メタルなスライムがダンジョンに居るのは間違っているだろうか   作:Deena

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か、書き終わった…(´ - ω - )ツカレタ
変な文章はあると思いますが
今回はかなり長めです

では、最終話(  ̄▽ ̄)つドウゾ


メタルなスライムがダンジョンに居るのは間違っているだろうか

 

 ~~モンスターの声はここから、「○○()」ではなく「○○」になります~~

 

 

 

 

 

 

「ボス?あなたがボスですか?」

 

 ミノが巨人に問い掛ける。

 俺もこの巨人がそうとは、思えない、ミノに聞いた限りでは他のモンスターはボスを恐がっているらしいし、これでは恐がる要素が無いからだ。

 

「…ダンジョンに与えられた知識では、確かに他のモンスター達にそう呼ばれているな」

 

「…随分とイメージからかけ離れているもんだ」

 

「そうか、お前達は異端の者とは違う、理性だけを持つモンスターか」

 

 …?、異端の者?知恵だけを持つ?何か急に言われて少し話が読めない。

 

「どういう事ですか?ボス」

 

「…そうだ、少し話をしよう」

 

 ボスは目を瞑り一旦話を区切ってから、目を開け此方を見た。

 

「モンスターとは確かに知恵は持つ、だが、喜びと哀しみ、つまり理性と呼ばれる物、愛しみ、憎しみという心と呼ばれる物、これらの感情は殆ど無い」

 

 ボスは此方を見下ろして言う。

 それって喜怒哀楽愛憎の喜哀愛憎が無いって事だよな?

 

「モンスターは怒りと楽しみ、この様な本能に近い感情しか持たず、人間を見付けると本能に従い、僅かな理性や心を無くしてしまう」

 

 つまり、モンスターが人間に襲い掛かるのは、本能が理性と心に勝ってしまうから…?

 

「だが…例外はある。人間と関わったモンスターと異端と呼ばれるモンスターが本能以外の感情を本能に押し潰される事無く居られる」

 

「人間と関わる?異端?それがどんな関係があるんだ?」

 

「人間と関わったモンスターは、人間に何らかの恐怖を与えられたか、人間の心に触れたか、等の少なくない影響により他の感情が強くなる。だが、感情の芽生えたモンスターも何かしらの感情は欠損している」

 

 何かしらの感情を欠損…と言うことは俺も…?

 そういえば、ベルにミノを傷付けられても憎む何て欠片も思わなかったな。

 

「お前達も身に覚えがある様だな。何かしらの心が欠ける…心のどちらか、愛しく思う心が欠ければ友情すらも感じなくなるか、自分以外を憎む心が欠ければ仲間を他の者に傷付けられても敵対心すら湧かない」

 

「…ボスはどうなんだ?あんたも人間を見ると本能が他の感情を押し潰すのか?」

 

「…私の役目はダンジョンを守る事、ダンジョンに産まれる前から決められた運命だ」

 

 ボスは悲しそうな瞳を此方に向けて言った。

 そうか、モンスターが俺だけだと襲って来ないのに、ベル達と居ると襲って来るのはそういう理由だったのか。

 

「話を戻そう、モンスターは人間と関わると理性と心が強くなる、だが産まれて理性と心が強く、人間と同じ言葉を話すモンスターも居る」

 

「そんなモンスターが?」

 

「そうだ、それが[異端の者]、人間達と共存を望む者達だ」

 

 異端の者…人間達と共存を望む者…俺達モンスターはそう簡単には心は許してはいけない筈だ、それこそモンスターマスターの国でも無い限り俺達モンスターの居場所は人間の国には無い、人間に飼われる事とは違う、共存がどれだけ難しい事か異端の者はわかって居るのか?

 

「ボスは人間と戦う事しか本当に出来ないのか?和解は本当に出来ないのか?共存まではいかなくとも争わない選択はないのか?」

 

「言うのは二回目だが、私の存在理由はダンジョンの防衛だ。人間が深部に向かうなら、私は人間と戦わなければいけない」

 

「…そうか、それがボスの道か」

 

「そうだ、それが私の決められた道だ」

 

 俺はボスを見て、ボスも此方を見下ろす。

 

「…本当にお前達は変わった奴等だ、いや、お前が変わっているのか…」

 

「…ボス、それがコイツ、メタルなんです。俺もメタルの変わった行動に助けられました、コイツと関わって友を知れました、仲間を知りました」

 

「…モンスターを変えるのは人間だけでは無い、モンスターもまたモンスターを変えられるのか」

 

「俺はミノを変えたつもりは無いんだが…良かれと思ってやった事が結果的にミノを変えただけだ(うん、こんな場面では、暇潰しで猪男にちょっかいを掛けたのが切っ掛けとは言えない)」

 

「…フフフ、ハッハッハッハッハ!」

 

 ボスが大袈裟に笑い始めた。

 

「…フフフ、こんなに笑ったのは初めてだ。お前達に会えて心から良かったと思う」

 

「そうだ、辛い事は笑い飛ばせば良いのさ。俺達はそろそろ下の階層に行かせて貰うよ」

 

「ああ、話に付き合ってくれて助かった」

 

 俺はボスの後ろにある、坂の様な通路に向かった。

 

「ミノ、行くぞ」

 

「ボス、また会えましたら会いましょう」

 

 俺達は十八階層へと降りて行った。

 

 

 

 

「辛い事は笑い飛ばせ…か」

 

 後日から十七階層に居る階層主が、追い詰められると笑っている様な仕草をする様になったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~~ここからモンスターの声は「○○()」に戻ります~~

 

 

 

「ピキィ(此処が十八階層か)」

 

 十八階層に来て感じた印象は、言うならば平穏だ。

 ダンジョンは本来、殆どの階層が洞窟の様な物だがこの階層だけは違う。

 そう…まるで遠い記憶にある地上の様に…天井には空を模した様な色の結晶で埋め尽くされ、天井の中央付近に地面を照らす大きな結晶がある。

 階層自体が一つの部屋の様な物で、遠目から見ても平原や丘、森林が視界に写る。

 

「ブモォ(俺も初めて来たが、こいつは壮観だな)」

 

「…ピキィ(…そうだな)」

 

 今の俺はミノの肩に乗ってる状態だ、まあ俺の大きさは25cm位だからな、ミノの肩には乗れる。

 

「ブモォ!(おい!あそこを見ろ!)」

 

 ミノが顔を向けた方向に俺も視線を向けると…

 

 

 まだ乾ききっていない血の跡があった。

 

「…ピキィ?(…これはベル達の?)」

 

 そして血の跡は少し引き摺られた後があり、森の方角に途切れていた。

 

「ピキィ(大丈夫だ、多分誰かに見付けられて、軽く治療をされた後、運ばれて行ったんだろう)」

 

「ブモォ?(本当に大丈夫か?)」

 

「ピキィ(ああ、恐らく人間の拠点に居るんだろう。その証拠にモンスターの気配が殆ど感じられない、ここなら人間の拠点があっても不思議じゃない)」

 

「…ブモォ(…本当に気配が感じられないな)」

 

 おまけにこの階層は明るいと来たもんだ、人間は明るい所に安心を覚えるからな。

 

「ピキィ(さて、ベル達を探すか)」

 

「ブモォ(了解だ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達はベル達が居そうな場所に当たりを付ける為に、近くの崖を登って、下を見下ろしていた。

 

「ピキィ(あそこの外壁の様な物に囲まれた所か、近くの森にある…っていうか洞窟の目の前だったのか、まあそこにある大量のテントがある場所に居そうだな)」

 

「ブモォ(どっちも人間が居そうだな)」

 

 そう、居そうな場所に当たりを付けたのは良いのだが…そのどちらにも人間が居そうだから、近寄れなさそうなのが困った事だ。

 

「ピキィ(うん、俺達は十七階層へ続く洞窟の近くで隠れて待って居た方が良さそうだな)」

 

「ブモォ(そうだな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数時間後~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピキィ(すげえ、ダンジョンに夜なんてあるんだな)」

 

 あれから数時間程経った頃、段々と天井にある結晶の光りが薄れ、遠い記憶の中にある夜と変わらない状態に十八階層は変化をした。

 

「ブモォ(これが夜って言うのか)」

 

「ピキィ(そうだ、俺の同族は昼行性か夜行性のどちらかに別れているな、俺は昼行性だけどな)」

 

「ブモォ?(そうなのか?良くわからん)」

 

「ピキィ(にしても暇だな)」

 

 さて、もう少ししたら寝るか…

 

「ピキ?(ん?)」

 

 何だか上へ続く穴の所が騒がしいな。

 

「ブモォ(何か上から来たぞ)」

 

 洞窟を見ていると人間の集団が集まっていて、洞窟からは一組の集団が出て来た。

 

「おおお…!?ど、どうしてあんな巨大なモンスターがいるんだいっ聞いてないぞ!?」

 

「はっはっはっは!死ぬかと思ったー!」

 

 一組の集団を見て直ぐに思った事がある、それは…

 

 

 明らかに冒険者とは違う格好をした二人の人間が周りとは違う雰囲気を纏っていた事だ。

 

「ピキ(何なんだ?あいつらは)」

 

「…メタルとミノタウロス?」

 

 後ろから声が聞こえて来た瞬間、俺は戦闘体制に入りつつ後ろを振り返った。

 

「ブモ!?(何!?)」

 

「動かないで」

 

 そう、後ろに居たのは、いつぞやの金髪だった。

 

「アイズー!いきなり走ってどうした…って!?メタルにミノタウロス!?」

 

「どうしてメタルがこんな所に!?」

 

「ピキィ…(万事休すか…?)」

 

 周りには大声に気付かれたのか、冒険者達が集まって来た。

 俺一人だったらギラを使って逃げれるけど、ミノに巻き添えが行く。

 

「これは何の騒ぎだい?」

 

「神様、何がありまし…メタル?」

 

 後ろからえらく聞き覚えのある声が聞こえて来た、後ろを見ると。

 

「ピキィ!(ベル!やっぱり無事だったか!)」

 

「えっと…どんな状況?」

 

「…わからない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取り敢えずあの場はベルが取り持ってくれたお陰で俺達は無事、冒険者達と敵対しなくて済んだ。

 

「まさかモンスターと共にダンジョンに潜っていたとは…こんな事は初めてだ」

 

 金髪(アイズと言うらしい)が所属するファミリアの団長(フィンと言うらしい)が俺とミノを見ながら、信じられない様な顔をしていた。

 

「おう、メタル達が追い付いて来たのか」

 

「…メタル、すいません…ここまで追って来て頂いて」

 

「ピキィ!(良いって事よ!)」

 

「不思議、本当にモンスターと意志疎通出来てる」

 

「要注意モンスター[メタル]、奴が特別なだけかも知れないな」

 

「もしかしてアルゴノゥト君が調教(テイム)したとか!」

 

「んー、私は調教したというより、対等の関係に見えるけどね」

 

 ベル達は俺とミノからはぐれてしまった時、安全地帯(セーフティポイント)であるこの階層を目指したらしい、怪我で余裕が無く、下の階層に落ちる穴を利用すれば近い下に降りる選択肢を選んだらしい。

 

「君がメタル君だね?ベル君から君の話はされていたよ。ベル君達を助けていてくれてありがとう、礼を言わせて貰うよ」

 

「ピキィ(あんたがベルのファミリアの主神か)」

 

 俺の目の前に立ったのは、ベルが所属するファミリアの主神、ヘスティアと言うらしい。

 第一印象は雰囲気が他と違う事、第二印象は…うん、記憶によるとロリ巨乳?らしい。

 

「何でもベル君の危機を何度も救ってくれたみたいじゃないか、君のお陰でベル君は無事で居れるんだ、本当にありがとう」

 

「ピキィ!(ベルは気に入って居るからな!当然の事よ!)」

 

「…目を瞑り気合いの入った泣き声を出す…そして胸張って居るかの様に顔を反らしている、これは得意気になって居るのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝だー朝だー朝が来たー。

 あれから色々見られたりもみくちゃにされたが、一眠り出来た俺は、ミノと共にそこらの森を彷徨いていた。

 

「ピキィ(いやあ、平和平和)」

 

「ブモォ(人間に見付からなければ平和だな)」

 

 この階層は本当にモンスターが少ない、この階層の特徴として、モンスターが産まれないらしい。

 だが、他の階層から休息に来るモンスターは居るらしく、十分程歩けばモンスターには遭遇するらしい。

 

「ピキィ(ベル達は街に行ったなー、まあ俺達は行けないけど)」

 

「ブモォ?(これからどうする?)」

 

「ピキィ(取り敢えずベル達が上に戻るタイミングまで待って居ようぜ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピキ?(ん?)」

 

 暗くなったので、ベル達の所に戻ろうとしたら誰かが野営地に向かって居る。

 

「ん?誰か居るのか!」

 

 おお!いつぞやの狼男だ!こっちに来る。

 

「…!?メタル!何でここに居やがる!」

 

「ピキィ(ミノ、先に戻っていてくれ)」

 

「ブモォ(わかった)」

 

 ミノは野営地に戻って行った、俺は狼男の方に向き直った、どうやら向こうは戦闘体制に入って居る様だ。

 

「ピキィ!(さあ、ちょっかいの始まりだ!)」

 

 俺の日課(ちょっかい)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狼男にちょっかいを掛けて居た俺は、ある程度満足したら野営地に駆け込み、狼男を振り切った。

 野営地でまた俺を見付けた狼男(ベートと言うらしい)は襲い掛かって来たが、周りに押さえられ、事は収まった。

 

 そして翌日

 

 ヘスティアが拐われた。

 そして俺はミノを置いてこっそり跡を付けて居る。

 

「ピキィ(スニーキング、一度やってみたかった)」

 

 どうやら犯人は透明になっているらしいが、気配があるのでばっちりわかる。

 森の奥にある少し開けて、茂みに囲まれた場所で犯人は足を止めた。

 周りに冒険者が大量に居るので、気配を消して背の高い草の中に隠れて様子を伺った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん、ハッキリわかった。

 コイツらありがちな底辺冒険者だ。

 話を纏めると、一ヶ月でレベル2になったベルがちょっと調子に乗ってるからしばいてやろうって流れだ。

 そしてベルもやって来たんだが…

 

「これからやるのは俺とてめえの一騎討ち、決闘だ」

 

「決闘…」

 

「単純だろう?勝った奴が負け犬に一つ好きな命令が下せる…俺が勝ったらてめえのこの高そうな装備品(みぐるみ)を剥いで金にしてやる」

 

「僕が勝ったら、神様を返して下さい」

 

「…良いぜぇ、勝てたらな?」

 

 ベルと屑が武器を構える。

 

「ただ、勘違いするんじゃねえぞ、クソガキ」

 

 

「これは…てめえをなぶり殺しにする見せ物(ショー)だ!」

 

 あ、屑が担いだ大剣を降り下ろして砂煙を立てて、その隙に透明になった。

 気配が駄々漏れだなあ、俺だったら三秒で終わらせれるな、ベルだったら大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いぞ!もっとやれ!」

 

「生意気な小僧の鼻っ柱をへし折ってやれ!」

 

 周りの冒険者がうるさい、いい加減にすっ飛ばそうかな…

 すると少し離れた位置に居る冒険者に矢が飛んで来た。

 あれは…ヘスティアと一緒に来た連中とヴェルフ達か!じゃ、俺も暴れますか。

 

「ピッキィ!(オラァ!)」

 

 近くに居た槍を持つ冒険者をすっ飛ばした。

 

「へ?ーーー」

 

 冒険者は木を一本へし折って、その向こうにある木にぶつかり気絶した。

 

「ピキキ(ヴェルフ、助太刀するぞ)」

 

「メタル?居たのか!」

 

 さーて、何人すっ飛ばせるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピキィ?(さて、粗方すっ飛ばしたかな?)」

 

 自分が引き受けた冒険者を全員すっ飛ばした俺は、ベルの戦いの場所に向かっていた。

 

「ピキィ(お、ベルが優勢だな)」

 

 ベルは透明になっている屑の場所を気配で割り出し、何度も何度も攻撃を加えていた。

 

「ピキィ(うっわぁ、顔の側面に回し蹴りがクリーンヒット、痛そう)」

 

 どうやら透明化のタネは頭に付けて居た兜の様だ、兜が砕け散り、透明化が解けた屑はふらふらと体を起こし、ベルを睨み付けて居た。

 

「やーめーろーー!」

 

 ヘスティアの一喝により、周りがピタッと止まった。

 

「ベル君達、ボクはこの通り無事だ!無駄な争いは止すんだ!」

 

 その声を聞いたベルとヴェルフ達は戦闘体制を解いた。

 

「神の指図何かに構う必要はねえ!てめえらやっちまえ!」

 

 既に半壊寸前になっていた冒険者達が屑の声を聞き、また武器を構えた。

 

「ーー止めるんだ」

 

「ーーっピ!?(ーーっく!?)」

 

 ヘスティアが一言放った瞬間、周りの空気が一変した。

 

「剣を引きなさい」

 

「う、うわああぁー!!?」

 

 一人の冒険者が逃げたのを皮切りに、次々と冒険者達が逃げて行く。

 冒険者達が逃げ去った後には、静けさだけが残った。

 

「ピキィ…(ヤバかった…俺が気圧される何て、これが神か…)」

 

 ヘスティアが一言放った時、ヘスティアの存在感が爆発的に上昇した。

 そして俺はその瞬間、あの世を幻視した。

 あの世何て見た事は無いが、それでも幻視でイメージ出来てしまう程の実力の差を本能的に理解してしまった。

 

「ピキ?(何だ?)」

 

 この階層の中心にある太陽の役割を持つ結晶から濃密な気配を感じた。

 この感じは…

 

「ピキィ?(ボス?)」

 

 瞬間大地が揺れた。

 

「ピキィ!?(何だ何だ!?)」

 

 先程濃密な気配を感じた結晶に目をやると…

 巨大な何かが中で蠢いて居た。

 

「ピキィ(あの大きさ…間違いない、ボスと同じ大きさだ)」

 

 何故ボスと同じ気配を感じる?ボスは十七階層から動かない筈だ、あの中に居る影は一体…?

 あの巨大な何かが結晶内に現れた直後から、恐らくこの階層に居るモンスター達の遠吠えも聞こえて来る。

 遠くからも何かが崩落する様な轟音が響いて来た、いや…あの方角は…

 

「ピキィ…?(洞窟が…塞がった…?)」

 

 どうやらこの異常な事態からは逃れられないらしい。

 先程から大きな音を立てて崩れる結晶を見ていると…

 

 

 まるで理性の欠片も感じられないボスの姿をした、ボスではない黒い体のナニカがその巨体を結晶から現した。

 

 俺はベル達に駆け寄った。

 

「ピキィ!(ベル!)」

 

「メタル!ここに居たのーー」

 

『オオオオオオオオオオオオォォォッ!!』

 

 巨大なモンスターは、太陽の役割をした結晶を粉砕し、体を半ばまで姿を現し、重力に従い落下を始めた。

 その巨体を落下させたモンスターは、空中で体勢を立て直し、中心にある大樹を踏み潰した。

 太陽の役割をしていた結晶が粉砕され、この階層は明るさを失っていた。

 ひび割れている青空を模した結晶だけが残され、この階層はまるで夜の帳が降りたかの様な薄暗さに包まれた。

 ボス…いや、ゴライアスはゆっくりと顔を上げ、潰れた大樹から飛び降りた。

 近くに冒険者が居たのか、黒いゴライアスはやや下の方へ向き、咆哮を放った。

 

『ーーオオオオオオオオオアアァッ!!』

 

「何だ、あれは…!」

 

「黒いゴライアス…!?」

 

 ベル達は驚愕に目を見開いている。

 

「あのモンスターは多分…ボクとヘルメスを抹殺する為に送られて来た刺客だ」

 

 ダンジョンは神を憎んでいるらしい、ヘスティアが言うには、神を見付けたダンジョンが、神を殺す為、退路を塞ぎ、ゴライアスを刺客として放ったらしい。

 

「ピキィ(関係無いな、あいつが居ると皆御陀仏何だろ?じゃあ先に行かせて貰う!)」

 

「あ!メタル!」

 

 俺はゴライアスに向けて走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴライアスの近くにたどり着いた俺が見たのは、咆哮により吹き飛ばされて行く冒険者達だった。

 

「オオオオオオオオォォォッ!!」

 

 ゴライアスが天を仰ぎ雄叫びを上げた。

 その雄叫びは十八階層隅々まで届き、何かを呼ぶかの様だ。

 現に呼び出されたのは、この階層に居るモンスター達だった。

 

「ピキィ!(メラミ!)」

 

 おれはメラミを放ち、ゴライアスは火柱に包まれた。

 だが…

 

「ピキィ!(ちっ!まだ健在か!)」

 

 ゴライアスの表皮を焦がしただけで、奴は健在だった。

 

「ーーふっ!」

 

「おおおおおおお!」

 

「ハァアアアアア!」

 

 だがそこにベル達と一緒に居た人間達が追撃を加えていった。

 

「ブモォ!(メタル!無事か!)」

 

「ピキィ!(ミノ!来たのか)」

 

 ミノがこの騒ぎを聞き付け駆け付けて来た。

 

「ピキィ…(本当に皆が本能に飲まれてる…)」

 

「ブモォ(ボスの言っていた事は間違いは無かったのか)」

 

「ピキィ(そうだな…けど先ずは)」

 

 俺はゴライアスに視線を向け。

 

「ピキィ(あのボス擬きを倒すのが先だな)」

 

「ブモォ(おう、そうだな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピキィ!(これじゃじり貧だ!体当たりが丸で堪えてねえ!)」

 

「ブモォ!(くそっ!俺じゃ近付けねぇぞ!)」

 

 俺の体当たりはゴライアスにはあまり通じず、ミノは単純に近付けない、このままじゃ持久戦に持ち込まれて俺以外が全滅する!

 しかも開幕メラミを喰らわせた傷が治ってやがる。

 これは…メラゾーマ以上の呪文を使うしか無いのか?

 

「…ピキィ(…ミノ、ちょっと周りのモンスターから俺を守って居てくれ)」

 

「ブモォ(わかった)」

 

 俺はメラガイアーの準備に入った、その瞬間。

 

「ファイアボルト!」

 

 ベルの声が聞こえた瞬間、稲妻の形をした炎がゴライアスの頭部を殆ど消し飛ばした。

 

「ピキィ(すげえな、ベル…いや、まだだ)」

 

 消し飛ばした頭部から赤い粒子を発しながら、高速で再生して行った。

 その瞬間、俺はメラガイアーの準備を進めた。

 

「ピキィ…(魔力を集中、業火をイメージせよ…)」

 

 すると、周りを濃密な魔力が覆う。

 

「オ、オオオオォォォッ!!」

 

 ゴライアスは本能的に危険を察知したのか俺の方へ向かって来た、だがな…俺の方が早い!

 

「ピッキィ!!(喰らえ!メラガイアー!!!)」

 

 光球が俺から発射され、ゴライアスに当たる、すると…

 

「オ!ガアアアアアァァ!!!!?」

 

 ゴライアスが巨大な火球に包まれた。

 一言で表すならこれは、灼熱地獄。

 ゴライアスの表皮を溶かし、肉を焼き尽くし、骨を跡形も無く燃やし尽くした。

 

「アアアアアァァ…」

 

 やがてゴライアスの悲鳴は聞こえてこなくなり、炎が消えた跡には何も残らなかった。

 

「ーーーー………」

 

 静寂に包まれる戦場、モンスターや冒険者の表情は全て驚愕に包まれていた。

 

「……い、やっほぉーー!俺らは生き残ったんだ!」

 

 一人の絶叫を皮切りに、周りは喜びに包まれた。

 モンスター達は急いで逃げて行き、辺りには冒険者達だけが残った。

 

「メタル!すごい!すごいよ!ゴライアスを倒せるなんて!」

 

 ベルとヴェルフが駆け寄って来た。

 

「ブモォ(本当にすげえな、メタルは。俺なんか一撃もあいつを殴れ無かったぞ)」

 

「ったく、お前は!あんな手札があるなら始めから使えっての!」

 

 あの呪文を使えたのはこの広い場所のお陰であって、しかも威力が高いからあまり使いたく無かったんだよな。

 

「ベル様ー!ヴェルフ様ー!」

 

「君達!大丈夫かい!」

 

 リリとヘスティアもこちらに来たみたいだ、ん?リリのバックパックに付いているあの武器は…

 

「良かったです、皆様御無事で」

 

「遠くからでもわかったよ、ベル君達は良く頑張った!」

 

「ん?リリスケ、その武器は何だ?」

 

 あ、それ俺も気になってた。

 

「これ、ですか?ベル様に渡そうと思ったんですけど…どうやらメタルがゴライアスを倒したみたいですし、こんな大きい物を運んで損しました」

 

「ピ、ピキィ(いや、それはすまん)」

 

 俺達は互いに笑いあったが…俺は周りの異変に気が付いた。

 

「ピ?(ん?)」

 

 周りがやけに静かになったと思ったら、何故か周りの冒険者達が止まっていた、そう…まるで時を止めた(・ ・ ・ ・ ・)様に。

 

「メタル?どうしたの…え?」

 

 ベル達も気が付いた様だ、周りを見渡している。

 

「どうなってるんだ?こりゃ…」

 

「これは…いや、神の力(アルカナム)の行使は地上では禁止の筈だ、でも何故?」

 

 俺も集中して考えていると…

 

「ブモォ(なあ、上見てみろよ)」

 

 上?俺は上を見てみると…

 

 

 光る陣の様な物が、浮かび上がっていた。

 

「な、なんだい!?あれは!」

 

「あ!何かが出てきます!」

 

「新手の敵か!」

 

 なんだろう…あの光を見ていると…何かを思い出しそうで…

 すると俺の頭に激痛が走った。

 

「ピッ、キィィィィィィィィッ!?(痛っ、ガアアアアアァァ!?)」

 

「メ、メタル?」

 

「キィ…キ、ピ(くっ…は、はぁ)」

 

 痛みは直ぐに引いた、体に異常は無いが…

 

 

 

 全部思い出した、前世の記憶も、俺がどうしてメタルスライムになっているのかも、全部、全部思い出した。

 そして、あの光と出てきたあの方も。

 

「…やっと見付けました、はあ…手間が掛かるお人ですね」

 

 白い天使の様なドレスに身を包んだ、俺を転生させた創造神様が姿を現した。

 

 

「…君は神かい?周りの時を止めたのも君の様だけど」

 

「その質問には肯定します、神ヘスティア。私は創造と管理の神[クリエイト]と申します」

 

「クリエイトって…ちょっと安直過ぎないかい?その名前」

 

「いえ、私位の神は皆、安直な名前の方が都合が良いのですよ」

 

「そうかい、じゃあ何で君は降りて来た?」

 

「…それは」

 

「ピキィ(クリエイト様、俺が話します)」

 

 クリエイト様がここに来た理由は恐らく…いや、確実に俺が関係している、だから俺が説明する為にクリエイト様に申し出た。

 

「あ、ではあなたを一時的に人間に戻しますね」

 

「え?それってどういう…」

 

 俺の体が、少し発光し、目線が段々と高くなって行く。

 

「メタル…?え?えぇー!?」

 

 俺の体は、前世とまるで同じ体に戻った、俺の見た目は黒髪スポーツ刈りに白色ジャージにジーンズだ。

 

「っと、この姿では初めまして、だな。俺はメタル、メタルスライムだ」

 

「え?えっと?ど、どうしてメタルが人間に?」

 

「クリエイト様に戻して貰ったんだ、元の姿にな」

 

 皆が驚愕している。

 

「そ、それがお前の本当の姿だってのか…」

 

「いや、正確には前世の姿かな?」

 

「前世…?つまりメタルは…」

 

「おう!一回死んで転生したってわけだ!」

 

「「「え、ええええぇ!!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけだ、まあ色々あったが、ここに居るのは多分…あれが原因だろ?クリエイト様」

 

「ええ、あなたが天界にある私の神殿で、メラガイアー(・ ・ ・ ・ ・ ・)なんて試し打ちしなければ、あなたは本来の世界(・ ・ ・ ・ ・)に転生出来たのです」

 

「ま、まあそれでベル達に会えたから、結果オーライって事で…」

 

「メラガイアーってなんだい?」

 

「ああ、メラガイアーはゴライアスを焼き尽くしたあれだな」

 

「…そんなものを屋内で放ったのかい、そりゃ力が強すぎて、世界を移動するのに影響が出るに決まっているじゃないか」

 

「いやあ、面目ない」

 

 いや、だって神殿は壊れないって言うから転生する前に試し打ちしたくなるじゃないか。

 

「今回あなたがメラガイアーを使用して下さったお陰で、あなたの魔力を感知出来た為、こうして迎えに来たのです」

 

「じゃあメタルは…」

 

「転生する筈だった世界に行くのか…」

 

「じゃあ何故リリ達の時が止まっていないのですか?迎えに来ただけなら、全員の時を止めれば良い話ではありませんか?」

 

 お、リリが尤もな質問をしている、俺も気になるな、何故ベル達だけ時を止めてないんだろう?

 

「それはあなた達がメタルとある程度の信頼関係を築いたからです。

 目の前からメタルが消えたのならあなた達は疑問に思うでしょう?そうしたら、運命が狂ってしまいます。

 私は創造と管理の神ですから、下手に運命を狂わせる訳にはいきません」

 

「ブモォ(メタル、行っちまうのか)」

 

「ああ、俺は違う世界に行かなければならない…なあに!縁があればまた会えるさ!」

 

「…ブモォ!(…ああ、俺は大丈夫だ!安心して行ってくれ!)」

 

 ミノとはここでお別れか、思えばミノと居るのは楽しかった…本当に楽しかった。

 

「あなたは一番信頼をメタルから寄せられている様です。

 ですがメタルが居なければ直ぐに倒されてしまうでしょう。

 …あなたにこの力を授けます、どうか受け取って下さい」

 

 ミノに光が纏わり付く、これは…

 

「ブモォ?(これは、力が沸いて来る?)」

 

「え?ミノの背中に恩恵(ファルナ)が浮かんで来ました!」

 

 何?恩恵?

 俺はミノの後ろに回り、背中を見た。

 

 

  Lv   1

  力   0 I

  耐久  0 I

  器用  0 I

  敏捷  0 I

  魔力  0 I

 

 《魔法》

 [仮初人化(トランス)]

 ・人化魔法

  詠唱『我、人の姿を求める者なり』

  解除『我、人に属さぬ者なり』

 [ ]

 

 《スキル》

 [親友ノ絆(メタスラソウル)]

 ・早熟する

 ・それは親友が自分を思う心だ

 ・

 

 

 は、恥ずかしいな…親友ノ絆(メタスラソウル)って…、まあそう簡単に死んで欲しくは無いからな。

 

「さて、そろそろ行きますよ」

 

「はい、クリエイト様。それじゃ、じゃあな皆!」

 

「メタル!メタルが居なかったら駄目かもしれなかった所は少なくは無かった、今までありがとう!」

 

「リリはあなたに助けられた事は一度や二度じゃありません、寂しいと思う事も無いわけではありません、ですがここはこの言葉を送らせていただきます…ありがとうございます」

 

「俺はお前とあって日は浅いが、それでもお前には世話になった、礼を言うぜ!ありがとよ」

 

「ボクはまだあって二日だ、だけどその前には君はベル君を…ベル君達を助けていてくれたんだよね、ありがとう。

 もしかしたらまた会えるかもしれないけどね、オラリオに来れるなら、だけど」

 

「ブモォ!(メタル!お前は俺の命の恩人だ、そして親友だ。いつか、また会えたらいいな!またな!)」

 

「…ああ!またな!」

 

「では、行きましょう」

 

 俺はクリエイト様に連れられ、光の中に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談

 

 ベル達は殆ど正史と変わらない道を歩んだ、そこにミノが加わるといったイレギュラーはあったが。

 

 そしてメタルは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピキィ(ここは…どこだ?)」

 

 洞窟みたいだ、今居る所は両側の壁に三つの通路があり、天井を支える柱が何本かある。

 

「ピキ(誰か来た)」

 

 後ろを振り返って見ると二人組がいた、紫色のターバンとマントを身に付けた男と、緑色の髪の毛で旅人がよく着そうな服を着た男。

 

「…ピキィ(…この世界って5の世界…?)」

 

 

 The fin

 

 




完☆結!
いやあ、ここまで読んで頂きありがとうございます
この小説は特に考えず適当に書いていたのですが、ここまでの人気が出るとは思わず…途中からちょっと本気で書いてましたww
皆さんドラクエ大好きなんですねぇ
最終話はちょっと変な所が多かった気がするので、修正するかもしれません、感想で変な所はドンドンビシバシ言っちゃって下さい

次回作については活動報告に乗せてますので、そちらをご覧下さい。
ではでは!また次の小説で!

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