仮面ライダーソング   作:天地優介

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次はもっと短くしたい……そうは言ったが、具体的にどれくらいの文字数なのかは言ってない……!つまりっ……一万字でも、短い可能性があるという事……っ!

こんな事を思いながら書きました。正直これに加えて真司覚醒回と決着回も書かなきゃならんとかホント疲れる。しかもさらに増える可能性もあるとか。

でもせっかく考えた歌を台無しにしたくないし……うーん。


Dramatic Story

「局長!起きてください!局長!」

 

「ん?あ〜……何?」

 

朝、特務対策局局長室。そこには対策局局長である本山猛がいた。 深夜からずっとある仕事を続けていたのもあって、起こしに来た局員の報告にも寝ぼけ眼で答える猛だったが、次の報告を聞いて血相を変えることとなる。

 

「ゼブラちゃんです!ゼブラちゃんが帰って来たんですよ!しかもなんか変な奴らと一緒に!」

 

「………なんだってぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、その装置があれば、乙音君を救えるのかい?」

 

『ええ、この僕の命をかけたって構いませんよ。』

 

局長室。案外簡単に入れるそこには、猛の他に五人存在していた。真司と刀奈に、ゼブラ達三人だ。

二人のライダーが注意深く観察する中、ガスマスクの男と猛が話す。その二人の間に挟まれたゼブラは、見ている方が心配になるほど緊張していた。ボイスは部屋の隅で黙りこくっている。もっとも、彼女は変身を解いているため、喋ろうとしても喋れないのだが。

 

「……すまないが、やはり調査してからーー」

 

『時間がないといっているだろ?奴らはこうする間にもーー』

 

ガスマスクの男と猛は話し合いを続けるが、話し合いは遅々として進んでいない。念には念を入れたい猛と、性急であっても事を進めたいガスマスクの男とで意見が対立しているからだ。

話が進まない事に苛立つガスマスクの男は、切り札を切ろうとする。

 

『……しょうがない。……すまないが、二人だけにしてもらえるかな?』

 

「何を言っている?そんな事がーー」

 

「……僕からもお願いします」

 

「ゼブラ……!?」

 

ガスマスクの男の提案に、当然、いい顔をしないのは刀奈と真司だ、その提案を退けようとする二人に対して、ゼブラが男の提案に賛同する。

 

「……僕もこの3日の間に協力しました。ディソナンスと人間の差ゆえに生じる問題も、大丈夫です。だからーー」

 

話を進めようとするゼブラの言を、しかし遮るものがいる。真司だ。

 

「このまま受け入れてほしい、と?そんな事をーー」

 

「はい、提案します。これはーー僕のやるべきことですから」

 

ゼブラの前に達、威圧する真司。しかし、ゼブラはその視線にも怯まず、自らの意思を貫こうとする。そのゼブラの姿に、真司はある確信を得た。

 

「……局長。大丈夫だ、こいつらの言う通りにしよう」

 

「ホントにかい?」

 

「本当にだ」

 

真司が得た確信は、ゼブラがガスマスクの男に洗脳措置を受けた訳ではなく、騙された訳でもないという確信だった。それを得たならば、もはや話し合いを続ける意味もない。真司の言葉を猛も信じ、至急医務室へ装置を運ばせる。

 

「……やれやれ、すまなかったね。試すような真似をして」

 

ガスマスクの男と猛以外、誰もいなくなった局長室で、猛が男に話しかける。

 

『構いませんよ、その考えは私にもわかりますからね……猛さん』

 

「ん?」

 

『……フッ、わかりませんか?僕ですよ……ほら』

 

ガスマスクの男がマスクを外す、そして、マスクを外した顔に、猛は驚愕する。

 

「………!君は!」

 

「……これから僕は乙音くんの治療に向かいます。彼女のレコードライバーとライダーズディスクを、託してはくれませんか?」

 

マスクを外した男の、その言葉を受けて猛はふっと笑う。

 

「……本当に卑怯なやつだよ、君は。そんな顔でそんな事を言われちゃあ、託すしかないだろう?」

 

「……ありがとうございます。必ず、彼女は救ってみせますよ」

 

そう言って再びガスマスクを被ると、男は医務室へと歩き出す。今頃はボイスとゼブラが設置作業に入っているはずだが、彼女達では細かい調整は無理だろう。

一人局長室に残る猛は、未だ驚いていたが、どこか晴れ晴れしい顔をしていた。

 

「……そうか、彼が……。全く、長くは生きてみるものだね」

 

そこに、香織から通信がくる。ベストタイミングと、それに応える猛。

 

「ああ香織ちゃん?今ね、君にとっても嬉しいニュースが……」

 

『すみません、局長。後にしてくれますか?』

 

「……!何があったんだい?」

 

『新たな上級ディソナンスが現れました。今までにない反応です……!出現場所は……』

 

「……何!?」

 

その報を聞いた猛は、再び驚愕する。

 

「乙音君の……学校の近く!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか、ゼブラ。後は任せたぞ」

 

「行くか、真司。桜は?」

 

「連絡している、彼女もすぐに駆けつけるらしい。合流して一気にいくぞ」

 

連絡を受け、戦いに向かおうとする二人。その姿に不吉なものを感じたゼブラは、二人を引き留めようとする。

 

「真司さん!刀奈さん!あの……!」

 

しかし、真司は装置をゼブラの頭に被せると、「心配するな」と言い残し、刀奈と共に走っていってしまう。

 

「あ………」

 

『……ゼブラくん、集中するんだ。……大丈夫さ、彼らならば上級ディソナンス相手でも遅れはとらない』

 

「……はい、そうです、よね」

 

(そうだ!僕が信じないでどうするんだ……!)

 

「どうやら準備はできたみたいだね。それなら、いくよ!」

 

ゼブラの顔を見て、覚悟を感じ取ったガスマスクの男は、ついに装置の電源を入れる。

 

「はい!」

 

ガスマスクの男の言葉に応えたゼブラは、その瞬間、吸い込まれるような感覚を覚える。

 

(来た……!)

 

心の中に入り込んでいく時に覚える感覚……初めて感じるはずのそれだが、ゼブラはこれがそれだとわかっていた。

 

(僕が生まれてきた時に覚えた感覚……それと似てる……)

 

生まれてきた場所へと帰り、乙音を救う。

 

(それが…僕のやるべき事なんだ!)

 

果たして、ゼブラは乙音を救えるのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、天台高校。乙音が通うこの学舎は、今狂乱の元に置かれていた。

 

「……な、なによ、あれぇ!」

 

「か、壁が……一瞬で溶けて……」

 

逃げ惑う生徒達、幾人かは教室で息をひそめる。襲撃してきたディソナンスはただの一体。全力で外へと逃走すれば希望はあると、校外へ逃げ出そうとした生徒達もいた。しかし………

 

「ひっ、ひい!お、俺の体が、糸に!」

 

「あ、あ、助けて!お願い!置いていかないでよぉ!」

 

その全ては、学校と外の空間の狭間に置かれた、金色の『糸』による罠に絡め取られていた。糸に捕まったものは、はじめ抵抗していたものも、自身の体が糸に覆われた後には、ぴくりとも動かなくなる。校舎の中からその光景を見ていたものは、皆、ディソナンスに見つからない事を願いながら隠れていた。

 

「な、何よ、あれ……」

 

乙音の親友である少女、湊美希もその一人であった。不登校が続く乙音を心配してたら、まさか自分が心配される身になろうとは思ってもいなかっただろう。今は教室のロッカーの中に隠れているが、果たしていつまでもつものか。そう思案した時、素人でもわかるほどの、強烈な気配を、美希は感じる。

 

「……あ、足音が近づいてくる……」

 

普段は生徒達の足音がうるさく響く校舎の中で、静かに響く、大きな足音。その音が止まったかと思うと、また別の音が響く。扉を開ける、ガラリとした音だ。

 

(は、入ってきた……)

 

息を殺し、気配を殺す。必死に自身の存在を隠そうとする美希。しかし、侵入してきたディソナンスの行動を見て驚愕する。

 

「………!」

 

そのディソナンスは乙音の机の前に立ったかと思うと、それを無残にも食い散らかしたのだ。人に近いフォルムのディソナンスであるが、大きく口を開けたその姿は、とても正視できぬものであった。

 

『………不味いな……本人も、不味いのだろうか……』

 

その言葉を聞いて美希が抱いた感情は、怒りだった。恐怖もあるが、それ以上に、自らの友人を喰らわんとするものを見て、怒らないはずもないだろう。

しかし、その怒りは、この場においては致命的なものであった。

 

『……誰か、怒っているな?』

 

感情を力の源とするディソナンスには、自身の力を増幅させる感情を察知する能力がある。怒りを力とするディソナンス相手に、怒りを抱くというのは致命的な事だ。

 

『出てこい』

 

「あっ……!」

 

ロッカーから引きずり出される美希。よく見ると、そのディソナンスは帽子を目深に被り、目を隠している。神は金髪だ。

 

『……?ふむ……』

 

「………っ?」

 

自らを捕まえたディソナンスに対し、怯まず睨みつける美希。そんな美希の様子に、ディソナンスは疑問を抱く。

 

『……貴様は、なぜ怒っている?』

 

「え……?」

 

『私はこれでも怒りの感情を、その力の源とするディソナンスだ……だというのに、私はなぜ生命が怒るかわからないのだよ。今こうして貴様らを追い立てているのも、カナサキの指示だ……あいつがあれほど怒り狂うのも、初めてだったな……』

 

「…………」

 

美希は混乱していた。突如現れた、怪物じみた強さと雰囲気を持つ大男に追い立てられたと思えば、その大男に、何やらよくわからないことを言われながら、なぜ怒るかについて質問されているのだ。混乱しないほうがおかしい状況だろう。おかしくない普通のものならば、怯え、嘆き、ただ無残に殺されるだけだろう。

ならば、美希はおかしいほうになるのだろう。

 

パァンッ…………!

 

『……………』

 

無人の教室に、乾いた音が響く。その音を出した張本人である美希は、ディソナンスの頬を叩いた手を振りながら、こう言い放った。

 

「……なんで怒るかって?それはね、許せない事があるからよ!」

 

『……許せない事…?』

 

「そうよ、今の私にとって許せない事は…私の友達を害そうとした、あんた自身よ!」

 

『……そうか……』

 

「……………」

 

(思わず啖呵切っちゃたけど…でも後悔はないわ。……私、このまま死んじゃうのかな……もっと生きたかったな……)

 

ディソナンスの頬を引っ叩いた美希であったが、その内心には何かプランがあるわけでもなかった。あくまで本能的な行動の、その結果であったのだ。

死を覚悟する美希だったが、相手の様子がおかしいことに気づく。

 

『……許せない事か……』

 

(……………?)

 

『………そうか、ならば…』

 

「……あんた、何言って……」

 

『ならば、おまえ……奴らも許せない事があるというのか?』

 

「えっ?」

 

ディソナンスの言葉の意味がわからず、一瞬硬直する美希だったが、ディソナンスの指差す方向を見て、そこにある光景を見て理解した。そこには、仮面を被った謎の三人組によって、糸に絡め取られていた生徒たちが、次々と吸収されていた。

 

(あれって……聞いた事がある……仮面を被って、みんなを助ける戦士がいるって……仮面ライダー…あの人達が?)

 

『奴らも…許せぬ事があるのだろうか?あの怒り……』

 

「……ええ、多分、私と同じだと思うわよ。……あんた自体を、許せないっていう、怒りよ」

 

『そうか……女、名前は?』

 

「………湊美希」

 

『我が名は、ドキ……四体の上級ディソナンスのうちの一体にして、激しき怒りを糧とする者だ。せいぜい……覚えておくといい』

 

そう言うと、窓から飛び出していくドキ。帽子を抑えながら、ライダー達の目の前に降り立つ。

 

「……………」

 

美希には、その光景をただ見ることしかできなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いったい何が起こっている……!?」

 

「なんなのよこの糸〜!取りにくい!」

 

「ええい、糸だけでも切り裂いて……」

 

天台高校へとたどり着いたライダー達だったが、そこにある光景を見て、愕然としていた。校舎と外とを隔てる糸の障壁を突破したかと思えば、そこには繭のようになった糸に絡め取られている人々の姿があったからだ。糸の繭に包まれている人々を助けようとやっきになるライダー達だったが、人々を拘束する糸は頑強であり、なかなか解く事ができない。

それでも牙で引き裂き、刀で切り裂く事で救出できていたが、周囲を見張っていた桜が異変に気づく。

 

「二人共!あ、あそこ……!」

 

そこには、窓から飛び降りる人影があった。中の人が飛び出してきたのかと思い、慌てて助けにいこうとする桜だったが、真司に引き止められる。

 

「何を……!?」

 

「待て、あれは……」

 

ライダー達の目の前に降り立つ人影、普通の人間であるならば死ぬ高度からの降下であったが、砂ぼこりを上げながら着地したそれは、明らかに人ものとは異なる気配を放っていた。

 

「貴様……ディソナンスか…!」

 

『いかにも。我が名はドキ。怒りを力とするディソナンス……』

 

「怒りか……怒りならば、我らも力とする」

 

「ライダーシステムは感情の力…心の力を引き出すものだ。俺達の怒り、受けてみるがいい……!」

 

「ドキだかトキメキだか知らないけど、たとえあんたが上級ディソナンスだったとしても、ここで私たちがぶっ飛ばす!」

 

未だ構えぬドキに対し、三人は一斉に襲いかかる。真司が正面から殴りかかり、桜は頭上から、刀奈はそのスピードを活かして背後に回り、斬撃を与える。

回避不可能なその連携にも、しかしドキは焦ることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『し、しかしバラクさま、キキカイさま……ドキさま一人で、ライダー達に勝てますかね?』

 

『フン、認めたかねぇが、あいつは俺達四人の上級ディソナンスの中で最強だ。いくらあいつら相手でも、遅れはとらねぇよ』

 

『むしろあっさり勝つかもね。ま、作業に集中しなさいな。改造されたくはないでしょう?』

 

『ひ…は、はい〜〜!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……これで終わりか?貴様らの怒り……』

 

「ぐ、お……」

 

一斉に襲いかかったライダー達だったが、まず後方の刀奈の斬撃が突如現れた糸によって止められる。ドキの髪から伸びるそれは、ライダーシステムの剛力ですら容易く縫い止める。

次に狙われたのは桜だった、頭上からの攻撃が、深く被られた帽子の下から伸びた髪の束によって止められる。

そして最後に残った真司の攻撃に対しては何もせず、その身で受ける。渾身の一撃が完全に入ったが、ドキは意に介せず、次の一手を打つ。髪の束に拘束された桜を振るい、真司と刀奈を吹き飛ばしたのだ。当然、桜も共に投げ飛ばし、地面に叩きつける。

これらの行動を、ライダー達が攻撃してから、それが当たるまでの一瞬の間に行ったのである。辛うじて刀奈が一連の流れを認識できていたが、完全に拘束されて動けなかった。

「ま、だだ……」

 

「待て、桜……このままでは、お前も……」

 

その後も必殺技の連携攻撃で攻めるが、ドキをその場から一歩も動かせず打ち破られていった。

 

『言っただろう?怒りを力とすると……。貴様らの抱く怒りであっても、我の強さとなる。むしろ、強靭かつ潤沢なハートウェーブを持つライダーが相手だ。私のパワーは今、かつてないほどに上昇しているよ……』

 

「ぐ、くそ……!」

 

ドキの言葉に絶望しかけるライダー達、しかし、人々の命を守るために、ここで寝転がっている暇などない。真っ先に真司は立ち上がるが、唯一強化形態でない彼の肉体に残るダメージは深刻であり、ふらついた状態だ。

 

『…………』

 

そんな状態でも諦めない彼に、しかしドキは非情だった。自らの髪を束ねると、拳の形にし、それを真司に向かって振り下ろす。

 

『………!』

 

『おっと……間に合ったな』

 

しかし、それは突如放たれた弾丸によって阻まれた。ボイスが駆けつけたのだ。

 

「ボイス……後輩は……」

 

『…オレが時間を稼ぐ、お前らは休んでな!』

 

 

 

「患者の体力低下!ゼブラちゃんも……このままでは!」

 

『くっ……やはりこの手を使うしかないのか!』

 

『ゼブラくん……!今一度、持ちこたえてくれ!』

 

 

 

 

 

 

「ぐ……やはりまだ……」

 

『ああ、でも安心していいぜ。あいつが目覚める前に、オレがこいつをぶっ倒してやる……!』

 

『…………こい』

 

『はっ!言われなくても!』

 

ボイスは突撃していくが、その銃撃も怯ませる事はできない。他のライダー達も立ち上がろうとするが、果たしてどこまでもたせられるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、特務対策局でも異変が起こっていた。乙音の体調が悪化し、乙音の心にダイブしているゼブラも痙攣などの異常を起こしていた。

 

「患者のバイタル、低下していきます!」

 

「ゼブラちゃんの体にも痙攣が……!」

 

『やはりこれを使うしかないか……!すまない!』

 

「それは……!?」

 

『我らの希望だよ……!レコードライバー装着、ディスクセット!』

 

『さあ…鬼が出るか蛇が出るか、希望か絶望か、審判の時だ!』

 

ゼブラの体にレコードライバーを装着し、ライダーズディスクをドライバーに挿入する。すると、ドライバーとディスクが光を放ち……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ここは、乙音お姉ちゃんの……中……?』

 

『暗い……怖い……そんな気持ちで満ち溢れている……』

 

『……絶望……かつて僕がいたところ……でも今は別の絶望で埋もれている……』

 

『僕にはどうにもできない……そんな気持ちで溢れてくる……』

 

『でも……なに?この暖かさは……』

 

『これは……希望……歌……心………魂』

 

『お姉ちゃん……乙音お姉ちゃん……僕、歌うよ』

 

『だから、お姉ちゃんも………!』

 

『歌ってぇぇぇぇぇぇっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終わりだな……』

 

『化け物、かよ……!オレ達でやっと帽子を飛ばせるぐらいとはな……!』

 

天台高校、そこではライダー達とドキとの戦いに決着がつこうとしていた。

ライダー達は必死に攻撃を加えるが、終ぞ帽子を飛ばす程度のダメージしか与えられていない。

両腕も振るわせる事ができず、今ボイスがトドメを刺されようとしていた。

 

『では……「やめてぇぇぇぇぇぇ!」……む』

 

しかし、振り下ろされようとした髪束の前に立ちはだかる者が一人いた、美希だ。ライダー達の戦いを見ていた彼女だったが、トドメを刺されようとしている彼らを見ていてもたってもいられなくなり、飛び出してきたのだ。

しかし、非力な彼女に、ドキの一撃を止められる術などない。ドキが、美希ごとボイスを叩き潰そうとしたその時ーー

 

ギュン!

 

『………?』

 

ドキの背にエネルギー弾による銃撃が入る。ダメージはないが、ドキの動きを止める事には成功した。

ドキが振り向いたそこにはーー

 

「ありがとうございます。香織さん。ここまで送ってもらって」

 

「間に合ってよかったわ……乙音ちゃん、くれぐれも無理はしないでね」

 

ーーそこには、乙音が立っていた。背後には乗ってきたと思わしき車と、メガホン型の銃を構える香織の姿。

 

「後輩……!」

 

『遅えんだよ!このやろう!』

 

「乙音、くん……!」

 

「あんたが、木村乙音……?」

 

『ほう……その怒り……』

 

「おと、ね……」

 

「すみません、遅くなって。ごめんね、恐い思いをさせて」

 

声に応えるように、足を踏み出す。目を上げる。

「でも、もう大丈夫」

 

その腰にはレコードライバーが、その手にはライダーズディスクが握られている。

 

「今ここには……私達がいるっ!」

 

そう言ってディスクを挿入し、変身する乙音。乙音の四肢を、その体を包むように光の輪が展開し、乙音の体が装甲を纏っていく。

最後に被るものは、仮面。涙を隠し、怯えを隠し、決意を引き出すための、仮面ライダーの証。

 

「さあ……心の音、響かせる!」

 

仮面ライダーソングへと変身した乙音は、その手にスタンドランサーを構え、ドキへと突貫する。

 

「気をつけろ後輩!ヤツの髪は、頑健にして俊敏!一筋縄ではいかん!」

 

その言葉の直後、ボイスと美希に向かって振り下ろされんとしていた髪束を、全て乙音の迎撃へと向けるドキ。乙音はそれを次々と回避していくが、ドキの猛攻に近づく事ができない。

 

「このままじゃ埒があかないな!」

 

そう言ってドライバーに手をかける乙音。必殺技を発動するのだろうか、しかしその隙を見逃すドキではない。

 

『………!』

 

髪束による一撃を乙音の体に直撃させる。ライダー達の怒りによって強化された一撃である。いくらライダーであっても、ひとたまりもない攻撃のはずだが……

 

『……!馬鹿な……!』

 

「黒いソング……!あの一瞬で分離を!?」

 

一瞬のうちに黒と白のソングに分離。物理攻撃に耐性のある黒いソングが髪束による一撃を受け、白のソングが隙をついて奇襲したのだ。

真司達の連携でも一歩も動かす事ができなかったドキの顔面を殴りつけ、よろめかせる。

 

『……なるほど』

 

「しかし、後輩……いつの間にあんな芸当を…」

 

黒のソングに話しかける真司。その疑問に白のソングが答える。

 

「今まではドライバーを操作しないといけなかったんですけど、今はしなくても分離できるようになりましてね。さっきのはブラフですよ」

 

「そうか……」

 

「あ、それと、そっちは私じゃないですよ、私はこっち」

 

「えっ」

 

白のソングの言葉に思わず声を上げる刀奈。真司も何がなんだかわからないという顔をしている。

 

「わからないんですか?僕ですよ、僕!」

 

黒のソングが発した声は、乙音のそれでなく、真司達も聞き覚えのある、あの声だった。

 

『お前……まさか……!?』

 

「こっちが私で」

 

「こっちが僕」

 

そう、黒のソングの中身は、今は乙音ではなく、ゼブラとなっていたのだ。

 

『あいつ……やりやがったな!』

 

「え?ゼブラくんが黒で、乙音ちゃんが白で……!?」

 

「よ、よくわからんが、問題はないのか!?後輩!」

 

「あ、その心配はないですよーー。今までは二人ぶんの負担を一人で抱えた状態だったんですけど、今は二人ぶんのハートウェーブにそれ以上のエネルギー!って感じですから!」

 

「乙音お姉ちゃんは僕が守ります!」

 

ライダー達が混乱する中、悠々と喋る乙音とゼブラ。しかし、そうしてる時間はない。殴られた後、止まっていたドキが、再び動き出す。

 

『……これが、お前の怒りか…ならば』

 

ドキの両腕から刃が飛び出す。その切っ先は拳の横にあり、殴ると同時に敵を切り裂くような配置だ。

 

『私も本気を出そう』

 

人形のような無表情でそういうドキに、しかし二人は怯まない。

 

「絶望させようってんなら、倍は持ってこなくちゃね」

 

「いくよ……お姉ちゃん!」

 

「「心の共鳴……響かせる!」」

 

前奏は終わった。今、心よりの歌が溢れ出す!

 

《 《共鳴……心響かせ……》 》

 

歌と共に駆け出す二人。疾風となってその手に槍を持ち、ドキの体を貫かんとするが、ゼブラの槍はその腕の刃に、乙音の槍は髪の障壁に阻まれる。

 

《白と黒が織りなしてくストーリー……》

 

『ふぅっ!』

 

《僕らの思いはどこへ向かうとゆうのだろう…》

 

《 《旋律よ》 》

 

「わっ、わっ!」

 

「まるで竜巻みたい……」

 

二人の攻撃を防いだドキは、そのまま回転を始める。刃と髪の竜巻においそれと近づく事はできないが、二人はすぐさまコンビネーションを放つ。乙音が空中へと飛び上がった瞬間、二人はすぐさま必殺技を発動する。

 

《心の音が尽きるその時に……》

 

『rider double shoot!』

 

《蝕む思い、その名は何なのか》

 

《 《絶望》 》

 

「お姉ちゃん!いくよ!」

 

「きて!ゼブラ!」

 

ゼブラが必殺技で二つの槍を纏めて蹴り上げる。空中に飛んだ乙音は、その槍を必殺技で蹴り飛ばし、竜巻の中心へ向けて飛ばす。即興での連携技によって威力を増したニ槍は、竜巻を貫く。

 

《運命に、ライドして、紡がれていく思いがそう》

 

『ぐうっ!』

 

《人々を守る強さ紡いでゆく…のさ……》

 

直撃は避けたものの、髪束を消し飛ばされたドキは苦しそうに呻く。その一瞬を逃す二人ではない。

 

《心高らかに!この力、劔のように振るおう》

 

「いくよゼブラ!」

 

《牙のように突き立て、絶唱する!》

 

「ここで一気に……!」

 

《たとえ運命に、踊らされ、この思いが穢れとも》

 

《胸にある希望は、潰えないのさ……》

 

『rider double shoot!』

 

《声を張り上げ何度でも!》

 

「「うおおおおおおっ!」」

 

《 《明日に歌う……!》》

 

《 《Ah………!》 》

 

『ぐうううううっ!』

 

この機を逃さんと必殺技で追撃する二人。しかし、全力で力を振るうドキは、ダブルライダーによる攻撃にも耐え、弾き返す。

 

《喜怒哀楽入り乱れゆく心……》

 

『ぬおおおっ!』

 

《それが生み出すドラマで変わりゆく世界が》

 

《 《あるから》 》

 

「くあっ!そうやすやすとはいかせてくれないか!」

 

「ならこっちも合体して!」

 

ゼブラの言葉に頷く乙音は、ゼブラと手を繋ぐ。すると、黒のソングが白のソングと融合し、より強力なスペックを持つ合体形態となる。ドキもその頭部の角を天高く伸ばし、より鬼のような体躯となって対抗する。

 

《感情というものがあるなら……》

 

『オオオオオッ!』

 

《心だってあるはずと…それを信じて》

 

《 《歌うよ》 》

 

「うおおおお!」

 

ぶつかり合う拳と拳。力と力。今、二人のボルテージは最高潮へと達していた。

 

《渦巻き、紡がれてく思いがそうさ未来という》

 

《希望を紡ぐ力と…なる…のさ……!》

 

『rider maximum spear!』

 

必殺技で強化された槍を振るい、髪を引きちぎってドキの体躯に傷をつける乙音。しかし、ドキもまたその両腕の刃で乙音を切る。

 

《歓喜の声上げて生まれゆく、命をそうさ守ろう》

 

《その憤怒に身をまかせ。討滅する!》

 

「オオオオオオオオオオっ!」

 

『オオオオオオオオオオッ!』

 

《悲哀の涙が!溢れても、一滴すら零さない》

 

《 《明日に見える楽土へ》 》

 

《 《君と向かう……!》 》

 

激突する刃と刃。振るう槍はその身を砕かんとし、振るう腕はその身を捩じ切らんとす。その勝負にも、終わりの時が来る。

 

《仮面の裏に隠した。思いが溢れる……》

 

『ぐう……次が、最後か!』

 

《絶望の中掴んだ、希望守りたい……》

 

「そう、みたいだね……!」

 

『ならば、全力で!』

 

『voltage over!!!』

 

「行くよ!」

 

『rider maximum shoot!!!』

 

乙音の飛び蹴りが炸裂する。全力のハートウェーブ、全力の魂で対抗するドキ。

 

《心燃え尽きてっ!灰になり、そこからまた復活する!》

 

《希望とはそういうものさ。潰えない!》

 

『ぐうおおおおおおおお!』

 

乙音の必殺技を受け止めるドキの刃に、ヒビが入る。

 

《真なる心、桜のよう。儚くても……!》

 

「ああああああああああああああああっ!!」

 

《守りたいという声を、叫び続けて……!》

 

最後の力を振り絞り、ドキの刃を砕く乙音。そのままの勢いで、蹴り飛ばす!

 

《響け歌え、自分の、魂の歌……!》

 

《 《Ah……!》 》

 

「うおおおおおおおおおおりゃああああああっ!」

 

『があああああああああああ!』

 

《 《共鳴…心響かせ……!》 》

 

見事蹴り抜いた乙音は、背後で爆発が起きるのを感じた。

ゆっくりと振り向いたそこには、ボロボロの状態となったドキがいた。強大なハートウェーブどうしのぶつかり合いによって発生した爆発に巻き込まれてもその身の原型を保ててはいたが、すでに戦闘力は無いようだ。

 

『ここまで、か……。次こそは、必ず……!』

 

そう言い残し、粒子となってその場を去るドキ。強敵を撃破した喜びに浸る間も無く変身を解除した乙音は、自分との融合を解いたゼブラとともに、みんなの方を向いて、こう言った。

 

「……ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、本当に一事はどうなる事かと思いましたよ」

 

後日、特務対策局にて改めて精密検査を受けた乙音は、なんら異常はないと診断され、無事明日から学校へと通えるようになった。

親友である美希に正体を知られてしまったものの、乙音も美希自身も全く気にしてはいないらしい。今は今度の日曜日に一緒にでかける場所を検討中だとか。

今は廊下で、真司と話している最中だ。

 

「ああ、本当にな……そういえば、局長が最近、遅くまで仕事をしていたな。案外お前に関しての事じゃないのか?」

 

「えっ、もしそうならお礼を言わないと……」

 

「まあ今はいいさ、ゆっくり休め。局長も忙しいだろうしな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……これは、本当なんですか?』

 

「ああ、これが見つかれば、ライダー達の戦力増強に繋がる」

 

『しかし、ディソナンスが嗅ぎつけている可能性もありますね……』

 

「うむ…だから急がねばならない」

 

「この、【保管装置】の捕獲を……」




どんどん書く分量が増えていく。ああ〜疲れる。今度はサクッと書きたいものです。というか最近新フォームラッシュで歌なし回がない!同じ文字数でも歌ありとなしだと労力が違うんだよ!かっこも変えなきゃあかんしぃ……でも書きたいからしょうがないよね。うん。とりあえず私生活に影響が出ない程度には頑張ります。応援の感想、待ってるぜ!(島本和彦風の絵柄で)

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