仮面ライダーソング   作:天地優介

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なんとか書き上げたぞーー!展開も雑だし急だけど、後半は割と気合い入れたから許してください!何でもしますから!
それはそうともうすぐ前半クライマックスです。話数的にはまだ第2クール序盤なのに、展開的にはもうマキシマムマイティ初登場ぐらいな感じです。本筋だけで休憩なしだからね、しょうがないね。


夜を切り裂くもの……歌翔

『さ、入ってくれ。ここが僕のアジトだ』

 

ガスマスクの男に案内されてゼブラが連れてこられたのは、都内に張り巡らされている下水道の一角。そこにはあらゆる科学で巧妙に隠されたドアがあり、その内部には広い居住空間があった。

 

『ここが、治療室だ』

 

その奥には見慣れない器具で埋め尽くされた部屋があった。部屋の中央にはベッドがあり、混沌とした空間の中で清潔さを保っていた。

ガスマスクの男はベッドにボイスを寝かせるようにゼブラに指示すると。何やら器具の用意をし始める。

 

「それは……?」

 

『今からの治療に必要なものさ。乙音くんを救うために必要なものでもある』

 

その器具ーー機械は洗濯機ほどのサイズであり、頭部にはまりそうな円形の機械と繋がっていた。

 

『この機械の名前は……えー、繋がるくん!繋がるくんにしよう。ともかくこれを使えば人と人の心を繋げる事が可能だ。ものすごく簡単に言うと、他人の心の中に入って、その活性化の手助けができたりする。』

 

「そんな事ができるんですか⁉︎」

 

『精神構造が似通っている生物でなければいけないけどね。今ボイスはハートウェーブが枯渇しかけてる状態だから、まずは僕がこれを使って、ボイスを治療してみせよう。見ててね?』

 

そう言ってガスマスクの男はボイスの頭部と自身の頭部に円形の機械を被せると、洗濯機ほどのサイズの機械ーー繋がるくんのボタンを操作する。逐一どんなボタンかゼブラに説明しながらだ。そして、一通りの操作を終えると、ついに『治療』を開始する。

機械が稼働すると共にガスマスクの男の体から力が抜ける。そのまま五分ほど経つと、先程までぐったりとしていたボイスの体がぴくぴくと反応し始める。そして、その反応は激しい痙攣となり、ボイスを体が振動を始める。

 

「何が……!」

 

ゼブラがそう呟いた瞬間。ボイスの体が発光したかと思うと、ボイスが『ゲホッ!ゲホッ!』と咳き込み出す。ボイスが咳き込み出したと同時にガスマスクの男の四肢にも力が戻り、自身とボイスの頭部に被せていた機械をのける。

 

「いったい、何をしたんですか⁉︎」

 

ゼブラの質問に、汗だくとなったガスマスクの男が答える。

 

『……なに、ボイス…彼女の思考、心の中に入り込んで、無理やりにハートウェーブを活性化させたのさ。本来はとても危険な行為だが、この装置ならば可能だ』

 

「これを使えば、お姉ちゃんを救える……!」

 

『……だけど、それって、同じ精神構造のヤツ…同種族じゃなきゃ使えないとか言ってなかったか?まさかお前がおと……ソングの治療をすんのか?』

 

ようやく掴んだ希望に目を輝かせるゼブラ、自らの手で乙音を助ける事ができないのは悔しい事だが、乙音が助かるならばと、期待に満ちた瞳でガスマスクの男わ見つめる。

 

『いいや、僕は治療しないよ』

 

しかし、ガスマスクの男の言葉に、再び失意のうちに入ってしまう。

 

「それじゃあ、なんで…!」

 

『ま、まあ待て。何も機械を貸さないとは言ってないだろう?それに、彼女を救うのは君だ、ゼブラくん』

 

ガスマスクの男のセリフの意味がわからず、訝しむゼブラ。それを見た男が説明を始める。

 

『さっきも言った通り、この機械はかなりデリケートでね、同じ精神構造の者…つまりは同じ種族のもの同士でなければ使用できない。これはいいね?』

 

「……はい」

 

『だが、例外というのは存在する。それが君だ』

 

「……えっ?」

 

『ゼブラくん。君は木村乙音……彼女の心から生まれたディソナンスだ。それならば、この装置を用いて彼女の心の内に入り込み、救う事も可能なはずだ』

 

ゼブラは乙音の心……乙音の絶望から生まれたディソナンスだ。それが、乙音の心を救い、希望を与えるための鍵となると、ガスマスクの男は語る。

 

『……どう?覚悟と納得はできたかい?』

 

「…………………」

 

果たして、ゼブラはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼブラ君の位置はまだわからないか……」

 

「すみません。私がついておくべきでした」

 

ゼブラが「おつかい」を最後に失踪してから3日。特務対策局ではゼブラの捜索が続いていた。

局員達による懸命な捜索でも見つからず、途方にくれる局員達。猛と香織も、ゼブラの位置を捕捉しようと調査を重ねていたが、それらしき影を見たとの情報があっただけで、いっこうに行方を掴めていない。

 

「……真司君達はどうしてる?」

 

「動揺していましたが、今は落ち着いています。とりあえず仕事はこなせていますが……」

 

「……こりゃ参ったね、彼女の存在はどうにも大きいものだったようだ……」

 

ともかく、このままではいけないと考えた猛は真司達に休みを与えようかと思っていた。今までライダーとしての戦いとアイドルとしての活動を両立させていたが、乙音が倒れ、ゼブラも行方不明になってしまっている今、無理に仕事をさせてもうまくはいかないだろうと考えての事だった。

ライダーとしての活動は、ディソナンスという驚異がある以上やめさせる事は出来ないが、それでもアイドルとしての活動を抑え、休んでもらう事で、少しでもリラックスしてもらおうと考えての事だ。

こうしてライダー達に休みを与える事を伝えた猛。休みを与える理由は、ライダー達にはディソナンスの侵攻が激しくなってきた今、少しでも戦いに集中してもらうためと伝えたが、真司と桜はその言葉の裏に猛の真意を感じ取っていた。どうやら、二人はまだ余裕があるようだ。真司は今までライダーとして戦っていた義務感が、桜はアイドルとしての挑戦心が、自身を支えているのだろう。

しかし、刀奈はその二人と比べ、精神的に追い詰められていた。

 

「……っ……わかり、ました」

 

そう言うと、逃げるように局長室を出た刀奈、桜が後を追おうとするが、真司が引き止める。

 

「……あいつも飲み込めてない事が多いんだろう。今は一人にさせてやれ」

 

その後、真司はゼブラを探しに街へと出かけたが、刀奈は対策局本部のトレーニングルームで、一心不乱に剣を振るっていた。

鬼気迫る刀奈の表情に、不安を感じる桜。そんな桜に、香織が話しかけてくる。

 

「桜ちゃん、少しいいかしら?」

 

「え、はい。何ですか?」

 

「私は戦闘時には、あなた達ライダーのオペレートを担当してるの、知ってるでしょ?だから、少しでも親交を深めておこうと思って」

 

香織に連れられ、休憩室で話し合う事となった桜。香織はお汁粉を、桜はピーチベースのプロテインを飲む。

他愛もない事を話す二人だったが、ふと、桜が心の内の疑問を口にする。それは刀奈に関しての事だ。

 

「刀奈は…どうしてあんなに焦ってるんでしょうか?まだ、希望が無くなった訳じゃないのに……どうして……」

 

「……それには、彼女がアメリカに渡った理由から話さなければならないわね」

 

香織がゆっくりと語り始めた刀奈の過去は、桜も知らない事だ。若干の罪悪感を感じながらも、香織の話に聞き入る桜。

 

「彼女……刀奈ちゃんはね、元々臆病な子だったの。今でこそ、戦いの時にはとても勇敢になってくれるけど、ライダーになったばかりの頃は、真司くんの背中に隠れてばかりだったわ」

 

「そうだったの……!?」

 

衝撃の事実に驚く桜。先日カナサキと交戦した際もいの一番にディソナンスへと向かっていった刀奈の姿と、香織の話から想像できる刀奈の姿が桜の中で一致しないからだ。

 

「ふふ、最初はね、まともに戦えてなかったわ。でも、彼女が変わる出来事があったの」

 

「それは……?」

 

「真司くんの負傷よ。……あの子達がライダーになったばかりのころ、まだディソナンスの事も何もわかってなかった時、いきなり現れたディソナンスから刀奈ちゃんを庇って、重傷を負ったの……一週間も目が覚めなかったほどのね」

 

「一週間も……!?」

 

「ええ、そしてあの頃から彼女は変わったわ。まるで真司くんが負傷したという事実から逃げるように修行を重ね、真司くんを倒したディソナンスを圧倒してみせたわ。バラクに敗北した後はアメリカに渡って修行を積んだみたいだけど、もしかしたら、真司くんを失いかけた時と、同じ責任を感じていたのかもね」

 

「責任……」

 

「ええ、罪悪感、そう言ってもいいかもしれないわね………今あの子は、乙音ちゃんに無理をさせてしまった事をとても悔やんでいるはずよ。それでもなんとか自分を保ってこれたんでしょうけど、ゼブラちゃんすら行方不明になってしまった今、もはやその心は折れかけているかもしれないわね……」

 

そこまで話すと、一気にお汁粉を飲み干し、別れの言葉を残して休憩室を去る香織。一人残された桜は、難しい顔で、黙り込んでいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜ーー乙音の病室。今そこに、一人の影があった。

その影の正体は刀奈だ。対策局の医療チーム、その全力をもってしても、日々やつれていく乙音の顔にそっと触れる。

 

「……すまなかったな、君をこんな事に巻きんでしまって……」

 

乙音に触れていない、もう片方の手にはレコードライバーがあり、服のポケットにはライダーズディスクを忍ばせている。今すぐにでも戦闘体制に入ることが可能だろう。

そんな彼女の背後に、近づいてくる足音。

 

「誰だっ‼︎」

 

瞬時に振り向いた刀奈の視線の先にいたのは、桜だった。友人である桜の姿を見て、驚く刀奈。

 

「本部を出て行った訳でもないのに部屋にいないから、もしかしてと思ったけど……やっぱり気にしてるの?」

 

桜の言葉に、ギリッ…と音を立てて食いしばる刀奈。

 

「当たり前だろう!乙音くんは倒れ、ゼブラくんも行方不明だ!彼女達が戦う事になってしまった原因は、この私の弱さにあるというのに!なのに犠牲になったのは彼女達だ!なぜ私じゃないのだ!なぜ……なぜぇ……!」

 

桜に詰め寄り、その襟首を掴んだ刀奈だったが、襟首を掴んでいた手は、すぐに縋り付くような形となってしまった。

元々乙音が戦う事になってしまったのは、刀奈が抜けた穴を埋めるためだ。もちろん、遅かれ早かれ乙音はライダーとなってしまっていただろうが、経験も詰めぬうちに戦わせる事になってしまったのは、いつまでもアメリカでの修行を終えられない自身の弱さのせいだと、そう刀奈は思っていた。乙音が無理をしなければならなかったのも、自身の弱さのせいだと。

ゼブラや桜が戦う事になってしまったのもそうだ。自身と真司の力不足からくるものだと刀奈はわかっていたが、アメリカで修行を重ねたはずの自分が、今でも真司の背に隠れて怯えていた頃から成長できていないからだと、自分の力不足ゆえと、そう刀奈は思っていた。

アメリカで、世界でアイドルとして活躍し、ライダーとしても、戦闘者としても強くなったはずなのに、実際には何も変われていない。そう刀奈は思っていた。アメリカで修行したという事実と、ライダーとしての今までの出会いと経験が、逆に彼女を苦しめる結果となってしまっていたのだ。

だからこそ、この命を捨ててでも、ディソナンスを倒す。そう決意した刀奈であったが。それを察した桜は、意外な行動を取った。

 

「歯ぁ……食いしばりなさい!」

 

刀奈の苦しみを察した桜は、刀奈を強制的に立ち上がらせると、その頬を思い切り引っ叩いたのだ。ワケもわからず混乱する刀奈に、桜は自身の思いを説く。

 

「あのね!あんたがどう思ってるかなんて知んないけど、私もゼブラも、どちらもあんた達の助けになりたいと思って戦ってんの!多分、あの乙音ちゃんだってそうよ!そうでなきゃ命まで張れないわ!それを、それをあんたが否定しないでよ!誰が否定しようが、あんたと真司が否定するのは許さないわよ!」

 

桜の言葉に、呆然としていた刀奈は不意に泣き出す。今まで堪えてきたものが、溢れ出してしまったようだ。

 

「ぐっ…うっ、うっうっ……」

 

「っ!ああもう!」

 

そんな刀奈を見た桜は、刀奈の泣き顔を隠すように、その身を抱きしめる。

 

「全く……なんもかんも一人で抱え込むんじゃないわよ!誰かに頼るのは弱い事だと思ってんのかも知れないけど、頼れる誰かは、あんたが出会った、あんたの強さの一部なのよ⁉︎とにかく、いつでも頼っていいから!」

 

子供のように泣きじゃくっていた刀奈だったが、その言葉に不意に顔を上げる。

 

「すっきりした?」

 

その刀奈に、桜はニッと笑いかける。刀奈の顔は未だ晴れないが、その瞳には今までのものとは違うものがあった。

 

「……恥ずかしいところを見せてしまって、済まない」

 

「いいのよ、私も初めて会った時、いろいろ話聞いてもらったでしょ?だからお返し!」

 

「……全く、敵わないな」

 

「……このままみっともないままで終わるつもり、ないんでしょ?」

 

「……ああ」

 

「だったら見せてみなさい、あんたの弱さも、その強さも。大丈夫!真司も私もいる!それだけで不安なら対策局のみんなだって、あんたが今まで出会ってきた人たちがみんなついてる!だから突っ走りなさい!私がテレビで見て憧れてたあんたは、立ち止まるよーなヤツには見えなかったわよ!」

 

「……ああ!」

 

すでに迷いは晴れた。この直後、狙いすましたかのようなタイミングで出現したディソナンスの討伐に向かう刀奈の顔に、もはや迷いはない。

自身の中の弱さに向き合い、逃げない事を選択した彼女は今、強さに溢れていた。

駆け出す刀奈の後ろをついて行く桜の横を並走する真司。刀奈に気づかれぬように「すまなかったな」と桜に呟くと、そのまま刀奈の横に並ぶ。

前を並んで走る二人の背中を見ながら、桜は(どちらも素直じゃないわね)と思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変身し、バイクに乗って現場へと向かう刀奈達、ディソナンスの反応が現れた地点、コンテナの多い港に到着するが、その姿はない。

 

「逃げたか……?」

 

真司がそう呟いた瞬間、彼の背後に影が忍び寄る。その影が刃を振り上げたその瞬間……!

 

「させんっ!」

 

瞬時に詰め寄った刀奈がその影を切り裂く。月の光に照らされたその影は、以前戦った、キキカイが量産していたディソナンスと同じ姿をしていた。

 

「キキカイか……!?」

 

『いや、今度も私だ』

 

雲に隠れていた月がその姿を表した瞬間、ライダー達の周囲に現れるディソナンス達。それを率いるのは、カナサキだ。

 

『フフフ……』

 

不気味な笑いを浮かべ、周囲のディソナンス達に攻撃命令を出すカナサキ。一斉に襲いかかってくるディソナンス達だったが、まず桜がポールを使っての回転攻撃で数を散らし、散らされず残ったディソナンスを、真司がその攻撃力で粉砕、桜の攻撃によって散り散りに吹き飛ばされたディソナンス達を、空中で身動きが取れないうちに刀奈が切り捨てる。

抜群のコンビネーションを発揮する三人、しかし、ディソナンス達は絶えず猛攻を加えてくる。その対処に追われる中、不意にカナサキがその姿を消す。

 

「くっ……!奴め、何をするつもりだ!?」

 

「わからん!だが、このまま逃す訳には……!」

 

「なら、追って!ここは私と真司で押さえるから!刀奈が一番足早いでしょ⁉︎」

 

溢れるディソナンス達を押さえるために真司と桜をこの場に残し、刀奈はカナサキを追って疾走する。しばらく走り、真司達の戦闘音も聞こえなくなる頃、カナサキの姿を捕捉する。

 

「貴様……!何のつもりだ!?」

 

しかしカナサキはその疑問に答えず、ただ闇の中に佇むのみ。しびれを切らした刀奈はカナサキに斬りかかるが、カナサキの肉体に刃が食い込んだその瞬間、その肉体は泥となり、刀奈に襲いかかる。

 

「なっ……!?」

 

その泥を振り払おうとする刀奈だったが、むしろ泥はますます刀奈の体を蝕んでゆき、ついには完全に飲み込まれる。

 

(いったい何が……⁉︎)

 

状況を理解できぬまま暴れる刀奈であったが、何かを抜き取られるような感覚と共に、泥が刀奈の体から離れていく。大きな疲労感に襲われる刀奈だったが、泥が徐々にある形をとるのを見て、驚愕する。

 

「貴様は……!」

 

泥が変化した姿、それはかつて真司を負傷させたディソナンスと同じものであった。モチーフはモグラだろうか、かつて地中から突如現れたこのディソナンスは、その爪で真司の体を切り裂き、刀奈の心に深い傷跡を残した。

その姿に驚く刀奈の後方、コンテナの上に、カナサキの姿があった。

 

『フフ……』

 

(あのディソナンスはこの私の能力であのライダーの心を読み取り、生み出した幻影……自身の後悔に溺れながら、醜く屍を晒すのだ……)

 

カナサキの視線の先で棒立ちのまま動かない刀奈。モグラのディソナンスの右腕が、そこにある爪が、ゆっくりと上がり、振り下ろされーー

 

 

一瞬にして、切り落とされた。

 

『なに……!?』

 

いや、切り落とされたのはその爪だけではない、ぐらりとその体が風に揺れ、そのまま胴体部がゆっくりとずれていく。一瞬にして刀奈の刃に切り裂かれたのだ。

 

「私は……私は逃げないさ、貴様らからも、己の罪と弱さからも………そこにいるのだろう?カナサキ」

 

『……!』

 

驚愕しながらもそれを表には出さず、刀奈の前に姿を現わすカナサキ。夜の港に、両者の影が交差する。

 

『まずは見事と言っておくが……貴様程度で、この私に勝てるとでも?以前は三人がかりでも手玉に取られたというのに……』

 

「フッ……確かに今までの私ならば、お前程度のヤツにも遅れをとってしまっていただろうな、だが今は違う!」

 

刀奈の手には、新型のライダーズディスクが握られている。しかしカナサキはそれにも怯まず、刀奈を嘲笑する。

 

『貴様にそれが扱えるとでも?そもそも、変身できたところで、私の能力に対抗できるとでも思っているのかね?』

 

カナサキの能力、生命を絶望させるという能力は、まさにライダーにとって天敵とも言える能力だろう。精神汚染に対して抵抗力のあるライダーシステムの防壁ですら容易に突破できるほどだ。しかし、刀奈は怯えない。

 

「言っただろう?今の私は違うと」

 

刀奈は新型ディスクをドライバーに挿入すると、変身シークエンスを手早く終える。しかし、ライダーシステムは反応しない。

 

『フ……やはり貴様はその程度だと……』

 

しかしカナサキがそう発言した瞬間、刀奈のドライバーから光が溢れ出す。

 

『なにいっ!?』

 

その光にカナサキが目を抑えた次の瞬間、すでに変身は完了していた。

 

「さあ……我が歌を聴け!」

 

魂の歌、『歌翔ーーwing song』。その歌と共に駆け出す刀奈には、絶望を切り裂く力がある。

 

「《いつからだろう、心の中、無数の鼓動達がある》」

 

「《その鼓動、かき鳴らす、リズムに乗って…さあ……歌えーーっ!」

 

ドライバーから溢れ出す歌を歌いながら、カナサキに斬りかかる刀奈。素早い連撃で、一気に畳み掛ける。

 

「ハアッーー!!」

 

『ぐうっ!これは!』

 

残像すら常人には認識できぬほどの速さでカナサキを切り刻む刀奈。カナサキも対抗しようとするが、その速さについていけていない。

 

「《自分の中の強さを、信じることができずに》」

 

「《弱さから目をそらし続けて》」「《強さを履き違え……》」

 

『ならば、これでどうだ!』

 

「《どこにも進めずに……》」

 

カナサキが手をかざすと、そこから瘴気が溢れ出る。乙音を蝕んだ時は悟られないよう薄くしていたが、この瘴気こそ海よりも深き絶望に敵を陥れるためのものだった。

 

「《誰かに…何かに…怯え嘆いて、縋り付いていたっ!》」

 

「《背中に隠れた…未熟な…私っ!》」

 

『喰らえっ!』

 

カナサキが瘴気を溢れさせたまま殴りかかるが、風よりも速く、まるで光のように動く刀奈はその動きを完全に見切っているうえ、瘴気ですら捉えられない。

 

「《だけども…けれども…それを受け入れ、前に進むんだっ!》」

 

『き、貴様っ!』

 

「《そうさ!絆束ね上げて、鼓動となしてビートを、鳴らせぇぇぇっ!》」

 

音速をも超える剣、超速の光刃を閃かせて縦横無尽に斬りかかる。その様はまさに強者、彼女が追い求めた背中そのものだ。

 

『あ、ありえん…私の能力を上回るなど!』

 

「《いつからだろう、心の中にっ!ひとすじだけど光がある!》」

 

「《その光が、夜を切り裂いて、絶望砕くツルギとなるっ!》」

 

カナサキを追い詰めた刀奈は一気に勝負を決めんと必殺技を発動する。繰り出される必殺の名は『rider shining brade』光が如き神速で繰り出される剣撃は、夜を裂き、絶望をも切り捨てる。

 

「《どこまで……行けるか?そんなの》」

 

「《やってみなくちゃわからないっ!!》」

 

『voltage MAX!!!』

 

『ま、まさか、この私が……』

 

「《そうさ、歌を、信じ、飛翔する……!》」

 

『rider shining brade!!!』

 

「《この、歌翔、だけは》」

 

『ぬうううううううっ!』

 

「《止まらないいいいいいいっ!》」

 

超光速で切り刻まれたカナサキは咄嗟にその身を爆発させ、自身の核となる部分を切り離し、逃走する。しかし、その傷は深く、ボイスに倒されたノイズのように、長期間は活動不可能だろう。

 

「刀奈っーー!」

 

ついにカナサキを倒した刀奈に、桜と真司が駆け寄る。大切な人達の無事な姿に、心から安堵すると共に、やっと彼らと共に胸を張って戦えると、誇らしい気持ちになる刀奈。

 

「フッ……」

 

「?どうしたの?ってあんた、もしかして新型の起動できたの!?」

 

「そうか……俺もうかうかしてはいられないな」

 

「ああ……そうだな……」

 

こうして激動の一夜は過ぎさる。しかし、事態は確実に脅威へと近づいていく………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……色々とありがとうございます。まさか僕用に調節してもらえるなんて」

 

「ま、3日もかかったし、貴重なディソナンスのデータも取れたからいいよ、それよりも、本当にいいのかい?」

 

「はい、あなた達には、もしもの時のためのサポートをしてもらいたいんです」

 

ーーゼブラは、覚悟した。自身の消滅すらも厭わない覚悟を決めたのだ。

かくして、乙音を目覚めさせるファクターは揃った。果たして、ゼブラ達は彼女を救えるのだろうか?そしてディソナンス達はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カナサキがやれちまったか……』

 

『あら死んでないわよ?一応。それはそうと次はあなたがでるの?バラク』

 

『いや、こいつがどうしてもつーからよ』

 

『………あらあらあら、あの子達……大丈夫かしら?』

 

 

『ドキ……その相手をする事になるなんて、全く絶望的としか言えないわね』

 

 

 




刀奈さんはいつの間にか翼さんよりもマリアさんみたいなキャラとなってた謎。真司が男性版翼さんみたいになった反動なんですかね?

しかしソングの執筆にはまるで絶唱みたいにエネルギーを使いまくります。正直クソ疲れてます。もう直ぐ大学の夏休みも終わりますし、不定期更新にするつもりが週一での定期更新になってましたけど、不定期に戻っちゃうかもしれませんね、これは。でも頑張りますよ!だから応援よろしくお願いします!よければ活動報告の方も見てください!(露骨な宣伝)

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