正義の味方候補の魔術使い   作:ラグーン

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書けば出るを体験してしたラグーンです。いやはや、まさかアンリマユとアルトリアが来てくれるとは思ってもいませんでした。そしてその予定であった彼女まで来てくれるとも……桜はまだ早いよ。

今回はご都合主義&無理矢理な終わらせ方の駄文ですが本文にどうぞ!


第9話 崩壊現象ーーー蘇る地獄(始まり)

『ーーー問おう。貴方が私の■■■■か?』

 

何者かに襲われて服がボロボロになっている俺の前に青いドレスのような甲冑を纏い、青い瞳の金髪の少女が月の光に照らされている光景。言葉にはノイズかかり聞き取れなくても、この光景だけはなにがあろうと忘れないと身体の芯に刻み込むようにーーー

 

 

 

「……君は一体誰なんだ」

 

目が覚めた俺はベットの上で呟く。先ほどまで見ていた夢は自身が唯一覚えていた記憶の一部だということは理解している。だが、記憶が夢で見ることは殆どない。切嗣に関する記憶は徐々に戻ってきてはいるがその記憶は夢に出たことはなかった。俺が唯一覚えていた記憶である少女と出会い、別れの記憶を夢で見る回数が多い。

 

「彼女が何者かさえわかればいいんだがな……」

 

くつくつと苦笑を漏らすが心の中は寧ろ穏やかだ。記憶を失う前の俺はどうだったのか見慣れた天井を見つめながら考えていたがすぐに無駄だと判断をして起き上がる。

 

「……さて、遅刻する前に教室に向かうことにするとしよう」

 

今は記憶に関するより教室に遅刻しないように準備をしなければ。浅見先生のことだ遅刻をしたその時はこちらの耳が腫れるほど注意をするに違いない。今は少女の記憶をしまって朝の準備を始めることにしよう。

 

 

「おはようです、衛宮さん」

 

「ああ、おはよう。セリナは朝早いんだな」

 

あの件以降というのは癪だがセリナとはそれなり教室内でも喋るようになった。なんでも俺が謎めいているから取材者としての血が騒ぐとか……謎めいていると言われるがただ記憶がないだけなんだが。いや、それも謎ではあるのか?別に変に思考を回す必要はないだろうっと先ほどについては気にしないことにする。

 

「今日はレヴィさんと一緒じゃないんですね」

 

「いや、常日頃からレヴィと一緒に行動しているわけじゃないからな?」

 

「そうなんですか?見た限りレヴィさんと一緒にいる姿をよく目撃していたので」

 

……それは否定をしにくいな。セリナに言われて振り返ると確かにレヴィと共に行動していることが多い。意識的に行動しているつもりはないんだが。どちらかといえば気づかないうちに彼女がいつのまにか側にいることじゃないだろうか?……まさかだと思うが学園長の半分悪ふざけである世話係をまだしているのだろうか?一ヶ月の軟禁状態が終わってる以上実行していなくていいんだが。

 

「やはり衛宮さんとレヴィさんは付き合ったりしているんでしょうか?」

 

いつのまにか片手にメモ帳そしてペンを握っているセリナの姿を見て苦笑いを浮かべる。メモ帳とペンを握っている彼女は取材者として俺に質問してくる。彼女のペースに呑まれれば質問攻めが開始するためある意味警戒していたりする。無論、そのことは俺だけの秘密である。

 

「俺とレヴィは別にそんな関係じゃないさ。そうだな、俺は彼女とは友達と思っている。それにもしそんな関係だとしても俺なんか彼女と釣り合うわけないしな」

 

「私はそんなことないと思うんですけどね。衛宮さんといるレヴィさんは楽しそうですよ?」

 

メモ帳に慣れた手つきでペンをはしらせながらセリナは喋る、俺といることを楽しんでいることは嬉しくは思うが、記憶がなく異端者である俺では釣り合わない。それに彼女と気が合う人とはいつか会うだろう。

 

「恭介さん早速セリナさんを口説いてるんッスか?」

 

セリナから質問の最中にいつのまにか来たのかわからないがひょこりとレヴィが現れる。いや、口説いているとはどういう意味だ。ただ普通に会話をしているだけだからな?レヴィについての会話の最中であるため俺は妙な気分になるが取材者ことセリナがそのチャンスを見逃すわけがない。

 

「レヴィさん質問です!レヴィさんと衛宮さんはどんな関係なんですかッ!」

 

「自分と恭介さんッスか?ベタベタな甘々な関係だと思ってるッスよ?」

 

「……いや、そんな関係になった覚えはないからな?」

 

セリナがメモ帳に書き足す前に否定すると非常に残念そうにえぇーっとセリナが声を漏らす。レヴィもそれに便乗するように抗議してくるがレヴィの発言は捏造のため否定をする。

 

「むぅ、衛宮さんについては謎めいてばかりですし。ここははっきりとレヴィさんとの関係を曝け出してくださいよ!」

 

「そうッスよ。今この場で自分たちの関係を正直に話すべきッスよ」

 

「なんでさ!?先ほど話したばかりだぞ!レヴィはレヴィで便乗するのやめてくれ!?」

 

女性陣2人からブーイングコールを受けるが本当のことを言った以上俺は悪くない。そろそろ授業が始まる時間のため、2人のブーイングの嵐を止めさせる。納得のいかないように不満を隠さないセリナは渋々自分の席に戻って行った。授業も始まっていないのにどっと疲労が襲ってくる、なんでさ。

 

「……はぁ、今から自室に戻って寝たい気分だ」

 

「そうは言ってるッスけど口元緩んでるッスよ?」

 

そう言われてしまい曖昧な表情を見せると、その表情を見て彼女はクスクスと笑うのを堪える。苦労が絶えないとは思うが、楽しく思っている自分がいるため彼女につられるように笑みをこぼした。

 

 

 

「さて、一つ俺が思っていることを口にしていいかね?」

 

「どうぞッス」

 

「どうぞです」

 

レヴィとセリナは俺を見ながら静かに頷く。2人の承諾を得たため彼女たちの気持ちにも答えてやらなければならない。ましてあの状況を見て黙っていること自体ができないのだ。片方は面白さで、また片方は取材者としての血が騒ぐことで。

 

「またアラタはなにかしでかしたのか?いや、決めつけるのは悪いと思うが」

 

「流石にアラタさんが可哀想ですよ……」

 

「だが日頃の行いを振り返ると、な?もっとも今回はアラタは被害者であることには間違いないだろうな。俺たちも含めてだが」

 

あの少女の行動はまさに自身から答えを言っているようなものだ。ほんの少しピースが足りないがそれを補えるほど決定的すぎる。今ごろアラタを観察していること自体がそもそも怪しいからな。俺の遠回しの言い方に2人も気づいたようで曖昧な表情を浮かべていた。

 

「あの様子だとアラタを観察している少女もトリニティセブンの1人なんだろ?」

 

「はい、トリニティセブンの1人であるアリンさんです」

 

「そうか。ならば前回の騒動の犯人は高確率であのアリンという少女で間違いない。違ったとしても残り2人だからな。彼女ではなくても屈指の実力者である以上特定はそう難しくない。俺が知らないトリティセブンの2人か、あとは学園長だけだ」

 

「どうして学園長まで含まれてるんです?私としては考えられないんですけど……」

 

「実力者で考えるとあの男は自然的に含まれる。あとあの男の性格上絶対とは言えないがあの騒動を起こしても別におかしくはない」

 

「例えですよ?もし学園長が犯人だったら衛宮さんはどうするんですか?」

 

「跡形もなく消し飛ばす。もしくは奴の存在自体を抹消してみせる」

 

「迷うことなく即答だ!?」

 

「相変わらず学園長には辛辣ッスねー」

 

あの男が学園長?そんなの知らんな。もし犯人ならば今までのお返しを含めて問答無用で投影の10、いや50でもしてみせよう。校舎が巻き添いになるかもしれないがそこは犯人を抹消するということで大目に見てほしい。確か自然ゴミではなく燃えるゴミだったか?後でゴミ袋を買っておかないとな。

 

「奴にはいい薬だろ。個人的な私情が入ってるのは些か否定はできないが……別に奴を燃やしてしまっても構わんだろう?」

 

「いや駄目ですからね!?ああ見えても学園長なのは変わりないんですから!」

 

サラリとセリナは俺以上に酷いことを言ってるからな?やはり学園長として不安になってきたぞ。今の学園長は解雇して他に新しい学園長にした方がいいんじゃないか?少なくとも俺はその案に賛同するぞ。

 

「恭介さんも素直じゃないッスねー。口では今まで皮肉や罵ってたッスけど信用はしてるじゃないッスか」

 

「……さてな。奴を信用云々はともかく利用できるだけだ。少なくとも、そこらの魔道士よりマシだとは思っている程度だ」

 

苦い顔をしているのだろう。それを見てレヴィは捻くれてると指摘してくるし、セリナは新たな情報がとスラスラと手帳に情報を書き込む。あくまであの男とはギブアンドテイクの関係であるのだ。……恩義があるのは否定しないが。そこそこ会話が盛り上がり始めてくると縋るような助けを求めるような視線を感じて視線の方を振り向けばチラチラと助けを求めるアラタだった。

 

「……見なかったことにするか」

 

「……そうですね」

 

「……そうッスね」

 

見事に心境が一致した俺たちはアラタに合掌して見なかったことにする。なにか声が聞こえてきた気がするが空耳だろう。……アラタ強く生きろ。お前ならばきっとその困難を乗り切れるはずだ。

 

「なんだったんでしょうね」

 

「気にするな。あれはただの女誑しだ」

 

「いえ、恭介さんも人のこと言えないッスけど……」

 

「ふっ、生憎俺はアラタとは違い心当たりがないのでね」

 

おい、なんだそのこいつ本気で言ってるのか?みたいな視線は。俺はアラタのような冗談まじりの変態発言などは一切していないではないか。少なくともレヴィとセリナから向けられる視線は納得いかないぞ。

 

「まだ、アラタさんの方がいいッスね。……無意識なのが余計にタチが悪いッス」

 

「……なんというか苦労しているんですね、レヴィさん」

 

セリナからなぜかジト目で見られてその後レヴィを慰め始める。いや、俺が何かしたのか?……いや、すでにレヴィには多大なる迷惑がかかっていたな。……すまない、本当にすまない、問題しか抱えてなくてすまない。

 

「……とりあえず今のアラタの状況は様子見でいいだろう。どうもあの少女はアラタ以外興味がなさそうだからな。少なくとも……あの少女が俺らを巻き込んでこない限り無暗に動く必要はない」

 

「見るからにアラタさんしか興味がないって感じですからね。やっぱり魔王候補が関係しているんですかね?」

 

「そうだろうな。もっとも俺からすればある意味好都合だがな」

 

好都合?っとセリナが首を傾げるがこちらの話だっと言えば渋々頷く。トリニティセブンがアラタに注目すればするほど俺の力がバレる確率は低くならし色々と動きやすい。アラタを利用するようで少し気が引けるが……まだバレるわけにはいかないからな。

 

「さて……多少俺は用事があるため一度退席させてもらうよ」

 

「用事ッスか?簡単なことなら手伝うッスよ」

 

「簡単な用事だからすぐにすむ。わざわざレヴィに手伝ってもらうほどのことじゃない」

 

本当に大した用事ではないため彼女の力は必要ない。それに単独行動の方が俺個人として動きやすい。まあ、力を借りるとしても情報収集を頼むぐらいだ。隠密行動なら俺よりレヴィの方が優れているしな。早めに終わらせたいこともあるため俺は教室を後にしてひとまず移動していたアラタの後を尾行する。

 

「……さて、あの少女は一体なにが目的なのか少なくとも知っておくべきか。厄介ごとなら少なくとも準備はしておく必要があるからな」

 

一定の距離を保ちつつアラタとアリンという少女を尾行するが目立った行動はしない。アラタもアラタで状況に多少慣れたようで話しかけたりしている。偶々というべきだと思うがアラタが彼女と会話をするのは好都合だ。これなら接触を図ることなく情報を得ることができるだろう。

 

「私は魔王候補の伴侶になるらしいから」

 

「伴侶!?」

 

……情報が得れると思ったが無駄な情報ばかりのようだ。一瞬だけ雰囲気が変わったためアラタをすぐに救出できるように身構えた自分が馬鹿馬鹿しく思ったぞ。もう大した情報は得られる気配はないため戻るとするか。

 

「幼妻で頼む!!って、そうじゃねぇ!どういう意味だよ」

 

「『ーーそうなんだよ』って学園長が」

 

「学園長………だと!?」

 

……あの男がだと?教室に戻ろうとした俺の足は先ほどの言葉で止まる。アリンは先ほど学園長っと言ったのは俺の聞き間違いではない。現にアラタだって多少驚いたのだから。ならばあの男も少なくとも共犯者である確率が高くなったわけだ。

 

「呼ばれて飛び出たーっ!!」

 

噂をすればなんとやらで窓をぶち破りながら突然と学園長が現れた。勢いよく飛び出すように現れたせいかロクな着地も出来ず壁にぶつかる。その様子をアラタは引きつった表情でアンリは無表情だった。……ツッコミ入れるか迷うところだが手間が省けたのは喜ばしいことだ。

 

「……飛んで火に入るなんとやらだな、学園長」

 

「……なんだよ、今頃助けに来てくれたのか?」

 

「すまないなアラタ。あとは任せてくれ、後片付けは俺がすませよう」

 

「あ、ああ。とりあえず詳しい話はツッコミ役を呼んでから別の場所でやろう」

 

不機嫌なアラタだったがとりあえず今回は後片付けをすませる形で渋々引き下がってくれた。いつかお詫びに奢ったりすることにするとしよう。アラタはアリンを連れて別の場所に行こうとすると隣から珍しくツッコミが聞こえるが知ったとではない。

 

「あれ!?アラタ君スルー!?今凄い空間のーーーーー」

 

「……さて、話を聞かせてもらおうか学園長?」

 

「ど、どうしたんだい恭介君?そんな爽やか笑顔を浮かべて」

 

「なに、今から燃えるゴミの処分をするため少し嬉しく思っているだけさ」

 

冷や汗をダラダラと全身から出している学園長など知らない。前回の件に貴様が関わっているか念入りに聞かせてもらおうか!!

 

◇◇◇

 

 

「結構遅かったッスね」

 

「そうですよー。衛宮さんはまだ取材の途中だったんですから待ちくたびれましたよ」

 

「取材を受けていたつもりはなかったんだが……遅くなったのはおもったより用事が長引いてしまったな。少し燃えるゴミの処分をして遅れてしまった」

 

「燃えるゴミですか?」

 

「ああ。燃えるゴミをどこかに処分するかと思って迷っていると浅見先生と会ってね。焼却炉があると聞いてその場所まで教えてもらい、先ほど焼却炉から戻って来たという訳だよ」

 

「……それにしては先ほどより妙に清々しいような表情ッスけど」

 

そんかことあるわけないだろレヴィ。あの燃えるゴミ(学園長)をいくら焼却炉に入れただけでそんなことはないさ。あくまでも軟禁も含めて今までの貸しを返却しただけに過ぎないからな。……やはり焼却炉ではなく念入りに爆破させた方が良かったか?

 

「そういえばアラタさんは結局はどうなったんですかね?教室を出てから全く戻ってきませんけど」

 

「それならなんの心配もないだろう。大方適当に先ほどの少女でも口説いているだろうさ。戻ってくればその時はなにがあったか聞けばいい」

 

あの少女は魔王候補であるアラタに興味を持っているだけのため大ごとになる心配はないはずだ。少なくとも危害を与えるつもりはないだろう。浅見先生も多分今ごろはアラタと共にいるに違いない。アラタがツッコミ役と言った以上俺の知っている中ではセリナか浅見先生しか知らないしな。もしも時が起ころうがその時は浅見先生がすぐに動くはずだ。もっとも周りを巻き込むほどのことならば俺も黙っているつもりはないが。

 

「この後恭介さんはいつも通りに運動場に行くんッスよね?」

 

「ああ、その予定だ。それがどうかしたのか?」

 

「確認しただけッス。変にすれ違いが起きると探すのに手間がかかりまスし、なにより自分の一つの楽しみですから」

 

「運動場でなにかするんですか?」

 

「セリナが期待しているようなことじゃないぞ?ただーーーー」

 

放課後のことをセリナに教えようとすると背筋からゾワリと悪寒を感じた。嫌な気配と妙な胸騒ぎを感じて周りを見渡すがその気配に該当するものが見当たらない。……気のせいだったか?いやーーー

 

「わ、わわわっ!?また地震ですか!?」

 

胸騒ぎが止まらないなかまた原因不明な揺れが襲う。突然の揺れにセリナが倒れそうになるがなんとか身体を動かしてセリナを抱き寄せる。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい。私は大丈夫です……あ、ありがとございます」

 

「いや、当然のことをしただけだ。突然のことだったから無理もないさ」

 

セリナの顔が少し顔が赤いが風邪でもあるのか?だったら早めに部屋に戻ることをお勧めするぞ。健康が第一だからな。セリナのことも気になるが……まずはこの嫌な気配をどうにかしなければなるまい。

 

「レヴィ原因はなにかわかるか?」

 

「自分としては先ほどのことが知りたいッスけど……どうもかなりヤバイ状態ッスよ」

 

少しジト目で俺を見てきたがいつものような悪戯な笑みを浮かべるどころかレヴィは真剣な表情で窓の外を見ていた。トリニティセブンの彼女がそう判断した以上かなり危険なようだ。俺もその様子を見るため窓の外へとなんとか視線を向ける。崩壊現象がどのようなものかも知る必要もあるのだが何故か身体全体がイマイチ動かせない。身体の奥底から本能的に警告を出すがその反面知らなくてはならないと衝動に駆られる。

 

「……黒い、太陽?」

 

「あれが、崩壊、現象なのか?いや、違う確かあれはーーーーッッ!!」

 

セリナがポツリと言葉を漏らす。俺はそれと同時にその太陽を見て身体が膠着した。突然と頭に激痛が走り頭を抑えたため自分が最後に口にした言葉すら聞こえなかった。レヴィとセリナの声が聞こえてくるが耳に入らない。この痛みは一度体験がしたことがあったはずだ。

 

 

ーーーーー地獄を見た

 

周りからは無数の悲鳴、嘆き、苦しみ、怒り、悲しみ、憎しみ。見える光景は轟々と燃え上がる火の海、空も覆い隠すほどの煙、助けを求める人々。そしてーーーーそこには黒い太陽があった。いや、先ほどの太陽など生温い。今目の前にあるものはより醜悪で悪質なものだ。断片的に記憶が次々と蘇り理解していった。この光景は、この地獄は俺がかつて体験したことがあり俺はこの地獄の中で〇〇恭介は衛宮切嗣に救われたと。そして、俺は衛宮切嗣の養子となり〇〇恭介は衛宮恭介になったのだと。自分だけが助かってしまった、生き残ってしまった罪悪感に襲われる。ーーーーー俺だけが助かったんだ、この地獄から。ならば俺がすることはなんだ?この命はとうの昔に朽ち果ててもおかしくなかった、ならばこの命は自分の為ではない誰かのために生きねばならない。次々と感じる、いや蘇ってくる感情に違和感などなく寧ろ欠けていたピースが当てはまる気がした。

 

ーーーーーあの黒い太陽はどうする?アレとは違うが放っておくことはできない。衛宮恭介がとるべき行動はなんだ?そんなこと決まっているじゃないか正義の味方(全てを分け隔てなく救う)ならば今動かなくてどうする。

 

『……そっか。また恭介はその道を選んだんだね。うん、でもまだほんの少しだけ記憶が戻っただけだからしょうがないかな』

 

何処からか幼い少女の声が聞こえてくる。記憶の一部なのか?声が聞こえた方を見ると銀髪の髪の長い少女がいた。その表情は優しげに微笑んでいるが少し哀しそうだった。

 

『初めからわかってたもの。恭介は初めに絶対切嗣の夢を引き継ぐって。たとえ記憶を失っても無意識にそういったことをするの。今はきっと私が誰かわからない、私が言っていることがわからないかもしれないけど……恭介はもう自分の為に生きていいんだから。誰かの幸せのためじゃなくて自分の幸せのために生きて。……もし、また恭介が正義の味方として生きる道を選んでもどんなことがあっても私はーーーーーううん。お姉ちゃんだけは恭介の味方だから』

 

銀髪の少女は微笑み優しく抱きしめてきて愛おしそうに俺の頭を撫でてくる。銀髪の少女が何者かわからないけど何故か途端に悲しくなった。記憶が無くてもなにかが込み上げてきてなにもかも吐き出したくなった、泣きたくなった。

 

『大丈夫、またきっと会えるから。その時にまたたっぷりと甘えさせてあげるからね?だって、それがお姉ちゃんの仕事だもの。だから、そろそろ意識は戻して友達を助けてきなさい』

 

銀髪の少女は微笑み最後に手を握ってくる。その手は記憶の一部とは思えない。温もりが感じて本当に触れているようだった。そして銀髪の少女は名残惜しそうに手を離すと聞き慣れた2人の少女の声が聞こえてくる。

 

「衛宮さん大丈夫ですか!?衛宮さん!」

 

「恭介さん聞こえてるなら返事の一つぐらい返してほしいッス」

 

いつの間にか意識が失っていたのだろうか?床に倒れていた俺が目を開ければ心配そうな表情を浮かべていた2人がいた。まだ微かに頭が痛く魔力が乱れているがそれ以外は何の問題もない。

 

「……ああ、2人の声は聞こえている。俺が意識を失ってどれほどだった?」

 

「約5分ぐらいッスよ。……意識を失った理由は大体ーーーーー」

 

「その考えで、あっている。そうか、ならば崩壊現象はどうなっている」

 

「まだ、崩壊現象は止まっていないです……崩壊現象が止まった時は衛宮さんになにがあったか後で私にも教えてくださいね!!」

 

本当に心配してくれたようでセリナは少し涙目になっていた。事情を知っているレヴィはともかくセリナにとっては突然のことに驚いて怖くなったのだろう。

 

「了解した……この崩壊現象が止まった後は教えることにする。それよりまずアレをどうにかしよう」

 

俺が意識を失う前より崩壊が進んでおりもはや天井が存在をしていない。ならば俺にとっては好都合だ、アレほど格好な的はない。魔力不安定であるため最大火力は出せないがどうにかするしかない。……それにこの状況を黙っていることなどできやしない。

 

「どうやって止めるつもりなんですか!?衛宮さんが使う魔術が何かはわかりませんけど生半可なことでは止めることは無理ですよ!」

 

「……そうだな、セリナの言う通り今の俺には無理かもしれない。でもな、指を咥えて後悔するぐらないなら動いて後悔する方が何倍もいい。それに、今動かなければセリナ を守ることができない」

 

必死に止めてくれているセリナの頭を優しく撫でる。その気持ちは嬉しいが今動かなければ後悔するんだ、正義の味方を目指しているから。それに銀髪の少女の言った通り2人を、いやこの場所にいる人を守らなければならない。

 

「自分としても魔力が不安定である恭介さんには動いてくれない方が嬉しいッスけど……」

 

「すまないな。いくらレヴィでもその頼みを聞くことはできない。それに言っただろう?君を守ってみせると」

 

「……それを今言うのは卑劣ッスよ」

 

ほんの少し顔を俯かせるがすぐにレヴィは顔を上げる。そこにはいつものように悪戯な笑みを見せていた。……さて、黒い太陽はアレに似ているが性質はアレの方がタチが悪い。被害が広がる前にこの崩壊現象を早めに止めなければならない。使う武器は決まっている、本来の威力は魔力が不安定で出せないかもしれないが充分なはずだ。

 

投影開始(トレース・オン)

 

俺が今回投影したのは干渉・莫耶ではない。黒い洋弓と片手には螺旋剣を握る。片手の螺旋剣は剣としては異様な姿だろうがこの剣はそれが普通なのだ。俺は螺旋剣の形のまま洋弓を構える。

 

「これは錬金術ですか……?」

 

セリナが驚いた声を上げるが残念ながら錬金術ではない。正式な魔術名は投影魔術だ。教えてあげたいがそれができないのが現状なのだが。狙いを定めるため俺は一点に集中する、この矢を外すことは許されない。

 

I am the bone of my sword.(我が骨子は捻り狂う)

 

「ーーーー偽・螺旋剣(カラドボルグII)

 

構えていた洋弓を引く時に螺旋剣の形を矢へと変えて解き放つ。矢は真っ直ぐに黒い太陽へと直実に近づいていくことを俺は見逃すことなく見つめる。タイミング的にあと少しで螺旋剣が黒の太陽へと触れると判断をして再度俺は呟く。

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

その瞬間黒い太陽を巻き込むように俺は宝具を爆破させる。距離があったため爆風はここまで届くことはないだろうが爆破したこともあり煙で黒い太陽が見えなくなる。……どうも、不安定であるため本来の偽・螺旋剣の威力より大幅に下がっており威力的にはCっといったところか?

 

「か、かなりの魔力込めていませんでしたかさっきの!?」

 

「恭介さん弓も使えたんッスね。それにあんな大技あったなんて初耳ッスよ」

 

「いや、今の状態の俺はあれが限界なだけだ。本来ならばもう少し威力はあるんだが……やはり、壊すことはできなかったか」

 

煙が晴れるとそこには多少形が変わってはいるが健全な黒い太陽の姿があった。やはり威力が足りない状態では一撃で破壊することはできなかったようだ。内心で舌打ちをして再度投影を行おうとするが身体が突如とギチギチと音を立てる。

 

(このタイミングで暴走の予兆だと!?チッ、やはり不安定の中魔術を使ったことが仇となったか!!)

 

今大事な場面で暴走する寸前であることについ表情を顰める。投影はできてもあと2〜5回。それ以上は間違いなく暴走して身体が串刺しになるのは間違いない。……いや、この身がどうなろうがどうでもいい。今止めるのは崩壊現象だ、俺の身など二の次だ。次の投影を行おうとした瞬間何処からか膨大な魔力を感じた。いや、この気配はーーーーー

 

「……ああ、どうやら後は任せていいだろう」

 

ふっと少し笑みを漏らして安堵する。精神的にも肉体的にもやはり限界がきていたのか張り詰めていた緊張が解けると疲労が一気に襲ってきた。記憶の回復による負担に、その負担が原因での魔力の不安定、その不安定の中宝具の投影を行なった以上無理もないかと思いながら俺は内心で苦笑いをしながら意識を手放した。

 

『頑張ったね、恭介』

 

ーーーーー意識を手放す瞬間に幻聴かもしれないけれども俺は銀髪の少女の声が聞こえた気がした。慰めるように褒めるような声が。




……うーん、サラリとフラグ建設する恭介!うん、もしかしたらセリナちゃんがサブヒロインになるかもしれないネ!ちなみに主人公は自分のオリジナル主人公であることを再度後書きで書いておきます。あの赤い弓兵さんではないので!けして!かなりご都合主義だと思っていましたけど。実は初めから彼女は出すか悩んでいましたがHFルートが劇場化して出す決意をしました。クロスオーバーなのだからFateキャラも出さないと!ですが、多分Fateキャラはガッツリと登場することはないと思います。色々と崩壊するので(白目)彼女が誰か皆さん分かると思いますが、けして名前を聞いては駄目ですよ?(血反吐



次回はオリジナル回かもしくは修学旅行だと思います。ヒャッホウ!レヴィさんとイチャコラさせるんだ!だって修学旅行の後はすぐにまたシリアスなんだから(泣

式さんは無事に獲得しました!本当に嬉しいです!fgoも頑張って育成しないと!次回の更新は未定ですが、気長に待ってくれると嬉しいですbそれではまた次回に会いましょう!誤字&脱字があれば報告してください!

(新サーヴァントは誰なんでしょうね?もしや、イアソンでは!?((殴蹴

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