ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
さて、前回の鉄腕/fateで無事に病院を完成させたカタッシュ隊員達。
次に取り掛かるのは、残りのそうめん流しの完成だ。あと半分、皆で取り掛かればなんとか終わるはず。
「いやー、そうめん流すの楽しみだね」
「美味しいもんね、カロリーも割とあるし」
そう言いながら、竹を繋ぎ合わせる作業に取り掛かるヴラドとベディの2人、なんやかんやで作業も折り返し地点まで、ここまでくれば後は突っ走るだけだ。
一方、その頃、クーフーリン達はというと?
「いやー、生い茂ってんね」
「割と村の周辺は緑豊かなんだよね、不思議だ」
そう、村の周りに生い茂っている森林地の探索に出かけていた。いずれは開拓する土地を後々増やしていきたいという計画もある。こうした探索も必要な事。
今回はモーさんとメイヴちゃんをお供に連れて、三馬鹿トリオは今日も行く。
さて、それから歩く事数分あまり、生い茂ってる森は思いの外深い、自然が豊かなのは良いことだが…。
すると、ここでカルナ、あるものを見つける。それは…。
「あ、これ見てよ、トゲ付いてるトゲ!」
「うお、これチーゼルってやつじゃない? とんがってんねー」
そう、発見したのはチーゼルと呼ばれる植物。
主な用途として布に起毛加工するときに使うことでよく知られた植物である。しかし、それにしてもすごいトゲだ。
チーゼルをしばらく見つめていたディルムッドはふと、モーさんに視線を向けてみると何やらモーさんは納得した様にチーゼルを見て頷いていた。
「俺と同等か、それ以上にトゲがあるよな」
「…………」
「…………」
「ばっかおめぇ! 俺もあるぞ! トゲ!」
「…………」
そして、そのモーさんとディルムッドの2人の一言にシーンと静まり返るカタッシュ隊員達。
ーーー最近、丸みしかない2人。
当の本人たちは何故だが嬉しそうにハイタッチを交わしていた。何というか側から見れば微笑ましいがクーフーリン達はなんとも言えない。
「…あー、そうですか」
「…うん、せやね」
「…トゲとかあったかしら?」
メイヴの最後の一言に思わず笑いが吹き出すカルナとクーフーリンの2人。
トゲというより愛嬌と可愛らしさが増してきたモーさんに板前に定着しているディルムッド、トゲというより現在は肉球ばりの柔らかさしかない。
さて、気を取り直して探索に戻る。歩いている4人は探索の最中にはこんな会話を繰り広げていた。
「そういえばクーちゃん達っていつごろアイドルになったの?」
「せやなぁ…、えーと、最初は僕とカルナの2人やったんやけど2人とも楽器やってて」
そう言いながら、メイヴの質問に懐かしそうにYARIOの結成当時の事を振り返るクーフーリン。
今はこうして再結成できてはいるが、当初彼らがこうやってアイドルになった経緯はモーさんやメイヴ達にはわからない。
YARIO誕生秘話は彼女達としても気になる事柄でもあった。
「で、バンドやって、楽器のメンバー、他にも欲しいなと」
「へぇー、で、ディル兄ィは?」
「ちょうどそん時、ドラム叩いてて、楽器やってる2人がいるからそっちいきなさいってな感じで…で、行ったら、この2人」
そう言いながら、ディルムッドは懐かしそうに笑みを浮かべつつ楽しそうにメイヴとモーさんの2人に語る。
これだけ見れば、順調にアイドルグループとして形になりつつあるように聞こえる。
だが、これには大きな落とし穴があった。それは…。
「俺は当時、アイドルでデビューするもんだとばかり思ってたから、リーダーと兄ィと初めて会った時に、あれ? これもう終わったなと思った」
「!?」
「あはははははははは!」
「いや、気持ちはわかるけどさ!」
そのディルムッドの一言に思わず笑いが出てくるクーフーリンとカルナの2人。
当時は彼らにはさほど期待がされておらず売れないだろうと思われていたのだろう。
そして、ディルムッドは思い出しながら、メイヴとモーさんの2人に続けて語り始める。
「いやー正直、俺も売れる売れない組み合わせは直感的にわかってたところがあったからさ、この2人を見て『おーディルムッド来たの?』と聞いた時に俺もそっち仲間かと」
「あはははははは! マジかよー!」
「へぇー、なんだか意外ね」
ディルムッドの語りに思わず笑みがこぼれるメイヴとモーさんの2人。今はこうして仲の良い3人にそんな過去があるとは意外だった。
それを聞いたカルナとクーフーリンも頷いていた。
「俺たち『ようこそ』言っちゃってたもんね」
「いやー、ディルムッドが来てくれて心強かったわー」
本当に売れない人たちと自己認定するほどのメンバー。ディルムッドも正直、諦めていた感がものすごかったという話だった。
しかし、ここで彼らにとって光明と言える出来事があった。それは…。
「でも、ここでベディが入ってきて、よっしゃ! まだ頑張れる! まだいける!ってなったのよ」
「あー、ベディは人気出る面子だったわけだ」
「んー、私はクーちゃんもカルナちゃんも好きだけどなー」
そう言いながら、メイヴはディルムッドの話を聞きながらクーフーリンとカルナの2人を非常に気に入っている事を告げる。
すると、一通り話し終えたディルムッドの語りを聞いたカルナとクーフーリンの2人は顔を見合わせると改めて今の現状を語り始める。
「でも、気がついたらアイドル目指してたのが結局、バンドになって気づいたらこんな事やってるからね」
「転職しすぎやね、僕ら」
ーーーー結局、本業はアイドルではない。
そう、本業は最近やったのはこのブリテンに来た当初だけ、しかも、アイドルというよりはバンドで歌うお仕事。
その後、運送業や酪農、ラーメン作り、病院作り、スズメバチの駆除、農業全般、そうめん流し、そして、村づくりなど彼らはアイドルからは想像できない縁遠い事ばかりをやっていた。
他にもレストアや石油掘り、車作りなど挙げればキリがない。
「そう考えるともうアイドルは卒業したな」
「そうだね」
そう言いながら、笑みを浮かべるカルナとディルムッドの2人。
アイドルがアイドルを卒業したと言い切る。確かに彼らみたいな人間をアイドルと呼んで良いのかと言われれば首をかしげるところだが本人たちがそれで良いものか…。
さて、話題は変わりここで何故かお酒の話に。
「クーちゃん達もお酒とか飲むの?」
「まぁーせやな、3人とかでよく飲んだりとかはあったね」
「ふーん」
お酒と言えば、そういえば、カタッシュ村にはまだお酒作りはしていなかった。いずれはお酒作りにも手を伸ばしていきたいところ。
さて、お酒についてだが、モーさんはこんな疑問をディルムッドに投げかける。
「ディル兄ィが2人とお酒飲んでてめんどクセェってなることある?」
「いや! そりゃもうしょっちゅうよ!」
「おいおい」
「いやいや、そんな事ないやろ」
「えー気になる! どんな感じなの? 2人とも!」
そう言いながら、ディルムッドの話に食いつくメイヴ。確かに、お酒を飲んで酔っ払った2人は見たことがない。
すると、ディルムッドはお酒を飲んだ後の2人の話を各それぞれ語り始めた。
「あーまず、兄ィからね、兄ィは典型的な暴れん坊です」
「えぇ!? 俺そんな酒癖悪い!?」
「いやいや、自覚なしかい!」
「へー! まじかー!」
そう言いながら、思わずカルナに突っ込みを入れるクーフーリン。
お酒を飲むと典型的な暴れん坊になるというカルナ、それにはディルムッドからこんな話が…。
「一緒にお酒飲むじゃない? だいたいの奴は兄ィからブレーンバスター食らってるから」
「!? ぶ、ブレーンバスター!? なんだそれ!?」
「そうそう、ブレーンバスター、あ、こんな風に人持ち上げて背中から落とすプロレス技ね」
そう言いながら、驚いたように声を上げるモーさんに説明するディルムッド。
なんと、酔っ払った勢いでカルナはブレーンバスターをするというのだ。
その経緯はなんとも単純で、お酒を飲むことにより気持ちが昂ぶり、カルナはプロレスごっこに興じるという。
確かに英雄ならばお酒を飲んで気持ちが昂ぶるのもわかる気はするが…。
「大英雄カルナのブレーンバスターを今まで何人食らった事か…」
「いやー、それは大昔であって今はやってないよー」
「いやいや、そんな事は無いはず、胸に手を当てて思い出してみ?」
そう言いながら、ディルムッドはカルナに今現在までブレーンバスターをやっていないのかを問いかける。
すると、カルナは何かを思い出したのかいきなり吹き出すように笑い始めると口から自白しはじめた。
「…いや、やってたわ多分、ウチの建築の社員とか、あと、アルちゃんにもかましてたと思う」
「ほらー! やっぱり! あんた絶対やってると思ったもん俺!」
どうやら、思い当たる節が見つかったようで自白したカルナの言葉に一同はゲラゲラと笑い始める。
しかも、なんと、インドにて建築を教えていた作業員だけでなく、英雄であるアルジュナにもブレーンバスターをしていたというのだから驚きだ。
カルナはその時の様子をこう語る。
「いや、翌日、背中抑えてるもんだからさ、アルちゃんにどうしたのか聞いたのよ、そしたら、『あのブレーンバスターという組み技、教えてくれ』って言うもんだから、もうやっちゃったなって」
「いや、記憶なかったの!? 兄ィ!」
「全然覚えてなかった」
カルナは楽しそうに笑いながらモーさんに告げる。
お酒を飲み、酔っ払うとブレーンバスターをかますというカルナ、お酒を飲むと絡みたくなっちゃう熱い男、それが、我らがカルナ兄である。
熱いというかブレーンバスターは迷惑であるのは間違いないのだが、しかし、ディルムッドが言うには楽しいお酒だそうだ。
「それってよくよく考えたら王様達とか、一緒に会席でお酒飲んだら大変じゃない?」
「全員、ブレーンバスター食らうよ」
そう言いながら、メイヴの言葉に頷き答えるディルムッド。
確かに楽しいお酒なのだろうが王様全員にブレーンバスターはまずい、しかも本人に酔っ払った自覚がないから尚更だ。
仮に王様が集まり、問答するとしよう、その場にカルナを投入すればアーサー王だろうが、英雄の王様だろうが大王様だろうが彼は勢いあまってブレーンバスターをするに違いない。
ーーー酔った勢いで王様バスター。
想像しただけで凄い絵面である。
「ちなみにリーダーは?」
「あれは楽しくないね」
「ちょ!? なんでやねん!」
全員その言葉を聞いた途端ゲラゲラと笑い始める。
カルナはブレーンバスターとかいろいろと熱い男でお酒も楽しいと聞いたばかりにリーダーのお酒が楽しくない酒と言われればこのオチには思わず笑ってしまう。
哀愁漂うリーダーだが、でも、こんなところもまた彼が皆から愛される理由の一つだろう。
それからしばらくして、談笑を交えつつ、クーフーリン達が散策するとあるものが見つかった。それは…。
「お、これは…」
「まだ熟してないけど、さくらんぼじゃない?」
そう、見つけたのは、まだ、熟していないさくらんぼを発見した。色はまだ赤くは無いがこれは貴重な食料になり得る。
早速、一つだけさくらんぼを摘んでみるディルムッドとリーダーの2人、実は熟していないがこれをどうする気なのだろうか?
「噛んでみる?」
「せやね一つだけ」
「あ! それじゃ俺も! 俺も!」
「あ、私も一つ良いかしら?」
そう言いながら、カルナとディルムッドからさくらんぼを手渡されるメイヴとモーさんの2人。
なんでも口に入れようとするのは果たして大丈夫なのだろうか? 何はともあれ、ひとまずはさくらんぼの味見。
多少、色がマシなものを選んで、さくらんぼを口に運び、4人は噛む、すると、その味は…。
「ふぉぉぉぉ……!」
「ふぁぁぁぁ……!」
「ひぁぁぁぁ……!」
「ほぉぉうぁ……!」
言葉にならないような声をあげて顔を渋らせる4人。どうやら、熟していないさくらんぼの渋さが口に広がり、あまりの味に驚愕しているようである。
酸っぱいし、苦味もある。
酸味があるというのはそれだけ甘くなるという事だが、色が多少マシなやつでさえ食べれないのは誤算だった。
匂いは確かによく、さくらんぼの匂いはするが…。
「俺たちもさぁ、大人なんだからさ〜、ちょっと気が早いよー、焦りすぎ焦りすぎ、成長過程をね」
ディルムッドは熟していないさくらんぼを見つめたまま、皆にそう告げる。
確かに気は早い、酸味が甘味に変わる日までしっかりと待ってあげることも必要だ。
という事で、このさくらんぼの大人の楽しみ方を…。
「このさくらんぼの実の気持ちになって、この子のね」
さくらんぼの葉にそっと触れながら皆にそう告げるディルムッド、さくらんぼの気持ちになるとは果たして…。
さて、ここでディルムッド、さくらんぼの実になった気持ちで心を込めた一句を読み上げはじめた。
ーーーー言葉が湧いてくる。
「まだダメよ 甘くなるから 待っててね」
ここで再び、さくらんぼの映像と共にディルムッドが聞いた、熟していないさくらんぼの気持ちになった句を再び聞いてもらおう。
まだダメよ 甘くなるから 待っててね
ディルムッドは熟していないさくらんぼの一つを口に近づけると口付けをしこう語り始める。
「まだまだな、酸っぱい時期だよな…待ってるよ」
「……………」
「……………」
しかし、句は凡作、特にこれといって傑作なようには感じられなかった。
ディルムッドの句を聞いて首をかしげるモーさんは沈黙が流れる中、一言、こんな言葉を投げかける。
「なぁ、兄ィ、ディル兄さくらんぼに頭やられたのか?」
「モーさん、あれが素のディルムッドだよ」
そう言いながら、質問を投げかけるモーさんの頭を悟ったように撫でるカルナ。そんな中、ディルムッドは相変わらずさくらんぼに口付けを送っていた。
確かにあんな風に接していたらさくらんぼの木の気持ちはわかるようにはなりそうな気はする。
さて、散策で新たにさくらんぼの木を発見した一同はひとまず散策を終えてカタッシュ村に帰るのだった。
今日のYARIO。
さくらんぼの木を発見ーーーーーーーーNEW!
ディルムッドの凡作が出来上がるーーーNEW!
丸くなったモーさん&ディルムッドーーNEW!
インドにブレーンバスターが伝わるーーNEW!