ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
数ヶ月の月日が過ぎた頃。
ナイチンゲールの指導のもと、衛生状況の改善と清掃作業も無事に進み、清潔感のある村に変わりつつあるカタッシュ村。
そんなカタッシュ村では、彼らが制作に取り掛かっていたあるものが完成を間近に迫っていた。それは…。
「オーライ、オーライ!」
「おーいいねー」
部品を1から制作し、組み立てた2tトラックである。
それだけではない、小次郎さんが希望していたデコトラの制作もまた仕上げる段階まできていた。これならば、カタッシュ村から物流を始めることができる。
だが、そんな目覚ましい進展があったにも関わらず不機嫌な女性が一人、そう、スカサハ師匠、その人である。
「なぁ、カルナ、しげちゃんが好きなものってなんだ…?」
「何…って、そりゃお師匠、水捌けの良い土とか、後はお茶とかじゃない? それとダジャレ」
「いや、そうじゃなくてだな…もっとこう…」
「んー…、それとは違うベクトルかぁ…そうだねー」
そう言いながら、スカサハの言葉を聞きつつトラックの制作の為にスパナを回し作業を続けるカルナ。
そういう事に関して察しが悪いカルナではない。確かにスカサハがそんな事を言い出す理由もなんとなくだが理解はできる。
メイヴやナイチンゲールなど、自分とはまた違う魅力がある女性が周りに増えてきた。
もしかしたら弟子であるクーフーリンが取られるのでは? という不安があった。
「それで、あいつが好きなものはなんなんだ?」
「それ以外って言ったら皆でしょ? リーダーが好きなのって」
「…え?」
「あの人は分け隔てなく皆好きなんだよ、だから、俺達もリーダーが好きなんだわ」
そう言って、汗を拭ったカルナは満面の笑みを浮かべてスカサハにサムズアップをして応える。
分け隔てなく、どんな人間も受け入れる度量がクーフーリンにはあった。それは、YARIOのリーダーとして皆のまとめ役を引き受けている。
そんな彼の魅力はやはり、その人柄であった。何度も解散しようとした自分達を繋ぎ止める橋渡しをしてくれた。
積み重ねた彼らの年月が紡ぐ絆、最初は期待すらされなかった者たちが力を合わせ踏ん張り、今がある。
ーーーーだが、残念な事にこれもベクトルが違う。
聞いた話は確かに感動的だが、スカサハが聞きたい事はそうではない。
すると、カルナはポンと手を叩くと思い出したようにスカサハ師匠にこう告げる。
「あ、そうそう、リーダーの好きなもの? カレーライスだよ」
「そういうのが聞きたかったんだよ! ちょっと良い話で泣きそうになっただろう!この馬鹿者!」
そう言いながら、良い話の後にあっさりクーフーリンが好きな物を告げるカルナに思わず目頭を拭いながら突っ込みを入れるスカサハ。
クーフーリンを慕う彼らの心に思わずウルっと来てしまったが、カルナのおかげで台無しである。
とりあえず、紆余曲折ではあったが、スカサハはクーフーリンはカレーライスと辛いものが大好物という情報を仕入れる事が出来た。
「ところでカレーライスとはなんだ?」
「そこからかーい」
というものの、スカサハ師匠、カレーライスを知らなかった。
それもそのはず、カレーライスはインドの伝統的な料理、インドと言えばカレーというほど、多種類の香辛料を併用して食材を味付けするというインド料理の特徴的な調理法を用いた料理である。
インドと言えばカルナだが、果たしてスカサハにどういった料理であるかを伝えるか…、その点に関してカルナは難しい表情を浮かべていた。
「まず、スパイスやらがいるんだよね」
「ふむ」
「それを混ぜ合わせて」
「ふむ」
「野菜やお肉やらの具材をそれに加えて入れて煮込んで」
「ふむふむ」
カルナの話に耳を傾けながら頷くスカサハ師匠、果たして、カレーライスがどういったものか彼女は想像できているのだろうか。
「ご飯にかけて完成」
「なるほど、わからん」
「ダメだこりゃ」
どうやら、駄目なようである。
即答のスカサハ師匠に肩を竦めて告げるカルナ、諦めるのは早かった。
料理と言えばヴラドとディルムッドであるし彼らならば、スカサハ師匠にカレーライスがどういったものか教えれるかもしれない。
まぁ、それはひとまず後回しでいいだろう、まずは目の前の事からだ。
2tトラックを完成させること、まずは、これを終わらせてからだ。
「おーい、兄ィ、こんな感じなんだけど…」
「いいんでない? エンジンも掛かるんでしょ?」
「バックも出来たし、まぁ、問題無いかな」
ここでも、以前学んだレストアと機械弄りの知識が生きる。
2tトラックの試運転を終えたベディに問題無いと告げるカルナはその出来に確かな手ごたえを感じていた。
カタッシュ隊員達が力を合わせて作り上げた2tトラックは計3輌ほどだが、最初にしては上出来。
さらに、農民スタッフ小次郎さん専用のデコトラを合わせればなんと4輌も…。
これならば、ブリテンの街や村に新鮮な野菜やお肉を届けて回る事が出来るだろう。
そして問題は、現在、建築中の病院だが、現場にて建造に取り掛かっているクーフーリンとディルムッド達はというと?
「ディル兄、この辺?」
「あーそうだね! そこでいいよ」
必要な機材を置くモーさんの言葉に頷くディルムッド。
基礎工事が完了し、次の工程である土台敷きに入っていた。
土台敷きとは、基礎コンクリートの上に土台や大引を設置していく作業、さて、このコンクリートだが、ローマン・コンクリートを彼らは代用で使用した。
このローマン・コンクリートとはローマ帝国の時代に使用された建築材料。セメントおよびポッツオーリの塵と呼ばれる火山灰を主成分としたコンクリート。
現代のコンクリートは、カルシウム系バインダーを用いたポルトランドセメントであるが、このローマン・コンクリートはアルミニウム系バインダーを用いたジオポリマーであり、倍以上の強度があったとされる。
主にコロッセオなどの建造物に使用されたコンクリートがこのローマン・コンクリートだ。
そして、このローマン・コンクリートの作り方を学びにローマの地を訪れた彼らだが、そこでも新たな匠との出会いがあった…。
今回はその話についてだが…。
まず、クーフーリン達が訪れたのはイタリアのローマ。そこで、彼らが出会ったのは。
「こんにちはー! 僕ら鉄腕/fateのYARIOという者なんですけどもー」
「
「おー、なんかそのポーズかっこいいですね! 実は今回お願いがありまして…」
ローマを作った建造の父、ロムルス師匠であった。
そして、彼らはロムルス師匠にお願いし、ローマ建築のなんたるかをカタッシュ村の病院建造と並行して学ぶ事になった。
そこで、出て来たのがこのローマン・コンクリートなのだが、作り方を1から学び、実際に作り上げる過程をロムルス師匠に習った。
ローマン・コンクリートの作り方を習ったわけであるが…。
「うーん…。やっぱり難しいよね」
「ってなるとやっぱり現地の人の話や知識も必要だよね当然」
やはり、古代のコンクリート、そう易々とは出来上がるわけもなく、カタッシュ隊員達は現地の人の話を聞きながらローマン・コンクリートを製造する方針に変えた。
というわけで、ロムルス師匠からローマン・コンクリートの作り方を学んだ彼らは、再びだん吉に乗り込むと、そんな、現地の人のアドバイスを得るべく移動。
そして、建造物の現地監督をしてくれる匠をローマの地にて探したわけだが、結果。
「あれは誰だ? 美女だ? ローマだ!? もちろん、余だよ♪」
というわけになったのである。
晴れやかな笑顔に可愛らしい容姿に赤い衣装に身を包んだローマの王。
満を期して、ローマの皇帝。ネロ・クラウディウス師匠がなんと、今回、このローマン・コンクリートを使いカタッシュ村に病院を建造する現場監督に…。
さて、こうして、ローマン・コンクリートを学んだ彼らはロムルス師匠からコンクリート作りを学び、さらに、現場監督にネロ師匠を加える事になった訳だが。
「うむ! この余に掛かればこのカタッシュ村とやらもきっとローマな感じに仕上がるに違いない!」
「リーダー、こう言っちゃなんだけど、一言言っていい?」
「ん?」
「すっごく不安」
そのカルナの言葉に肯定するように頷くヴラドとディルムッド。
ーーーー皇帝だけに皆が全肯定。
確かに不安はある。この娘で大丈夫なのだろうかと、しかしながら、このネロもローマ皇帝であり、しかも、ローマに建造物をそれなりに建てさせた実績もある。
ローマのコロッセオみたいな病院。
殺し合いの場なのか、はたまた医療を施す場なのか、ナイチンゲール師匠曰く、病気を殺す場なら問題ないとの事。
というわけで。
「そこの赤いの! その場所はもっと出っ張るようにするように配置をしろと言っておるだろう!」
「にゃんだとぅ!? うるせー! テメーも赤いじゃねーか! ばーかばーか!」
「余を馬鹿と言ったか! 今! 余を馬鹿と言ったか!? この痴れ者め! ばーかばーか!」
カタッシュ村の病院の建築に加わった訳だが、ご覧の有り様である。
こんな風に喧嘩をモーさんとネロ師匠はいつものようにここ最近、繰り広げていた。
まるで子供の喧嘩である。
しかし、しばらくすると、病院の建築を放って言い争う二人の背後に般若が満面の笑みを浮かべて立っていた。
その般若は二人の襟首を猫を摘み上げるように持ち上げるとこう告げる。
「…あら? 奇遇ね、私も服は赤いのだけど…二人とも消毒液で頭を冷やした方がよろしくて?」
「…ぴぃ!?」
「母ちゃん! 勘弁!?」
こうして、二人は般若、もとい、ナイチンゲール師匠から説教される事になるまでがテンプレになりつつあった。
それを見つめながら、笑みを溢し、病院建築を進めるカタッシュ隊員達。
最初は何もなかったこの村も、今では人がどんどん増えてきて随分と賑やかになってきたものだ。
いつもモードレッドと喧嘩をしているネロ師匠。果たして力になっているのだろうか?
しかし、このネロ師匠を侮るなかれ、仮にも王様であり、そして、なんと自称ながらローマのアイドル!
アイドルならば建築、農業、漁などなんでもござれが当たり前、当然ながら、ネロ師匠もローマの建築については意外と詳しく、そこは間違いなく彼らの力となっていた。
建築物の美しさは確かにローマは完成度も高く、彼らが学ぶべき事はまだまだ数多くある。
ネロ師匠はそういった意味でも非常に頼りになる建築アドバイザーであった。
「なんたってローマのアイドルだもんねぇ」
「建築に関してはほんと色々学ぶことがあって勉強になるんだけどね」
そう言いながら、ローマン・コンクリートの上に土台や大引を設置していく作業をしつつ会話をするディルムッドとカルナの二人。
丁度、そんな会話を二人でしていると2tトラックに乗ったクーフーリンとメイヴの二人が帰ってきた。
2tトラックの荷台には積まれた木材が、そう、これらはこれから木工事に使う木材である。
2tトラックから降りてきたクーフーリンはパンパンと乗ってきた2tトラックを上機嫌に叩く。
「うん、実用化も問題なしやね、丈夫なトラックや」
「クーちゃんこれ凄いよい乗り心地ね! 気に入ったわ!」
「せやろ?」
そう言いながら、2tトラックから木材を降ろし始めるメイヴに笑みを浮かべながら告げるクーフーリン。
しかし、それを眺めているスカサハは頬を膨らませている。そして、何かを決めたように口に出してこう宣言した。
「決めたぞ、絶対カレーライス作って見返してやる」
「その意気だよ師匠、ディルやヴラドなら多分ちゃんと教えてくれるからさ」
それを見ていたカルナはポンと彼女の肩を叩いてあげる。
前途多難であるが、ひっそりと彼女を応援してあげよう。そう思いつつ、二人はローマな病院作りの作業へ戻る。
果たして、ローマの皇帝ネロが現場監督として入ったカタッシュ村に建つ病院は一体どんな病院になるのだろうか?
この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!
今日のYARIO。
制作トラック実用化ーーーーーーーNEW!
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