仮面ライダーソング   作:天地優介

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最近キン肉マンにハマってしまったので、もしかしたら表現がそれっぽくなってるかもしれません。というかフライングレッグラリアートを出そうかと思いましたが、流石に自重しました。

やっぱゆでたまごは天才だわ。

今回のサブタイはえらく苦労しました。


song beat

「乙音君、ビートにはもう一つ武器がある。それがーー」

 

「この、エルブレイシューターですね……斧と銃が合体した武器って、だいぶヘンですねぇ」

 

「君らも人の事は言えんじゃろうて…」

 

ディソナンスの襲撃によって、元々廃墟と化していた街が、更に荒れ果てしまった。その街中に、乙音は足を踏み入れる。ーーと、その瞬間、乙音の足元に殺気が現れる。

 

「……っ!」

 

咄嗟にジャンプした乙音が先程まで立っていた場所を、モグラ型の、顔面がドリルになっているディソナンスが削り取る。回避行動が遅れていれば、あのドリルで乙音の身は削られていただろう。着地して戦闘態勢を整える乙音だったがーー

 

『おっと、こちらからもだ』

 

「おおっ!?」

 

背後から猛烈に回転しながら突っ込んできた亀のディソナンスの一撃を背中に受け、吹き飛ばされてしまう。残骸と化した家屋に頭から突っ込み、木片の中に埋もれる乙音を、ディソナンス達は更に追撃する。

 

『これで仕留めてやろう!』

 

『カメエーーッ!!』

 

しかし、黙ってやられる乙音ではなかった。ディスクセッターのレバーを握る事で、エネルギー弾が飛び出す。それを使って二体のディソナンスの突進のスピードを落とし、間一髪敵の攻撃をかわすことに成功する。

 

『チッ…避けたか。だがその手傷で、我らを倒せるかな?』

 

「…手傷?何勘違いしてるかわかんないけど、私は平気だよ?」

 

確かに背後からの奇襲を受けた筈の乙音だったが、本人の申告通り、その身体は未だダメージを負っていないように見えた。

 

『何…?』

 

「…さて、今度は、こっちの番かな?」

 

『グググ…あまり調子にのるなよ』

 

『そうだ…我ら無敵の盾と矛のコンビ、その連携を受けるがいい!』

 

右手にエルブレイシューターを持ち、左手のディスクセッターの銃口を二体のディソナンスに向ける乙音。乙音のアクションに対して、二体のディソナンスは再びの攻撃で応える。モグラ型は顔のドリルを回転させながら、その跳躍力を生かして地中から空中から変幻自在に乙音を攻める。モグラ型のディソナンスに対処しようと乙音が動けば、その隙をすかさず亀型のディソナンスが突いてくる。かといって亀の方に対応すれば、飛んでくるのはモグラによる強烈な一撃だ。

相手を休ませず、自分達はフォローし合う二体のディソナンス。並の戦士であれば、ひとたまりもなくやられてしまうであろうその連携を前にしても、しかし木村乙音は揺るがなかった。

 

「よっと…」

 

『な、なにー!こいつっ、俺の背中に!』

 

『の、乗りやがったーー!』

 

猛烈な回転を続ける亀型の甲羅の上に飛び乗った乙音は、振り落とそうとする亀型にも怯まず、ディスクセッターによる銃撃やエルブレイシューターによる攻撃をその甲羅に加えていく。亀型の甲羅は強靭なものだったが、自身の背に乗られたというショックもあり、『振り落としてくれーーっ!』と叫び、パニックになる亀型。モグラ型は亀を助けようと乙音に向かって突撃するが、乙音を振り落とそうと飛び回る亀型のせいでうまく捉えられない。

 

『ぐっ…一瞬だけでも止まれ!』

 

『ウウウウ…ハッ!わかった!』

 

モグラ型の突撃に合わせて、空中で静止する亀型。モグラ型のドリルがこのまま乙音の体を貫くかと思われた、その時ーー

 

『死ねええええええええっ!!』

 

「さて、死ぬのは…どっちかな?」

 

亀型が静止し、モグラ型のドリルが迫ってきた瞬間、乙音はそれを待っていたと言わんばかりに素早く動き、亀型の背から飛び降りると、亀の腹を軽く蹴って、モグラ型の方へと打ち出す。

 

『ゲゲエエエエエッ!!』

 

『ギイヤアアアアアアアアアアア!!!』

 

「……あなた達が知ってるかどうか知らないけど、矛盾って言葉があってね…さて、無敵の盾と矛に自分達を例えてたけど、いざぶつかってみれば…死ぬのは、どちらかな」

 

慌てて進路を変更しようとするモグラ型だったが、時既に遅し。頑強な亀型の甲羅にモグラ型のドリルが深々と刺さる。肉と骨を抉りながらも止まらないドリルだったが、ついにバキリという嫌な音とともにその回転が止まった。地上へ落下した二体のディソナンスは完全にグロッキーで、特に亀型は既に虫の息となっていた。

 

『ウゲ…ゲゲ…』

 

『ギ…ギヤ……』

 

「…………」

 

倒れ臥す二体のディソナンスに対し、ディスクセッターの銃口を向ける乙音。そのままエネルギー弾を発射するが、モグラ型は咄嗟に亀型を盾としてその銃撃を防ぎ、その爪で乙音に襲いかかる。それを乙音はエルブレイシューターで弾き、折れたドリルにエルブレイシューターを突き立てる。

 

『フ…折れたとはいえ、我がドリルは未だ堅し!このまま、押し切って…!』

 

「残念だけど、それは無理だね」

 

乙音がエルブレイシューターのトリガーを引くことで、エネルギー弾が発射される。しかし、今はモグラ型のドリル、そこにできた傷口にエルブレイシューターの刃を突き立てているのだ。そしてエルブレイシューターの銃口は刃と一体になっている。斧と銃が組み合わさった武器がエルブレイシューターなのである。つまり……

 

『ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!アアアアアアアアアアアア!アアアアアア……』

 

「少しむごいけど……確かに、低スペックを補うにはいい武器ですね」

 

『……流石に、そこまで躊躇なくやるとは思わんかったがの…ワシも』

 

さて、乙音が二体のディソナンスを蹂躙している時、その様子を見ていたディソナンスもいた。鳥型のディソナンスと蛇型のディソナンスは乙音の戦いを見て、ビートシステムのことを音成に報告しようと動く。しかし、その様子をショット博士を通じて確認した乙音は、ビートの必殺技を発動する。

ディスクセッターの赤のボタンを押してから、レバーを引き、エネルギーを溜める。目標は鳥型だ。

 

『beat up』

 

「少し遠いけど…いける」

 

『beat shoot』

 

『なっ…ああっ!?』

 

強大な乙音のハートウェーブをエネルギー弾として放ったその一撃は、まさに必殺。鳥型ディソナンスを飲み込み、焼き尽くし、空の彼方で消える。

そして、もう一方の蛇型も逃す乙音ではない。さらに必殺技を発動する。こちらはディスク状のエネルギーを放ち、相手を拘束する。そして…

 

「はあああああああっ!りゃああああああああ!!」

 

『グエーーッ!!』

 

飛び蹴りを放ち、蛇型の喉を掻っ切る乙音。蛇型は甲高い悲鳴を上げた後、自身を拘束していたエネルギーに包まれ、爆発四散した。ディソナンス達を片付けた事をショット博士に報告する乙音。

 

「ふう……これで、全部ですか?」

 

『うむ、いいデータが取れたわい…なんか悪の科学者みたいじゃの、ワシ』

 

「あはははは…まあ私の戦い方も、正義の味方とはいえませんよねえ…」

 

『……そういえば、君がネット上でどう呼ばれとるか知っとるか?』

 

「?いえ…あ、6人目の仮面ライダーとか、そんな感じですか?多分、知名度は先輩達の方がありますよね?」

 

『……血みどろの逆転ファイターじゃぞ。あと、少なくともネット上では君の方が真司君たちよりも知名度は上にじゃぞ』

 

「なんでそんなアダ名っ!?」

 

最後の最後に何かに負けたような気分になりながら、地下研究所へと戻る乙音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……博士ーー!これはこっちで?」

 

「ああ、ウム……それはあっちじゃな」

 

ディソナンス襲来から一週間後、地下研究所は放棄されようとしていた。

ディソナンス達を一度は撃退したとはいえ、このままでは居場所がバレるのも時間の問題と考えたショット博士達は、協議の結果、予定を前倒して地下基地を放棄し、ワシントン地下に作られたより大きな研究所に移動する事にしたのだ。

本来この地下基地もワシントン地下の研究所ができるまでの時間稼ぎの為に作られたようなものであり、前々からビートシステムの最終調整の為にもっと大きな設備が必要であると言われていたのも、今回予定を前倒しでワシントン地下研究所へ移動する事になった原因だった。

 

「しかし、ワシントンまで地下鉄が繋がってるなんて…大丈夫なんですか?ディソナンスに見つかった時とか…」

 

乙音のその疑問に、眼鏡をかけた青年が答える。ここの研究員の1人で、名をロイド・バーンという。ショット博士の息子だ。

 

「心配はいりませんよ。地下鉄はとても複雑に作られていて、迷宮のような構造になっていますし。なんなら遠隔自爆もできますからね、ここは」

 

「そうなんですか…あ、ロイドさん、出発っていつでしたっけ?」

 

「え?あー…今日の夜8時ですよ。到着は明日の朝7時でしたか。まあまだ時間はありますから、作業もゆっくりと…」

 

「何言っとるんじゃロイドーー!時間はギリギリと言ったじゃろうが!わかったらさっさと作業を進めんかーー!」

 

「はいはい……」

 

その3時間後、研究所内の荷物を運び終えた乙音達は、早速鉄道に乗り込む。目的地はワシントン。乙音がショット博士に聞いた話では、そこでビートシステムの量産体制を整え、さらに乙音の戦いの中で浮かんできた、ビートシステムの欠点を改善する為の強化案を練るらしい。乙音は引き続き、データ取得をはじめとした、様々な面からビートシステムの完成をサポートする。

 

 

「父さん、準備できました」

 

「よし…!ワシントンに向け、発進!」

 

「…ワシントンか……」

 

(日本のみんなは……どうしてるんだろう…)

 

 

こうして、乙音はワシントンへと向かう事になった。しかしそれと時を同じくして、ゼブラ達のいる日本に、新たなるディソナンスの脅威が迫ろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ゼイ…ゼイ…ギ、ギリギリ…甲羅は破られたが…生き延びる…事は…できた…』

 

乙音達がワシントンに向かった直後、亀型のディソナンスは息を吹き返していた。乙音達の目から隠れるようにして、廃墟の街に潜んでいた亀型は、音成へ新たな脅威を報告しようとしていた。そんな時、フードを被り、顔を隠した男が、廃墟の街にやってきていた。

 

『ム、あれは…人間か!ちょうどいい…あいつのハートウェーブでも…食って…この傷を、癒してくれる…』

 

亀型は荒野をこの街に向かって歩いてくるフードの男を見ると、すかさず物陰に隠れる。そしてフードの男が街に入ってきた瞬間、素早い動きで姿を現し、奇襲をかける。しかし、亀型が食ったという確信を抱いたその瞬間に、その身体は無残にも消滅していた。

 

『……木村、乙音…』

 

亀型を容易く消滅させたフードの男は、一言だけ呟くと地面に手を置き、そのまましばらく動かないでいたが、不意に顔を上げると、今度はワシントンの方へと歩き始めた。

 

『………伝えなければ…』

 

そう呟いたフードの男、そのフードの中からは、陽の光を浴びて輝く、金髪が見え隠れしていた……。




ソングの方はいいんですが、新作として書き始めたナイト×ナイトが思ったようにかけず、私の目から見ても、かなり駄目な作品になってしまっていて、非常に悩む。果たしてこのまま書き続けていいのかと。

読者に対しては、その数がどれだけ少なくても誠実でありたい。でも自分の文章力では書きたいものが書けないというジレンマ。どうすればいいんでしょう…?せめて第1章は書き上げたいんですが…うーん。

それはそうともしかすると息抜用の短編集でも作るかもしれません。とにかくやりたいことをやったり、思いついたアイデアを処理するための場所として。まあ、今はソングとナイト優先ですが。

さて、次からは日本に舞台が移ります。それと同時に第2部以降からの強敵も登場しますので、お楽しみに。からくりサーカスからだいぶ強い影響を受けたキャラクター達です。

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