紫陽花   作:大野 陣

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期末試験終了!学生さんが一番楽しい時期になりました!

…何年前だろうか…

1~2話、リビルド完了致しました。
全体に矛盾は生じていない…はず!


Ep17.

 チャイムが鳴り響く。期末試験終了を報せる音。夏休み到来の福音。生徒たちにとって、憂鬱な答案返却さえ終わらせれば、大好きな夏休みが訪れる。

 教室のあちこちで溜め息や延びをする声が聞こえる。精魂尽き果てた、といわんばかりに机に突っ伏している者もいる。全員からテストを回収した担任教師が柏手を打ち、全員の注目を集めた。

 

「はい、ちゅうもーく。死んでるヤツ、寝てるヤツいるか?いたら返事しろー……いないな。クラス委員長から話がある。よく聞くように」

「はい。皆さん、テストお疲れさまでした。早速ですが、十月に学校祭があります。まずは実行委員の選出と…」

 

 クラス委員長から学校祭実行委員が男女一名ずつ選出され、明後日までにクラスの出し物を決定してほしいとの通達があった。そして、夏休み前と夏休み中、そして九月いっぱいの準備期間の後に、本番を迎える。例年通りであれば、一年生は展示、発表系、三年生が模擬店系、二年生が舞台系となる。一年生は来年に向けて要領を掴むために展示系の出し物をする。三年生は受験前ということもあり、準備が容易な模擬店系。そして、要領を掴み時間もバイタリティも余っている二年生が大暴れする…というのが例年である。

 

「…では、よろしくお願いします」

「これでホームルームを終わる。テストは終わったが来週いっぱいまで学校あるからな。浮かれて怪我せんように。解散」

 

 担任の号令がかかった。あちこちでこれからの予定を話し合う声が上がる。市内の公立学校はどこも今日までがテスト期間である。街には解放感から遊び呆ける学生で溢れるだろう。

 

「…お疲れ。大丈夫か?」

「……へんじがない。ただのしかばねのようだ…」

 

 テスト終了後から机に倒れ込んだままの弾に秋久が声をかけた。全て一夜漬けで済ませようとしていた彼だったが、一夏・梓・志帆と共に勉強会に参加していたのである。多人数での勉強会は成果が伴わないことが多い。しかし、あの勉強会はストッパー役が秋久・梓・志帆と豊富であったこともあり、まずまずの成果となった。

 弾は普段は使わない部分の脳を酷使したためか、かなり疲労しているようだった。

 

「あとは返却だけだし、大丈夫だろ。どうだった?」

「一応全部埋めたぜ。一応な」

「大躍進じゃんか!すげえ!頑張ったな!!」

「だろ!?いよっしゃ!今日は遊ぶぜ!!!!」

 

 急に弾が立ち上がり、拳を天に向かって突き出した。イヤッッホォォォオオォオウ!という奇声付である。その奇声にまたもやクラス中の視線が集まる。

 

「弾も打ち上げ?わたしも行きたい!」

「あ…私もいいかな?美智華ちゃんとも遊びたいし…」

 

 一夏と梓も合流を表明した。テスト前に男同士でたっぷり馬鹿をやったし、今日は女子とも遊びたい気分の弾である。もっとも、彼は楽しく騒げるのであれば、そこに男女のこだわりを持っているわけではない。

 

「いいぜ!人数多い方が楽しいしな!」

「あ、じゃあオレも行きたーい!折浦さんたちとなかなか遊べねぇし」

「え?マコくんも行くの?じゃ、あーしも行くー」

「俺も」「ボクも」

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「いやー…まさかこうなるとはなー」

「こうなるとはなー、じゃねえからな。見ろよ。すっげぇ店員さん大変そうだぞ」

「でも、ランチタイムってこんなんじゃないの?」

「ここまでじゃないと思うよ…?」

 

 ランチタイム明けのファーストフード店。平日のこの時間は客も疎らなのだが、今日は東中二年一組の生徒二十名が大挙して押しかけている。オーダーカウンター前に二十人が残っているわけではなく、半分以上が席を探しにその場を離れていた。流石に二十人が一度に座れる席などなく、適当に三~四人のグループに分かれていた。

 いきなりその人数で押しかけられると、クルーがタスクオーバーを起こす。その証拠にクルーたちはキッチンとカウンターを忙しそうに往復し、次々と番号を呼びオーダーを片付けて行っている。

 

「アキ、席取ってくるから、わたしたちの持ってきてね?」

「ん。了解」

「アズちゃんのも持ってくからよ」

 

 

 

「おまたー」

 

 秋久と弾が戻ってきた。彼らの手にはセットが合計四つとハンバーガーが余計に三個乗っている。

 

「これが美智華ちゃんとアズちゃんの」

「注文あってんの?足りる?」

 

 一夏と梓の分はポテトSサイズ、秋久と弾の分はLサイズと追加のハンバーガー。男子と女子の食事量の差である。

 

 さっさとハンバーガーをポテトチップのように平らげる秋久と弾。一つ目を完食し、二つ目に手を出し始めた。一方の一夏は両手でハンバーガーを持ち、子リスのように食べ始める。梓はポテトから手をつけ始めた。一夏が一つ目を食べ終えた頃、男子二人は二つ目をほとんど食べ終え、残る一つを半分に割った。彼らにとって、二個半でちょうどいいらしい。

 オレンジジュースを吸い、一夏が可愛らしくぷはっ、と一息吐いた。水分なしで一気に食べたのが堪えたらしい。ハンバーガーを食べ終えた弾が席を立つ。

 

「じゃ、次にドコ行くか話してくるわ」

「いってらっしゃーい」

「…やっぱり、男の子って食べるの早いね」

「そ、そう?ふ普通じゃない?」

「アキって弾と一緒にいると早いよね」

「あんま意識してないけどな…つられてる…かもな」

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 その後、ボーリング場に行き、三ゲームほど楽しんだ。弾が18ポンドを投げようとしたり、一夏が7ポンドに疲れて両手投げになるなどのトラブルはあったが、概ねスムーズにゲームは進んだ。

 

 ゲーム終了後に全員で写真を撮る。秋久の横に一夏が寄り添い、その隣に梓、弾と並んだ。

 

 かくして、二年一組の打ち上げは無事に終わった。

 

 その思い出話を志帆が聞き、一夏と梓に逆襲したのはまた別の話である。




短いですが、これにて一学期編終了となりました。
次回更新から夏休み突入となります。

今後ともよろしくお願い致します。

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