もしもカズマがプリヤの世界に行ったら。   作:こしあんA

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皆さんお久しぶりです
ゴブリンスレイヤーの小説3巻買ってきてかなり読んでおり、これに手がつきませんでした。許してくださいなんでもしません!
しかし!今回は一万字を超えました。

そう言えばですね。お宝を見つけました。小学一年生くらいかな?
ドラえもん三時間スペシャルを録画してDVDに残してあってそれがなんと!『ドラえもんのび太の魔界大冒険』でした!


6話 この剣の世界で決着を!

 大地を揺らし、向かい来るギリシャ神話の大英雄ヘラクレス。

 そんな強者を相手に両手を地面に突き刺した杖に置き、前を見据え堂々と立ち、視線を敵へと向けるアイルランドの大英雄クーフーリン。

 

 自慢の槍を取り上げられようともその品格までは無くならない。

 

 やっと強者と戦える。

 それ故か早く戦いたいとウズウズし落ち着かない。鼓動は高鳴るばかりだ。

 

「さて、おっぱじめるとするかね!」

 

 あらかじめ仕込んでおいたルーン魔術を起動。

 彼方から響く爆発音。それでも奴の進行の歩みは止まらない。

 彼はキャスターの特権である魔術を行使する。

 身体強化で肉体を限りなく全盛期に近づけ、自身の杖に炎を象徴するルーン文字を刻み、力を付与する。

 

 今やれる事はもうやった。あとは戦地に赴くのみ。

 早く戦いたいと体が動き出し、彼我の距離はもう既に10メートルにまで迫っていた。

 手を伸ばし空中に次々とルーン文字を刻む。文字はやがて白く輝き、やがて火球となりて射出される。

 それに紛れ込み、自身も肉弾となり駆け出す。

 

 火球はビーサーカーに命中するも、鋼鉄の鎧のような筋肉に阻まれ、バーサーカーの身体には手で掻いたような些細な痕ができ、煙が発生するだけ。

 だが、その煙はバーサーカーの視界を覆い尽くす。

 

 地面を蹴り、跳躍。バーサーカーの頭上へと回り込み、落下の勢いを乗せ、杖の握り手で脳天へと振り下ろす。

 鉄筋コンクリートの壁を叩きつけたような衝撃が手首を襲う。

 

「流石にびくともしねぇか」

 

 獅子のような雄叫びを上げ、岩石からくり抜いたような斧剣が空高くから振り下ろされる。

 振り下ろされた一撃は大地を揺さぶった。

 右へと転がり、回避。その後ルーン魔術で牽制し、スライディングでバーサーカーの大人一人通れるような股を潜り抜け、背中へと回り込む。

 先程の魔術攻撃と比にならない量のルーン文字を次々と空中に刻んでいく。

 

「とっておきだぜ」

 

 50は優に超える火球は輝きを帯び、バーサーカーの背一点に向け集中砲火。

 火球はマシンガンの如く連続で射出され、バーサーカーの表面に傷を付け焼いていく。それは次第に小さな傷口となり、遂に火球は肉を喰い千切り、燃やしていく。血液は煮えたぎり、火球は内臓へと辿り着き、引火する。

 心臓が燃え尽きる頃には、もう既に絶命していた。

 バーサーカーにとっては耐え難く、無限にも感じた苦痛の時間は10秒にも満たなかった。

 

 

 それでも食い千切られ、燃やされた身体は呪いによって細胞ごと再生する。

 

「■■■■■■ーーーーッ!!!」

 

 鼓膜が破れてしまうような轟音。何を言いたいのかは分からない。それでも言葉にならない雄叫びは、まだまだ序の口だと言っているようであった。

 

 一回、二回、三回と振り下ろされる斧剣。奴はまるでその攻撃しか知らないような攻撃を繰り返す。

 だが少しでも受け損なえば致命傷。最悪『死』

 死神はいつだって鎌の刃をキャスターの首に添えている。

 

 それを避け杖の先端、石突を突き出すが、振り下ろした斧剣を無理矢理起こし、斧剣の腹で受け、飛び蹴りを繰り出す。

 

 そんな最中彼は呟く。

 

「我が魔術の檻。茨の如き緑の巨人」

 

 自分を律するかのように。

 右へ、左へと避け、身をよじり、相手の動きを見切り、回避する。

 

「因果応報、人事の厄を清める社。倒壊するはウィッカーマン。焼き尽くせ木々の巨人」

 

 互いに一歩も引かぬ戦い。

 動く度、熱が上がり、血液が滾る。彼らは戦う度、アドレナリンが湧き出て、脳は回転し、戦闘前より視界が広くなる。

 

 

 より戦いは激化する。

 

 

 

 過去に名を馳せ、雄々しく散って行った英霊達。出会うことのない彼らは出会い戦う。

 この光景を目に焼き付ける者はいない。歴史には残らない。残ってはいけない。戦いが終われば一輪の花のように儚く散る。それが英霊。

 

 

灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)

 

 突如として姿を現した木製の人形。木一本まるごと切り、木同士を編んだようなあまりの巨大な人形。バーサーカーの三倍の高さを有していた。

 中身は何もなく、胴体はまるで鳥籠のよう。

 

「さあ、出し惜しみは無しだぜ」

 

 拳を握り、天高く掲げ、バーサーカーへと振り落とす。

 バーサーカーはまるでそれに応えるかのように剣を地面に突き刺し、広く、鋼のように硬い胸板を前に出す。

 遂に拳は振り落とされる。

 バーサーカーはそれを胸板で受け止めてみせた。

 凄まじい衝撃。バーサーカーの足元にはクレーターが形成されていた。

 

 だがこの程度ではこの鋼鉄の化物を打ち破れない。

 バーサーカーは人形の手をその丸太のような巨大な両腕で抱きしめる。

 恐ろしい程の怪力に木はミシミシと悲鳴を上げ始めた。

 

 両足を軸に身体を捻る。すると、なんと自分の何倍もの大きさの人形が浮き上がり、ハンマー投げのように回り始めた。

 回り続け、次第に小さな風が発生し始めた。

 風はいずれ嵐となる。それも長くは続かない。

 バーサーカーが手を離し、人形は遥か彼方へと吹き飛ばされる。人形は住宅街へと背から墜落し、家宅を破壊する。

 

 大地を揺らし、駆け出す黒い影。バーサーカだ。

 バーサーカーは投げ出した直後自動車のような速さで追いかけて来たのだ。

 跳躍し、勢いの乗ったまま飛び蹴りを人形の顔に見舞う。

 それだけで顔は原型が無くなり、紙をくしゃくしゃにしたように歪む。

 

「それ、今だ!」

 人形は右手で動きの止まったバーサーカーを捕まえ、左手で自身の胴体にある扉を開く。

 バーサーカーは雄叫びをあげながら両腕に力を入れ、拘束を解こうとする。

 しかし、軋み、手が悲鳴をあげることはあっても拘束は解けず、より一層握る力は強まり、鋼鉄の身体に指が食い込む。

 遂にバーサーカーは人形の空の胴体の中へと閉じ込められた。

 圧倒的な威圧感を放っていたバーサーカーも今では籠に閉じ込められた鳥。

 脱出を試み、辺りを殴り抵抗を続ける。

 だが人形は脱獄を許さない。我が身を焼き、自らを炎の監獄とし、バーサーカーに死刑を下す。

 業火は直ぐバーサーカーへと燃え移り、肉体を焼く。

 肉は黒く焦げ、神経が焼け爛れ、血液は煮えたぎり蒸発する。

 死神の鎌はバーサーカーの首元まで近づいており、刈り取る首を愛でるように撫でている。

 己の身が焼けようとも抵抗は続く。死が近づくたび、よしやってやろうじゃないかと力がみなぎる。

 遂に網目の木材が炎と暴力に繊維は負け千切れかける。それに追い打ちをかけるように引きちぎり小さな穴ができる。その隙間に両手を突っ込み、引き裂く。

 小さな穴はやがては大きな穴へとなり、やっと人一人分通れる穴が出来る。だが、バーサーカーのその巨大な体躯ではまだ通れない。

 

 と、その時バーサーカーの動きが止まった。

 バーサーカーは業火でその身を焼かれ、死神に首を刈り取られ命は尽きていた。

 鋼鉄の肉体は燃えかすのようになり情けなかった。

 

 

「流石に脱出の一歩手前までやられるとは思わなかったぜ」

 その声は驚いているというよりも、どこか相手を賞賛しているようであった。

 

 炭となった身体はまた呪いによって細胞ごと再生し、元通りとなる。

 再生したと同時に頭上から杖を振り下ろし、襲い掛かる。

 

「ハァァァッ!」

 

 鐘を鳴したような音が鳴り響き、杖は叩いた反動で跳ね返る。

 効き目が無いとわかるや否やバーサーカーの顔面を踏み台とし、跳躍と同時に火球を撃ち煙幕を発生させ牽制。

 空中へと避難。

 

「なっ!」

 

 突如煙の中から巨木と勘違いするほどの腕が伸び彼の足を捕らえた。

 その光景はまさに恐怖だった。

 捕らえられたキャスターは宙ぶらりんとなる。

 

「こっの!」

 

 杖から火球を放つ。

 無駄だとは分かってはいるが抵抗しないほどキャスターは腑抜けていない。

 

 効きはしない。それでも目障りと感じたのか握る手を強める。

 無駄なく鍛え上げられた彼の筋肉は圧縮、潰され、鉄のように丈夫だった骨はミシミシと悲鳴をあげる。

 

「ガアァアッ!」

 

 折れた。へし折られたのだ。血管も破裂し内出血を起こす。折れた骨は神経を切り裂き、内側から焼かれるような痛みが走る。

 

 そうそう味わうことのない痛みに苦悶の表情を浮かべ、その声を聞いたら二度と忘れることのできないような悲痛な叫びを上げる。

 

 バーサーカーは子供がオモチャを振り回し遊ぶかのようにキャスターを振り回す。

 彼にはとてつもないGが降りかかり、意識は薄れ、肺は縮まる。眼球には血液が溜まり、視界が真っ赤に染まる。

 

 顔から地面に叩きつけられ 、皮が磨り減り、剥がれ、筋肉が見えた。

 

「……クソッ!!」

 

 振り回され、何度も地面に叩きつけられ、視界が赤く染まり、ボヤける中虚ろな目で狙いを定めルーン魔術を放つ。

 しかし、傷など付くことはない。

 

「いい加減……にしやがれ!」

 

 やけくそ気味に何十発もの魔術を放つ。それはビーサーカーの視界一面を覆う。それは顔面に雨のように降り注ぎ、煙が発生する。だが傷一つ付かない。

 

「おいおい、嘘だろ! さっきはそれ効いたじゃねぇ……」

 最後の言葉は発せられず、投げ飛ばされる。

 景色が次々と変わり、どこまで飛ばされるのか。

 次の瞬間、背が何かに打ち付けられた。

 塀だ。塀に打ち付けられた。

 塀には人形の跡が出来、彼の背骨は複雑に折れた。

 

 頭部からは血が滴り落ち、掴まれた右足まるで、デンプンにヨウ素液を垂らしたように青紫色へと変色し、そこだけ歪に腫れ上がっていた。

 

 バーサーカーはキャスターを投げ飛ばした後斧剣を回収し、彼へと向かう。

 

 杖を頼りに左足で負傷した足を庇うようにして立ち上がる。

 

「キャスターだからって油断したか?

  言っとくが、俺は割と手強いぜ?」

 

 右足が役に立たなくなった最中彼は無邪気に笑う。

 

 二人は惹かれ合うように前へと出る。

 突き出される一撃。喰らえば胴にポッカリと穴が開くであろう。

 左足で地面を蹴り右へと跳び、回避。だが、直ぐ横払いの一撃が迫る。

 手で着地。地面を押し空へと跳び回避。

 

 暴風とも表現できる凄まじいバーサーカーの猛攻。それを負傷した足を庇いながらも片手でバク転し、回避する。

 

「それ、大仕掛けだ!」

 

 彼の手の着いた場所にはルーン文字が浮かぶ。

 それはバーサーカーを囲み、魔法陣を形成する。

 

 真紅に染まる球体が現れる。近くにいるだけで皮膚が爛れるほどに熱く煌めいていた。正しく灼熱の太陽。

 

 それはバーサーカーを包み込む。

 中からはおどろおどろしい呻き声が響き渡る。次第にそれも小さく、弱々しいものとなっていき、やがて聞こえなくなった。

 

 聞こえなくなってから10秒ほどだろうか、内側から再び雄叫びが聞こえ、灼熱の太陽は振り払われた。

 

 彼は知らない。これが奪えた最後の命だということを。

 それでも戦いは続く。

 辺り一帯はそれに伴い、破壊される。

 

 

 柳洞寺を超え、大空洞へと続く一本道。

 一番前からダスト、マシュ、立香、白髪、俺という順番にいる。と言っても一列に並んでいるというわけではないが。

 

 ここら辺は寺という神聖な場所だからか、災害の火の粉は降り注いではいない。その代わり、辺りは薄暗く、空は赤黒い。『千里眼』スキルを持つ俺以外は足元の確認すら困難で、索敵どころでは無いであろう。

 

 鷹の目を持つもの以外は。

 

 弦が弾かれるような小さな音。その後金属と金属がぶつかり合う音がし、地面に何かが刺さった。

 それを弾いたのは最前列にいたダストだ。

 

「おいおい、こんな暗がりから俺の後ろの姉ちゃんを不意打ちとは、アサシンよりアサシンしてるな。転職を勧めるぜ、アーチャーさんよ」

 

 丘に見える弓を持った一人の男の姿。

 

「全く、私はとことんランサーに好かれているようだな」

 

 皮肉がかった聞き覚えのある声。

 

「悪いが俺にそんな趣味はねぇ、ボン、キュ、ボンの姉ちゃんを出しな。後酒」

 

「悪いが私も君のようなチンピラを相手にする時間の余裕は、ないのでね!」

 

 矢を再び番、マシュへと狙いを定める。

 

 その最中前へと出る者が居た。

 

「よ、よぉ。『次会う時は英霊の座で会おう』だったか? なるほど、ここが英霊の座かぁ〜」

 

 俺はニヤニヤと顔を緩め、アーチャーに問いかける。

 その瞬間アーチャーが信じられないものを見たかのような顔をし、硬直した。

 

「………さあ、何のことかね?」

 

 アーチャーは弦から矢を外し、空中に無数の剣を投影する。剣先は俺へと向いていた。

 

「あ、あの。アーチャーさん!」

 

 アーチャーの目が笑ってない。背筋に寒気を感じた俺は一目散に逃げ出した。

 後ろに振り向く瞬間アーチャーの額に青筋が浮いていたのが確認できた。

 

 

 剣は容赦なく降り注ぐ。

 

「ギャァァァッ!!許して、許したください。アーチャーさん、

 いえ、アーチャー様! さっきのは冗談です。ですからどうか弱き私めをお許し下さい。そしてどうか剣を下ろしてください!」

 

 畜生! あいつ覚えとけよ。今度ソシャゲ感覚でお前が出るまで英霊召喚してやる。出たら扱き使ってやる!

 

「おいおい、あんまりうちのマスターを虐めると後が、怖いぜ!」

 

 疾風の如く駆け、突如としてアーチャーの目の前へと現れ、槍を振り下ろす。

 後ろへと大きく跳び、手に持つ矢を再び番、放つ。

 矢は真っ直ぐと飛翔し、ダストを射抜くかと思えた。だが目の前で磁石のS極とS極のように矢は離れる。

 

「矢避けの加護の前じゃご自慢の弓矢は使えねぇだろ! フハハハ、俺TUEEE!!!」

 

 彼はケラケラと嗤う。

 

 地面を蹴り駆け出す。

 槍を短く持ち直し、身を乗り出す勢いで突き出す。

 決まった。心臓のコース。そう思えた。

 

「あっ、なんだそれ……?」

 

 あまりの異常さに間の抜けた声がこの静寂に響き渡る。

 聞こえたのは槍が肉を引き裂く音では無く、金属の音。黒と白。二つの剣が無から現れ、槍からアーチャーを守ったのと同時に、破損し、二分の一の大きさになる。

 それを投げ捨て、新たに一寸違わず同じ白黒の剣が現れる。

 

「剣士の真似事か? あいつがお前らを気に食わない理由が今分かった」

 

「また彼か、クラスは変われど思考までは変わらぬか」

 

 互いに距離を取り仕切り直す。

 

「おい、お前ら先に行け。今も奮闘しているであろうあいつのためにもな」

 

「「「「了解」」」」

 

 俺たち四人はそう言って走り出した。

 

「それと盾の姉ちゃん。こいつがお前を狙ったって事はセイバーに近づかれたら問題があるんだろう。つまりお前がこの戦いのカギを握っている。その盾でしっかりと守ってやれ」

 

「はい!」

 

 ダストに呼ばれ、止めた足は再び動き出す。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 カズマ達が見えなくなりこの場には二人の者が残っていた。

 

「お前案外優しいのな。俺が喋っている間、簡単に攻撃出来ただろうに」

 

「何を言うか、白々しい。君は会話の間、一瞬たりとも視線を私から外さなかったではないか。それに君のマスターとて姿が見えなくなるまでこちらを凝視していたではないか。君も分かっていたであろう?」

 

「さあ? なんのことやら」

 

 地面を蹴り、疾風の如く駆け出す。ダストが先手を取った。

 繰り出される一撃。穂先は弾丸のように速く、鋭い。

 二つの剣を上へと振り払い、穂先はアーチャーの頭上を通り越した。

 

 二つの剣を振り払ったと同時に姿勢を低くし、駆け出す。

 ダストの懐へと潜り込み、斜め十字に交わる二つの剣を斜め下に振り下ろし、ダストの腹部へと襲いかかる。

 が、引き裂かれる事はなかった。

 

 放った槍を懐へと戻し、柄で防いだ。

 

「オラッ!!」

 

 身を捻り、回し蹴りをアーチャーへと繰り出した。

 

「グッ!!!」

 

 それは腹部へと的中し、吹き飛ばされ、手に持つ剣を手放してしまう。

 両足、片手を地面に着け勢いを殺し、着地する。

 目の前には先程自身を蹴ったダストが猛獣のような獰猛な瞳をし、こちらへと迫り来ていた。

 

 右肘を引き、左手を前へと出し、標準をアーチャーに合わせる。

 彼はもう攻撃の準備を終えていた。

 

I am the born of my sword (体は剣で出来ている)

 

 何を言っているのだと困惑し、ダストの歩みが一瞬止まる。

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)

 

 神々しい煌めきと同時に桜が花開く。

 放たれた槍はアーチャーを貫かんと前に伸びるが手を阻むようにして現れた光の花に易々と弾かれる。

 

 当然のように花に傷は無い。

 本来は七つあるはずの花弁は弱体化に因るものなのか3つしか存在しない。それでも、一つ一つが古の城壁と同等の防御力を誇る。

 

 

 あれを打ち砕くために、短く持った槍で何度も何度も突く。

 迸る閃光。

 どれほど突いたであろうか。百は突いたであろう。それでも目の前の花弁は傷付かない。

 

Steel is my body,and fire is my blood. (血潮は鉄で、心は硝子)I have created over thousand blades (幾たびの戦場を越えて不敗)Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく)Nor known to life.(ただの一度も理解されない)Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う)Yet,those hands will never hold anything.(故にその生涯に意味はなく)

 

 So as I pray,UNLMITED BLADE WORKS (その体はきっと剣で出来ていた)

 

 

 文字通り世界が変わった。

 この世界には草木の代わりに剣が生えた無機物の世界。剣は二つとして同じものはなく、それぞれ形、大きさ、柄が異なっている。剣は墓標のように突き立てられ主人の印をこの世に残そうとしているように見えた。

 

 

 それでも世界は後悔を払拭したように澄み渡るほど青く、雲一つない快晴だった。

 

「固有結界とやらか。アーチャーの癖して剣は使うわ、魔術は使うわ、暗殺は企てるわ。本当にカズマみてぇだな」

 

「ハッハッハッ、馬鹿にするならそれ相応の言葉使いを教えてやろう。これは隠しダネでね。驚いてくれて結構」

 

 アーチャーは近くに生える剣を抜き、剣先をこちらへと向ける。

 

「これから君が相手にするのは無限の剣。たとえ偽物であろうと二つたりとして同じものは無い。さあ、付き合ってもらうぞ。私の()が尽きるまで‼︎」

 

「上等だ、使い果たす前にその命を果たしてやる」

 

 二人は吸い込まれるように駆け出す。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ハァァァ!」

「ラァァア!」

 

 幾度となく繰り返される剣戟。

 いくらダストが攻めようとも彼は防御に徹し、全てを受け止め、時には避ける。

 いくら剣の質が悪く、すぐ壊せるからと言っても剣はどこからともなく彼の手へと飛び、彼はそれ全てを掴み逃す事はなく、しっかりと柄を握る。

 

 片手に握る剣を壊せば、もう片手で反撃され、その間に剣が飛んでくる。

 矢避けの加護で弾き飛ばせればいいのだが対象がダストではなく彼の為発動出来ない。

 

 彼は突然剣を空中に置くようにして捨て、後ろへと撤退する。

 

 槍をつく構えをし、前へと駆け出す。その時彼は不敵に笑う。

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

「……ッ!!!」

 

 ダストの足元に自分捨てた剣近づくと同時に剣を爆発させる。

 彼が一直線に逃げれば槍を持つダストは一直線に追いかけるしかない。その一直線上に剣を捨て、ダストが近づいたと同時に爆破。

 

「クッソ! 危ねぇ、もう少しランクが高けりゃ足が吹っ飛んでた」

 

 ダストは本能的危険を察知したのか跳躍し、爆発から免れていた。

 

「オラッ!」

 

 何かが空中を切り裂く鋭い音。

 ダストは槍を投擲した。

 

 地面に生えた剣を飛ばし、槍に対抗する。

 剣は最接近すると同時に爆破し、威力を弱める。

 

「来い!」

 

 ダストは防がれると分かるや否や、着地と同時に愛槍を呼び戻し、手に掴む。目の前の彼はいつのまにか岩から刳り貫いた斬れ味もヘッタクレもない人が持つには巨大過ぎたものを片手で掴んでいた。

 

 

是・射殺す百頭(ナインライブズブレイドワークス)

 

 ダストは防御に徹し槍でいなそうとするが、神速を持って放たれる重い9連撃を全て受けきる事は出来ず、何発かが急所に命中する。

 

 四肢が引きちぎれそうなほどの激痛。

 だが、まだしっかりと役割は果たしている

 

「……ハァ、ハァ……ゴフッ」

 

 口から噴き出る血液。

 それは乾いた大地を潤す。

 

「……しぶといな、ゴキブリかなんか君は?」

「……悪いが俺は幾度となく俺を襲った借金生活により培った耐久力は伊達じゃないぜ」

「……戦闘継続スキルと言え。馬鹿者」

 

 息が上がっているのはダストだけではない。アーチャーもだ。

 あれほどの大技。固有結界を維持したままでの使用は彼の体にダメージが無いはずがない。

 

「私にももう余裕は無い。さあ、受け切ってみせろ」

 

 アーチャーの背後から数十、数百、数千、数万にも及ぶ名剣、宝剣、業物、神剣、魔剣、妖刀、鋭刃、鈍。一切の区別なく空へと羽ばたく。

 

 剣は豪雨の如くダストへと降り注がれる。

 ダストはそんなもの御構い無しに突っ走る。

 

 突風がダストの周りで発生し、剣はダストに到達する事はなく志半ばで死に行くように次々と地面へと突き刺さっていく。大半は。

 

 ダストの得た矢避けの加護は生まれつきでは無く、英霊となってからランサーのクラスたらしめる為後付けで与えられたもの。防げるのもCマイナスが限界であろう。

 

 突風に晒され、剣の多くが目標に辿り着く事なく志半ばで地面に突き刺さっていく。

 志半ばで絶えていった同胞の為にも、残った剣達は絶えていった剣達の遺志を継ぎ貫かなければならない。ダストを。それが例え我が身一本だけであろうとも。

 

 

 残った剣のいくつかは空を切る音と同時にダストの身を貫いた。

 鮮血が舞い、剣からは血が滴り落ちる。

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

 体を貫いた剣は爆発し、内側から肉体が壊れる。

 

 

 

 

 爆発し、煙が発生する。と、その時、煙から何かが飛び出し、光を反射する。

 ダストの槍だ。

 槍は一矢報いらんとばかりにアーチャーへと飛来する。

 それを槍だと認識した時、20メートルにまでも近づいていた。

 

 I am the born …(体は……)

 

 全てを詠唱し終わる前に槍はアーチャーの心臓を貫いていた。

 

「……ゴフッ、」

 

 口から血液を吐き出す。貫いた槍からは血が垂れ落ちる。

 

「……やけくそに投げた槍が当たったのか……お前相当運ねぇな」

 

 煙幕の中から足を引きずるようにして出てくるダスト。

 爆発により肉が吹き飛び、皮は張り裂け、筋肉や骨が露わとなり神経が空気に刺激され突き刺されるような痛みが全身を襲う。

 

「それにしても……何故手を抜いた

 

「さぁ、なんのことサッパリだが?」

「惚けるな。何故一本しか爆破しなかった? まさか一本ずつしか爆破出来ないなんて言わねえよな?」

 

 そう、まだ3本の剣がダストに突き刺さっていた。

 

 体に刺さった剣を抜く。その度に鮮血が宙を舞う。

 

「黙秘権を行使させてもらう」

 

「とことんふざけやがって。まあその分こっちの損害も少なくて助かった。それよりあの爆破の被害を最小限で防ぐ為に魔力をかなり使っちまった。

 マスターがあんなんだから魔力の補給も期待できない。それに今戦っているから魔力をもらうわけにはいかない。魔力をもらうが恨むなよ」

 

「別に構わん。それよりあの小僧に伝えろ。どうしてここに来たかは知らんが……イリヤを、そしてあいつを頼む!」

 

「誰かは知らんが分かった。血啜るからな。」

 

 槍を抜き、付着した血を舐める。

 

「ストローはいるかね?」

「……とことんふざけた野郎だ。一本貰おう」

「ああ」

 

 そう言い無からストローを創り出す。

 

 

 

 その数十分前

 ダストと別れ走り行く四人の影。

 

 俺は絶望の淵にいた。

 アタッカーを失ってしまった。

 

 立香ーー戦力外

 

 白髪ーー魔術師

 

 マシューー盾役

 

 どうしろと。

 俺にセイバーを倒せと! 無理!

 何! 対魔力って。エクスカリバーとか奪ってやろうか!

 

「グッ!!」

 

 そう、もう既に敵さんと衝突しています。

 

 アーサー王

 あいつの記憶のセイバーではなく俺が戦った時と同じ姿の黒いセイバー。

 あの時の生きた心地のしない感覚が戻ってくる。しかもあの時と比べ強さは段違いに強い。

 

 振り落とされるたび大地を揺らす。

 それを受け止めるマシュがどれほど凄いのかが分かる。なら俺はマシュとセイバーの攻防の最中セイバーに不意打ちをする。

 

 百式機関短銃を取り出し、着剣。マガジンを交換。

 突けば魔力が奪え、遠距離攻撃までもが出来る優れもの。ただあまりにも不恰好だった。

 

 潜伏スキルを使い彼女らの攻防の最中セイバーの背後へと回る。

 音を立てず、姿勢を低く保ち近づく。

 近づくにつれ彼女らの戦いで発生する突風の圧力は俺へとより強く降りかかる。あと7メートル。

 5メートル。

 

 もう限界だ。これ以上近づきたくない。

 強化魔術で百式機関短銃を強化。

 

 右膝を地面に着け、銃床を肩に当て狙いを定め固定する。

 狙うは後頭部。

 

「『狙撃』」

 

 引き金を引き、撃鉄が落とされ、百式の銃口は火を噴いた。

 全弾撃ち切るまで引き金から指を離さない。

 

 と、突然

 

「『回避』」

 

 体が動き、右へと転がった。

 未だ弾は撃ち終わっていない。

 

 先程自分がいた場所を見ると小さなクレーターが出来ていた。

 それでも彼女の攻撃は止まない。

 追撃の手が伸びる。

 

 来る、横払いだ。

 態勢は不完全。受ければ上半身と下半身はさようなら。

 百式機関短銃の銃床で受け止めた。

 

 木製の銃床には剣が食い込む。

 

 銃を前へと押しセイバーへと銃口向け発砲。

 

 ダダダダッ……と僅かに残っていたという発砲音だった。

 

 セイバーは百式機関短銃の銃床に食い込んだ剣を取るため、百式ごと空高く掲げる。

 俺は突然の事で百式機関短銃から手を離してしまった。

 

「お、おい。何する気だ! や、やめ……」

 

 百式機関短銃ごと剣を地面へと叩きつけ、百式機関短銃は原型を留め無かった。

 

「ガガガガアアアアアアアァァァッ!!!!!!」

 

 

 激しい怒りが湧き上がり、絶叫する。何も出来ずただただ日本軍の爺ちゃん達の魂とも言える武器が壊されるのを見ていただけの自分に無性に腹が立ち全身を掻き毟りたい衝動に襲われる。

 

「ぶっ殺す。『憑依経験、戦士』」

 

 全身にまたあの時の激痛が走る。

 

「スティール」

 

 立香の持つ俺の刀を奪い鞘から引き抜く。

 

「かかって来いよ、ブリカス野郎!」

 

奪えるだけ魔力を奪ってやる。




結構頑張った。みんな褒めて褒めて。
嘘です! すみません

いやぁ、アーチャーとカズマの会話あれのためにこれをやったってもんですからね。

アーチャーとカズマの戦いを書いている時グランドオーダーで『合わせたいな』って思って伏線の『おや、またなんちゃらかんチャラ〜〜』だけ入れときました。まさか本当にやるとは思わなかったです。


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