百合が見たいだけです(切実)   作:オパール

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拙者ギャグはギャグで通したいのに気が付いたらシリアスにしてしまう侍で候


申し訳ないがSAKIMORIを蒼のセイバー呼ばわりはNG


双翼って単語にときめきクライシス

天羽奏は復讐者である

理不尽な災害に家族を奪われ、その忘れ形見となった自分と遺されたとある欠片を捧げ、振るい、その運命という名の地獄へとその身を投じることになった

 

だが彼女は、そうするにはあまりにも力に欠けていた

神代の撃槍を満足に扱えず、繋がるだけで血反吐を吐き、命を削り、人としての未来さえ擲ってなお、神槍は彼女に振り向きもしなかった

 

だが、彼女は己の無力さえ糧にした

自分から全てを奪ったモノを根絶やしにするまで、弱音など吐いている暇はなく、やがて出逢った、自身の片翼足り得る少女と共に、歌い奏で、戦場を駆け続けた

 

―――やがて、命さえ含めた全てを燃やし尽くした歌を以て、天羽奏の命は塵と消えた

 

 

 

それでも、忌まわしいモノ共は尽きることなく、世界と人々から命と幸福を奪い続けた

 

彼女は初めて呪いを懐いた

自分の成してきたこと全てが、無駄で無意味で無価値だと突き付けられたように感じて、天羽奏は運命を呪い、憎んだ

 

その想念はやがて世界に拾われ、彼女は―――かつてよりも更に強い、大切な記憶すら磨耗するほどの復讐心を獲得した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風鳴翼はSAKIMORIである

彼女曰く、この身は剣にして人々を守護せし防人であるが、第三者から見ればTSURUGIでSAKIMORIな蒼のセイバーてなもんである

 

TSURUGIを振るい、生命を守護(まも)り、同時に歌女として才を示すその姿は、あらゆる人の希望である

 

いつしかSAKIMORIとしての彼女の存在は後世において英雄視され、いついかなる時代においても、諸人の命を守護る存在となる

 

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント・アヴェンジャー」

「同じく、セイバー」

 

「クソッタレな運命とやらは、あたしが全部沈めてやる」

「人の営みを守護する剣として、この場へと馳せ参じた」

 

「さぁ、行こうぜ。一匹残さず鏖殺(ミナゴロシ)だ」

「剣を捧げ、あらゆる物からの護りとなろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――という夢を見たんだ!」

「試合の最中に何をお前は云うか!(蒼ノ一閃)」

「ちょっと俺生身ッ!?」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「翼さん、防人とか何とか言いますけど生身の俺に技ぶっぱなすとかありなんです?」

「私の剣を余さず捌き防いだ男子(おのこ)の云うことではないな」

「鎖ありきですけどネ……」

 

ノイズの位相差障壁無効にする上に装者の皆様のアームドギアでの攻撃すら防ぐ天の鎖の頑丈さに改めて戦慄、まぁどんな大英雄も封殺する上にこの世界じゃ便宜上、完全聖遺物扱いにされてるしネ。

 

今回みたいに翼さんの鍛練にちょいちょい付き合われる俺。曰く、「歌女として動くことは平和なことの証左ではあるが、有事の際の防人としての務めへの備えを怠ることは出来ない」と早口で告げられたのが確かフロンティア事変終わったすぐ後の辺り。

生身の俺よりギア使える響ちゃんやクリスちゃんでもいいのでは、という俺の言葉は、「まだ学生の立花や雪音、Linkerありきでなければ戦えない奏やマリア達に無理は強いられない。それにすぐに試合に赴ける」とのことで封殺。後に続いた「それに暇だろう?」という本人にしてみれば何気ない一言だったろうが、割と俺のハートはひび割れた。

ちなみに頻度は少ないが、ここにセレナも加わることもままあったりする。

 

「……しかし、相原も腕を上げているな」

「そうですか?」

「ああ。まともに扱うのはあの鎖くらいだというのに、その用途を自分で幅広げている」

「決定打は皆さんに任せっきりですけどネ」

「そうでもないさ。立花も言っていた。お前がいるといつもより拳のノリが鋭いと」

「本人の気分の問題だと思うんですがそれは」

「……それに……わたしも、その」

「?」

 

 

 

「お疲れさん、翼!」

 

 

 

「キャッ……か、奏?」

「おっふぅ」

 

不意討ち

ただし俺にではなく(ある意味俺にも)翼さんに。

 

突然翼さんの背後から肩を組んだのは、ツヴァイウィングの片翼、天羽奏。翼さんとは大親友。

 

翼さんにじゃれつく奏さんという、正直この光景を拝めるだけで何もかもが最果てに至る(ロンゴミられる)レベルで眼福である。

 

「いつも良い光景(モノ)ありがとうございます!」

「ん?あぁ、別にいいのにさ。しかし、こんなのでありがたがるとか、あたしはヒロが未だにわからないねぇ」

「ちょ、ちょっと奏、私鍛練の後で汗とか……」

「今さら気にするなってー。あたしと翼の仲だろー?」

「ひゃっ、あ、ダメ、相原が見てる……!」

「あー困ります奏さん!その絡み方は色々と困ります奏さん!奏さん!あー!困ります!あー!」

 

……うん。やっぱり、あの時の行動とその後の苦労も無駄にはならなかったんだなって

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

天羽奏は、本当ならとあるライブの日に命を落としていて

その運命を覆したのが、他でもない俺なわけで

 

『得意先からチケット貰ったけど母は興味無いから嫁さん候補でも誘って行ってこい(意訳)』

 

と、母親から渡されたツヴァイウィングのライブチケット。嫁さん候補も何も当時15の俺にそんなこと考える必要無かったんですがそれは。

しかし受け取ってしまった以上は行くしかなく、かと言っても誘うような相手もいなかった。ボッチジャナイヨー

 

そして迎えてしまったライブ当日。

 

―――俺はその日、その出来事が起こるまで完全に、その日が原作において、天羽奏の命日となっていたことを忘れていた

 

その結果

 

 

 

 

 

 

 

『……冷静に考えてみたらさ』

 

辺りで巻き起こる悲鳴と断末魔。

ノイズが人を巻き込んで炭になっていく様。

そして、嵐と呼べる勢いでノイズを狩るツヴァイウィングの姿

 

『もっとやべぇのと遭遇したけど、ノイズとかち合うの初めてじゃねぇの俺?』

 

前世ではマスコットだの癒し担当だのと色々と言ってたけど、いざ目の前にするとそれが全くの見当違いだと思い知る。目にするだけでこれは常人の手にはおえない存在だって、素人目にもわかる。

 

『―――はっ』

 

特攻仕掛けて諸共に炭化する、という前知識があったおかげで、初撃は何とか避けられた。けど、その時の俺には持っていた天の鎖がノイズに通用すると知らなくて、だから出来ることなんて何も―――

 

『何してる! 速く逃げろ!』

 

斬ッ、とノイズの一匹が灰になる

その手のガングニールを振り抜いた奏さんに襟を掴まれて放り出されて

 

呆けている間にも、他の観客達は次から次へとノイズに食われて灰になって、翼さんと奏さんも物量にそちらへ意識を割くことも出来ないで

その内、また俺にノイズが向かってきていた

 

『ッ、まずい、逃げろォッ!!』

 

―――気付けば、俺は

 

『―――あ゛ぁッッッ!!!』

 

翳した右手、防げる確証も無かったのに、俺の手は鎖を呼び出して、向かってきていたノイズを弾き飛ばしていた

 

『……効いた』

『なっ、んだよあれは……!?』

『ノイズを!?』

 

 

 

 

 

―――ノイズを弾いただとォッ!?

 

 

 

 

 

その瞬間司令の声が聞こえた気がしたけど気のせいだネ!

 

『……ははっ』

 

正直、その一回でだいたい察して、調子に乗ったんだと思う

 

『―――来いや雑音ッッッ!!!』

 

飛び出す場所は際限無く、出せる数も十本以上は当たり前で、縛り上げて投げ飛ばし、鞭打ちの要領で叩き落とす

まぁ、干渉出来るだけで、倒していたのはツヴァイウィングの二人だった

 

『何なの、あの人……!』

『話は後で……っ、まずい!?』

『クッ、はは……なんだ、やれるじゃんよォ俺!』

 

まぁ、だからというか、知ってたからと言うか

 

俺を狙いから外したノイズが響ちゃんに向かっていって

奏さんがそれを庇って、ガングニールが砕けて

 

―――その欠片が原作通り、響ちゃんに食い込んで

 

『―――おい!しっかりしろ!!』

 

『目を開けてくれ!――生きるのを諦めるなッ!!』

 

―――俺が原作における展開を思い出したのは、その瞬間だった

 

『……待て、なんで忘れてたんだ俺』

 

数の減る気配の無いノイズを払いながら、まっすぐに奏さんの所に走る

奏さんは槍を掲げて、うっすらと笑みを浮かべて

 

『……一度、何もかも忘れて、思いっきり歌いたかったんだよな』

 

絶唱

装者の奥の手中の奥の手、ただし使えば、奏さんは死ぬことを、俺はよく知っていて

 

―――今にして思えば、俺はこの時、奏さんの命よりもツヴァイウィング、というより原作ではついぞまともに拝めなかった翼さんと奏さんの未だ見ぬ絡みが見れなくなることへの危惧をこそ案じていたのではないか、と思う

 

だから

 

『はっ、うぐっ!?』

『奏!?』

『……すんません、ちょーっとそれやめてください』

 

奏さんの身体と口を鎖で封じて、その前に一歩

 

『ぐぅ、うううう!!』

『……死んでほしくないんですよネ。何でと訊かれても俺のために、としか言えませんケド』

 

右手を前に

イメージするのは彼の王の光輝

 

地面が光って、豪奢で華美で荘厳な――原初の地獄を誘うモノが顕れる

 

『―――起きろ』

 

時が止まった気さえして、俺はその空気を鼻で笑いながら手にしたそれを天に向ける

 

銘は無い、だがあえて呼ぶとするなら、その名は1つ

 

―――乖離剣エア

 

『世界を割くは、彼の王が乖離剣』

 

呼び出せる鎖を全て使って、あちこちに散ったノイズを正面に纏めて固める

会場の外に出ようとしていた奴らも、翼さんと対峙していたのも、一つの例外も無しに縛り上げる

 

エアが吼える

唸りを上げて深紅の波が渦を為して―――俺の身体から、気力や体力、生命そのものと言ってもいいナニカが吸われていく

 

『お前らに恨みなんて無いし、ここを片付けてもまたいつか現れるのも知ってるよ。けど……天羽奏(この人)に死なれちゃ俺が困るんだよネ』

 

腕を引く

臨界を越えた力が弾けるように暴れだすのを、必死に堪えて耐え抜く

 

『それともう一つ』

 

 

 

 

 

 

 

『天羽奏のCPには無限の可能性があんだよエヌマエリシュゥゥゥゥゥゥ!!!』

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

まぁあれで死ねたら感動的だったんだが

 

それをきっかけにして二課に色々バレてあれこれ訊かれたり暗に『協力しなかったら拘束』とか言われたりして本格的に原作に絡むことになったりかなつばにハッスルすることになったりフィーネ入り櫻井女史にポロッと色々溢しちゃったりとかしたりクリスちゃんとボーイミーツガールめいたり(大嘘)

 

「奏さん近いです」

「そうか?」

「……ムー」

「翼さんそのジェラシーめいた視線は奏さんに向いてると信じてます」

「ジェラ……!?」

 

あの一件直後(ひびみくと出逢う前後辺り)は助けられた程度でデレを見せてくれるほどちょろくはなかった奏さんと、しばらく戦線に出られなかった奏さんの代役の俺を力不足と断じて俺のハートを折りに来てた(無自覚)翼さん。

ここまでパーソナルスペース近くなるまでにも色々あったよネ……

 

「なーにボンヤリしてんだ、よっ」

「当たってます!」

「か、奏、流石にそれは……!」

「良いだろ、誰が見てるわけもなし、ほら翼も」

「…………」

「翼さ」

「風鳴翼、参るッッッ!」

「何故そこで便乗ッ!?」




※この作品では基本的に防人として翼さんはないものと思ってください
(あと作者の技量で防人語は表現でき)ないデス

ちなみにここの贋作乖離剣によるエヌマはカタカナ表記ですが本家本元のあっちもやろうと思えば可能、ただし世界全部を巻き込んだ壮大な無理心中になります

オチがない?だいたいが見切り発車ですまない…

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