原作通りにならない僕アカ   作:オリオリ

13 / 17
深夜のテンションで書いてそのまま投稿
変なところがあるかも、頭が余り動かない
あまいかな、少しびたーまじりかも
楽しんでくれたら嬉しいです


第十三話 温泉旅行の昼

「……ん…………りさん……俊典さん」

 優し気な声が聞こえて、徐々に意識が覚醒する。

 思ったよりも深く熟睡していた様だ。

 目を開けると二つの丘と、その向こう側にアリス君の顔が見えた。

 

 何やら悪戯気に笑っている……?

 まて、何故アリス君の顔がこんなにも近い!?

「ッ!!!??」

「はい、いきなり起きないでくださいねー」

 跳び起きようとしたら、アリス君に額を押さえられた!?

 しかも個性を使っているのか逃げる事ができない!?

「あ、アリス君!? こ、この体勢は!?」

「膝枕だよ?」

「ぶはっ!?」

 ニヤニヤと笑いながら言うアリス君に現実を突きつけられた。

 

 意識してしまえば、一気に顔が赤くなるのがわかった。

 何せほんの少し先にはアリス君のやわらかそうな胸が……!!

 しかも後頭部には太腿の感触!!

 さらにどこか甘い香りが……!!

 こ、これはまずい!?

 というか、なぜ私は横になっているのだ!?

 

「アリス君!! お、起きたいのだが!!」

 周りに聞こえないように声を抑えつつ、アリス君にそういった。

「まだ、駄目」

「なぜ!?」

 予想外の返答に私が問いかけると、アリス君は楽しそうに笑いながら言った。

「駅前ですっごい恥ずかしかったから、仕返し」

 語尾に音符が付きそうなくらいご機嫌そうに仰られた。

 

「そ、それはすまない!! だが、起こしたと言う事はそろそろ降りる時間なのでは!?」

「違うよ?」

「え? で、ではなぜ?」

 アリス君は相変わらず笑みを浮かべるだけで、答えてくれない。

 一体何故?

 そう考えていると、少し離れた席から声が聞こえた。

 

「切符を拝見します」

 ドキッとした。

 声のした方へと視線をやる……ボックス席で横になっている所為で見えないが、間違いなく車掌だろう。

 いや、まさか……まさかな?

 アリス君を見上げると、今度はニヤっと笑った。

「風情があると思わない? 乗る時に切符渡されたでしょ?」

 あ、アリス君の笑みが今だけは悪魔の様に見える!!

 ついでに背後に悪魔の翼みたいなのが見える!!

「た、頼む!! アリス君!! 今直ぐこの拘束を解いてくれ!!」

「……私は、駅前で、人に見られながら、あんなこと、されたわけだが……」

 

 あれ、これって怒ってる!?

 足音がだんだんと近寄ってきている!

 もう猶予はない!!

「すまない!! だが嘘は一切ないんだ!! 後生だから解放してくれ!」

「え」

 

 !!

 身体が動くようになった!!

 私はアリス君にぶつからないように、瞬時に体を起こし対面の座席へと腰かけた。

「切符を拝見します」

「……あ、こ、これです」

 ま、間に合った……!!

 九死に一生を得た気分だ……

 車掌が切符を確認して、去っていくのを見て、人心地着いた。

 本当に危なかった……流石に人前であんな姿を晒す訳にはいかない。

 ……人前でなければいいと言う訳でもないが……ほんとだぞ?

 脳内で騒いでいる二人に言い訳するようにそう思った。

 

「アリス君、駅前では本当にすまなかった」

 対面に座ったままアリス君に向けて頭を下げる。

 まさかそこまで怒るとは思わなかった。

 ……先程の状態だと、彼女にもダメージが行くと思うんだが……

「…………?」

 返事がない……ま、まさか話をしたくないほどに怒らせたというのか!?

 恐る恐る顔を上げてみると、顔を真っ赤にしたアリス君が居た。

 やはり怒らせたか!?と思ったが、怒りの表情ではない。

 これは戸惑い……いや、恥ずかしがっている……?何故だ?

 

「アリス君?」

「ッ!? な、なに?」

 私が声をかけるとビクッと反応して、目を逸らした。

 予想外の反応にどうしていいのかわからない。

「その……すまない。不快にさせて」

「ぁ……ううん、大丈夫。ただ、ちょっとした意趣返しのつもりだっただけだから」

 もう一度謝ると、アリス君は小さく微笑んでくれた。

 その姿にホッとする。

「それに認識阻害をかけてるって言ったでしょ? だから、俊典さんを膝枕してても車掌さんは気にしなかったよ」

「あぁ、そういえば……」

 成程、だから意趣返しか。

 タネを知らなければ非常に焦るだろう。

 

「ところで」

「ん?」

 なんだかんだで、ちゃんと配慮してくれている事に安心していると、アリス君がまだ赤みの残る顔で問いかけてきた。

「その……どう、だった?」

「うん? あぁ、正直生きた心地がしなかった……凄まじいドッキリだったよ」

 本当に、人前であのような姿を堂々と晒せる恋人たちは凄いな。

 

「そっちじゃなくて」

「そっちじゃない?」

 アリス君の言葉に首を傾げるが、次に飛び出た言葉に私は思わず噴き出した。

「……膝枕、気持ちよかった?」

「ぶはっ!?」

 

 そっちか!?

 よりにもよってそっちの話をするのかアリス君!?

 しかもそんな赤くなった顔と潤んだ目で私を見ないでくれ!?

 後頭部に感じていた柔らかな感触と甘い香りを思い出してしまう!!

 

「……よく、なかった?」

 煩悩と戦っている私にさらなる追撃が放たれた

 やめてくれえええ!!

 君の今の表情はただでさえ煩悩を思い起こすのだ!!

 その言葉も良くない!!

 凄まじく脳内を巡る妄想を必死に振り払う。

 

「……やっぱり私の事を……?」

 アリス君が小さく何かを呟いているが、どうする私!?

 今の私はどうすればいいのだ!?

 ライフカ〇ド!!ライフカ〇ドを私に!!

 そう思った私の脳内にあの二人が出てきた。

 その手には正直に言え!と書かれたプラカードを掲げている。

 

 ……二人が出てきたことで、何故か冷静になれた。

 しかし、なぜこの二人はやたらと脳内で出てくるのだろうか?

 そんなことを思いつつ、アリス君を見れば赤い頬に手を当てている。

「あ、アリス君!」

「ひゃい!?」

 突然声を掛けたせいか、アリス君は間の抜けた声で返事をした。

 恥ずかしかったのか、さっきよりも顔が赤くなっている。

 だが、私の顔も負けず劣らず赤いだろう。

 小さく深呼吸して、感想を言った。

「凄く、気持ちよかった」

「……そ、そっか……」

 

 この後、私達は会話する事なく温泉街へと到着した。

 

 

「すごい」

「あぁ、すごいなこれは」

 思わず二人してぽけーっと見上げる。

 温泉特有の匂いに、あちらこちらから湯気が昇る町。

 どの建物も趣のある和風建築で、マンションの様な建物が一切ない。

 この町だけ前時代に迷い込んだ気分だ。

「とりあえず宿にいこっか」

「そうだな。やはり温泉街を巡るときは浴衣だろうか」

「私はその方が良いかな。せっかくの温泉街だし」

 

 楽しそうに言うアリス君に、私も思わず笑みを浮かべる。

 列車内では気恥ずかしさから会話ができなくなってしまったが、ようやく普通に会話できるようになった。

 パンフレットの地図を見ながら辿り着いた宿にチェックインして、部屋へと案内された。

 案内された部屋は二人には少し大きめの和室だった。

 畳で寝るのはいつ以来か……なんて考えながら、現実から目を逸らす。

「……寝るところは一緒みたいね」

「まぁ、ペアチケットだったからね」

「「…………」」

 ちらりとアリス君を見てみると顔が赤い。

 どうやらちゃんと男として意識してくれているようだ……いまはそれがありがたくない。

 

「……屋内露天風呂があるみたい」

「そ、そうか」

 流石にそれを使う事はないだろう。

「じゃ、じゃあ着替えるね」

「う、うむ」

 アリス君が脱衣所へと着替えに行ったので、私もさっと着替える。

 

「……落ち着かない」

 ……この部屋で、私とアリス君が寝るのだな……

 ……別に変な意味はないがな!

 そんな風に自分に言い訳をしていると、アリス君が着替えを終えた様だ。

「お待たせ」

「いや、そんなにまって、いない」

「俊典さん、意外と浴衣にあってるね」

「アリス君も似合っているよ」

「そう? ありがとう」

 可笑しそうに笑うアリス君と同じように何とかそう返した。

 

 青い花が描かれた浴衣に紺の帯。

 私と変わらない浴衣だというのに、アリス君が着るととても綺麗に見えた。

 普段はそのまま流されている髪も、今はまとめられている。

 確か……お団子と言う髪型だったか……普段は隠れている白いうなじが見えてドキッとする。

 視線が思わずうなじへと流れてしまいそうになるが、鉄の意思で抑える。

「それじゃ、行こっか」

「あぁ」

 用意されている下駄を履いて、私達は外湯へと出かけた。

 

 早速活躍する直正からもらった情報の温泉へと向かった。

 道中は遠目にどんな店があるか眺めつつ、目的地へと向かう。

「ちょっと意外かな。温泉の効能について色々調べてると思わなかった」

 アリス君の言葉に苦笑する。

「私も直正たちが教えてくれなければ気にしていなかったと思うよ」

「健康にいいとか、美容にいいとかいろいろ書いてあるわね。効能とか全然気にしてなかったわ」

「せっかく薦めてくれたんだ。どうせだから書いてあるように巡ってみようと思うんだが、どうだろう?」

 私の言葉に、アリス君は笑顔で頷いてくれた。

「賛成。せっかく教えてくれたんだから試してみようよ」

「まぁ、私に美白やら美容やらは全く関係ないと思うがね」

「美容を気にする俊典さんも面白そうだけどね」

 そんなたわいもない話をしながら、目的地へと着いた。

 

「それじゃあ、またあとでね」

「あぁ、ゆっくりしてくると良い」

「俊典さんもね」

「そうだったな」

 軽いやり取りを終えて、脱衣所へと入る。

 私もゆっくりと温泉を楽しむとしよう。

 

 入った温泉は美容関連だった為か、少しぬるっとしている気がした。

 そういった成分なのだろうか?

 温泉も数多くある所為か、入浴客はあまりいなかったので、ゆっくりとできた。

 

 

 サウナなどもあったが、これから色々と巡るならのぼせないように早めに上がった方が良いだろうと判断して、あまり長湯はしなかった。

 時間にして一時間も立たぬうちに外へと出た。

「あ、俊典さん」

 隣から声がアリス君の声が聞こえた。

 どうやら彼女も今出てきたばかりの様だ。

「アリス君、もういいのかい?」

 女性は準備なども含めるともう少し時間が掛かるものだと思っていたのだが。

 

「色々と浸かりたいから、あまり長湯しないようにしただけだよ」

 どうやら考える事は一緒だったようだ。

「私も同じようなものだ」

「ふふふ、出てくる時間が一緒ってすごい偶然だね」

 微笑むアリス君を見つつ、何とか冷静さを保つ。

 今のアリス君は何というか……凄く色っぽい。

 白い肌は湯上り故にほんのりと赤く色づいているし、湯上りで熱いからか鎖骨が見える程度に浴衣が開いている。

 

 …………私は耐えられるのだろうか?

「それじゃあ次に行こうよ。温泉ってすごく気持ちよかったから、次にも期待だね」

「そうだね、私も心地よかったよ」

 お互いに先程の温泉の感想などを話しつつ、次の温泉へと向かう。

 私と言えば、多少緊張はするものの穏やかに過ごせていた。

 

 二人で色んな温泉に浸かりながらふと思った。

 

 ヒーローとして働き始めてから、こんなにもゆっくりとした時間を過ごすとは思わなかった。

 オール・フォー・ワンとの戦いで重傷を負った時は、正直もうダメだと思ったこともあった。

 こうして、何気ない平和な日常を楽しめるのも、全て君のお蔭なんだ。

 ヒーローで在れるのも、こうして八木俊典として君に恋する事が出来たのも。

 全部君がいてくれたお蔭なんだ。

 

 君が居なければ、私は屈していたかもしれない。

 君が居なければ、直正たちの気持ちに気が付かなかったかもしれない。

 私の、ヒーローとしてではなく人としての幸せを、願ってくれている人がいると言う事に気が付かなかったかもしれない。

 

 ……何より、護りたいと思える人ができた。

 共に居たいと思える人ができた。

 なぁ、アリス君。

 私は誰かと共になるなんて考えたことがなかったんだ。

 

 平和の象徴として、私の人生(いのち)を捧げるつもりだった。

 今の私にそのつもりはない。

 君がいてくれたからだ。

 

 私は最初の平和の旗となった。

 そして、次代の旗を担う可能性を君が見せてくれた。

 君が見つけて育てた弟子達。

 君のシミュレーターを使って強くなったヒーローたち。

 

 私は平和の旗を自分の命と共に燃やし続けながら果てなくていいのだと。

 一人で世界を背負う必要はないのだと、いつか君に言って聞かせた言葉は、私自身にも当てはまったのだ。

 私がするべき事は、平和の旗と共に燃え尽きる事ではない。

 平和の旗を誰かへと引き継ぐ事なのだ。

 

 

 ……温泉に浸かりながら変なことを考えてしまったな。

 直正が、ナイトアイが、アリス君が、私個人の幸せを願ってくれている。

 だから幸せになる努力をしてみよう。

 そして、私の隣にアリス君がいて、笑っていてくれればとても嬉しい。

 

 誰よりも強い個性を持って居ながら、その個性ゆえに苦しんだ彼女が。

 苦しみながらも誰かの為に行動できる彼女が。

 

 

 とても愛おしいのだ。

 

 いつか、君にこの思いを伝えたい。

 ありったけの感謝と、ありったけの想いを。

 その時、君は笑ってくれるだろうか?

 それとも泣いてしまうだろうか?

 未来の事はわからない。

 けれども、その未来を君と共に歩みたい。

 

 まるで詩人の様な事を思っているなと苦笑して、それでも彼女を思う。

 

 あぁ、アリス君の事が好きだなと。

 

 

 

 そんな私の想いは、早くも報われる形となった。 

 だがしかし、これは試練だ!!

 というか、なぜこんなことになっているのだ!?

 

 温泉街を巡り終えて、宿で豪華な和食料理を食べて、最後に屋内露天風呂に入ることなったのだが……!!

 「俊典さん、お背中、流しますよ」

 顔を真っ赤にして、バスタオルを巻いただけのアリス君が乱入してくると言う急展開によって!!

 本当にどうしてこうなった!?

 




としのりくん、貞操の危機?
乱入したアリス、これはR18いきかな?
多分ごちゃごちゃしてる気がするので、あとで投稿しなおすかも
ビターな甘さが出来たかな?
後、番外編って何か欲しいですか?
活動報告に僕アカ番外っての載せとくので何か希望があればどうぞ!
皆さんへの感謝とゆー事で、何か書くよ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。