ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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いざ、特異点へ

 

 

 

 レイシフトを行なった後。

 

 さて、ここは例の特異点の地である。

 

 辺りには霧が立ち込めており、非常に危険な場所である。霧をしばらく吸い込んではすぐに自分の記憶から第一次産業についての知識を奪われてしまうのだ。

 

 そんな地に降り立ったYARIO隊員達はまずは拠点を確保することにした。

 

 身につけているのは対スズメバチ用に作ったフルセット、それを改造し、ガスマスク搭載型にした新機能付きの防具である。

 

 

「まずは、空気洗浄が必要やね」

「空気洗浄機作らないといけないのかー」

「あ、じゃあさ! 木炭使ったらどうかな?」

 

 

 ──空気洗浄機を作る。

 

 そう、この地に来てまずやることはなんと火の確保でも水の確保でもなく空気の確保なのである。

 

 その手段として、ヴラドが提案したのは木炭を使った天然の空気洗浄機の制作だ。

 

 備長炭、これは空気洗浄のためによく使われている炭だ。

 

 その効果は折り紙つき、濁った井戸さえも洗浄してしまうほどの効果を持っている。

 

 炭は木材を炭化させることによって得られる、燃やしても煙や炎が出ず、火持ちがよい上に火力の調節ができる大変優れた燃料だ。

 

 


 炭は燃やして暖を得たり、肉や魚を焼いて調理に使ったりする他、その多孔質で灰分はミネラルを多く含む性質から、「湿気を取る効果」「ご飯を美味しくする効果」「脱臭、消臭効果」「水の浄化作用」「土壌改良」など、燃料以外にも幅広い用途があり、軽くて保存や持ち運びが便利で、腐らないため、30万年も前より使われていたといわれる。

 

 この炭を使えばきっと周りの空気も綺麗になり、人が住めるようになるはず。

 

 彼らはかつて、炭による、ろ過システムの製造方法を過去の経験から熟知し、すぐに製造に着手するという他人には真似のしづらい芸当を見せた。

 

 ならば、今回も炭の力を使えば、この辺りを人が住める土地に変えることだってできるはずだ。

 

 炭作りの達人、ヴラドの腕の見せ所。

 

 早速、炭作りに取り掛かる一同、まずは、炭の材料になる木材の確保だが……。

 

 

「最近さー」

「うん」

「やたら異世界に行くの流行ってんじゃん? また近いうちに俺達も呼ばれると思うんだよね」

「いや、ここも異世界なんだけど」

 

 

 ────既に異世界。

 

 唐突なディルムッドの呟きに冷静なカルナの突っ込み、そう、一応、異世界ではあるのだ。この世界のお陰で人類は危機に瀕しているらしい。

 

 ただし、異世界というにはあまりに殺伐としていて、異世界ではないというのが、ディルムッドの言い分であった。異世界というのは曰く、もっと楽しそうな場所だという。

 

 

「いや、ちげーじゃん、もっとファンタジーしてるでしょ? こう、ドラクエ! みたいな」

「せやなー、それはわかる」

「てかさ、この間、行ってきたばっかじゃんか、俺達の単行本とか出そうだよね、小説とか漫画で」

「あ、じゃあ、声優始めなきゃな!」

 

 

 ────CVが本人。

 

 まさかの最近増え始めている異世界転生ものに興味津々なYARIOメンバー達。

 

 それもそのはず、ダイレクトにドラクエ世代の彼らからしてみれば異世界はなんとも冒険しがいがある。

 

 皆さんはもう読まれている方はいらっしゃるかもしれないが、そこで、彼らのそんな話を聞いていたある有名な英霊の作家達は彼らの要望を叶えるべくいろんな作品を密かに世に送り出していた。

 

 その影響からか、ここ最近、彼らは度々異世界に召喚されているという。それが、作品となり世に出回り、若者を中心に流行っているのだ。

 

 ここで、視聴者の方の読まれている現在流行中の彼らの作品達をこの機会に紹介しよう。

 

 

 

 ガチでゼロから始めた異世界生活。

 

 収録後に異世界に飛ばされた彼らは死に戻りの能力を得たが、特にそれも使うこと無く、国を作り上げ、さらには白鯨を使った鯨料理に挑戦! 

 

 

 異世界でスマートフォンを作った。

 

 その言葉の通りである。異世界行ったらマネージャーと連絡できないという理由で異世界で何もないところから彼らがスマートフォンを部品から作る話。

 

 

 盾すら要らない勇者達の成り上がり

 

 要塞作ったが早くね? という事で盾の代わりに彼らが異世界に住む世界の皆の為にとんでもない要塞を作り始める話。

 

 

 ありふれた職業を極めたので世界開拓。

 

 主にありふれた職業は全部コンプリートと熟知していたので、とりあえず新しい土地の開拓に挑戦。

 

 

 転生したらアイドルだった件。

 

 元々アイドルであった彼らだが、ようやく異世界にてアイドル活動に乗り出す話。だが、次第にアイドルっぽく無くなっていく。

 

 

 ダンジョンを1から作るのは間違っているのだろうか? 

 

 あらゆる建築をこなしてきた彼らが挑戦するのは、なんとダンジョン作り! そこには! 珍しいモンスターも住み始めた! ついでにオラリオとかいう街も作った模様。

 

 

 職人転生、異世界行く前から既に本気です。

 

※彼らはアイドル兼、職業が職人なのでいつも本気です。

 

 

 そんな感じの小説やらアニメやらが、最近、日本とアメリカを中心を流行っているらしい。

 

 アメリカで流行った理由はどの作品も開拓精神しかないだからだそうだ。

 

 どうやら、古き良きアメリカはこんな感じだったらしく、彼らの精神に共感してユーザーが増えたのだそうだ。

 

 話は逸れてしまったが、それだけの作品が世に出回り、さらには、聖書という本にも記載されている彼らは、もう既に世界的アイドルグループなのである。

 

 ここまでの道のりは険しかったが、続けてきてよかったと改めてそう感じた。

 

 

「よし、木はこんなもんでええやろ、後は炭作りに取り掛かろうか」

「あれ? モーさん達は?」

「ヴラドと炭窯作ってるよ」

「何事も勉強やね」

 

 

 モーさん達はヴラド主導で、炭窯の製作に取り掛かっている。

 

 炭は、穴を掘って炭材を入れる伏せ焼きやドラム缶などでもつくることができる。

 

 だが、今回は土を使って炭窯を製作することに。

 

 土でつくった炭窯の場合、土が炭焼きの前半に炭木の水分を吸って、後半でその水分を掃き出して、炭窯全体を循環し、均一に炭化させるため、よりよい炭ができるからである。

 

 

「炭でだいぶ住みやすくなるな」

「そうだね」

「え? 今の突っ込んでくれへんの?」

 

 

 ────悲しきスルー。

 

 我らがリーダーの背中はやはり哀愁が漂っていた。年季が重なってきたのだろうか。

 

 さて、ある程度の木材を手に入れた彼らはひとまずそれを拠点へと運ぶ事に。

 

 肉体労働なら慣れている。木を軽々と運んでいく様はまるでベテランの木こりのようだ。

 

 

「とりあえず炭ができればね、みんな呼べるから」

「人手欲しいよねぇ、わかる」

 

 

 ベディ、ヴラドとモーさん、藤丸ちゃん達の待つ拠点へと足を早める三人。

 

 フルセットの重さもあるのでなかなかのキツさだが、まだまだと足を動かし、汗を流して拠点へ向かう。

 

 今まで、皆がどれだけ協力してくれていたことか、改めて皆からの助力の有り難さを痛感させられた。

 

 一方、その頃、炭窯作りに勤しむヴラド達はというと。

 

 

「角型スコップはこうして使うのよ」

「すごく……勉強になります……」

「メモメモ」

 

 

 ヴラドから角型スコップの使い方を教わっているところである。

 

 今回も炭窯づくりで主に使用するのは、「角型」。

 

 角型スコップは、硬い土を掘ることは難しいが、より多くの土を効率よく掘ったり盛ったりする際に重宝され、特に、土羽に土を入れる際に活躍した。

 

 藤丸ちゃんとマシュちゃんは今回、初挑戦の為、こうやって丁寧に教えてあげているところである。

 

 一方で他のメンバーであるモーさんとベディの二人は別作業で「背当て」を制作している真っ最中だ。

 

 背当てとは切り出した材木を背負って運搬する際に使う布製の道具の事である。

 

 地面に広げた背当ての上に炭木を置き、その上に仰向けで寝転がる体勢で装着する。

 

 なるべく効率よく作業を進めるためにはこの背当てがあるだけでだいぶ変わってくる。

 

 なお、以前彼らがお世話になった炭焼きの達人曰く「山のよろい」というそうだ。

 

 かつての炭焼き人はこの背当てに一本20キログラムを超える重さの切り出した炭木を10本も背負って山から下りてきたという。

 

 

「これで兄ィ達も作業が楽になるだろうから頑張んねーと」

「お、良いねー」

 

 

 上機嫌でニコニコ顔のモーさんに笑みを浮かべながらサムズアップするベディ。

 

 やはり、こういう作業にはチームの連携が不可欠だ。

 

 共同作業だからこそ、互いに思いやる気持ちが目標に達するための最短の近道になる。

 

 まだまだ、やらなくてはいけない事はたくさんあるし、1日でも早くこの拠点の霧を晴らしてしまわなければ。

 

 この新たな地での挑戦には今まで知り合った英霊や仲間達の協力が必要不可欠である。

 

 

「ここに新しい村作りたいよね」

「おっ? それいいな! 丁度、アヒル村長も持って来てるし!」

「さすがモーさん! わかってるぅ!」

 

 

 ────最早、生活習慣。

 

 前までは異常だと思っていた事でも習慣となれば違和感なく馴染んでしまう、そういうものである。

 

 幸いにも拠点の周りには木々が生い茂っているようであるし、建物を作る際の木材不足には困らなさそうだ。

 

 どうせだから、ここにはお洒落なログハウスが連なる村を作りたい。

 

 人が住めなかった土地を住める土地に変えていくのはやりがいがある。

 

 

「おーい木を持ってきたぞー」

「おっ! おかえりー!」

 

 

 そして、そんな雑談を繰り広げていた二人だったが、ようやく木が到着。

 

 早速、木の加工に取り掛かる。

 

 まずは木炭にするためにサイズを必要最低限にしなくてはいけないだろう。

 

 そこで、カルナは使い慣れたナタを手にまずは皆にお手本を見せる。

 

 ナタは、炭づくりにおいては枝を切ったり、細かい敷き木を切ったりするのに活躍する。

 

 また、炭ができてからも焚き付けに使う枝木を得るためにも使うので使い方はしっかりと学んでおくべきだろう。

 

 

「こうしてね、こうやるのよ」

「ほうほう、こうね」

「そうそれ! 筋が良いね! 藤丸ちゃん!」

 

 

 指導した甲斐があり、ナタを使いこなしてくる藤丸ちゃんに称賛を送るカルナ。

 

 これならば、作業もより順調に進むかもしれない。

 

 以前も彼らは炭窯を作り上げたのだが、なんと、あろうことか、秋口に崩壊。天井部分がぽっかりと崩れ落ち、見るも無残な姿になってしまったことがある。

 

 夏に降った多量の雨が土にしみこみ、徐々に土が軟らかくなって崩れてしまった。

 

 この失敗を教訓にして、完成させた炭窯、あの時の経験を今回、存分に生かしきり、再び、立派な炭窯を作り上げたい。

 

 そして、人が住める土地をどんどんと広げていき、やがて、この特異点で起きている異変を解決に導く。

 

 とはいえ、まだ1日目、これからどんどん炭窯をクオリティの高いものにしていかなければならない。

 

 皆が一致団結し、この苦境から早く脱せねば。

 

 彼らの挑戦はまだ始まったばかり。

 

 果たして、YARIO達はこの世界の異変を解決する事ができるのだろうか? 

 

 

 その続きは……。

 

 

 次回! 鉄腕カタッシュで! 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.世界を救う前に炭窯を作る。

 

 2.炭ならなんでも浄化できる。

 

 3.異世界に行くアイドル。


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