百合が見たいだけです(切実)   作:オパール

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※注意喚起
・カリオストロの口調が迷子
・百合要素の行方も迷子
・マリアさん、壊れる
・割り込んでくる淫夢語

以上を許せるという方はこのままお進みください


今も昔も男は弱いよ

「……プレラーティ」

「? どうしたワケダ、サンジェルマン」

「カリオストロの姿が見えないけれど、どこへ行ったかわかる?」

「いや、私も何も聞いては……あぁ」

「心当たりが?」

「恐らくだが、例の男……相原ヒロに会いに行ったかもしれないワケダ」

「なっ……また勝手に一人で……行くなら行くとせめて一言……!」

「……まぁネコみたいに気ままなあいつなワケダ」

「シンフォギアと遭遇して、もしも万が一があったら……」

「そこまで心配することもないワケダ」

「え……?」

 

「―――奴は、お前を置いてくたばるタマでもない」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

パヴァリア光明結社

遥か昔から歴史の闇に潜み、世界を股に駆ける一人の男が立ち上げた影の軍勢。

錬金術を用いて完璧な肉体を手にした者達で構成されるその組織は、決して一枚岩ではなく、あくまで旗頭がいるというだけで、思惑はそれぞれ別に持ち合わせていたりする。

統制局長、アダム・ヴァイスハウプトに従う女性、サンジェルマンの同士であるカリオストロとプレラーティも、アダムや結社ではなくサンジェルマン個人に忠誠を誓っていることからしても、それは明らか。

 

まぁ何でこんなこと言っているかというと

 

 

 

「もー、ダーリン遅ーい」

「」

 

街中でカリオストロに遭遇しちゃったからなんだよネ……

 

「……誰がダーリンだコラ」

「えー?」

 

いつもの如く街行くチンピラ共が街行く女性に絡んでる場面に遭遇、特に急ぎの用とかも無いけどどうしようかと悩んでいた時、隙間からなるべく見たくない顔が見えて、次の瞬間にはダーリン呼ばわりされていた。

 

「ちぇっ、あいつのツレかよ」

「え、あの野郎有名なの?」

「昔大勢相手に大立ち回りしたらしいぜ。知り合いから聞いた話だけど、声かける女みんなあいつのだって」

「うげっ、顔普通なくせしてとんだタラシだな」

「誤解したまま行こうとしないで! 俺フリーだし、こいつに関してはむしろ平時は出来る限り関わりたくないんだよ!」

 

俺の叫びも空しくそそくさと去っていった野郎数人。こんな時だけ諦めはえーなコンチクショウ

 

「助かったわぁ。あいつら贄にしちゃっても良かったケド、こんな所でやってシンフォギアに見つかっても面倒だし」

「助けてねぇし、俺からみんなに伝わる可能性もゼロじゃねぇだろ。って、おい何さらっと人のチャリのケツに座ってんだよ!」

「良いじゃない、こういうの経験無いからちょっと乗せて?」

「お断りださっさと降りろ!」

「もう、強情なんだから……ねぇ」

「ヒエッ」

 

ぬるりと蛇が這うかのように身体に腕を回される。すごい、鳥肌がすごい!

胸の感触とか吹き飛ぶレベルで鳥肌!!

 

「何も戦うとか取って食べちゃうなんてしないから……ちょっとだけタンデム、どう?」

「やめろやめろ手を這わすな下半身に手ぇ回すなァ!」

「最後に良い夢見させて……ア・ゲ・ル・か・ら」

「い・ら・ねー!!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「俺は無力だ……」

「んー♪ 良い風」

 

人目につく街中を避けてママチャリを漕ぐ。

S.O.N.G.に通報しようとしたら携帯取り上げられてツーショット強制的に撮られて、その携帯は今カリオストロの胸の中。

この野郎、童貞の心理を理解しやがって……

 

「……おい。もう気ぃ済んだだろうが、いい加減降りて帰れ。そもそも重い」

「ちょっと、レディに重いとか失礼でしょ?」

「中身はゴリゴリのクセしてよく言うぜ。お前がレディならS.O.N.G.の末っ子は今ごろ社交界の華だよ」

「取ーりー消ーしーなーさーいーよー!!」

「バカバカバカ暴れんな! 不運(ハードラック)(ダンス)っちまうだろうが!!」

 

俺の肩を掴んで揺さぶってくるカリオストロ。崩れそうになる車体を何とか留めつつ大人しくなるのを待つ。

 

「もぅ……」

「ため息吐きたいのはこっちだっての……んで?」

「なに?」

「今日は何であんな堂々と街にいたんだよ? まさか俺を探してたなんて言わねぇよな」

「あら、正解」

「……なんでさ」

 

続けて出る俺のため息に、カリオストロがクスクスと笑う。そのまま俺にしなだれかかりながら、顎に手を這わせてきた。

……クッソ、手から何まで柔らけぇ

 

「……おい、やめろって何回言わせんだよ」

「……例の件、考えてくれた?」

 

例の件、前に拉致られた時に言われた、サンジェルマンさんに協力しろ、ということだろう。

 

「前にも言ったろうが。答えはNoだ」

「ここだけの話、あーしとプレラーティはアダムに裏があると思ってる」

「おい、なに勝手に語りだしてんだよ」

「いいから聞いて。サンジェルマンだって、きっと心の底ではアダムを疑ってる。でも、あーしとプレラーティが協力しても、きっとアダムの奴には届かない」

 

初めて聞く、真面目な雰囲気のカリオストロに思わず口が閉じる。原作の知識があるとはいえ、気付けば次の言葉を待っていた。

カリオストロやプレラーティがアダムに疑念を抱くことは、この時点ではいささか早い。

 

「……あーし達は、サンジェルマンのためなら命だって惜しくない。あーし達を導いて、生まれ変わらせてくれた恩人。……アダムや結社の思惑が何であれ、サンジェルマンを害するつもりなら、あーしもプレラーティも全力でサンジェルマンを守る」

「……」

「けど……悔しいことに、あーし達だけじゃ不安も残るのよ」

「……だから、俺ってか」

「そ。神を縛る鎖と、世界ごと抉る剣。アダムがどんなカラクリで来ようと、あなたの聖遺物があれば……サンジェルマンを守れる」

「……」

「サンジェルマンの理想、サンジェルマンの夢。あーしとプレラーティは、そのために全てを捧げる。でもサンジェルマンが死んじゃえば、それも全て無駄になる。だから……もしあーし達がいなくなった後、あなたにサンジェルマンを助けてほしい。それでなくとも……」

 

「……俺に、アダムを殺れってか」

 

カリオストロが一つ頷く。

サンジェルマンさん一人のために、存在全てで仕えるカリオストロとプレラーティ。

……ああ、やっぱり。この三人は一緒にいるべきだ

 

「……サンジェルマンさんの目的に協力しろ、って話と変わってねぇか?」

「それに関しては諦めたわ。少なくともあーしは、サンジェルマンがアダムに利用されるだけになるのを防ぎたい」

「……ふーん」

「……お願い。サンジェルマンを守って」

 

やや強めの風の中でも、俺の耳にハッキリと届いたカリオストロの声。

この後にどう転ぶかは、正直わからない。だから

 

「……それ、俺じゃなくてもいいだろ別に」

「えっ……」

 

俺が思う、俺の考えだけを言わせてもらう

 

「サンジェルマンさんを守りたいなら、お前らで守れよ」

「……あーしの話聞いてた?」

「お前らが死んだら、俺がサンジェルマンさんを守るかアダムを殺るってことだろ? だったらお前とプレラーティが死ななきゃいいだけの話じゃねぇか」

「……」

「ああ、確かに乖離剣ならあんな全裸、一瞬で塵に出来らぁ。けど仮に失敗した場合、塵にされるのはこっちだ。そんな大博打、俺はごめんだね」

 

セレナや奏さんを助けた時、ネフィリムやノイズと違って、相手は意思も知性も動きも持ち合わせた非人間、それも超一流の錬金術師。

俺は英雄王とは違う。そんな大きな存在じゃあ断じてない。博打を踏むつもりなんか無い、決められると確実な確信が持てない限りは、そんな相手に使えやしない。

……一度死んだ身、何ももう一度死ぬことに恐怖なんて無いけど、それはそれだ。だからって無駄死にはしたくない。

 

「それにまだ見てないものだって山ほどあるしな」

「見てないもの?」

「ああ」

 

そう。これこそが一番大事なこと。俺という人間の根っこにある……一番デカい『欲求』だ

 

「まだまだ見たいんだよ―――女性同士の間で咲く百合の花ってやつを、さ」

 

俺、百合男子なもんで

 

「―――」

 

後ろでカリオストロが息を呑む。まさか真面目な頼みにこんなことを返されるとは思ってなかったんだろう。

 

「……プッ」

「ん?」

「あはっ、ははははは! な、なぁにそれぇ!?」

「なんだよ、欲求大事だろ?」

「け、結局自分の好きなもの!? それに女性同士って……あははははは!」

「おーい流石に笑いすぎー」

 

絶えることのないカリオストロの大笑い。そこまでツボに入ったのだろうか。

 

「……っはぁー、笑ったわぁ」

「さいで」

「……でも、そうね。一理あるわ。サンジェルマンに生きててほしいなら、あーし達がまず生きないと」

「そゆこと。まぁそもそも面倒だしネ!」

「ちょっと本音ぇ」

 

また笑いだすカリオストロ。俺としては、サンジェルマンさん、カリオストロ、プレラーティの三人でそういう風に笑ってほしいもんなんだけどネ。

 

……さーて、そろそろツッコませてもらいますか

 

「ところでよぉ、カリオストロ」

「なぁに?」

 

 

 

 

 

 

 

「お前いつまで俺の股間まさぐってる気?」

 

 

 

 

 

 

 

こいつ、真面目な話してる最中ずっと俺の股間とその周りまさぐってやがった。興奮するどころか背筋寒すぎて逆に萎えてるわ。

 

「……………」

「うおぉい無言で続けんな!」

「え、だってこんな美人に大事なとこ触られてるのよ?」

「やかましいわ自分で言うな!」

「……………」

「バカおいズボンの中に手ぇ突っ込むなやめろォ!」

「本音は?」

「ナイスゥ、なんて言うわけねぇだろうがやらせんな!!」

「もうっ、ホントに強情ね! あの夜のこと思い出さない?」

「寒気しか出ねぇわ!」

 

ひたすら局部に触ろうとしてくるカリオストロをどうにか防ごうとするも、こっちはママチャリを漕いでる最中。いい加減に停めてでもカリオストロを振り払おうとする。

 

「あ、ねぇねぇ」

「今度はなんだよ……」

「さっきからあーし達の後ろに着いて来てる、黒塗りの高級車。気付いてる?」

「やめろその疲れから追突しそうな言い方」

 

カリオストロの肩越しに、その車を見てみる。

 

「―――」

「キャアッ!? ちょっと、スピード出すならそうと……どうかした?」

 

(やばい……やばいやばいやばいやばい!!!)

 

その車は見覚えのあるどころか―――見覚えしかない(・・・・・・・)黒塗りの高級車だった

 

そう。世界に名高い三人の歌姫が乗る車。

今日は仕事のハズの三人。

 

翼さん。奏さん。マリアさん。

 

フロントガラスからちらりと見えた三人の眼と、運転する緒川=サンの、あまりにも対照的すぎる―――据わりきった眼と同情的な眼が、あまりにも

 

ていうか緒川=サン、同情する暇があるならその三人どうにかして御してください。

 

(申し訳ありません)

(このニンジャ直接脳内に……!?)

 

「あら。よく見たらシンフォギア装者じゃない。それも三人」

「なんでだ……こうならないために人目につく所は全部避けてたはずなのに!?」

「あっ」

「なんだ!?」

「そういえばさっきのツーショット……あなたの携帯からグループトークに『デートなう』のメッセージと一緒に送信してたんだった」

「お前なんてことしてくれてんのォ!!?」

 

怖い! ひたすらに怖い!

そしてこのパターン知ってる、これ俺一人だけ悪いって言われるパターン! ハハッ、俺詳しいんだこういうの!

 

「そんなわけで巻き添えで死にたくないなら降りろ!」

「えっ、なに? 狙われるのあーしじゃなくてあなた?」

「俺こういうの詳しいから知ってるんだ! だいたい男が悪くされるパターン!」

「……あなたも大変なのね。大丈夫? あの夜みたいにおっぱい揉む?」

「揉んだ覚えなんて無いしいらんわ! どこで覚えんだよそういうの!?」

 

そうこう言ってる間に背後で動きがあった気配。

見れば車の屋根が開いてオープンカーみたいになってた。

あれ、その車ってそういうタイプだっけ?

 

「「「―――」」」

 

響き渡る三人分の聖詠。一瞬で変身バンクを経由してギアを纏った姿になる。

三人それぞれ窓枠に足をかけて、変わらぬ眼付きと真顔でこっちを凝視していた。

 

「―――相原ァ!!!」

「はいィ!!」

「トーク読んだぞ! なんだその女は!!」

「いや、あのですね!」

「待って二人とも。よく見たら、前にヒロの携帯に届いた写真の女よ」

「てことは……」

「パヴァリア光明結社か!!」

 

カリオストロの素性に行き着いたらしく、臨戦態勢に入るお三方。

 

「こないだに続いて、またヒロを狙うとはな!」

「かつてマムやドクターに近づき、今度はヒロを……何が目的だ、パヴァリア光明結社!」

「相原、何故振りほどかない!?」

 

「もう、せっかくのタンデムだったのに」

「自業自得じゃねぇか不貞腐れんなや!!」

 

「緒川さん!」

「了解しました!」

 

やべぇ本格的に追っかけるスタイル!!

 

「この、ホントそろそろ……あれ」

 

そこでふと違和感に気付く。

カリオストロの手は俺の両肩。なのに……

 

なんで俺の背中にまで引っ張られるような感覚するの?

それとなんで俺の足はペダルから離れる気配がないの?

 

「……おいカリオストロ」

「なに?」

「お前俺になんかした?」

「………いいえ?」

「疑問系な上に変な間があったなぁ今! 答えろテメェ!!」

「別に変なことはしてないわよぉ」

 

ケラケラと笑いながら、俺の耳元で一言。

 

「―――あーし達の服とあなたの足を、錬金術でチョチョイ♪」

「」

 

………ああ。一つだけ、ハッキリとわかったことがある

 

 

 

「お前みたいなタイプ大っ嫌いッ!!!!」

 

 

 

こうなったらもう、行けるとこまで行くしかない。

 

「問題無い……俺の騎乗スキルはA+(自己暗示)、ママチャリであろうと乗りこなしてみせる!!」

「がんばれ♡がんばれ♡」

「テメェマジで今日の恨み忘れねぇからな!!」

 

仲間相手に全力決死のカーチェイスと洒落こんだらぁ!!

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

以下、ハイライト

 

『ヒロから離れろお前!』

『なぁに、まさかあなた達みんなこの子の女?』

『そうなれたらどれほど良いか!!』

『くっ……奏どころかマリアに迫るであろうあの……!』

『嫉妬なんて醜いわよ? 男の火遊びくらいドンと構えて笑って流すくらいの度量じゃなきゃ!』

『うるさい!』

 

『『『ヒロ(相原)の後ろなんてまだ乗ったこと無いのに!!』』』

『『嫉妬する所そこぉ!?』』

 

 

 

『残念だけど、この子とあーし達ってばあなた達より先に進んでるから!』

『なっ……!?』

『ヒロ、あなたまさか……!』

『いや童貞です! 清いままです! 最後の一線は全力で死守しましたからって言わせんな恥ずかしい!!』

『結構可愛い顔と声で哭くのよこの子!』

『やめっ、股間まさぐんなっつってんだろ!!』

『―――よくも』

『ま、マリア?』

 

『よくもヒロの貞節を穢してくれたなこの【検閲削除】!!!』

『ガリィちゃんが聞いたらバカ笑いしそうなこと言わないで歌姫様!!』

 

 

 

『ヒロに手を出しといてただで帰れると思うなよ!』

『その女のどこが佳いのだ相原!』

『見た目以外はワースト一位でもごめんなさい! 童貞の心と身体は素直なんです!!』

『大丈夫よヒロ! あなたに非は無いのは見ていればわかるから、だから止まって!』

『悪いなんて言わない、この子はあーしが貰い受ける!』

『『『させるかぁ!!!』』』

 

『つーかそろそろ脚が限界なんですけどォ!!』

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「たっだいまー♪」

「カリオストロ!!」

「うぇ、サンジェルマン……」

「シンフォギア共の懐に飛び込むのなら、何故私達に何も……」

「ゴメンゴメン。彼浚うだけならあーし一人だけでもって思ったんだけど」

「……収穫は無かったようね」

「……そうね。ごめんなさい」

「はぁ……無事だったなら何よりだ」

「……サンジェルマン」

「ん?」

「chu♡」

「なっ……!?」

「改めて誓うわ、サンジェルマン。あーしは何があっても、サンジェルマンに着いていく」

「……カリオストロ」

「ね?」

「……はぁ。何を今さら」

 

「ふむ……カリオストロめ、何やら一皮向けたワケダ。……相原ヒロ、か」

 

 

 

「……」

「……」ギュー

 

「……あの、司令」

「どうした調くん?」

「マリアや奏さん達、何でさっきから代わる代わるヒロさんの背中に抱きついてるんですか?」

「ああ、何でもマリアくんが言うには『穢された以上、私達で清める他に無い』とのことだが……」

「……あのトーク……何か関係あるのかな?」

 

「……マリア、時間」

「ええ」

「あの……いつになったら終わるんです?」

「無論、私達が納得するまでだ。では、参るっ」

「まだ私と響が残ってるからね、ヒロ」

「……はぁ」




やだ、この百合男子クサすぎ……

以前のパヴァリア組初登場回の一文

「サンジェルマンさんの華麗なインターセプトで事なきを得た」

ナニもされてないとは言ってない

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