ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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刀の指南 その1

 

 

 

 前回、完成した聖剣、もとい聖刀。

 

 別名、すっぽん沼江だが、それを漬物石に使っていたカリバーンが刺さっていた石に再びぶっ刺し、彼らはモーさんを呼んだ。

 

 

「なんだー兄ィ達、俺に用って」

「あ、モーさんやっと来たかー」

「選定の剣だよ! 選定の剣! ほらずっとモーさんやりたいって言ってたじゃん」

 

 

 そう言って、にこやかな笑顔を浮かべ、選定の漬物石の前でサムズアップするカタッシュ隊員達。

 

 しかし、石にぶっ刺さっているのは刀で、しかもその石の下にはカタッシュ村で取れた野菜を漬けてある漬物の壺があった。

 

 これにはモーさんもなんとも言えない顔を浮かべている。

 

 

「いや…これ、違うような…」

「何言ってんだよー、カリバーンとデュランダル使った超すげー刀なんだよ! これ!」

「刀って言ったよな? 今、刀って言ったよな!?」

 

 

 そう言って、漬け物石にぶっ刺さっているすっぽん沼江を指差して抗議するモーさん。

 

 

 ーーー確かに剣ではありません。

 

 

 しかしながら、このすっぽん沼江だが、あのカリバーンにデュランダルを使い、さらには神代の最高級の鉱石をふんだんに使った神造宝具なのだ。

 

 作ったのはYARIOだが、神造宝具のハンマー使って作ったのだから神造宝具に決まっているという謎の自負が彼らにはあった。

 

 しかしながら改めて聞いてもひどい名前である。

 

 

「それか僕と契約して魔法少女になる? 願い事は叶えられへんけど」

「初耳なんだけど、リーダーそれってどうやんのさ…」

「モーさんにゲイボルグを持たしたらそれらしくなるんやないかな」

「最近じゃ、アイドルも絶唄しながら戦う世の中になったからねー」

 

 

 そう言いながら、魔法少女を希望しても構わないという具合に話を進めはじめるリーダー。

 

 ーーーーおっさん達には無理や。

 

 正直、歌で世界を救うなんて事をやってのけるのはぴちぴちの10代アイドルだけである。平均年齢が四十越えのアイドルには荷が重い気がした。

 

 

「やっぱ最近の若い子は凄いパワーあるよ、俺らおじさん達だからねー」

「やっぱり鍬しかねーよな」

「わかる、…そんでなんの話してたんだっけ?」

「いや、だからこれ刀じゃねーか!」

 

 

 そう、本題はそもそも選定の剣ではなく刀だった事である。名前をすっぽん沼江という。

 

 モーさんは不満げなご様子だ。確かにこれは剣ではなく刀、しかも、デュランダルやカリバーンの材料をふんだんに使った伝説的な刀である。

 

 名前は果てしなくダサいが、そこさえ目を瞑れば最高級の刀である。

 

 

「良いじゃん、来週からるろうにモーさんが始まるよ」

「いやー、領主で農業できて、建築もできて、しかも剣豪でなんでもできるなんて凄いなー憧れちゃうなー」

「い、いや…あのだな…、こう、もっと…ビーム出せそうなだな」

「ただでさえガンダムのモビルスーツみたいな鎧着てるのに何言ってんのよ」

 

 

 もっともなカルナの突っ込みに全員が肯定するように頷く。

 

 正直、言って羨ましい。スズメバチも駆除できるしフォルムもカッコいいとくれば文句のつけようがないモーさんの鎧。

 

 それに加えて贅沢にもカリバーンとデュランダルが入った聖剣(日本刀)まで、原価を考えれば相当の価格はするはずだ。

 

 

 ーーービームサーベルはまだ早いねん。

 

 

 つまる話がそう言う事である。ビームサーベル出す前にまずは斧らしいもので我慢しなさいという事だ。

 

 まぁ、抜こうとしているのは日本刀なのだが。

 

 かつて選定の剣が突き刺さっていた石(漬け物石)とにらめっこしはじめるモーさん、抜くか抜くまいか迷っている様子。

 

 暫し考えた後、モーさんは腹を決めたのか、よし! という掛け声と共に選定の刀に手をかける。

 

 

「よーし! 抜くからな! 今から抜くからな!」

「よーし抜け抜けー!」

「しゃあ! 見てろよー! このー!」

 

 

 そう言ってモーさんは刀を両手で掴むとグッと持ち上げるように力を加える。

 

 すると、選定の漬け物石からズブズブと剣が抜けて…。

 

 

「あ…っ」

 

 

 抜く衝撃に耐えきれず選定の漬け物石が爆発した。

 

 漬け物の壺の上に置いてあった選定の漬け物石は爆発四散し、さらに、下にあった漬け物の壺も衝撃で吹っ飛んでいく。

 

 それを呆然と眺めるカタッシュ隊員達。

 

 するとそこへ、上機嫌の様子のジャンヌちゃんがやってきた。

 

 

「あ! みなさん! 何やられてるんですか? ちょうどそこの壺に漬けていた漬け物がいい感じにですね…ぶっ!」

 

 

 そして、破裂した漬け物の大根がジャンヌちゃんの顔面に直撃。

 

 これには一同、苦笑いを浮かべる。勢いよく破裂した漬け物があちらこちらに、1番最悪だったのは通りかかっていた婦長の頭にキュウリが直撃した事だろう。

 

 しかしながら、ジャンヌちゃんも破裂した漬け物に関してご立腹のご様子で、しなっている大根を片手にワナワナと震えていた。

 

 

「…これは、どういう事でしょう? 説明願えますか?」

「…今、私の頭にこんなのが飛んできたんですけど誰ですか? こんなの投げてきた人は?」

「…あわわわわっ!」

 

 

 これには刀を抜いたモーさんもワタワタと焦っていた。

 

 般若が二人目の前に、モーさんは蛇に睨まれたカエル状態である。そんな中、漬け物に刀を突き刺した彼らは…。

 

 

「先生ー! ディルムッド君が刀抜けってモーさんに言いましたー!」

「あ! ずりーぞ! お前! それはなしだろ!」

「おい、貴様ら、私の頭上から白菜が降って来たんだが」

「げっ! 師匠…!」

 

 

 そして、挙げ句の果てには髪の毛に白菜を乗っけたスカサハ師匠まで出現。

 

 

 ーーー刀を抜くだけで大惨事。

 

 

 刀を抜いたモーさんは涙目になって刀を抱えたまますぐさまカルナの背後に隠れた。だが、この惨事、流石にカルナといえど庇いきれそうに無い。

 

 そこで、皆は顔を見合わせて頷く。そうだ、こういった場合、切り抜ける方法は一つだけ。

 

 思い立ったら行動、それが彼らである。

 

 ベディは般若の表示で迫る美女三人に背後を指差してこう声を上げた。

 

 

「あ! ラ○ュタだ!」

「ん?」

「え? ラ○ュタ? なんですかそれ…」

「どこだどこに…」

 

 

 そう言って、後ろを振り返る美女三人。

 

 その隙を突いて、モーさんを抱えてカタッシュ隊員達はすぐさまその場から逃走を試みた。

 

 そして、彼女達が振り返ればその場に彼らの姿はなかった。見事な逃走劇である。

 

 

「逃げましたね!」

「あんの馬鹿弟子どもめ! この私を騙すとは!」

「あ! リーダーがこけた!」

「走れー! 振り返るなー!」

「ちょっ!? 僕リーダーなのに見捨てるのはおかしいやろ!」

「尊い犠牲だった…」

 

 

 だが、メンバーはモーさんを脇に抱えたまま振り返えらずに突っ走っていく。

 

 背後からリーダーの悲鳴が聞こえたような気はしたが、多分気のせいだろう。そう思うことにした。

 

 という事で? 無事に聖刀、すっぽん沼江を手に入れたモーさんだが、三人から逃げ切ったところでこの刀を改めて見つめ直す。

 

 

「ほえー、確かにこりゃすげーな」

「でしょー? まぁ、兄ィが仕上げしたかんね」

「よせやい! 照れるじゃん」

「本当に! ありがとう兄ィ!」

 

 

 そう言って、照れ臭そうにモーさんに告げるカルナ、そして、そんなカルナにお礼を述べながら嬉しそうに抱きつくモーさん。

 

 まるで本当の兄妹のようだ。しかしながら、ここで肝心な事を思い出す。

 

 そう、刀は確かに抜けた。刀は抜けたのだが…。

 

 

「ところでこれってどう使うんだ?」

「だよねー、一応、鞘とかも俺が作っておいたんだけど」

「やっぱ使い方わかんねーとなぁ」

 

 

 ーーーとりあえず使い方がわからない。

 

 両刃剣ならまだしも、日本の伝統の刀となればやはり、使い方も異なってくる。

 

 よくて野菜を切るとか、はたまた肉を切るとかそんな使い方しか思いつかないような気もする。

 

 という事で?

 

 

「達人を呼ぶしかないよね、刀の使い方知ってる」

 

 

 そう、今こそ日本刀ならではの良さをよくわかっている人物に教わらなければ。

 

 よくてこのままでは包丁くらいにしか役に立たない刀になってしまう、せめて、小次郎さんみたいに竹を刀で伐採できるようにしてほしいところ。

 

 しかし、小次郎さんは人に教えるというよりかは独学で燕が切り落とせるようになったとか、それはいささかモーさんにはハードルが高いように思う。

 

 まずは小次郎さんから本格的に教わる前に基礎から教えてくれる師匠を探さなければ。

 

 

「というわけで、リーダー良いかな?」

「…なんも良くあらへん、めっちゃ怒られたんやけど…」

「よく丸く収まったね」

 

 

 こってり三人からお説教を受けて帰ってきたリーダーを迎え、早速、今回の件の話を振るカルナ。

 

 よくあの怒りが有頂天な彼女達を宥められたものだと感心する。やはり、我らがリーダーは器が違った。

 

 

 ーーーリーダーやからね。

 

 

 かっこ良くサムズアップするリーダーだが、説教されてるので事実かなりかっこ悪い。前にも旅館で枕投げをしはじめ怒られた事があった経験がここでも生きた。

 

 さて、気を取り直して、こうして我らがリーダーとカルナの二人はモーさんに刀の使い方を教えてくれる師匠を求めだん吉へ。

 

 目的地は江戸時代、幕末の日本。

 

 

「さて、ついたわけなんですけど」

「ここらへんやないかな?」

 

 

 話をしながら江戸時代の街を歩く場違いな二人、民家を歩き回りながらある住宅を探していた。

 

 果たしてここに日本刀の使い手、達人はいるのだろうか?

 

 そして、数時間ほど歩き、彼らは目的の住宅を発見。

 

 

「あれやないかな?」

「あ、それっぽいね」

 

 

 そして、いつものようにノックするとにこやかな笑顔を浮かべ、突撃を試みる。

 

 一応の声かけも忘れない。

 

 

「あのー、すいませーん」

「はいー、空いてますよー」

「僕ら鉄腕/fateという者なんですけど」

 

 

 そう言いながら、民家の扉を開ける二人。

 

 そこにはにこやかな笑顔を浮かべた色気のある綺麗な髪をした女性が床から起き上がり出迎えてくれた。

 

 そう、これが今回、彼らが訪ねた刀の達人。

 

 

「あのー、新撰組一番隊隊長、沖田総司さんですかね?」

「はい! 私はおっしゃる通り沖田総…ゴバァ…!」

「あかん! 死んだー!」

「ちょっ!?」

 

 

 沖田総司さん、その人である。

 

 幕末期の人斬りであり、刀の達人、まさに侍。9歳の頃、天然理心流の道場・試衛場に入門。若くして才能を見せ、塾頭を務めたともされている。

 

 だが、まさか女性だとは思いもよらなかった。そして、会って3秒で吐血し瀕死になっている。

 

 果たしてこんな調子でモーさんに刀の使い方を教える事が出来るのだろうか?

 

 不安が募る中、瀕死の沖田さんを担いだカタッシュ隊員の二人は急いで村の病院に連れて行く事になった。

 

 

 その後、チーム医龍によって瀕死の彼女の命はかろうじて救われる事になるのだが、これはまた別の話である。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.聖剣を石から抜いた衝撃で漬け物が爆発四散。

 

 2.モーさん、刀の指南を受ける事に。

 

 3.沖田さん大勝利!

 

 4.僕の名前はシゲベェ(リーダー談)


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