三人称は心が折れました。ハイ。
急遽、一人称に変更となりますがご了承ください。
ついに始まってしまった九校戦の懇親会。正直勘弁してくれとしか言いようがない。俺は面倒が嫌いだ。騒がしいのが嫌いだ。自室に戻ってCAD弄りでもしていたいのだ。
何が言いたいのかというとだ。九島烈マジでふざけんな。
懇親会なんぞ端っこで大人しくしておこうと思っていたのに、雫に引っ張り出された挙句、なぜか話題が俺に注目したときなど、懇親会を催した連中に残らずトラウマでも刻んでやろうかと思ったほどだ。
まあ、これはまだ許そう。許せないが許そう。同じチームの仲間達との交流は確かに大事だ。納得してやろう。
だが、九島烈。テメェはダメだ。なにカッコつけて手品なぞしてるんですかね。挙句、それを見抜いたら見抜いたでこちらに鷹のごとき目を向けてくる。こちとら老人にジロジロと眺められて喜ぶ趣味なんぞ持ってないんですがねぇ。大方、俺の存在やら利用価値やらについて考えていることだろう。
あぁ、やだやだ。これだから権力者ってのは遠慮願いたい。こちらの事情も知らずに、自分の都合に合わせて物事を考えるその思考。まさしく、権力者のそれだ。九島烈も、所詮は人の子ということだろう。それに巻き込まれる俺としてはたまったものではないが。
しかも、話が長い! 魔法に溺れるな? 当り前じゃボケ! むしろ、言わないと分からないやつなぞ勝手に死んでしまえ。
「マジで、あの老人。機会があったらぶっ殺してやらぁ」
「冗談でも、そういうことは言わない方がいい。どこに監視の眼があるかわからんからな」
「分かってるよ。でも、このぐらいの狼藉を許容できない人間に十師族の長老が務まるとは思えないが」
「全く、程々にしておけよ」
「了解」
俺がこぼした割と危ない愚痴を咎めながらも付き合ってくれる兄さんは、全国の兄の鏡だと俺は思う。
現在は、懇親会が終わり兄さんのエンジニアの仕事に付き合った帰りなのだ。俺が着いて行く行く必要などなかったのだが、ついでにCADの調整が出来ると聞いて飛びついた。九島烈のせいで溜まったストレスを発散するいい機会だったのだ。
思い出しただけでも腹が立ってくる。あの品定めするような目。俺は商品じゃねぇっつーの。別に、そういう目で見てくるのはあの老人だけではないのだが、無性に腹が立つ。原作をアニメしか知らないにわかの俺だからこその発想ではあるが、あの老人のことは嫌いだ。風間少佐と話していたところしか知らないからこそ、あの魔法師を道具としてしか考えていなさそうな物言いは好きにはなれない。
まあ、単に相性の問題なのだろう。対して知りもしない相手のことを嫌いになる、というのは変な話だが、あの老人とは相容れない気がする。魔法師のくせに家族優先の俺がおかしいのかもしれないが。あれで伯母上の師匠であるらしいし、師弟である以上似ている点もあるだろう。魔法師を道具として見ている……だとか。
そもそも、四葉が強くなりすぎる、とか言ってた気がするけど、家族関係はどうするつもりなんですかねぇ。戦力云々を気にしすぎて他を蔑ろにしている感じが気にくわない。
どちらにせよ、今は嫌い。それでいいのだ。仮に、あの老人と話をして警戒を解いてもいいと判断出来たらな、それはそれでよしだ。人間関係なんてそんなものだ。こうだろう、と予測する。その通りならその予測は正しかったわけだ。違ったのなら違っただけの話。その場合はそれ相応の対応を取るだけである。どうせ、他人の考えていることなんてほとんどわからないのだ。気にするだけ無駄というもの。わからないことを考えても仕方がないと割り切り事も、時には重要なのだ。
「……? どうかし――」
「賊だ。行ってくる」
兄さんが突然立ち止まったと思ったら、賊を発見したと言い出した。精霊の眼でも使ったのだろう。このタイミングということは、原作通りだな。着いて行くと説教に巻き込まれそうだし、ホテルに帰りたいところではあるが。
「お、おう。……って、返事聞く前に飛び出してるし。まあ、兄さんが行ったのであれば安泰だろう。俺は大人しくホテルに戻るとしますか」
下らないことを考えている間に、兄さんは飛び出して行ってしまった。ホテルに戻っておくと言い損ねてしまったが、その程度で怒られることはないだろう。
さて、さっさと帰ってCADでも調整するとしましょうか。
「何をどうしようかな~」
やはり、自分の趣味について考えている時間ほど楽しい時間はそうそうないのだろう。気づけば、鼻歌を歌いながら俺の足はホテルへと向かっていた。
「暑い、煩い、人多い。……帰っていいか?」
輝く太陽。静かな風。雲一つない空。マジで勘弁してくれ。晴天とか俺の一番嫌いな天気だわ。あれか? 九校戦の当日だから雲さんも浮かれちゃってるんですかね? 仕事しろやボケ。
「ダメ。今日はみんなで観戦するって決めた」
「じゃあ、せめて日陰にでも……」
何とか太陽から逃れようとした俺だが、雫のジト目には勝てなかった。普段は静かなだけに、妙に迫力がある。もしかして、前に俺が威圧のことを言ったせいで授業に集中出来なかったことを根に持っているのだろうか。それならば、あえて威圧を使ってきたことにも納得できる。
「零夜君って雫の尻に敷かれてるわね」
「いやいや、そんなことは無いはずだ。……無いよな?」
エリカの発言は流石に看過できない、と抗議した俺だが思い当たる節が多すぎて説得力が無くなってしまった。思い返してみると、俺が雫に強く出れたのは、バスの一件のみ。それ以外は無言の圧力に屈した気がする。雫、恐るべし。
「お前がどうでもいいことに戦慄しているのは、よくわかった。ところで、ほのか。体調管理は大丈夫か?」
さらりと俺のことを流してほのかの体調を心配するとは、流石に兄さん。紳士の鏡だな、このやろう。
「大丈夫です。体力トレーニングは続けてきましたし。それに、睡眠も長めに取るようにしていますから」
「ほのかも、随分筋肉が付いてきたんですよ?」
姉さんよ、乙女心はデリケートなんじゃなかったのか? そんなに悪い顔をして、一体何を仰っているのやら。
「ッ!? やだっ、やめてよ深雪! 私は、そんなマッチョ女になるつもりはないんだから!」
そして、兄さん。その場面での無言は逆効果だと思うが。いや、正直女子高生からマッチョ女、などという言葉が飛び出したのは正直驚きだが。いやしかし、流石にこれは……。
「ほら、達也さんに笑われちゃったじゃない……」
「零夜が大爆笑してる時点で今更。それに、笑われたのはほのかの言い方が可笑しかっただけよ」
「いやいや、雫よ。ッ! 一体どこをどう見たら俺が笑っているように……ッ! ッ!!」
「呼吸困難になりかかっているところとか?」
「もう! 雫も零夜さんも酷い! ……いいわよ、どうせ私は仲間外れだし、二人と違って達也さんに試合も見てもらえないし」
ダメだ、面白すぎ。アッハッハ!!
「清々しいまでの大爆笑ね……」
「はぁ~、笑った笑った。まさか、現役女子高生の口からマッチョ女なんて言葉が飛び出るとは。思い出しただけで腹筋が」
それに、エリカよ。お前も俺のことを言えないはずだぞ? 原作では、幹比古のローブ姿を見て、死ぬほど笑っていたはずだからな。
「そ、そんなに笑わなくても……うぅ」
「零夜笑いすぎ。ほのかが可哀そうよ」
「お前ら遠慮ってものをしらねぇなぁ」
とうとう蹲りだしたほのかに掌を返した雫。後ろで呆れたように言うレオに、珍しく困惑している兄さんを含めた残りの面々。九校戦の開幕は、思った以上に混沌としていた。主に俺のせいで。
ハイ。突然、一人称に変更するなど甘えもいいところですが、ご容赦ください。
何というか、素人が調子に乗った結果がコレですよ。ホント、すいません。
恐らく、次回からも一人称になるかと思います。