いや、こんな拙作を本当にありがとうございます
みんな大好き愛されガールの時間です
あとタグに『死亡キャラ生存』と入れてる以上、了子さんとかマムとかキャロルとかも出したいんですが
あいつと知り合ったのは、たしかフィーネと出逢う直前辺り。
日本に帰って来て、何をどうすれば良いかわからないままぶらぶらとほっつき歩いていたところに、あいつが現れた。
『HEY Girl! お茶しナイッ!?』
……後で聞くと、あれは『ナンパ』とかいうやつらしい(あいつ本人は否定したけど)
『………』
『あっすいませんごめんなさい嘘デス!ちょっとその目やめて!』
あの時なんで声かけたのか訊いたら「ティンと来た」なんて言いやがる
『ついて来んな』
『いやそんなんじゃなくてさ、俺もこっちの道なのよネ、本当に』
その時はただのウザい奴くらいにしか思ってなかった。
けど―――
『力が欲しいか?』
『えっ……』
『この沢城、直接脳内に……!』
急に人気が無くなったと思った瞬間にフィーネが現れて、力あるものを消し去りたいか、なんて言われて
『パツキンボインな痴女いねーちゃん、ちょっとだけこの子借りるネ!』
『はぁ!?』
『なん……!?』
何かを察したのか、それともその後のあたしがどうなるかを知っていたのか、あいつはあたしの手を引いて走り出した
けど結局、フィーネから逃げ切れずにあいつは死にそうなケガをさせられて、あたしはフィーネと付いていくことになった
ココロがボロ雑巾だったのもあったのかもしれない
ほんの少しだけの時間だったのに、あいつは自然とウザい奴からおかしな奴っていう印象に気付いたらなってた
それからルナアタックまで、あたしとあいつ―――ヒロが会うことは無かった
『翼さん!』
『何だ相原!?』
『この状況俺どっちに味方するべきなんです!?』
『愚問だぞ其れは!』
おかしな奴はおかしなままで、ちょっとだけ安心してたあたしがいて
おっさんや未来や先輩や奏先輩、あのバカと出逢って、二課に入ってからもあいつは変わらなかった
『そうそれそれ。いいよーその構図。……ちょっと顔硬いヨークリスちゃん』
『なんでこんなことしてんだあたしは……』
『未来さん、もそっと寄ったげて』
『えと……こうでいい…………ごめんクリス。もう少し離れてもらえる?』
『寄ってきたのお前だろ!?』
『あぁ~みくクリ良いっすねぇ~』
『未来とクリスちゃんが……ヒロさん、私なんだか開けちゃイケナイ扉開きそうなんですけど……』
『その感覚がその内ヤミツキになるから……でも寝取られに目覚めるのだけはやめてネ』カシャシャシャー
『ちょっ、何を撮ってやがるテメェ!』
女同士が、か、絡んでるのが好き、とか。あたしのことを「総受け」なんて呼んだりするヘンタイめいたところがあったり
それでもあのバカと同じ……良い奴だ、ってーのはよくわかったんだ
◇◆◇
「……熱いですネ司令」
「だろう?君ならそう言ってくれると信じていた」
「くだんねーことで信頼してんなおっさん」
司令おすすめというアクション映画を連チャンで見ていた俺と司令とクリスちゃんの三人。パッと見冷めてるようなクリスちゃんだが映画から溢れ出てたパッションが溜まりに溜まっている様で。
ちなみに一番ノッて来そうな響ちゃんは夏休みの宿題にヒィヒィ言わされてるらしく、不在。
「どうします?もう一本行きます?」
「そうしたいところだが、クリスくんはそろそろ帰らないとまずいだろう」
「あ?……あー、そうだな」
「少し早いし陽もまだ高いが用心に越したことはない。ヒロ君、すまないが送ってやってくれるか?」
「ちょっ、ガキ扱いすんな!一人で帰れる!」
「俺は構いませんケド、司令の方が確実じゃありません?」
「いや、そうしたいのは山々なんだが、俺はこの後やることがあってな」
「あ、そうなんですネ」
「聞けよお前らァ!!」
抗議しつつ俺の尻に蹴り入れてくるクリスちゃん、我々の業界ではご褒美です!
「ありがとうございます!」
「なにを喜んでやがんだ気色悪い!!」
シャー!と眉つり上がって犬歯剥き出しにして吠えてくる。嘘みたいだろ、受け体質なんだぜ、この娘。
「……」
「司令がとても深い慈愛に満ちた眼をしている」
「どうしたおっさん」
「いや、初めて会った頃に比べて、クリスくんもだいぶ柔らかくなったと思ってなぁ」
「物理的に?精神的に?」
「セクハラァ!!」
「後者に決まっているだろう。……しかし、何だろうなぁこの感覚は」
「……娘の成長を喜ぶ親の心境では?」
「それだッ!!」
「気安くあたしのパパ気取るんじゃねー!!」
◇◆◇
ヒロにも未来にも、おっさんにも、感謝してる
特におっさんは、パパとママを亡くしてから知った、優しい大人で、こっそりともう一人のパパみたいに思ってるあたしがいて
ヒロもおっさんも、口の悪いあたしに嫌な顔一つしない
それはもちろん、あのバカを初めに、みんな一緒で
◇◆◇
『ヒロさん。わざわざ私に頼みってなんですか?』
『リディアン組、クリスちゃん、夏休み』
『おk把握』
そんな会話を響ちゃんとした翌日。
藤尭さん改め暇人ネトゲーマー協力のもと、響ちゃんに取り付けた(当人と未来さんの許可はなんとか取れた)特殊マイクから送られてくる音声―――チーム・リディアンと共に街に繰り出すクリスちゃんのあれこれを聴かせてもらうというわけだ。
……うん、普通に盗聴だネこれ!割と最低なことしてる俺!
でも女の子の集まりに付いていくわけにもいかないし、尾行できるほどの気配遮断スキルなんて持ってないし
あと視覚情報無いから声からどうなってるか妄想も捗るし
ここんところノンケ事案多かったから初心に立ち直るという意味もあるし是非もないよネ!
『あっ、クリスちゃーん!こっちこっちー!』
『おはよ、クリス』
『ああ』
『おはよーございます!デース!』
『おはようございます』
聞こえてくる五人分の声。響ちゃんが立てたプランでは朝から晩までぶっ通しらしい。
『じゃあ行こっか!』
◇◆◇
CASE.1
『で、なんでいきなり下着屋なんだよ!!』
『クリスちゃん言ってたじゃない。最近下着がキツいー、って』
『なっ、ばっ、誰かに言った覚えねーぞ!』
『ぼやいてるのたまたま聞いたって、マリアさんが』
『マリアァ!!』
『だいじょーぶだいじょーぶへーきへっちゃら!未来のセンス良いからっ。ね?』
『お前が選ぶんじゃないのかよ!』
『…………ごめん響。私、調ちゃんと見て回るから』
『へっ?あれ、未来、何でそんな虚ろな眼してるの?何で距離取るの?未来!?みくー!?』
『切ちゃん、クリス先輩に付いてってね』
『調ッ!?』
「開幕からレベル高過ぎィ」
『ほらほらクリスちゃん!これなんてどう!?』
『透けてるじゃねーか!』
『クリス先輩、こっちはどうデス!?』
『だから透けてるじゃねーか!』
『『じゃあこれ(デース)!』』
『いい加減に……あ、いや、悪くない、か?』
『じゃあ買っちゃお!いやまずは試着だね!手伝っちゃうよクリスちゃんおっきいんだから!』
『イェーイ!ナウい下着を試着室でゴーゴーデース!』
『はぁ!?いや、それくらい自分でやれるっつーか放せェッ!?』
『……………』ペタッ
『……調ちゃん』
『……世の中って不公平ですよね』
みくしらちゃん強く生きて
『ホラホラ脱いでクリスちゃんホラホラホラホラァッ!』
『触んな、脱がすな、さらっと揉むなァ!!』
『おぉう、近くで見るとやっぱりとんでもないボリュームデース……』
やっべぇぞ音声だけで何が起きてるかだいたいわかる!
『やめっ、ほんと、やめろォッ!!』
◇◆◇
CASE.2
『いたい……』
『デース……』
『ったく』
『大丈夫、切ちゃん?』
『響は調子に乗りすぎ。反省しなさい』
『だって、クリスちゃんの生着替えだよ!?我慢出来るわけないよ!』
『声デケーんだよこのバカ!!』
『いたぁい!?』
『クリスもほどほどにね』
『……あ、そういえば。クリス先輩、確か髪留めも新しいの欲しいって前に』
『あ?あー、そういやそうだったな』
『じゃあ今度はそれ買いに』
『お前そろそろ黙れ、いいな?』
『アッハイ』
『ゴーゴーデース!』
『これなんてどう、クリス?』
『これかぁ?いや、あたしには似合わないだろ』
『そう?クリスの髪と合いそうだけど』
『いや、そう言われてもよぉ』
『クリス先輩、ならこっちはどうですか?』
『ん?おぉ、シンプルで良いな』
『少し違うけど、わたし達髪型ツインテールだから、おそろいのです』
『お、おう……』
『フフッ……可愛い後輩だね、クリス?』
『うっ、うるせぇっ』
『私も選びたかったナー』
『ぐぬぬ……わたしも調とお揃いしたいデス……』
『……あれ。気にしてなかったけど、切歌ちゃんと調ちゃん、お小遣いとか平気なの?』
『へ?あ、はい。今日のこと話したら調と一緒の分、ヒロさんがくれたデス』
『ヒロさんが?』
『……マリアもセレナも、その辺キビシーデスから』
『あー……ていうかヒロさん、切歌ちゃんと調ちゃんに対しては近所のお兄さんというか親戚のおじさんみたいだよね』
おじさん言わないで!自分でもちょっと思ってんだから!
『……』
『クリスちゃん嬉しそう』
『そうだね』
『調ッ、調ッ。今度はわたし達でお揃いの何か買いに行くデスよっ』
『うん。約束ね、切ちゃん』
あー尊し……
◇◆◇
CASE.3
『ごはんアンドごはーん!』
『ここ、お前が調べたんだっけか?』
『うん。人数多いから、こういうビュッフェ形式も良いかなって』
『ふぉぉぉ……調、すごいデスっ』
『うん、美味しそうな料理がたくさん……マリアとセレナに持って帰れるかな?』
『座ろ座ろ!私もうお腹大宇宙だよー』
『意味わかんねぇ』
……腹減ってきたな。昨日の残り物でいいかネ
『はい、切ちゃん。あーん』
『あーん……んふー♪おいひぃデース……調にもお返しデス。あーん』
『あーん……ん、おいしいね切ちゃん』
『デスデス♪』
『ほら、響。がっつかなくてもご飯は逃げないから』
『むぐっ……ん、ぐ。ありがとー未来』
『もう、本当に響は……』
『だからお前ら人前でそういうことはだなぁ……』
『あっ、クリスちゃんも食べて食べて。はいっ、あーん』
『はっ!?いや、お前……!』
『あーん』
『だからおま』
『あーん』
『ちょ』
『あーん』
『…………アーン』
『どおどお?おいしい?』
『……ゴクッ。ああ、うめぇな』
『でしょー?よかったよかっ……あれ、クリスちゃん?何でそんなに大きな熱々のソーセージを私に向かって構えてるの?』
『んー?自分がしてもらったら相手にもオカエシしないと失礼なんだろ?』
『あ、あははは。やだなークリスちゃん。それも時と場合によりけりっていうか』
『誰かが言ってたろ?―――やられたらやり返せ、倍返しだってなぁ』
『ヒェッ……』
『はい、あーん!』
『むぐぁっふぅ!?』
『―――持ってけダブルだ!』
『アツゥイ!』
『ちょっと二人とも、もう少し静かに……!』
いや、一人飯って辛いネ!でもこの音声だけでご飯三杯いける!!
『切ちゃん、あーん』
『調も、あーんデス』
◇◆◇
CASE.4
『大丈夫、響?』
『お腹いっぱいだけどくちびるヒリヒリする……』
『自業自得だこのバカ』
『たくさんお持ち帰りに出来てよかったデース』
『マリアとセレナ、喜んでくれるかな?』
『……大丈夫だよ、きっと。さーてクリスちゃん、次はどこ行くー?』
『あ?……あたしは別にどこ行きたいとかはねーけど』
『あっ、だったらわたし、げーむせんたーに行きたいデス!』
『おー良いねー!』
『でも切ちゃん、午前中の買い物とお昼ご飯でわたし達のお小遣いもうあんまり……』
『あうっ……そういえばそうだったデス……』
あんまりあげられなくてごめんね!金の無いお兄ちゃんでほんとごめんね!!
でも君達には君達の将来のために自分達のお金は貯めといてほしいからさ!
『……別に、お前らの分くらいあたしが出すよ』
『えっ……』
『いいんデスか?』
『だーもぅ良いっつってんだろ!行くなら早く行くぞ!』
『はいデス!』
『ありがとうございます……!』
『うんうん。良い先輩だねぇクリスちゃんは』
『私と響も二人にとっては先輩でしょ?』
『あははは……そだねぇ』
『……あ、でも』
『?どうしたの、切ちゃん』
『このお土産、どこかに置いてこないと危なくないデスか?』
『あっ、そうだね。保冷剤貰ってるけど、夏だから溶けたら痛んじゃうかも……』
『んー……あっ、そうだ。確かヒロさんのアパート、ここから近かったはずだよ!』
えっ
ってもう電話来てる!?しかも未来さんだし!
『なんだ、じゃああいつに言ってお前らの家に届けさせたらいいんじゃねえか?』
『で、でもお小遣いもらってるのにそこまでさせたら流石に悪いデス!』
『そうです。早めに帰るか、どこかで保冷剤足すかして……』
未来さん、俺は一向に構わんって伝えてください
『ヒロさん、OKだって』
『『早いッ!?』』
◇◆◇
結局、届けに行ったらマリアさんもセレナもいなかったので、メールだけ送っておいて帰宅。
バイクも車も無いから
俺が行ったり来たりしてる間にみんなはゲーセンではしゃぎにはしゃいだらしく、家に戻って確認した時には既に解散になっていた(響ちゃんもマイクの電源落としてた)
「……ま。今日1日色々いいの聴けたから良しとするかネ」
「何が聴けたの?」
「ん?ああ、クリスちゃん中心にリディアン組の今日1日の行動。買い物したり飯食ったりさ」
「へぇ。その大きな機械で聞き取ってたんだ」
「ああ。中々音質も悪く、な……い……」
「へーそうなんだ。……でもさぁ」
「それって盗聴だよね?」
「……セレナさん、いつから?」
「ほんのちょっと前」
「……来るなら連絡」
「したよ?メールで」
「……来てましたね。気付かんかった」
「ヒロ」
「はい」
「正座」
「いや、ちゃうねん。これはほら」
「正座」
「や、だからネ」
「正座」
「…………はい」
セレナはマリアさん以上に怒ることは少ない
だからこそ、下手したらS.O.N.G.で一番怒らせたらいけない奴だってことを、何故に俺は忘れていたのか
結局かなり遅い時間になるまで説教され、足の感覚戻らないままきりしらから渡されたお土産持ってセレナを家まで送ることになった
後日
「テメェこないだのあたしらの行動盗み聞きしてたとはどういうことだァ!!」
「セレナァ! テメ言うなっつったろォッ!!」
「いや私じゃないよ!?」
「ごめんなさいヒロさぁん!」
「響ちゃあん!?」
「お縄に頂戴されやがれゴルァッ!!」
「ごめんなさぁい!!」
抜剣イチイバルに追いかけ回されることになった
盗撮盗聴、ダメ絶対
◇◆◇
……こんな、どうしようもないヘンタイみたいなヤローだけど
口の悪いあたしが、色んな奴らと話せるようになったのも、あいつも一役買ってて
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!もうしません本当に!!」
「謝って済む問題じゃねえだろうがよォッ!」
こんなことしても、お前は明日にはケロッと笑って忘れてる
お前を―――ヒロをどう思ってるか、なんて決まってる
「絶対許さねぇぞ―――いくら"友達"でもなぁッ!!」
感謝してもしたりない……あたしの、たった一人の"男友達"
クリスちゃんはマジでヒロとは友達感覚デス
ただ初めてにして唯一の存在にもツンが先に来るせいでイマイチ接し方がわかってないだけなのデス
え、クリスちゃんは友達に対しても面と向かって「友達」とはめったに言わない?
そこ本気で悩んだんですよネ……
殺しても死なないフィーネと最低の英雄として最高の幕引きを果たしたドクターはともかく了子さんマムキャロルの三人を生存させたくて
そうなるとマジでヒロに宝物庫の鍵を開けてもらうしか思い付かない
……ギャグ時空だから「そのときふしぎなことがおこった」で片付ける?無理やろなぁ