Fate/Resurrection フェイト/リザレクション 作:ジャンマル
アーチャーの記憶にあった中でも特別異彩を放っていたのは、第五次聖杯戦争に関する記憶である。父である衛宮士郎が勝利を収めたその戦いは、様々な陰謀が交差し、そして終わった。だが、アーチャーもその戦いに参加していたという。それも、別の世界でも呼ばれたりして。無数に存在する世界線でも、英雄は一人しか存在しない。だからこそ、強さを発揮できるのだ。別の世界線での経験と一つになって、英雄として完成するのだ。
アーチャー。彼の真名はエミヤ。まぎれもない、どこかの世界線のお父さんが行きついた理想の先なのだ。だが、その過去はつらく、とても人に見せれるようなものでも、話せるようなものでもなかった。故に彼は五次聖杯戦争では記憶の欠陥が生じている。で貫こうとしたのだ。
時には最後まで生存し、時にはお父さんのために力を貸す――生前いびつな生き方をしてきた彼にとって、それは救いだったのだろうか。そんなはずはない。彼を救うとしたら、人生を一生与えても与えきれないだろう。彼の受けた絶望は傷が深く――そして彼は人類のために死んだ。
「そうだ。そして私は再び呼ばれた」
「……でも、どうして?」
「私が呼ばれたのは必然だ」
「え……?」
「この聖杯戦争の先に待つのが――過去の私の過ちだとすれば?」
「ま、待って!! だとしたら――」
「此度の争いの黒幕は紛れもない。衛宮士郎だ」
「そんな……」
「絶望したか? 失望したか? だが。それがエミヤという男が歩んだ道だ。これから紡ぐ未来に彼の心に希望などないし、今後もできやしない」
「……」
確かにエミヤである彼はあの時、最後にお母さんと約束している。彼が、衛宮士郎がひねくれものに、英霊エミヤにならないようにする、と。だけど、こうして今お父さんはエミヤよりひどくいびつな人生を歩もうとしてる――
「! 弥生!!」
銃弾が横をかすれる。あと一秒でも遅ければ死んでいた――
「あれは――起源弾……魔術回路を破壊する魔術師殺しの銃弾か……!!」
「どうした? 君の理想はそんなものか? 士郎」
「……切嗣。何故ここにいる?」
「決まってるじゃないか。アサシンとして呼ばれたんだよ」
「だが、あんたの理想は間違ってる」
「ああ……知ってるさ。だからこそ、聖杯に願うんだよ。人生を――やり直したいってね」
「……!!!」
アーチャーの眼力が今までとは違くなっている。
「俺の理想を笑うならそれでいい――だが、だがな。あんたに憧れて俺は――俺は!!」
「固有結界……やはり、噂レベルの魔術師になっているか……!」
私は察した。あれはおじである衛宮切嗣であってそうではないもの――ゆがんだ存在、反転した存在。そう――
オルタ――いや、使徒だ。