原作通りにならない僕アカ   作:オリオリ

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動く、指が動くぞ!!
と言う事で、第三話投稿です。
評価、感想ありがとうございます!




第三話 神綺とイズくん

 △月>日 曇りは涼しい

 

 ぼんそわーる

 主人公君の住所がわかったけど、どう接触しようかね。

 いきなり家を訪ねるのは常識的にどうかと思うし、かといって連絡してもなんで?ってなるよなぁ。

 

 調べた所まだ小学生だし、いきなり接触したら事案が発生するよな。

 それならあの辺でヒーロー活動するか?

 そうすればヒーローオタクな主人公君に会えそうな気がする。

 

 ……少し読み返すととんだ犯罪者だよなこれ。

 一人の少年に会うために、こうしてわざわざ活動地域まで限定しようとしてるんだから、どう考えてもストーカーですわ。

 

 ぐぬぬ、しかし主人公君がヒーローになる可能性を摘んでしまったのも事実だし……

 

 ……仕方ない、もしストーカー扱いされたら甘んじて受けよう。

 オールマイトの力を継がせることはできないけど、それに近い能力なら作ってあげてもいいし。

 いっそのこと、近々接触して二次小説でよく見る魔改造ってやつをやってみようかな。

 

 今の時期からならある程度のトレーニングも問題ないし、というか俺が監督するなら関係ないか。

 限界なんて取っ払えるし、その影響がないようにもできるし。

 それになんだかんだで、無個性でも結構やれると思うんだよね。

 消太君がいい例だと思う。

 個性を消して、鍛えた技術と身体能力で勝負!だし、対異形戦に関しては無個性とほぼ変わりないもんな。

 

 それなら今の時期に体を鍛えつつ、夢の世界で技術を磨くのもありだな。

 と言うか、まだ出会ってすらいないのにこんな計画立ててるよ俺。

 

 そういえば、思ったことを適当に書き連ねるこの日記は日記と呼べるのだろうか?

 

 

 

 △月ゞ日 よし、今日はいい修行日和だ(曇り)

 

 主人公君改め、イズくんとようやく出会えた。

 なんでか知らないけど、ヴィランが全然出て来なかったよ。

 

 おかげでイズくんとの出会いは、俺を見つけた彼に声を掛けられる形になったよ。

 というか、なんで俺の事知ってたんだろ?

 基本的に病院とか、災害救助でしか顔出さないからあんまり知られてないと思ったんだけど……って書いてるときに思い出した。

 そういえば、メディアに全く出てない消太君の事も知ってたね。

 それなら俺の事知っててもおかしくないか。

 

 けど、俺のサインなんてもらってうれしいのかね?

 きらきらした目でよければ!っていうから断れなかったよ……サインなんて書類に書くくらいだし

 流石にそれじゃちょっと味気ないかなって思ったから、デフォルメした俺を書いてみた。

 

 ……今思い返すとないな、なんで書いたんだろ。

 

 まぁ、それはともかく公園で少しイズくんとお話をした。

 ようやく会えたわけだしね。

 

 まさか自分の事について知らないことがあるとは思わなかったけど。

 平和の双璧って何ぞや?いつの間に、そんなこと言われるようになったし。

 あとオールマイトについても聞かれた。何で交流があるって知ってるのさ?

 

 イズくん、オールマイトの事好きすぎ(苦笑)

 彼のヒーロー像も大分オールマイトによってるね。

 けど、あの自己犠牲まっしぐらな大馬鹿者を真似るのはやめてほしいな。

 

 なんどあのヒーロー馬鹿を寝かしつけたことか。

 疲労がたまる前に休めって何度言わせるんだあの大馬鹿者め。

 おかげですっかりかかりつけ医みたいになっちゃったじゃないか。

 直正さんも、なんか意味深に笑って聞いてくれないし。

 

 ナイトアイも私に任せてないで、あのバカ止めてよ。

 っていかん、日記まで書き方が女寄りになってる。

 前世の名残だからせめて俺と男言葉を意識しないと。

 

 とにかく、あのバカを真似るのはやめてほしいわけだよ、イズくん。

 ってこっちに書いても意味ないか。

 ちょっと意地悪な事しちゃったけど、彼のヒーローになりたい宣言も聞いたし、俺はそれを承諾した。

 

 これで俺とイズくんは師弟となったわけだ。

 さて明日からどう鍛えていこうかな。

 

 あ、病院の方には分身の方を行かせておこう。

 本体の方で修行はみたいし。

 

 

 

 

 ★月☆ミ日 さぁ修行だ!

 

 とりあえず体を鍛えるために、原作で見たあの砂浜を走らせてる。

 ゴミ運びするくらいなら俺が負荷掛けたるわ。

 

 ちなみにあったゴミは全部魔法で回収してから直して、孤児院に持って行った。

 必要ない分は孤児院のバザーで売ってお金にしてもらうことにした。

 何かあれば、俺が直しに行きますよってサインしてあるから何があっても大丈夫さきっと。

 

 とまぁ、それはさておき

 イズくんの修行内容だけど、前世で見た『最強の弟子』やら『一歩』などを参考にして鍛えてる。

 漫画(僕アカ)の世界だし、別漫画の世界の鍛え方でも問題ない。たぶん。

 

 個性で彼の限界を測定して、限界ギリギリのノルマを課している。

 小学生なのに砂地を4km走り切るってすごいと思う。

 流石漫画の世界。

 後は拳法の型とか、姿勢維持とかを1kg負荷をかけてやってる。

 まだ少ししかやってないから、この程度だけど将来的には某忍者漫画の努力の人みたいに超重い負荷をかけても普通に動き回れるようにしたい。

 

 それにしても、イズくん、すごい根性だ。

 もし前世の俺なら間違いなく途中で投げ出してる。

 

 この世界に転生してからは孤児だったとはいえ、個性がチートだったから全然苦労とかしてこなかったんだよね。

 個性で人を救ってきたっていう自負はあるけど、精神的な強さは恐らくこの世界の誰よりも弱い。

 だからかな、こんな俺の事本気で尊敬してくれるイズくんが眩しく見えるのは。

 

 最初は罪悪感から鍛えようって思ってたけど、少し接しただけで大分絆されちゃったなぁ。

 イズくんが少しずつ、だけど確実にノルマを達成しているのを見ると嬉しくなる。

 これが弟子を持った人の気持ちなのかねぇ。

 

 

 そんな気持ちでいたからか、思わず電話してきたオールマイトに自慢してた。

 無個性だけど、ヒーローになる為に頑張ってる子がいるって。

 気弱なのに、オールマイトみたいに笑って助けれるヒーローになるんだって言ってる子がいるって。

 

 イズくんが頑張る姿が眩しいとかいらないことまで言った気がする。

 

 けど自慢したかったんだから仕方ないよね。

 さて、そろそろ夢での技術修行の時間だから日記はこれでおわりっと。

 

 

 

 =月$日 イズくんもうすぐ中学生だねぇ

 

 

 イズくん大分鍛えられてきたなぁ。

 小学生なのに腹筋割れてるよ、シックスパックだよ。

 おまけに二の腕カッチカチだよ。

 ピンク筋を増やす様にしておいた方が良かったかな……

 いや、けどイズくん自分の体を見て喜んでるし、いいのかな。

 身長に影響が出ない様にしてるけど、鍛えすぎたかな……?

 

 本日はイズくんの影を具現化して、対人戦闘を行った。

 強さは本日のイズくんを保存して、次回からこの影と戦闘してもらう。

 影を倒したら、また新しく更新して、それを繰り返せば癖とか対人のコツとか掴めるはず。

 

 

 とまぁ、それを砂浜で行ってたんだけど……なんで来たのさ、オールマイト。

 前から俺の弟子に会ってみたいとか言ってたけど、ついに来ちゃったよ。

 イズくんは戦闘に集中してたから気づいてなかったけどさ。

 

 オールマイトからみてイズくんがどう見えるか聞いたけど、概ね高評価だった。

 自分の若い頃に似てるだって。

 そういえば、オールマイトも元々無個性だったね。

 イズくんは夢でも技術を高めてるから、体術はそこらの中学生にも負けないよ。

 指導方針も心技体を心得るようにしてるし、時々気当たりとか殺気とかを当てて空気にも慣れさせてるからね。

 けどやっぱり俺は師匠なんて柄じゃないね。

 

 対戦相手も、効率のいい鍛え方も個性に頼ってるだけだし。

 本当にいい師匠はちゃんと自分の経験したことも言葉にするんだろうけど、俺にはできないな。

 

 なんて弱音吐いたら、オールマイトに笑われた。

 こちとら真剣に悩んでると言うのに。

 イズくんに聞いてみたらいいって、聞けるわけないだろ。

 

 彼は優しいからきっと俺が師匠に向いてないって言っても否定する。

 それがわかるくらいには濃密な日々を過ごしてきたし。

 けど、師が弟子に弱いところ見せたら駄目だろ。

 

 しかもよりにもよって『心』の部分でとか。

 こればっかりは弟子に晒す訳にはいかない。

 

 俺が考えているイズくんに渡す個性も、強い思いが重要になってくる。

 師匠が揺らいじゃいかんだろ。

 

 うん、俺は大丈夫。

 イズくんの強い師匠でいれるさ。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 その人に会えたことで、僕の人生は大きく変わったんだ。

 

 僕はその日の事を絶対に忘れない。

 師匠にヒーローになれると認められ、弟子にしてもらったその日は僕の人生で一番大切な日だ。

 

 僕の師匠はマジックヒーロー神綺

 災害救助や治療において、師匠ほど凄まじい成果を上げる人はいない。

 NO1ヒーローのオールマイトですら、災害救助においては師匠にかなわないと笑っていた。

 

 治療では死んでさえいなければ、どんな傷も、傷跡も、失った手足でさえも治してみせる医神と呼ばれている。

 戦闘でさえも、あのオールマイトでさえも戦いたくないと言わしめ、彼女が活動してる地域ではヴィランがいなくなることで有名だ。

 事実、師匠が僕の町に来てから、ヴィランは彼女の滞在を知らない者以外姿を消した。

 

 そんなすごい人に、僕は弟子として認められた。

 その時のやり取りはいくら時がたってもきっと覚えている。

 それくらい、あの時の師匠は……うん、鬼だった。

 

 

 

「無個性でも、ヒーローになれますか」

 偶然出会って公園で話をして、ずっと聞きたかったことを、オールマイトに並ぶヒーローに問いかけた。

「どうしてヒーローになりたいの?」

 僕の問いに答えず、真剣な目でそう問い返してきた。

 

「オールマイトみたいに、笑いながら誰かを助ける……皆に希望を与えるようなそんなヒーローになりたいんです!」

「……じゃあ、緑谷君」

「はい!」

「君はヒーローになれないわ」

 神綺さんのその言葉に、僕は唇をかんでうつむいた。

 わかっていたことだ。

 無個性でヒーローになった人なんていない。

 それでもこうしてプロのヒーローから言われると、足元が崩れていく気がした。

 

「そう言ったら、諦めるの?」

「えっ……?」

 思わず顔を上げると、神綺さんが真剣な目で僕を見ていた

「君はヒーローになれない、無個性だから無理、すぐ泣いちゃうから無理、気弱みたいだから無理、私がそう言ったら君はヒーローになることを諦めるの?」

 神綺さんの言葉が胸に刺さった気がした。

 

 今までも無理だって言われてきた。

 皆に馬鹿にされてきた。

 それでも、ヒーローになりたいって夢だけはずっと捨てられなくて……。

 カバンの中には色んなヒーローの事を纏めたノートがある。

 将来の為にってこんなものを作るくらい、ヒーローになることを諦めることができなくて……。

 

「……いやです、僕は……諦めたくない……!!」

「どうして? 君は体格的にも恵まれていない。個性があっても大怪我してしまう人だっているわ。無個性の君なら死んでしまうかもしれない。なのに諦めないの?」

「それでも……それでも、僕は諦めたくないんです……! 皆を笑顔にするような……そんなヒーローに!!」

 唇を強くかんで、神綺さんを睨んだ。

 神綺さんの言葉は僕の心を切り刻む。

 それでも、諦められない……違う、諦めたくない!!

 

 そんな僕に、神綺さんは僕の心を折るかのように言葉を放つ。

「『英雄は英雄になろうと思った瞬間に失格である』」

「…………ッ…………」

「この言葉の通りなら、君は英雄失格だよ? 諦めないの?」

「……ッ諦めません!! 僕は! 絶対に、オールマイトの様なヒーローになる!!」

 僕は大声でそう宣言して、唇を思いっきり咬んだ。

 

「それなら君はヒーローになれるわ」

「え!?」

 先程までの冷たい言葉が消え、温かい優し気な声が聞こえた。

「酷い事言ってごめんね。でも、無個性でヒーローになるなら絶対に諦めない心が必要だわ」

 神綺さんは申し訳なさそうに僕を見ていた。

 

「私が思うヒーローの条件はね、諦めないこと。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、心が折れてしまっても、最終的にはその折れた心を叩きなおして、立ち上がることができる。そんな馬鹿みたいに諦めの悪い人がきっと英雄になれるの」

 そこまで言って神綺さんは小さく笑った。

 

「無個性? 人の技術は時に個性すらも上回るわ。『英雄は英雄になろうと思った瞬間に失格である』それがなに? 英雄になろうと思うのは悪い事なの? 例え、英雄になりたいと言う思いからの行動だったとしても、その為に行動した全ては無駄になるの? 違うわよね、英雄を志す『モノ』が何であれ『笑いながら誰かを助け、皆を笑顔にする英雄になりたい』と思って行動した貴方の思いは決して無駄じゃない。貴方が誰かの為に『英雄』を目指して『成した事』はきっといつか英雄と呼ばれるものになるから」

 

「……神綺さん」

「柄にもない事言っちゃった。あーぁ、顔が熱いわぁ」

 僕から目を離して、赤くなった頬をパタパタと扇いでいる。

 けど、神綺さんが言ってくれた言葉は、切り刻まれた僕の心をより強くした。

 

 泣いても、怖がっても、折れてしまってもいい。

 その度に折れた心を叩きなおして、また立ち上がれ。

 決してあきらめるな。

 

「僕、頑張ります! 絶対にヒーローになります!」

「なら、私はその後押しをさせてもらおうかしら」

「え?」

 神綺さんの言っていることがわからずに、その時の僕はぽかんと神綺さんを見上げていた。

「私の弟子にならない? 緑谷出久君」

 

 

 それが、僕と神綺さんの師弟の始まりだったんだ。

 

 




遂にであった二人。
そうして始まるデクの魔改造!

英雄のくだりは、仮面ライダー龍騎からですが、英雄を目指す理由なんてどうでも良いと思うんですよね。
過程と結果さえあれば、動機なんて何でもいいと思うんです。

ちょっとTS関連に関して質問があったので追記
ほとんどTSの要素が機能していない主人公ですが、ちゃんと意味があります。
それは、元男ゆえの無防備さと男性への理解です。
男同士なら普通の距離感でも、それが異性ならドキッとしませんか?
そう言った無防備さと、男の性欲への理解は、胸とか見ていてもまぁ見ちゃうよね仕方ないよね見たいな寛容さへと勘違いさせる要素になります。
この小説でそれがうまく活かせるかは分からないですが、そう言った理由でTS設定にしてあります。

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