと、おにぎりを一つやった。
一人と一匹は受付嬢お手製の弁当をあっという間に平らげると、消臭玉で身体の匂いと弁当の匂いをかき消す。
アオアシラの嗅覚は、それだけ鋭敏なのである。もしかしたら、これでも見つかるかもしれないが、まあそこは運に任せるしかない。
「そんじゃヤマト、見張りを頼んだぜ」
「了解ですニャ。このヤマト、ご主人の為に一生懸命頑張るですニャ」
「あと、ペイントボールな。見つけたらこれを当てろよ」
「わかっておりますニャ。ではご主人、気を付けてニャ」
「おおよ」
翔は周囲の地形を入念に読み取りながら、【渓流】の更なる調査に向かうのだった。
◆
「う~ん、確かにちょっと変だな」
入り口付近ではわからなかった事が、【渓流】の奥に進につれてだんだんとわかり始めてきた。
小型モンスターの数が少ないのである。
ジャギィやジャギィノス、それにガーグァの数が明らかに少ない。
「いや、これは少ないっていうよりも……」
――森の浅い方へ移動してんのか?
よくよく思い返してみれば、確かにベースキャンプの近くに小型モンスターが多かったような気もする。
偶然なのか、もしくは村長の言うように、【渓流】になにか異変が起きているのか。
「っ!?」
翔は慌てて、茂みのそばに身を屈めた。先ほど視界になにかが映ったような気がしたのだ。
物音を立てないよう、そっと顔だけを出してみると、
「……あれ、ドスファンゴじゃねえか……!?」
あの特徴的な白い毛と灰茶系の毛。見間違えるはずもない。
今回の狩猟対象であるアオアシラと同じく、牙獣種に属する中型モンスターだ。四足歩行で鋭く尖った牙を持が特徴の、巨大なイノシシのようなモンスターである。
「村長ぉ、ドスファンゴが出るとか聞いてねえよ」
翔は小さな声で愚痴をこぼしながら、ドスファンゴの動向をうかがう。ドスファンゴ程度なら狩れない事もないのだが、今回の対象はあくまでアオアシラだ。
それに、狩猟許可の出ていないモンスターを狩るのはギルドの規約に反するし、なにより無駄な殺生はしない主義だ。あと、翔の今の実力や装備では、ドスファンゴを狩った後にアオアシラと相対するのが難しいのも事実である。
視線を一点に固定したまま、翔は逃げるチャンスを待つ。緊張のために防具の裏にびっしょりと汗をかき、体力がガリガリと削られる。
「……ふぅぅ、まだか?」
翔は大きく息を吐き出し、新鮮な空気を肺いっぱいに取り込んだ。
発見してからずっと、ドスファンゴに動きはない。こっちに気付いて動かないのか、それとも単に寝ているだけなのか。
――ん?
「いや、寝ているにしちゃあ、動きがなさすぎるような……」
翔は目を凝らし、注意深くドスファンゴを見るが、やはり微動だにしない。
緊張で張りつめていた思考はいつの間にか不審感へと置き換わり、翔の足を前へ前へと誘う。
始めは小さかったドスファンゴの姿がどんどん大きくなり、不審感が大きくなる。それと共に、吐き気をもよおす生臭い臭気が鼻孔へとなだれ込んで来た。
「もしかして、こいつ!?」
不審感が更に確信へと転じ、翔はドスファンゴへと駆け寄った。
正確には、その
「…………どうなってんだ、こりゃ」
その
予想通り、ドスファンゴはすでに死んでいたのである。それも、事故や老衰ではない。
何者かによって狩られていたのだ。
「なににやられたんだ? この辺じゃ、大型モンスターなんてめったにお目にかかれないのに」
ドスファンゴは腹の肉の大部分が喰われており、これが異臭を放っていたのだろう。
そもれ状態から見て、ほとんど一撃だ。ドスファンゴは背中付近の焼け焦げた部分が大きく陥没している以外は、これといった外傷は見られない。
「焼けてるって事は、火かなんかか?」
翔は村長の言っていたリオレイアが、本当にいるんじゃと思った。だが、中型モンスターでさえあまり見る機会がないのだ。その線はないだろう。
それにリオレイアほどの大型モンスターがいるならば、絶対に目撃者がいるはずである。なんせ彼女らは、空を飛べるのだから。
翔は気を取り直して、調査を再開する。
他に気になったのは、虫の死骸がドスファンゴの近くに多く落ちている事だ。
見たところ、雷光虫のようにも見えなくはないが、少し違うような気もする。
「まあいいや。とっととヤマトの所に戻るか」
調査とやらも、このドスファンゴのお陰でかなり進んだ。
翔は不審なドスファンゴの死体を見送りながら、その場所を後にした。
だが、翔はたった一つだけ気付かなかった事がある。
雑草に覆われて見えにくくなっていたのもあるが、その近くには鋭角的な形をした大きな足跡がいくつもあったのだ。
◆
翔はその後も、周囲になにか変化がないか確認しながら、ヤマトの待つ小高い茂みの中へと戻った。
「ヤマト、そっちの調子はどうだ」
「ご主人、お帰りですニャ。こちらは見ての通り、まだなのですニャ」
どうやら、まだアオアシラは現れていないらしい。夜間の狩猟は視界が悪いので、できる事なら明るい内に現れてくれればいいのだが。
翔とヤマトは時折水分を補給しながら、ただひたすら待つ。待つ時間に比例して、体力と精神力がどんどんすり減っていく。
もう間もなくすれば、真っ白な陽光も赤く染まるだろう。それから時を置かずして日は沈み、夜の闇が地上を支配する。
その前までには、決着をつけたいのだが。
「ヤマトォ」
「なんですかニャ、ご主人」
「まだかなぁ……」
「まだですニャァ」
それから五分後。
「そろそろかなぁ……」
「どうですかニャァ」
そのまた五分後。
「ここで待ってて大丈夫かなぁ……」
「そればっかりはわからないですニャァ」
更に五分後。
「もう帰りてぇ……」
「ご主人、もう少し待ってみるのですニャ」
元々待つのは得意でない。それも手伝って、全身がうずく。
――――――ズン…………。
できる事なら、今すぐにでも全身を動かしたい気分だ。
――――ズン……。
そんな翔の願いが通じたのか、ずっしりと重く、それでいて軽やかな足音かな地響きがする。
いよいよ、待ちに待った狩猟の時間だ。
――ズン!
ただし、一人と一匹が思い描いくほど、自然の摂理は優しくできてはいない。
「ヤマト!」
「はいですニャ!」
翔とヤマトは茂みから跳び出すと、急な斜面を一目散に駆け下りた。
一瞬前まで一人と一匹がいた場所を、青い毛をした獣の重厚な爪がえぐった。
翔とヤマトは急な斜面を駆け下りた所で、武器に手をかけながら背後を振り返った。
翔は骨刀【犬牙】をヤマトはボーンネコピックを構え、たった今まで自分達がいた場所を見上げる。
「ようやっと出やがったなぁ。ヤマト、覚悟はいいか? ドスジャギィみてえにはいかねえぞ」
「覚悟なら、ご主人のオトモアイルーになった日からできてますのニャ」
大きい。立ち上がれば六メートル半はありそうだ。アオアシラの平均サイズから比べて、大きめである。
「グワァアアアアアアアアァァァァ……!」
アオアシラは大きく一鳴きすると、巨体からは想像もつかない俊敏さで、一気に斜面を下ってきた。
翔は左に、ヤマトは右にそれぞれサイドステップし、アオアシラのタックルをかわす。
攻撃をかわされたアオアシラは、すぐさま翔の方へと振り返った。
単純にヤマトより翔の方が、エサとして美味しそうに映った。それだけの事である。
鋭角的なターンを決め翔に向かって飛びかかると、太くたくましい前足を一直線に振り下ろした。
「このっ!!」
翔は臆する事なく、斜め前方へと走り出す。重厚な爪が地面に突き刺さった音を背に、すれ違いながら骨刀を走らせた。
「ちっ」
だが、アオアシラにほとんどダメージはない。斬れ味が足りないのである。表層の毛を少し斬っただけだ。
しかし、はなから一撃で仕留められるとも思っていない。
「ヤマトォ!!」
翔はヤマトの元に駆け寄りながら、合図を出した。
「はいですニャ!!」
ヤマトが取り出したのは、ペイントボールだ。
桃色をしたボールはヤマトの手から放たれると、無防備に背中を向けたままのアオアシラの下半身を直撃した。
ボールからは蛍光色の粉末が飛び出し、アオアシラの毛に貼り付く。それでも貼り付かなかった粉は、空気に乗ってゆうらりと宙を舞った。
これで少しの間は、例え逃げられたとしても追跡が可能である。
「グガァアアアア!!」
アオアシラは再び身をひるがえすと、後ろ足で立ち上がった。
やはり大きい。太刀を振り上げても、頭まで届くかどうかというサイズだ。
だが、翔もヤマトも怯える事なく、アオアシラへ向かって走り出した。相手の一挙手一投足に、全神経を集中させる。
前足を頭上近くまで振り上げ、袈裟斬りに何度も振り下ろす。雑な上にずいぶんと直線的な軌道だ。
しかし、一発でもかすれば命の保証はない。
翔とヤマトは、そんな一撃必殺のブローを全てかわしながら、再び背後に回り込み右の後ろ足に斬りかかった。
ここは刃が最も通りやすい場所でもあり、同時にあの重量を支える大事な部分でもある。
だがやはり、
「こいつぅっ!?」
「ニャニャッ!!」
一筋縄にはいかない。
翔の骨刀は表層の毛を多少斬り落とした程度、ヤマトのボーンネコピックも分厚い毛の層に阻まれてしまう。
「伏せろ!」
叫びながら、翔はヤマトを抱いて伏せた。
と、数瞬もしない内に、アオアシラの右前足ブローが頭上を通り過ぎる。
翔はまだ前足が振り抜かれている最中に、反対方向へ素早く転がって難を逃れた。
「くそっ、ユクモノカサが!?」
先ほどの一撃で、ユクモノカサのカサの部分が削り取られてしまった。
――帰ったらどうにかしないとなぁ。直せるかな?
とかなんとか思っていると、さっきまで前足を振り回していたアオアシラは、すでに前傾姿勢でこちらを睨みつけている。
「ガウァアア!!」
右前足を振り上げながら、飛びかかってきた。
翔は体勢を立て直すと左側へサイドステップしながら、突きだして来た前足へと刃を走らせる。
ガガガガと、まるで岩でも斬っているような感触が走った。
「ちきしょう、かてえ!」
攻撃で削れた腕甲が飛び散り、顔や腕にちりっと痛みが走る。
腕甲を斬った衝撃で、腕が痺れる。
だが、問題はない。
「このヤマト、忘れてもらっては困るのニャッ!」
そこへ、翔の後ろからたっぷりと助走をつけたヤマトが、大きくジャンプした。
ヤマトはそのまま綺麗な放物線を描きながら、振り返ったアオアシラの顔面へと着地する。
「ご主人! 今ですっ! ニャッ!」
視界を奪われたアオアシラは、ヤマトを振り払おうと立ち上がってぶんぶんと首を振った。
それでも払えぬとわかると、今度は前足を頭へやるが、ヤマトもこれを必死でかわす。
「ナイスだヤマト! もうちょっとだけ頼むぜ」
「任せるっ、のニャァッ!」
翔は骨刀を地面と平行になるように構え、突きの体勢に入る。
斬れないのなら、突けばいい。
線でなく点で攻撃する突きなら、いくら毛が厚かろうと固かろうと、問題ない。
「はぁああああああああ!!」
翔は脇の下に骨刀を構えたまま、勢いよく走り出す。
攻撃するのは後ろ足。ヤマトのおかげで背中を向けている今がチャンスだ。
「これでも喰らえ!」
ざくっと、骨刀の先端がアオアシラの左後ろ足に突き刺さった。
ほんの少しではあるが、確かな手応えである。
と、その瞬間、アオアシラの動きが変わった。
「グワァアアアアアアアアァァァァ……!!」
今までの、翔達を威嚇していたものと違う、どこか悲痛なものが入り交じった咆哮。翔の突きが効いた証拠だ。
だが、ダメージを与えた事で生じた一瞬の油断が命取りだった。
自らを傷付けた者を薙ぎ払わんと、乱暴に振るわれた前足。その一撃に対して、ほんの少しだけ反応が遅れてしまった。
「やべっ!?」
骨刀を引き抜き、上体を反らしながら大きくバックステップする。
「っ痛ぅ!!」
だが、重厚な爪が翔の右肩を捉えた。
幸い一ミリほど表面が裂けただけである。ただ範囲が少し広い分、派手に血しぶきが飛び散った。
「グラァアアアアアア!」
血の臭いに興奮したのか、それとも手傷を負わされた事に対する恨みか、ヤマトを振り払ったアオアシラは、一直線に翔へと突進してきた。
だが足のダメージのためか、先ほどより動きは遅い。
「ご主人には手を出させないニャァッ!」
振り払われたヤマトは、しかしあきらめる事なくアオアシラへと向かっていく。
ボーンネコピックを反対に持つと、先ほど翔が突き刺した場所へ柄を突き込んだ。
「ガウッ!?」
分厚い脂肪の層に阻まれはしたものの、アオアシラは痛みに悲鳴を上げ、地面に激突する。
「ヤマト、一旦退くぞ!」
「はいですニャ!」
肩の傷も早く止血しなければ。翔は煙玉を取り出すと、地面に投げつける。
青から赤に変わり始めた空の下、白い煙が【渓流】から立ち上った。
おそらく、ここで会うお方は全員初めてだと思います、蒼崎れいです。
というはけで、紅嵐絵巻の第二話を担当させていただきました。本格的な二次創作は初めてで、けっこう緊張してます。モットーは原作の世界観を大切にです。
モンハンを文章で書くのって、けっこう大変ですね。あと、地の文がいっぱい。まあ、どれだけ筆舌を尽くしても、あの映像美を表現するのは難しいんですが。
まあ、そんなわけで今後ともよろしくお願いします。
次話は主にノクターンで活動していらっしゃるハセガワハルカ先生です。でわ、次回担当の回でまたお会いしましょう。