「そういえば、昼間は訊くタイミングがなかったが」
「ん?」
「向こうの……クラリッサさんたちの様子はどうだ?」
一夏はベンチ傍の自販機で買ったジュースをラウラに手渡しながらそう尋ねる。
ラウラはそれを受け取りつつ小さく笑う。
二人の頭にはジャパニメーションが大好きで、上官であるラウラを溺愛する部隊のお姉さま役なセミロングの副隊長の姿が思い浮かんでいるだろう。
「ああ、皆元気だ。
……そういえば、久しぶりに話したいからクラリッサが自分のアドレスを伝えておいてくれと言っていたな」
「そうか。 じゃあせっかくだから教えてもらおうか」
取り出したスマホの赤外線通信で、手早くアドレスを受け取る。
それを終えて懐にしまうと、一夏はもう一人のことについても訊いてみる。
「シュルツ司令は? あの人も変わりないか」
シュルツ司令とは『黒ウサギ隊』の所属する基地の責任者で、ラウラの直接の上官でもある。
ドイツでの留学の際には、彼女たちともども世話になった人物だ。
と、そこでラウラの反応が少しおかしくなる。
「司令、か? もちろん元気だぞ」
「……その割には様子が変だが、何かあったのか?」
僅かに言い淀んだラウラに、一夏は気になって踏み込んだ。
するとラウラはほんの少し迷ってからポツリと語りだす。
「実はだな……司令から、私に養子にならないかと誘われていてな」
「へえ!」
一夏の口から思わず関心の声が出る。
同時に脳裏に浮かぶのは、ラウラや、シュルツ司令をを始めとした面々とのドイツでの日々だ。
『織斑 一夏―――私はお前を認めない』
ドイツでの留学で初めて会った時の開口一番、真っ先に受けたのは拒絶の洗礼だ。
そしてそれはラウラだけではなかった。
むしろ言葉にして示したラウラはまだマシなほうで、他の隊員たちに至っては良くて事務的で、下手をすれば相手にすらしないといった有様だった。
しかも、それだけではない。
ラウラと隊員たちには明らかな溝があり、そして彼女たちとその上官である司令は精神的な距離が置かれていた。
今考えれば明らかに組織やチームとしてひどい有様でありながらも機能していたのは、偏に軍としての規律と上意下達の精神が叩きこまれていたからこそだったのだろう。
そんな状態から徐々に、そしてある事件を契機に一気に絆を深めていったその経緯を振り返れば、ラウラの言葉は非常に感慨深いものがある。
しかし、そこで一夏は違和感に気付いた。
「あまり嬉しそうに見えないな……?」
「そ、そんなことはない!! 嬉しいし、光栄だと思っているし、できれば受けたいとも思っている!」
「わ、わかった。 とりあえず落ち着け」
「あ……すまない」
反射的にラウラが立ち上がり、迫るようにまくしたてた。
その剣幕に思わず一夏が身を引かせると、ラウラは一気に頭が冷えたのかストンと腰を落とす。
ラウラはほんの少しの間だけ黙りこくって、手にしたオレンジジュースで唇を湿らせてから重たくなった口を開く。
「……いま言ったとおり、司令からの話はとてもうれしい。
司令の奥様とも、一夏がいなくなった後に何度かお会いしたことがあって、部下ともどもとてもよくしていただいた。
―――だが、私には親というものがどういうものなのか、よく解からないんだ」
「………そうか」
なるほど、ラウラの生い立ちを思えばそれは確かに戸惑いを禁じ得ないだろう。
ラウラ・ボーデヴィッヒは所謂デザインベイビーという存在だ。
軍が人としての倫理すら無視し、より優秀な兵を目指して生み出した存在。
必然として、育ちもまた常人と違い普遍的な愛情というものとは無縁の中に生きてきた。
それを思えば初めて会った時の周囲との確執も、必然と呼んでしかるべきだったのかもしれない。
彼女本人は周囲が思っているほどその生い立ちに負い目を感じてはいなかった。
しかし親子という絆を結ばんとして、初めてそこに迷いを得たのは皮肉と言ってもいいものか。
そして困ったことに、一夏にはその悩みに答えることができなかった。
「参ったな……俺も父や母って存在には縁がなかったからな」
そう、一夏もまた己の両親を知らない。
一夏と千冬の両親は、彼が物心つく前に蒸発したらしい。
写真も残っておらず、千冬が両親所縁の品はすべて処分したらしい。
だから彼にとっての家族とは、姉である千冬だけだった。
今更、両親という存在に思うところはないし、心の底からどうでもいいと思っているが、だからこそラウラの悩みに対して力になれるとは思えなかった。
「そうか……」
「悪いな、役に立てそうになくて」
「いや、聞いてくれただけでもありがたい」
「……それで、話っていうのはその事だったのか?」
問われて、ラウラが「あ」と思い出したような声を上げる。
そしてほんの少しだけ迷うように押し黙ってから、深く息を吐いて言葉を紡いだ。
「一夏、ドイツに来る気はないか? 勿論、教官も一緒に」
「今のところはない」
「―――即答は流石に悲しいのだが」
やや恨めし気に見つめるラウラに、しかし一夏は呆れ半分に溜息をつく。
これならば先ほどまでのほうが悩みとしては深刻だからだ。
彼女自身もそれは解っているだろう。
拗ねた雰囲気は出しても、それ以上食い下がる様子はない。
「そう言われてもな。 お前だって、俺が頷くとは思ってなかったろう?」
「まあ、な。 教官……織斑先生に言っても同じだろうしな」
「だっていうのにどうした? まさかホームシックか」
「―――あながち、間違ってないかもしれんな」
冗談半分の言葉に、しかし肯定が返される。
組んだ足に頬杖をしてやや遠い目をするラウラに、一夏は思わず瞠目してしまう。
ラウラは眺めるでもなくぼうっと物憂げな眼差しを眼前へと投げかけている。
「……正直、私はここにとって自分が場違いとしか思えない」
切実に呟きながら、その脳裏に浮かぶのは今日一日のこと。
ここはIS学園……ISという最新最強の装備を駆るための人材を育てるための機関だ。
だが、実際に来てみたこの場所で目にしたのは、ぬるま湯のような空気の中で能天気に笑っている同年代の姿だった。
「きっと、お前に会う前の私だったら否定することしかできなかっただろうな」
なんと程度が低いのか。
なんと意識が足りないのか。
こんな場所にいる価値などない。
こんな場所にあの人がいるなど、損失以外の何ものでもない。
―――おそらくは、そう考えてその全てを拒絶していたのかもしれない。
「けどな、きっと違うんだ……普通なのはあちらで、そう思えない私のほうがおかしいんだ」
ぬるま湯だと評した空気はきっと陽だまりだと思うべきで。
能天気だと感じた者たちは無邪気だと感じるべきで。
総じて平和というべきものを、当たり前のように享受していることが普通であり。
それを受け入れられない私のほうが間違っているのだと。
「そうさ……私こそが、ここにとって異物なの―――」
唐突に、ラウラの言葉が途切れる。
正確には、中断させられたのだ。
「………………………何をする?」
「アホなこと言ってたので、アホなことで止めてみた」
横目でじろりと睨むラウラに、一夏はしれっとした様子で答える。
その右手は、人差し指がラウラの頬を横からムニっと押し込んでいた。
重苦しい空気が霧散し、代わりにラウラに怒気が漲り始めると、一夏は押し込んでいた人差し指をツイっと彼女の眼前に立てる。
「まず一つ。 そういった違和感は入学当初なら大なり小なり誰でも抱く。
今までとは全く違う環境だ。 戸惑わないほうがおかしい」
言って、ラウラが何か言う前に二本目の指を立てる。
「二つ目。 頭ごなしに否定しないってことは、それをお前自身が受け入れようとしている証拠だよ。
少なくとも、その下地はできてるってことさ」
「だが……」
「ラウラ……この学園にはいろんな奴がいる」
俯きかけるラウラ。
しかし遮るように続く一夏の言葉に思わず顔を上げる。
一夏は、こちらへと真摯でまっすぐな視線を向けていた。
「セシリアやシャルみたいな令嬢もいれば、お前や鈴みたいに軍に関係しているヤツもいる。
箒みたいな訳ありやここの会長みたいによく解からないヤツもいる。
もちろん、そんなのが全くない普通の子たちもな」
そしてそういった者たちの多くはラウラの人生で今まで道の交わることがなかった存在だろう。
ドイツで軍人として生きていくだけならば関わる必要すらなかった者たちだろう。
だからこそ。
「自分の世界を広げろよ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
お前は俺がいたあの時に、周りの皆の手を取ることができただろう?
なら今度はその外に目を向けてみろ」
その全てが、有益だとは限らない。
嫌なものや知りたくもなかったものもあるだろう。
後悔することだってあるかもしれない。
だが、それでも。
「絶対に、それは無駄にはならない。
少なくとも、その胸に新しく大切な何かが宿るなら、きっとそれだけで大成功だ」
と、そこで一夏は深く笑う。
それは子供のように、無邪気で屈託のない笑顔だ。
「―――まずは楽しめよ。 後はそれからだ」
その笑顔を、しばらく瞼をパチクリとさせながらしばらく見上げて。
ラウラもようやく小さく笑う。
「ああ………そういえばここに来る前にも司令に似たようなことを言われた気がするよ」
「そうか。 そいつは光栄だ。
っと、一つ言い忘れてた」
「なんだ?」
ラウラが小さく首を傾げると、一夏は指を三本立てる。
そして胸を張ってこう言い放つ。
「三つ目。 ―――この学園で一番の異物はどう考えても俺だろう?
それを差し置いて自分が場違いだなんだってのは頭が高いって話だ」
尤もと言えば尤もな、しかし同時になんとも言えない気分にさせる主張。
それを大威張りにしてくる想い人の姿に、ラウラはキョトンとして、
「………………クッ、ふ、はは、違いない、な」
堪えきれないように吹き出しながら、肯定した。
と、その時だった。
「見ぃつけたぁーーーー!!!」
つんざくような大声が横合いから響き渡る。
思わず二人が同時に振り返れば、そこには一人の少女が立っていた。
「み、つけ、ぜぇ、はぁ、みつけ、ゲッホ、たぁ、ふぅ」
なぜか盛大に息を切らして。
ここまで駆けてきたのか、その上であの大声を放ったのか。
今は息も絶え絶えといった有様な少女に、一夏もラウラもなんだか居た堪れない気持ちになる。
と、そこへ更に何人かの少女たちが姿を見せる。
「ちょ、ちょっとあいちゃん、なんで虫の息になってんのさ!?」
「いくらなんでも張り切りすぎ」
「ご、ごめ……う゛ぇ」
「おい、やめろ。 さすがに吐いたらドン引きってレベルじゃねぇ……!!」
不穏な会話も聞こえた気がするが、幸いにも乙女の尊厳が穢される事態には至らなかった。
さて、何事かと一夏たちが立ち去ることも忘れて見守っていると、最初に駆けこんだ少女が改めて歩み寄ってくる。
すると、何かに気付いたのかラウラが小さく声を上げる。
「お前は……確か今日の授業の」
「おお! 覚えててくれてたんだ!!」
少女は額の汗を手の甲で豪快に拭いながら嬉しそうに笑っている。
一夏も、ラウラのセリフで彼女が合同授業でラウラの担当した班の生徒であることにようやく気付く。
その上で見れば、後ろの少女たちも恐らく同じなのだろう。
続くようにやってくる彼女たちの人数も、合計で八人と合っている。
そして少女たちはラウラの前で横並びに立つと、一斉に頭を下げた。
『『『ボーデヴィッヒさん!! ありがとう!!!』』』
「―――え?」
まったく予想だにしていなかったのだろう。
呆気に取られた表情を浮かべるラウラに、最初の少女が一歩前に出る。
「あの授業、ボーデヴィッヒさん怖かったけど。 すごく怖かったけど。 マジパないレベルで厳しくて怖かったけど」
「そ、そこまで怖かったか? 私は……」
連呼されて流石に少しショックだったのか、頬を引きつらせる。
それを見て、違う少女が最初の少女の後ろ頭を軽くはたく。
それで気づいたように慌てて手を振る。
「いや、ゴメン!! 責めてるつもりじゃなくてさ」
と、落ち着かせるようにコホンとわざとらしい咳払いを一つ。
改めてラウラと視線を合わせて、彼女は言い放つ。
「……あの授業さ、厳しかったけどその分すっごい勉強になったと思うから」
「―――え?」
焼き直しのように、再び呆気に取られるラウラ。
そんな彼女に、他の少女たちが笑いかける。
「私、何度か実習で乗ったけどどうしても空中での立ち回りで苦手なところがあったんだよね。
でも、ボーデヴィッヒさんの指導でこう、コツを掴めたっていうか……」
「アタシも、浮き上がるの苦手だったけど、あの速度で一気に上昇できたの初めてだったよ」
「それ言うならあたしも……」
「私だって」
口々に出てくるのは、己が躓いていた壁とその解決の糸口を得た報告だ。
皆、それを彼女の指導のおかげで成しえたのだと賞賛と感謝を惜しむことなく露にしている。
それを向けられているラウラはといえば、慮外の事態に強い戸惑いとそれと同じくらいの気恥ずかしさを感じている。
しかし同時に、そこには言いようのない嬉しさも湧き上がってきていた。
「と、いうわけで!!」
おもむろに、最初の少女がラウラの手を取って引き寄せ、くるりと反転させて両肩に手を置いた。
戸惑っていたラウラは抵抗する間もなくされるがままだ。
「これから、お礼を兼ねて私たちのおごりで親睦会を開くことを宣言します!!」
『『『さんせーい!!!』』』
「え? え?」
さらに戸惑うラウラをよそに、最初の少女が一夏に顔を向ける。
「そういうことだからボーデヴィッヒさん、ちょっと借りてくね! それとも、織斑君も一緒に来る?」
「……いや、せっかくだが遠慮しておく。 話も終わってたから、遠慮なくラウラと盛り上がってくれ」
「ちょ、な!?」
「ふむ、ちょっと残念だけど了解!!」
「い、一夏!! 勝手に話を……」
「ラウラ」
己を置いてどんどん話が進んでいくことに慌てるラウラだが、そんな彼女へ一夏はただ一言、笑顔で告げる。
「―――楽しんでこいよ」
その言葉に、僅かに動きを止めたラウラは、言葉にせず胸の内だけで「まったく」と小さく笑う。
そして。
「……ああ!!」
力強く、頷いた。
その顔に浮かんでいるのは、笑顔。
なんてことはない。
それはどこにでもいるごく普通の少女のような。
この学園でも当たり前に溢れている。
今周りにいる少女たちと変わらなず、年相応の屈託のない、花開くような愛らしい笑顔だ。
「それじゃあ、出発進行!!」
『『『おぉ~~!!』』』
「わ、わかったから押すな!! 自分で歩けると、オイ!!」
そうして。
彼女たちは賑やかに騒ぎながら、これ以上なく楽し気にその場を後にした。
その背中を、一夏は穏やかに微笑みながら見送る。
校舎の陰に隠れて見えなくなるまで見届けていると、背後から声がかかる。
「なんか、お父さんって感じの顔してるよ、一夏」
「……いや、そこまで老けたつもりはないんだけどな」
首だけで振り返れば、そこにいたのは後ろで括った金髪を夕日に輝かせている少女の姿があった。
彼女は、ラウラが座っていたところのベンチの背もたれに両肘をついて身を預ける。
「シャルか……いつから居たんだ?」
「実は、結構前から」
一夏が問えば、シャルロットはバツが悪そうな苦笑でそう答える。
その様子では、どうやら先ほどの会話も聞いていたようだ。
「ゴメン……ほんとは聞いちゃう前にさっさと離れればよかったんだろうけどさ」
「……まぁ、俺は気にしてないがな。 謝るんなら、ラウラのほうにしておけ」
「うん。 夜にちゃんと謝っておくよ」
「ああ。 まぁ、アイツもあんまり気にはいないさ」
「だといいんだけどね」
小さく溜息をもらすシャルロット。
そんな彼女に、一夏は先のセリフからあることを思い出す。
「お父さんといえば……お前のトコの親父はどうだ?」
「ウチ? ………まぁ、ボチボチかなって」
問われ、僅かに思案してからシャルロットは小さく笑う。
そこには陰のようなものは見えなかった。
その姿に一夏は初めて会った頃の彼女と比較する。
人形じみた張り付いているような笑顔に、にじみ出る暗い陰。
言葉や行動の端々から感じる諦観の念。
そのどれもが苛立って、その原因に無性に腹が立った。
「………今思えば、あの時は結構な無茶をやったな」
「アハハ、ホントだね」
あの時、半ば以上衝動に任せていた当時の自分を思い出し、思わず羞恥に眉根を寄せる一夏。
一方のシャルロットは気楽なものだ。
大変だったのは彼女もそうだったのだが、すでに思い出に昇華しているようだ。
(………むしろ大変だったからこそ、か?)
「どうかした? 一夏」
「いいや。 その様子ならうまくやってるようだと思ってな」
さらりと誤魔化す一夏に、彼女は「まあね」と笑って返す。
実際はうまくやってるどころか、時と場合によっては完全に立場が逆転というかそれどころじゃない何かになっているのだが、それを今の一夏が知る由はなかった。
と、シャルロットが背もたれから肘を離して踵を返す。
「それじゃ、また明日……ってそうだ」
シャルロットが思い出したように振り向きなおした。
彼女は咳払いを一つして、誰かの真似なのか両の目尻を人差し指で僅かに引っ張りながら、一夏へ視線を合わせる。
「お父さんから伝言。 ―――『貴様には、いろんな意味で借りができた。 いずれ纏めて返す』、だってさ」
悪戯が成功したかのような笑顔を最後に残して、それじゃあねと今度こそシャルロットはその場を後にした。
そうして最後に一人残された一夏は、立ち上がると空になった缶をクズ籠へと放り、歩き出す。
「なんだかんだで、みんな前に進んでるんだな」
周囲と絆を結び、そして新しい世界へ踏み出したラウラ。
己の暗い諦観を断ち切り、自分の意志で歩き始めたシャルロット。
その経緯を少なからず知っている身からすれば、どちらもこれ以上なく眩しい。
だからこそ、一夏は自問する。
果たして自分は、同じだけの時間の中でどれだけ進んだのだろうかと。
***
「ただいま、と」
声と共に、自室へ入る。
言ってから、一人部屋であることを思い出す。
ここに越したのはシャルロットたちが転校する少し前のことだ。
それまでルームメイトであった箒はどうにも複雑そうな表情を浮かべていたが、一夏からすればようやく存分に羽が伸ばせるといった所だ。
もっとも、それを悟られて盛大に拗ねられてしまったのは余談だが。
だが、こうしてこういう言葉が自然と出てきてしまうあたり、自分も彼女との同居生活が日常になりつつあったのだと妙な感慨が浮かぶ。
「おかえりなさ~い」
「―――は?」
と、あり得ないはずの返事が奥から響いてきた。
それも作ったように甘えた声音でだ。
一夏は猛烈に嫌な予感を抱き、それは足音が近づくにつれ大きくなっていく。
果たして現れたのは。
「ご飯にする? お風呂にする? ―――それとも、ワ・タ・シ?」
素肌の上に白の眩しいエプロンを纏って出迎える、更識 楯無の姿だった。
よく見ればエプロン肩紐からわずかに細い紐が覗いている辺り、どうやら下に水着を着ているようではある。
しかし、ぱっと見では所謂『裸エプロン』と呼ばれるもの以外の何ものにも思えない。
まるで結婚式から一か月も経っていないような新妻のごとくしなを作る学園最強。
その姿に、先ほどまでの自問も感慨もなにもかもすべてが吹っ飛んだ。
「………………………………………………………………」
無言で佇む一夏は、自分の浮かべる表情が限りなくフラットなモノになっているだろうことを他人事のように自覚した。
なんかあんまり筆が乗らない今日この頃。
もうちょっと早めに出すつもりだったんですけどね。
ちなみに、これ更新した日とその翌日の二日連続で『赤ずきんたちとオオカミさんの絶望打破』も更新しているので、よろしければぜひそちらもお願いします。
……やっぱりオリジナルだからか手ごたえが返ってこない……(汗)
それはさておき。
ほぼラウラが主軸な今回。
シュルツ司令に関してはある程度バックボーンも考えてたり。
この作品でのラウラは初期の問題がすでに解決した状態なので、学園に来ること自体が世界を広げる第一歩であり、同時に最初の難関だったりします。
心に余裕ができた分、それゆえに不安も抱きやすくなってるかんじですね。
そしてそれを払拭する最初の一手が新天地での出会いですね。
そこらへんが途中で出てきた少女たちです。
一応、名前も(即興で)考えてたりします。
・唯原 亜依(ゆいはら あい)
・椿井 双葉(つばい ふたば)
・銅雷寺 美津子(どうらいじ みつこ)
・夜津府 イア(よつふ いあ)
・五丈 芙優(ごじょう ふゆ)
・鹿瀬 楠乃(ろくぜ くすの)
・地部 奈々子(ちべ ななこ)
・吾郷 弥子(あさと やこ)
……とりあえず、数字の1~8とそのドイツ語読みをもじってつけたんですが……四番目以降の適当感が半端ないですね。
というか一番最後が苦しすぎる(汗)
とりあえず、ラウラは一夏たちとは別にこの八人と作中の裏で遊びにいったり勉強したりと青春を送るんじゃないでしょうか。
描写されるかどうかは別として。
そして途中でシャルが出たり一夏が微妙にモラトリアムしてたりするけど、最後に全部持ってく楯無さん。
でもこういう時に出てこないと出番がないから致し方がないよね(暴論)
さて、どうにも頭の中の展開をうまく描写できてない感じがしますが、戦闘シーンはいればどうなるんだろうか。
しかし戦闘に入るまであと最低でも3~4話置くことになるという事実。
バトルをお楽しみの方は、もうしばらくお待ちください。
それでは、今回はこの辺で。
次回まで、また気長にお待ちくださいませ。
【追伸】
艦これイベなんとか達成。
ただしラスボスの最後の最後だけ丁にしてクリア。
……ボスとは別に姫級でてくるとかちょっと無理でした。
航空支援一つしかボスまで届かないし、資源もすっかり寂しくなっちゃったし……(哀)
ちなみに、報酬艦である『Intrepid』のほかには、前回のあとがきに続いて『Ташкент』、『翔鶴』、『ArcLoyal』、『親潮』が出てきてくれました。
………とりあえず、枠の空きがなくなったので三隈さんはサヨナラ。
というか、育てなきゃいけないのが増えまくりです……瑞鳳も改二にしなきゃですし。
なんにせよ、イベントお疲れさまでした。堀はやらないというか無理。