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タイトル間違えてた、モアイ!
『オラオラオラ!行くぜ!』
「あいつ……すごいパワーだな」
「ああ、かつてあいつと戦っていた時はそのパワーに恐怖を感じていたものだが……今は頼もしいな」
「……お前、恐怖って感情があったんだな」
「そんなもの、人間なら誰だってあるだろう」
現在、アメリカのワシントンでは奇妙な光景が繰り広げられていた。
人間とディソナンスーー仮面ライダーとディソナンスの共闘。それも、共闘しているのはかつて宿敵として拳を交え、お互いの生命も賭けたことだってある、バラクと真司の両者だった。
「バラク、あまり突っ込みすぎるな!」
『はっ、怖気付いたか真司!』
「す、すげえ……」
「ぼさっとしてんな!俺達も続くぞ!」
「ディソナンスの野郎なんかに、全部任せられるか!」
バラクを加えたビート部隊の突破力は凄まじく、瞬く間にワシントンの奪還はなされた。ディソナンスの力を借りたとはいえ、これならばいけるかもしれないーーそう思う人々の裏で、ディソナンスの存在を快く思わないものもいた。
確かな不安も孕みつつ、真司達はニューヨークの空中要塞突入へ向けて、各地の解放を目指すのだった。
ワシントンーービート部隊拠点、ハートウェーブ研究所
「……それじゃあバラク、君の持つ情報を教えてもらってもいいかい?」
「ああ、いいぜ。俺も音成のヤツは気に食わないんでな」
バラクが真司を助けたその日、ビート部隊の拠点であるハートウェーブ研究所では、バラクに対しての詰問が行われていた。
真司は信用してもいいとは言っていたものの、それでもディソナンスを招き入れるというのは、不安要素の方が大きい。念のためにシキと真司を引き連れたうえで、ロイドは現在ビートの新装備を開発中の父ショットに代わり、この研究所の代表として、バラクと面する。目的は、バラクから天城音成についての情報を引き出すことである。
この時ロイドにとって予想外だったのは、バラクが持っている情報の大きさだった。裏切ってきたということは、組織での、音成からの扱いに不満があったということで、バラクの言動からもそれは見て取れた。
しかし、バラクは予想以上に多くの情報を持っていたのだ。
「それでは一つ目の質問なんだが……ニューヨークのあの空中要塞について、何か知っていることは?」
「逆に聞くが、お前らはどれぐらいアレについて知ってる?」
「……巨大な空中要塞だ」
「つまりなにも知らないってことか。まあいい、じゃあ教えてやる」
「あの空中要塞はな……いってみれば、そうだな。『思念発信装置』だ。色々防衛機構だとか、大量破壊兵器だとかもあるが、それらはあくまで余剰分のハートウェーブを利用した兵器に過ぎない。あの空中要塞はな、ハートウェーブを利用した巨大な電波塔みたいなもんなんだ」
バラクからもたらされた情報は、とんでもないものだった。
ニューヨークに浮かぶ空中要塞ーー真司達はあれを、単なる基地程度にしか考えてはいなかった。無理もないことである。なにせ、あの基地からはディソナンスが続々と出現しているが、逆に言えばそれ以外の動きはなかったのだから。
ハートウェーブを利用した、巨大な電波塔ーー真司とシキの二人にはピンとこなかったが、研究者であるロイドには、それがどれほど恐ろしいことかが直ぐに理解できた。
「ハートウェーブを利用………?まさか!」
「そう、そのまさかだ。あれはな、単純に言えば個人の意思を全世界に発信する装置みたいなもんだ。ハートウェーブの性質……それを利用して、全世界に音成の意思を送信するってわけだ」
「?……待て、それがどう脅威となる?」
ここで口を挟んだのは真司だ。彼には、音成の意思が全世界に送信されるという事実に、ロイドがなぜ戦慄しているかわからなかった。仕方のないことである。真司は技術者ではなく、音成本人の思想もわからないからだ。
「真司……ハートウェーブの性質ってなにか、わかるかい?」
「む?……人の想いの具現化と、その伝達…………まさか!?」
「そう、そのまさかだ。戦闘記録を見たが、お前ら、俺たちを倒してからすぐに、クロニクルとかいうディソナンスと戦ってるらしいが……あいつの能力と同じだ。あれは、巨大な洗脳装置みたいなもんだ。全世界を対象にした、な……」
バラクの言葉に、今度は真司とシキとが愕然となる。特に、真司が受けたショックは大きいものだった。
クロニクルーーかつて真司達ライダーが、未来から来た乙音、フューチャーソングとともに打倒した強敵。未来から来た、ディソナンス。
その脅威的な能力は現代で発揮されることはなかったが、フューチャーソングの情報が確かならば、クロニクルは東京タワーという巨大な電波塔を利用して、全世界の生命の殆どを洗脳してしまったという。
フューチャーソングの世界は、それから地獄と化してしまった。そのことを思い出した真司は思わず戦慄し、つい荒い口調でバラクに詰め寄ってしまう。
「おいバラク……確かなんだろうな、その情報」
「……ああ、確かだぜ。だが心配するな、完成まではだいぶ時間がーー「安心などしていられるか!」あ、おい!」
「……悪いが俺は訓練に向かう。後は任せた」
「お、おい真司!」
シキの言葉にも応えず、真司は詰問室を足早に出て行く。突然のことに驚くロイドとシキだったが、彼らにも真司の気持ちは痛いほどわかった。
そもそも、真司はこの世界で最もディソナンスとの交戦経験の多い人間である。そんな彼が、果たしていかに強力な戦力といっても、ディソナンスとの共闘を受け入れられるのか?
複雑な心理状態に、バラクからもたらされた、最悪の情報。真司が焦りや不安で思わず飛び出してしまうのも、仕方のないことだと思えた。
「…すまない、話を続けようか」
「ああ……………ふーん」
その後もバラクとの話し合いを続けるロイドとシキだったが、バラクは真司の去っていった方向をチラチラと見て、なにか考えているようだった。
「ふっ……!はっ……!」
「おうおう、随分と精が出てるじゃねえか」
「……バラクか」
研究所内、職員の健康管理のために設置されたトレーニングルーム。そこで一心不乱にサンドバッグを叩いていた真司に、バラクが話しかけてくる。それを一瞥して、またすぐにサンドバッグに向かう真司に、バラクはある提案を持ちかけた。
「戦わねえか?」
「……なに?」
「訓練だよ。ほら、こっちこい」
バラクについていって、実験用の部屋へと向かう真司。ここでは、新兵器の実験などのために床や壁が頑丈に設計されており、ライダーが暴れても大丈夫なようになっている。
そこで、真司は仮面ライダーファングに、バラクは怪人能へと変身し、ぶつかり合う。
『おらっ!どうした?あの時より弱くなったんじゃないか!?』
「それは、こっちの、セリフだ…!」
バラクと真司の拳が交差し、蹴りがぶつかり合い、その身体どうしがせめぎ合う。とても訓練とは思えないレベルの、一進一退の攻防。だが、徐々にその内容は、戦士どうしの戦いから、悪友どうしの喧嘩のやうなものに変わっていく。
「そもそも、お前達ディソナンスは……!なぜ生まれた!?」
『そんなこと、俺達の方が知りたいね!お前ら人間の発明と発見から生み出されて……!』
一発、真司の拳がバラクの顔面を捉えると、また一発、バラクが真司の顔面を殴り返す。お互いガードなど考えていない、激しい殴り合いだ。
「なぜ今になって共闘を考えた!」
『音成が気に食わなかったからだ!これ以上は言わねえ!』
「なんだと!?」
ファングの牙が、バラクの身体を抉る。だが、バラクは破壊のエネルギーをもって、真司の身体を吹き飛ばす。
「ハァ……お前達は、ハァ…何者だ!」
『そんなの……ハァ…俺達にも、わかんねえよ!』
お互いの胸を、渾身の一撃が叩く。両者ともその場に仰向けになって倒れ、真司は変身を解き、バラクは再び人間能に戻る。
訓練室の床に寝っ転がり、息を切らす両者。先に口を開いたのは、真司の方だった。
「ハァ………俺は、お前達が恐かったのかもしれないな」
「あん?……ハァ…フー、どういうことだよ、そりゃ」
「……なんというかな、お前達と戦ったのは一度や二度ではないし、お前達のようなディソナンスに、目の前で命を奪われたこともある……誰かを守れなかった事もある」
「…………そうか」
「ああ、だがーー」
「お前達と共に戦うのも……悪くはないと、そう思ったよ」
「……そうか」
その日、バラクはビート部隊の一員として歓迎された。
ディソナンスである彼を歓迎せぬ者もいたが、もっともディソナンスとの交戦経験のあるはずの真司が彼を受け入れたという事もあり、派閥が生まれるほどに大きな不満は出なかった。
チュドオオオオン……!
爆音が響く。
吹き上がる炎に、あがる黒煙。
熱気で大気が揺らめき、爆炎が次々とあがる。
「オラオラオラオラあっ!!」
「行くぞっ!!」
「気合い入れろテメェらっ!!」
その爆炎の中から飛び出してきたのは、バイクに乗ったビート部隊の面々であった。
機動力確保のため、サンフランシスコ内にあったバイクを掻き集め、ロイド達研究班が無茶な仕様にも耐え得るように改造しなおした、特性のバイク、『ビートライダー』。これに乗って、真司達はディソナンスの前線基地を襲撃した。
サンフランシスコは既に解放されたが、未だディソナンスの脅威は迫ってきている。だが、ディソナンス達といえど疲れないわけでも、不死身の怪物というわけでもなく、サンフランシスコを攻めるのに、いくつか前線基地があった。
バイクを用意したのは、それを迅速に叩くためだ。現状だと、軍によるゲリラ戦法もできないならば、ビート部隊が行って叩くしかない。 人間ならば乗りこなせないようなモンスター・マシンであっても、変身して身体性能が大きく上昇しているビート部隊ならば乗りこなせる。真司やシキ、そしてバラクはビートライダーを巧みに操り、ディソナンス達を蹴散らして行く。
「次はどの地点だ!?」
「ここから南西10キロのところに、ディソナンス達の溜まり場があるらしいです!」
「そうか……よしお前ら!何人かはここに残って警戒!後はこのままそこに向かうぞ!」
「「「おお!!」」」
ガオン、とバイクのエンジン音が鳴り響く。
その音に反応したディソナンス達が気づいた頃には、既にバイクの車輪か、強烈な一撃が迫っている。
『こ、こいつら……!ええい!奴らに連絡を入れろ!』
『ハハッ!新ディソナンスども!旧式の俺に蹂躙される気分はどうだハッハー!!』
「シキ……」
「ああ、次の基地は俺とお前、後はバラクだけで向かうか」
迅速に本日二つ目の基地を制圧した真司達だったが、ディソナンス達の不穏な動きを察知し、戦力の低下も考えて、次の基地の制圧には真司、バラク、シキのビート部隊上位3名で向かうことになった。
次の基地への道をビートライダーで走る3人。3人ともが周囲を警戒し、敵の襲撃に備えるーーが、敵は予想外のところから来た。
ドドドドドドドドドドドド……
「なんだ、この振動!」
『……っ!真司、シキ!!飛べ!』
「わかった!」
突如自分達を襲った振動にバランスを崩すも、バラクの声に従い、すかさずビートライダーのエンジンをフル回転させ、目の前の坂から跳躍する3人。そして、3人が跳躍した瞬間、ひときわ大きく地面が揺れたかと思うと、地中から、巨大なモンスター・マシンが現れる。
「なんだあれは!?」
『ライダーども!そして裏切り者の旧ディソナンス!このドリルマシンの餌食になりやがれ!』
「直球だな……!」
『ちっ…逃げるぞ!』
地中から飛び出してきたのは、この周辺のディソナンスの移動にも使われている巨大マシン、ドリルマシン。モグラのような体型のそれの先端は顔がペイントされているが、その鼻の部分が巨大なドリルとなっている。もしあれに捉えられれば、いかにこの3人でも一巻の終わりだろう。
『いけドリルマシン!奴等を粉々にしろ!』
「また厄介なのが……」
「基地まではもうすぐだ、流石に奴等も自分達の基地を壊してまで追ってはこないだろう!」
『オラアッ!こいつならどうだ!』
ドリルマシンに乗るディソナンスからの追撃をかわしつつ、真司達はビートライダーを巧みに操り次のディソナンス基地を目指す。
バラクの破壊のエネルギーによる足止めもあり、なんとか次のディソナンス基地が見えてくるところまでは到達した真司達。しかし、このままでは確実に突っ込むことになるのに、ドリルマシンはスピードを緩めない。
「おい真司!このまま突っ込む気か!?」
「少し無茶をするぞ!」
『over the song!!』
『rider maximum drive!!』
『うげっ!お前まさか!』
「そのまさかだ!!」
真司は必殺技を発動し、エネルギーをその身とバイクに纏った状態で、ディソナンスが群れている基地の方へと突っ込んでいく。それにシキもバラクも真司の後ろについて、猛スピードで破壊のエネルギーを撒き散らしながら突き進む。
『な、なんじゃあ!?』
『て、敵襲ーー!』
「このまま駆け抜けるぞ!」
「どうするつもりだよ!」
『……そういうことかっ!おいシキ、衝撃に備えておけ!』
真司の考えが解らず戸惑うシキとバラクだったが、バラクがすぐさまそれを察知する。そして、まさに悪魔のようなその発想に戦慄しながらも、シキに注意を促す。
「この基地を吹っ飛ばして、全部ぶっ壊すぞ!」
『rider devil fang!!!』
「真司!お前過激になったなあ!?」
『Over beat kick!!!』
『ハッ!それでこそ俺のライバルってもんよ!』
真司とシキが必殺技を発動し、バラクが破壊のエネルギーをその足に纏う。
三人はバイクを反転させると、基地の中のディソナンスを蹴散らしてまで、なおも追ってきていたドリルマシンに突っ込んでいく。
そして、ドリルマシンの下敷きになるというところでバイクから跳躍、ドリルマシンに向けて、必殺技を叩き込む!
「「『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』」」
三人の同時キックが、ドリルマシンを粉々に吹き飛ばす。そして、放出された破壊のオーラが、ディソナンスの基地を跡形もなく吹き飛ばす。
ドゴオオオオオオオン……という音とともに、上がる黒煙。そこから這い出てきたのは、なんとか生き残った真司達だった。
「ミッション……完了か」
「………やっぱお前、人としてなにか欠けてるわ」
『ハハハッ! 違いねえ!』
こうして、反撃の狼煙は上がった。アメリカでは真司達ビート部隊の動きを知った人々が次々に武器を手に取り、通常兵器が効かないまでも、様々な策を凝らして、ディソナンスの侵攻を防ごうと動き出していた。
そして、日本でも新たな動きがーー
「それじゃあ、準備はいい?」
「ああ、ボイスの残したレコードライバー……そして、Dレコードライバーのデータ」
「これを用いた新たなるレコードライバー、Sレコードライバーの開発の時だ……!」
次回、日本編。
たぶん最後の日常回?