最近級友の雪ノ下雪乃がとっても可愛い件について 作:ぶーちゃん☆
尚、この作品にはるのんは一切出てきません。
なんと今回は超久し振りにこんなに早く更新できました!やはり香織効果か…(香織ではない)
そして第1話にしてなぜに夏休み前のお話なのか?なぜにこの時期から始めたのか?
勘のいい方なら、もしかしたらお気付きかも知れませんね♪
それは……
不可侵領域。
それは、決して侵入してはいけない場所。踏み込んではいけない範囲。そして、関わる人間全ての総意として、決して侵してはならぬという暗黙の了解が成された領域である。その“領域”には、場所や範囲といった物理的領域に限らず、気持ちや時間といった精神的領域も含まれる。
我がJ組一同の間で暗黙の了解とされている不可侵領域は、読書等を静かに楽しんでいる“雪ノ下さんの周り半径約一メートル以内”、そして“雪ノ下さんの貴重な時間”を意味する。
──窓際に咲く一輪の薔薇。もしくは百合(意味深)
窓際で一人、ベルベットのようになめらかに艶めく美しい黒髪をたなびかせ、静かに読書を楽しむ姿はまるで絵画のよう。
そんな、後世にまで残るであろう芸術品のごとき美麗なる光景には何人(なんぴと)たりとも触れてはならぬ──
要は雪ノ下さんのプライベートタイムは決して邪魔すんじゃねーぞ、美しく読書を楽しんでいらっしゃるお姉さまの姿は、ただ静かに愛でるだけにしとこうぜっ! という、クラス一同からの恐ろしいギアス。
それを破った者には、のちに過酷な試練が待ち受けているという。ちなみにクラスの皆(男子はクラスの皆には含まれておりません)のジュース買ってこいっていう、あまりにも恐ろしい試練があるとかないとか。
そんな、暗黙の了解どころか完全に決まりごとになっちゃってる不可侵領域を前にして、わたくし城堀は緊張の汗でぬめっとじとっとしております。
待て待て、美少女(自薦他薦は問いませんっ)に対してぬめっとかじとっとかって形容詞が付くはずないから、これは未だ明けぬ長い梅雨前線のせいだと思いたい。
──うひぃ〜……、心臓がバッコンバッコンするよぅ……。あ、なんかバッコンバッコンってちょっぴり卑猥☆
どうしてこんなにも緊張してるのかといえば(これ緊張してるのん?)、なぜなら私は今からその不可侵領域を侵そうとしているのだから。
緊張の面持ちと子鹿のように震える足取りで、本日のお楽しみは読書ではなくスマホ弄りらしき我が園の主へと、恐る恐る近づいてゆく私。
おぅふ……なんだかとても幸せそうな微笑みを浮かべていらっしゃるぜ雪乃嬢。せっかくのお楽しみの最中なのに、わたくしごとき下賤の者が邪魔しちゃってもいいのかしらん?
でも仕方のない事なのだ。だって、この帰りのHR前の空いた時間を逃してしまうと、本日はもう雪ノ下さんに声を掛ける隙などないのだから。
雪ノ下さんはご帰宅が早い。超早い。どれくらい早いかと言ったら、青銅聖闘士(ブロンズセイント)と白銀聖闘士(シルバーセイント)がマッハ一桁で命のやりとりをしている中、突然黄金聖闘士(ゴールドセイント)に光速で追いてかれてぽかーんってしちゃうくらいには早い。
てか黄金以外の聖闘士の存在意義!! 聖闘士の実力差がヤバすぎて黄金以外役に立つ未来が見えない件。
なんでマッハ1(青銅)、マッハ2〜5(白銀)の次がいきなり光速(マッハで換算すると880000)なんだよぅ! 最上位聖闘士と中間管理職聖闘士の差が、最早ごく一般的な地球人(戦闘力5のゴミ)がフリーザ様(戦闘力53万です)と相対するよりも絶望的だよ! これで同じ戦場に立てとか、アテナ様もなかなかの悪よのう。
てかせめて中間管理職のシルバーはもうちょっと頑張ってッ!
……おっと、私の中の小宇宙(コスモ)を燃やしすぎて、つい話が逸れちゃったぜ。
とにもかくにも、雪ノ下さんのお帰りは青銅と白銀もびっくりなくらいの早さなわけですよ。
そして確かに一年の頃から早かったけど、二年に進級してから……てか私たちJ組女子とのやりとりの中でもだんだん雪乃嬢スマイルが出るようになってきた辺りから、その早さは黄金級になった気がするのよね。
そんなに早く帰りたいのかなぁ……、そんなに私たちと過ごす時間が居心地悪いのかなぁ……、なんて、今までちょっぴり凹んでたりもしたけれど、それってもしかしたらその謎の部活とやらに起因してるのかも知れない。つまり早く部室に行きたくて行きたくて辛抱たまら〜ん! ってことね。
それはそれで少し悔しくもあるけれど、でもあの冷静沈着な雪ノ下さんをそこまでにさせる部活ってのにも興味あるし、そこまでさせてるのかもしれないっていう仲良しの友達の存在も、…………うーん、やっぱ悔しいよ? 悔しいんだけど、でもどこか嬉しく思っちゃってる自分も居るんだよね。
だって、一年の頃の雪ノ下さんて、学校に居る事がホントつまらなそうだったから。私たちとの学校生活なんて、ホントどうでもよさそうだったから……
でも最近の雪ノ下さんは……、うん、なんか、いい。
前とは比べものになんないくらい、毎日生き生きと過ごしてるのだ。
憧れのお姉さ……げふんげふん! 憧れの雪ノ下さんがそんな風になれるきっかけを作れたのが我らJ組一同じゃないってのはやっぱり悔しいけども、でもクラスメイトが……憧れの人が生き生きと学校生活を送れるようになったっていうのは、やっぱいいもんだよね。
だからその仲良し部活メイトちゃんには、悔しいけど感謝してんのよ私ってば。
ってなわけで、いま私が不可侵領域を侵してまでも雪ノ下さんとお話したいこと、確かめたいこと。
それはズバリ「雪ノ下さんってマジ部活やってんのー!?」でしょう! (まるおくん感)
× × ×
え、なに、お前マジ雪乃様のプライベートタイム邪魔すんの? お?
というクラスメイト達からの無言の圧力をひしひしと感じつつ、そちらは見ないフリして主へとまっしぐらな城堀にゃん。それはもうフリスキーくらいまっしぐら。
それにしても本日は読書じゃなくて携帯弄りなのよね〜、あの雪ノ下さんが。
──一体その画面にはなにが映し出されてるっていうの……? 一体なにが映し出されていたら、氷の微笑の君はそんなにも温かな笑顔を浮かべていられるっていうの……?
決して思ってはいけないことなんだけど、思わずそんな興味を持ってしまった愚かな私。でも仕方ないじゃない気になっちゃったんだもの。
だってあの雪ノ下さんがよ? 携帯見てニッコリしてんのよ? これで気にならなけりゃ、そんなやつぁJ組生徒の名折れってなもんですよ! J組の風評被害がスゴい。
でもこんなに幸せそうに画面見つめてんだもの。これ下手したら男子とのメールやらLINEやらのやりとりの可能性だってなきにしもあらずじゃない! そんなの由々しき事態でしょうが!
だからこれはJ組代表としては致し方ないことなの。ここは鬼になってでも検閲しないわけにはいかんのだ!
話し掛ける為に極限まで近づいていた私は、目標を雪ノ下さんから手元へと変更し、夢中になっている彼女に気取られぬよう細心の注意を払ってそっと覗きこんでみた。……す、するとそこにはッ……!
…………………………にゃ〜ん♪
『www』『ぬこw』『ぬこカワユス(・ω・)』『くっそwww』『かーわいぃぃぃぃ!』『【悲報】俺氏キュン死』
等々、ふざけたコメントがハイスピードで流れゆく事に定評のある某動画サイトのぬこ動画が映し出されていました。
な、なによ雪ノ下さん……! 雪ノ下さんてばニコ動とか観てんの!? いつもはスマホなんて見てないから、もしかしてさっきのお昼休みに例の仲良しちゃんから「こんなサイトがあるよー」とかって教えてもらったりしたの!?
いやいやそんなことよりも! そんなことよりもぉ! やだ、雪ノ下さんたら、ぬこ動画観てあんなに幸せそうに微笑んでらっしゃったのん……!?
【悲報】いやん! 俺氏キュン死! 雪ノ下さんに☆
……そう、これこれ、これなのよ!
あの一切隙を見せなかった雪ノ下さんが、ここ最近不意に見せるようになった隙。
彼女は学校生活において最近心にゆとりが出て来たのか、こうやってちょくちょく可愛らしい隙を見せてくれるようになったのだ。
これは我らJ組女子の間でもスーパーレアとされるラッキースケベ。スケベではない。
そのスーパーレアな隙だらけ雪乃嬢を目撃出来た女子は、一生分の運を使いきってしまうという。でもその後不幸に見舞われたみなは言う。一生分の運? なにそれおいしいの? と。
つまり例え運を使いきってしまったのだとしても、後悔など微塵も感じないってほどに、この隙だらけの雪ノ下さんの姿を拝めるというのは我らJ組女子の誉れ!
ちなみに先日雪ノ下さんの隙(なんかニコニコしてるなぁって思って見てみたら、スマホの待ち受けがパンさんのぬいぐるみ(プライズ品)だったらしい)を目撃する事が出来た女子は、両親の急な出張で、翌日からお弁当が三日間日の丸弁当だったらしい……ヒィッ、お、恐ろしい……!
そんなに恐ろしい目に遭ったと言うのに、彼女は満足な微笑みを浮かべながら安らかに逝ったそうじゃ……
そんなスーパーレアな光景に巡り合えた今日の私は幸せいっぱい眼福満腹。余は満足じゃあ。よっし、目的も達成したし、自分の席にもーどろっと。
……って、ちっがぁーう! 目的! 目的忘れてるよ私! どんだけハッピーな頭だよ!
ふぅ、あまりの可愛さに、危うく本来の目的を見失うところだったぜ……
「あ、あのっ、雪ノ下さんっ……? ちょっとよろしいでしょうか……?」
寸でのところで目的を思い出した私は、ついについに、クラスの禁を破り女の園の主に声を掛けた。くッ……、クラス中からの視線が痛い。
あ、ちなみに口調がエセお嬢様みたいでキモいのは仕様です。
すると私からの呼び掛けにビクンと肩を揺らした雪ノ下さんは、あわあわと慌ててスマホの画面を消しさった。可愛い。
「どうかしたのかしら、城堀さん」
凛とした佇まいで、耳に掛かった美しい黒髪を指でふぁさぁっと払う雪ノ下さんの頬はほんのり桜色。
やっべぇ、この人「あら、なんでもないのだけれど」と言わんばかりの澄まし顔のくせに、ぬこ動画観てによによしてるところをクラスメイトに目撃されたんじゃないかと、目一杯恥ずかしがってやがる。くっそ可愛い。
「ヒッ……! あ、ご、ごめんなさい、雪ノ下さん。大事な連絡の最中とかだったのかしら……?」
恥ずかしそうにもじもじしてる姿をもっと見てたかったんだけど、羞恥に頬を染めながらも、なんだか瞳には軽く殺意が込められてそうな輝きだったもんで、「私は決してなにも見てません」と必死でアピールする私。
ちな口調がお嬢様みたいでキモいのは仕様です。
「いいえ、別になんでもないのだけれど。……そう、なんでも」
いいか、この事は決して誰にも喋るんじゃねーぞという副音声と共に発せられた言葉に、私ってば無言でうんうん頷いちゃうの! だってマジこえぇ。
「それで、なにか御用かしら。あなたから話し掛けてくるなんて、とても珍しいわね」
無言の圧力に黙って屈した矮小なる私に満足したのか、ようやく殺意を消して下さった雪ノ下さんが優しく微笑んでくれる。
「あ、あのです、ね?」
……あ、やばい。
ここまできて途端に頭がクリアになって心臓がバッコンバッコンしてきたよ? やだ、バッコンバッコンってちょっぴり卑猥☆それはもういいわ。
ねぇねぇ私ー、よくよく考えたらさー、私から雪ノ下さんに話し掛けるなんて超緊張モノじゃんねー? なに気安く話し掛けちゃってるわけー?
聖闘士格差のブラック企業っぷり。クラス中からの視線。彼女は一体なにに夢中になってるのだろう、A.ぬこ動画。
めっちゃ緊張する行為のはずなのに、そんな様々な想いが絡み合って解れ合って、私ってばこうして二人で向かい合うまで、事の重大さを考えてなかったっす。聖闘士業界の悲哀のどうでもよさは異常。
「その、ですね? え、えへ?」
うっひゃぁあ! 今まで何人かで集まって当たり障りのない会話とかはしたことあるけど、二人でプライベートな会話とか無理無理無理〜! ふぇぇ! どうしよう超綺麗!
──こんなどうしようもないチキンで小市民な私ではありますが、一応これでもコミュ力には相応の自信があるカースト上位者な私ですよ。
肝の据わった女らしく、ここは一発見事な花火を、漆黒の夜空にパァッと打ち上げてやろうじゃございやせんか。
見よハリウッド、見よ世界、これがニッポン女児じゃ〜い!
「かっ、風に聞いたんですけど、雪ノ下さんって部活動なさってるんですって?」
風の噂じゃなくて直接風に聞いちゃったってよ、私。
あれかな? しほりんは妖精さんかな?
今日は風が騒がしいな……。でも少し、この風泣いています……。泣いてるのは自分だった(白目)
厨二か! 突然話し掛けて風からの便りをお伝えしちゃうとか、中学二年生がよくかかる不治の病を重めに発症しちゃってんのかよ!
ぐふっ……緊張しすぎて言い間違えちゃったよぉ! 顔から火が吹き出そうなくらい恥ずいよぅ……!
あとどうでもいいけど日本男児だと男らしいけど、日本女児だとちょっといかがわしくないですかぁ?
「意外ね、城堀さんは私が部活をやっているのを知っているのね」
「え、ええ……!」
あまりの厨二っぷりな失言に内心頭を抱えて現実逃避していると、意外にも雪ノ下さんは何事も無かったかのように私の失言を流してくれました。
ええ人や……。てか今の恥ずかしい発言が、ごく一部の人々にとってはどれほど恥ずかしい発言か知らなかっただけなんだろうけども。ふぅ、ギリギリでセーフ。
あと一歩のところで切腹を免れた私は、無駄に元気の良いお返事を返してから会話を続ける。
大丈夫よしほり。風とお話しちゃったことを暴露するよりも恥ずかしいことなんてなんにもないわ? 最低の恥を味わったあとならば、もう雪ノ下さんと会話するのだって恐くはないさ!
「つい先ほど真希たちが噂していたのを耳にしまして。それで少し気になったものですから」
うっし、もう大丈夫。なめらかに口が回りやがるぜ。ありがとう、風。
ちなみにお嬢様口調がキモいのは以下略。
「ああ、そうなのね。ええ、確かに私は部活に所属しているわ。奉仕部、と言うのだけれど」
「ほ、奉仕……っ!?」
「なにか問題でも?」
「あ、や、な、なんでもないですわ」
ですわってなんだよ。いくら口調がエセお嬢様調だからって、さすがにそれは胡散臭すぎだろ。
と、思わずですわが出ちゃうくらいビビったね、奉仕部。なにそれ卑猥なの?
旦那さま? ふふふ、旦那さまの汚れは、わたくしめがお口でお綺麗にしてさしあげますわ(意味深)、とかやっちゃってんの!? うへへ、なんたるエロティック倶楽部!
……などと、まるで変態みたいな妄想を繰り広げてはみたものの、まぁそんなわけは無い。仮にも高校の部活動なんですもの。
もちろん妄想のイメージ動画に雪ノ下さんを使ったりなんかはしていない。嘘じゃありませんわ?
さっきの昼休みに真希言ってたもんね、生徒のお悩み相談室とかなんとか。
悩みを聞いてくれる奉仕活動。そこから導きだされる答えなんて、ひとつしかないじゃない。
「生徒の悩みを聞いて、解決をお手伝いしてくださるボランティア部……と言ったところでしょうか?」
「ええ、厳密に言うと解決を手伝うわけではないのだけれど、大まかに言えばまぁそんなところね」
「そうなんですか、ふふ、さすがは雪ノ下さんですね」
ほぇぇ……ホントさすがやわぁ。そんな前衛的な部活動なんて聞いた事もないけども、なんか“持つもの”の雪ノ下さんにはお似合いっちゅーかなんちゅーか。
……にしてもセリフと脳内の差が激しすぎだろ。私は一体どこに向かっているの?
「ありがとうございます、雪ノ下さん。雪ノ下さんのお話を伺って、私も大変興味を持てました。……あの、もしよろしければ、いずれ奉仕部さんにお伺いしてみてもよろしいかしら」
「あら、なにか悩み事でもあるのかしら。主観でものを言ってしまってごめんなさいね、城堀さんのような快活な人は、あまり悩みなど抱えていなさそうなのだけれど」
いやんバレテーラ☆
「あ、っと、そ、そうじゃなくって! ですね……?」
お嬢メッキ剥がれんの早すぎィィ! もうちょいキャラ作り頑張れ私。
「その、あの雪ノ下さんがどのような活動をなさっているのか……奉仕活動とは一体どのようなものなのか、とても興味深かったものですから」
「ふふ、そうなのね。ええ、例えどのような要件であろうと奉仕部を訪ねてくるのは生徒の自由。……城堀しほりさん、貴女の来訪、いつでも歓迎するわ」
「は、はいっ」
っしゃ! とってもいい笑顔で歓迎されちった♪
よおっし、ではではこれを取っ掛かりにして、憧れの雪ノ下さんとガンガン仲良しになっちゃうぞ〜!
「で、ではさっそくきょ──」
「ああでもごめんなさい、いつでも……とは言ってしまったけれど、今日の放課後は立て込んでいて無理ね。と言うより、今日はそもそも部室にも行かないのだし」
「ほぇ?」
さっそく今日にでも見学に行っちゃうよぉ? と宣言しようとしたら、かなりの被せ気味なお断わりをされてしまい、思わず素の間抜けな声を出してしまった。
いかんいかん、色々とバレちゃうから。
「ちなみに城堀さんは、柔道大会の件はご存知かしら」
「じゅ、柔道……?」
雪ノ下さんの口からなんとも似付かわしくない名詞が発せられた。その名もjudo。アニメじゃない事でお馴染みのジュドーとはわけが違うのだ。むしろそっちの名前が出てきた方がびっくりだわ。
柔道──柔道ってあれよね。柔の道を極めんとするいかつくてむさ苦しいメンズ共が、汗と汁にまみれてくんずほぐれつキマシタワーするアレよね。柔道女子に謝れ。
その柔道という言葉が、なぜに可憐な雪ノ下さんの口から発せられた? しかも大会? はて……
と、そのとき不意に脳裏をよぎったとあるチラシ。
『来たれ総武高校最強の男! 総武高柔道大会S1グランプリ、七月十三日放課後、ついに開催!』
何日か前に、校内のどっかの掲示板にそんな謎のチラシが貼られてて、なにこれー! って真希たちと爆笑した記憶があるようなないような。てか七月十三日って今日じゃん!
その時は単なるひと笑いのネタ程度で流した記憶だけれど、まさかここにきて雪ノ下さんからその名を聞こうとは……
「えっ、と……S1グランプリ、とかいうやつですか……?」
「そう。そのふざけたネーミングは問題外なのだけれど、その柔道大会のことよ。知っていたのなら良かったわ」
マジだった。マジS1グランプリのことだった。
……え、その柔道大会と雪ノ下さんに、なんの繋がりがあるのん?
まさか出場するわけじゃあるまいし。確かに雪ノ下さんはウチの学校で色んな意味で最強の存在だけど、チラシには最強の男って書いてあったし。
訝しがる私を前に、美しいラインの顎に白魚のような美しい指を添えた雪ノ下さんは、「そう、ね」と何かを思いついたご様子。
「城堀さん、もしよければ今日の放課後、武道場に来ないかしら?」
「へ?」
「その柔道大会、実は私たち奉仕部が一枚噛んでいるのよ。誰かさんがギャラリーは多ければ多いほどいいなどと言っていたし、それに奉仕部の活動を見てみたいという城堀さんの希望にも添えると思うの。無理にとは言わないけれど、来てくれると助かるわ。どうかしら」
はい? 噛んでんの? 生徒のお悩みを解決する部活が? 柔道に? ナンノコッチャ。
そんな数々の疑問、あと雪ノ下さんの口から零れた「誰かさん」。
あまりにも多くの謎が私の頭上にたくさんの疑問符を浮かべさせてるんだけど……、でも、でもさ? なんかもうそんなのどうだってよくない? だって今さぁ、雪ノ下さん私にこう言ったんだよ? 「来てくれると助かるわ」って。すっごい素敵な笑顔でさ。
そしたらもう答えなんか決まってるようなもんでしょうが。むしろ一択問題超ちょれー。
だから私は答えるのだ。居酒屋の店員さんの如く、即日即答元気いっぱいに。
「はいっ、喜んで!」
× × ×
ふへぇ……ちょっぴり疲れちったけど、なんと心地のよい疲労感なのだろうか。
少しだけ恥ずかし思いとかしちゃったし、結局柔道大会とやらもよく分からずじまいのまま放課後見に行く事になっちゃったりもしたけれど、一年以上ほとんど話せなかった憧れの人とたくさん話せちゃったんだもん。しかもラッキースケベ(にゃ〜ん)のおまけつきダヨ? 恥だの謎だのどうだっていいってね☆
あ〜、マジで一生分の運を使いきっちゃったのかも〜♪
──そんな私のもとに届けられた一枚の赤紙。いや、白いルーズリーフだけど。
雪ノ下さんとのドキワクな邂逅を終えて自分の席に戻ると、なんか机の上に一枚の紙切れが置いてありました。
「ん? なんぞ?」
口笛ぴーぴー気楽に捲り上げたその紙。
そのなんの特徴も持たないようなただの紙切れには、明日の昼休みのクラス全員分の飲み物リストが記載されておりました。
おっふ……夏休み前の十四日にして、もう今月のお小遣いパーでんねん(白目)
続く
というわけで、なんと今回のイベントはあの柔道大会なのでした!
今までSSで柔道大会を扱った人なんていらっしゃるのでしょうか?w
今回は久し振りに筆がノッた為こんなに早く更新できましたが、たぶん次回は普通に遅い(お、遅くとも1ヶ月以内にはっ…汗)と思うので宜しくお願いいたしますm(__)m
それではまた次回お会いいたしましょうノシノシ