仮面ライダーソング   作:天地優介

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いろいろやってみた回。なろうで書いてる小説でもそうなんですが、私はどうにも一度に4人以上のキャラクターを動かせない気がします。勉強しなきゃなぁ。


Voice・Act

「………はい、これでもう心配ないわよ。さすが仮面ライダーと言うべきかしら、怪我がそれ程でなくて良かったわ」

 

「ありがとうございます、先生」

 

今乙音は特務対策局の医務室にいた。この前のディソナンスとの戦いで負った傷を検査してもらうためである。既に乙音自身は回復していたのだが、念のためだ。

 

「……今日は結構早く検査、終わりましたね」

 

「ふふふ、そういつまでも検査を続けるわけにはいかないもの、それに、もう回復はしていたのだし、こんなもんよ」

 

「こんなもんですか?」

 

「こんなもんよ」

 

医務室を出た乙音は、これからどうしようかと思案する。乙音は学生だが、今日は休日である。仮面ライダーとして戦い続ける覚悟を決めた乙音であったが、こういう時は女子である。しかし……

 

「うーん、やっぱりお家に帰って寝よっかなーでもなーどうしようかなー」

 

今日は一日中検査のつもりだったためか、本当にやる事がないようだ。と、そこに真司が通りかかる。

 

「どうしたんですか?先輩?」

 

「ああ、ちょうどいい。……この後予定はあるか?」

 

「え?ないですけど」

 

「そうか……良ければつきあってくれないか?」

 

「あ、はい………………。ええええーー⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……買い物につきあってくれって意味だったんですね。いきなりだから驚きましたよ」

 

「あの文脈と雰囲気で誤解……するか?まあ、すまなかった」

 

今2人がいるのは地元で有名なデパート、その一角にある喫茶店だ。ネットでもそこそこ有名な場所である。

乙音は普段と変わらない服装だったが、真司は帽子にサングラスと変装していた。有名人なのでスキャンダルは厳禁なのである。

 

「お前が事務所に入ってくれりゃ、まだ素顔でも言い訳できるんだがな」

 

「あはは…すみません」

 

「冗談だよ。……話ってのは、ディソナンスの事だ」

 

「……はい。」

 

真司の纏う雰囲気が変わり、姿勢を整える乙音。緊張する乙音に、そう身構えなくていいと笑う真司。

 

「……前の戦いでわかったと思うが、奴らは強い。それに、あれでも奴らの中で強い方ってわけでもない」

 

「……どういう事なんですか?」

 

「ディソナンスにはな、下級・中級・上級の三つの階級がある。とはいっても俺たち人間が勝手につけた名称だが、こういうのはわかりやすい方が良い………。でだ、あの時戦かった奴は、中級だ」

 

「……そうだったんですか」

 

「あまり、驚かないんだな」

 

「予想は、してましたから」

 

「………怖気付いたか?」

 

「……正直、戦うのは怖いです。でも、私の力が皆の役に立つのなら、やってみせますよ。……私、人助け好きですから!」

 

「……そうか、忘れるなよ。その恐怖を」

 

「…え?」

 

「その恐怖を忘れちまったら、戦うだけのマシーンになっちまう。そうなるよりかは、恐怖でも人間らしくあった方が良い。ましてや、俺たち仮面ライダーは心の力を武器とするんだからな」

 

「………そうですね!さすが先輩です」

 

「やっと笑ったな」

 

「?」

 

「なんだ、気づいてなかったのか?お前、緊張してたのか難しい顔で固まったままだったぞ」

 

「え、ええーー!す、すみません〜!」

 

「いいんだよ、それぐらい。俺からももう一つ話……というか、頼み事があるしな」

 

その言葉に首を傾げる乙音。短い付き合いの自分に頼み事とはいっても何を頼まれるのかと思う。対する真司はだいぶ言いにくそうではあるが、意を決してそれを言う。

真司の頼み事……それはーー

 

「……実はプレゼントを選んでもらいたいんだ、一緒に」

 

「……そんな事だったんですか?」

 

「そんな事とはなんだ!……俺のガラじゃないってのは分かってるがな、久々に会う相手に贈るものなんだ、俺1人じゃ不安でな」

 

「そうなんですか……でもなんで私?」

 

「贈る相手が同業の女性だからだ、あとお前が一番暇そうだったからだ」

 

「暇って、ひどい……っていうか女性ですか⁉︎」

 

乙音の声に店の他の客が振り向く。真司はそれに気づくと「馬鹿!大声を上げるな!」と言って、慌てて代金を払って店を出て行く。それについて行く乙音。

 

「しかし同業って……アイドル仲間にですか?」

 

「……ああ、そうだ」

 

「そうですか……いつ帰ってくるんですか?」

 

「一か月後の予定らしい。ちょっと早いが、今買いに行かないと仕事とかでな」

 

「わかりました、それじゃあ食べ物系は避けて、何かアクセサリーとか、小物しましょうか!その人の好きな色とかわかります?」

 

「青だったかな……」

 

「わかりました!それじゃ行きましょう!」

 

「……ああ」

 

「先輩の同業者かぁ……どんな人なんだろう」

 

(……ま、確かに同業者だな、いろいろな意味で)

 

こうして2人は買い物に出かけた。プレゼントという事もあって買う物の金額は真司が負担、乙音は真司の財布に相談しつつプレゼントを選んでいたが

 

「俺の事なら大丈夫だ。稼いでいるからな」

 

と分厚い財布を見せてきたので、乙音も気にしない方針でいくことにした。

 

結局、それから1時間ほどかけてプレゼントを選んだ2人。女性相手ということで、青の凜とした雰囲気を引き立てるペンダントを選んだ。

 

「もう少し時間がかかるものだと思ってたが、意外と早く済んだな……」

 

「まだ2時ですね。これからどうしようかなぁ」

 

「今日のお礼だ。好きな所に連れて行ってやるよ、どこが良い?」

 

「え、良いんですか⁉︎どうしようかなぁ……」

 

「……待て、周囲の様子がおかしい」

 

真司の言葉に乙音も周囲を見渡すと、人の気配がほとんどない。そして人の気配のかわりに感じる異様な雰囲気と共に2人に襲いかかる異形。ディソナンスだ。

 

「ディソナンス…!」

 

「こんな時にまで…!」

 

しかし、2人も仮面ライダーである。こんな時のために変身アイテムはきっちりと用意してある。ベルトを腰に巻き、左手側、青のボタンを押してレコードライバーの風車部分を開き、それぞれのディスクを乙音は左手で胸の前に、真司は右手で横に構えた後、風車部分にディスクを挿入、赤のボタンを押して閉じる。

すると、2人の歌のイントロのような待機音声が流れる。それを確認した2人はもう一度赤いボタンを押すと、乙音は上部に、真司は右手側にディスクのような場が現れ、2人の体を通過していく。そしてーー

 

『my song my soul!』

 

『G fang』

 

その声と共に変身を完了する2人。

 

「さあ、俺の牙の餌食となれ!」

 

「心の音……響かせる!」

 

決め台詞と共にディソナンスの群れに突撃する2人。虫型…B型と呼ばれる下級のディソナンスばかりだが、数は8体。しかし、この2人にはものの数ではない。

 

「さっきのセリフ、自分で考えたのか⁉︎だとしたら、悪くないセンスだな!」

 

「ありがとうございます!先輩!」

 

そんな事を話しながら、8体のディソナンスを相手取る2人。乙音が槍のリーチを生かしてディソナンスを翻弄すれば、真司がその攻撃力を生かして大ダメージを与える。完璧なコンビネーションだ。

 

「後輩、これで決めるぞ」

 

「はい!」

 

息を合わせて最後のディソナンスも蹴散らす2人。完勝、だが。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

「「‼︎」」

 

2人の背後から突如としてディソナンスが姿を現わす。背後からの奇襲に対応しきれず吹き飛ばされるが受け身をしっかりと取り、すぐに立つ2人。

 

「俺はカメル……貴様ら仮面ライダーは、この俺が始末してやろう」

 

その言葉と共にカメルの姿が搔き消える。どうやら高度な擬態能力を持っているようで、2人にはカメルがどこにいるか解らない。

 

「ぐぅっ!貴様……!」

 

「姿が見えないなんて……!ええーい!」

 

がむしゃらに槍を振り回す乙音だったが、カメルには当たらない。着実にダメージを負う2人。

 

「ここは一気に……!」

 

「必殺技で……ダメです!周りに物が…!」

 

「ちっ……多すぎるか!」

 

敵の場所を掴めない2人は、必殺技による範囲攻撃で倒そうとする。しかし、周りに物が多いため、周囲の被害を気にして必殺技を発動することができない。

 

「やはり…街中で襲撃して正解だったな」

 

再びカメルがその姿を現した時には、2人とも肩で息をしてしまっていた。

 

「もはや姿を消す必要もないな……終わりだ!」

 

2人に飛びかかるカメル。諦めず迎撃しようとする2人だったが、間に合わないーーそう思われた時。

 

ギュン!

 

という音と共に一発のエネルギー弾がカメルに直撃する。エネルギー弾が来た方向を2人が見ると、そこには彼女たちと同じ戦士が立っていた。

 

「貴様は……何者だ⁉︎」

 

「あなたは……」

 

『あんたらの流儀で言わせてもらうなら……仮面ライダー、ボイスっトコロだなぁ』

 

音声加工された、男とも女とも解らぬ声。

 

「先輩!あの人は……」

 

「わからん!だが、チャンスだ。あいつを被害が出ない場所にまで誘導するぞ」

 

ボイスの一撃によってダメージを負ったカメルを他の場所にまで誘導しようとする2人。しかし、その2人にボイスが持つメガホン型の銃から発射された弾が襲いかかる。

 

「ぐぅぁっ!な、何を…」

 

『オレのデビュー戦だ、あんたらはそこで黙って寝転がってな』

 

そう言うと、再びカメルに対して弾を撃ち込み始める。咄嗟に姿を消すカメルだったが、ボイスはそんな事も気にせず銃弾を撃ち込み続ける。

 

「がっ!あっあっあが」

 

『どうやら能力だけのザコか』

 

ボイスは冷酷にそう言い放つと、必殺技を放つ。

 

『full chorus……』

 

『rider…cannon…!』

 

ボイスが持つメガホン銃にエネルギーが収束していく。

 

『お前の心……撃ち抜く』

 

そのボイスの言葉と共に極大のエネルギー弾が発射される。その直撃を受け、声もあげずに爆散するカメル。

 

『……ま、こんなもんか。』

 

「……待て」

 

『……ファングさんにソング、だっけ?正直オレも疲れたし、あんたらもさっさと帰りなよ』

 

「待て!貴様の正体を……」

 

『だから、さっきも言っただろ?オレは仮面ライダーボイス。あんたらとは違う。…あんたらのようなヤツらとはな』

 

「何を……!」

 

『じゃあな』

 

近くに停めてあったらしいバイクに乗って去るボイス。乙音はその背中をじっと見つめたただ一言

 

「……あれが、私達と同じ……」

 

ボイスが去った後には、破壊の後が残っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 





新ライダー早くも登場です。何号かって?そりゃ言えませんよ。

男か女かはまだ秘密。

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